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もう恋なんてしないなんて
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しおりを挟むその後の類くんは、放心状態だった。
心ここにあらずとはまさにこのこと。
私が話しかけても上の空、マンションに行きたいと言っても今日はごめん、と静かに言われてしまい私も言い返せなくて仕方なく家に帰った。
その後はバイトで会っても終わるとすぐに帰ってしまったし、前々から予定していた映画を一緒に観に行っても観たらすぐに帰ってしまった。
とにかく類くんの様子がおかしい。
あの麗華っていう女と過去に何かあったに違いない!
「ちょっと明子。暴れるのはいいけどちゃんと片付けてから帰ってよー」
「わかってるよーキキ。あ、私これ片付けたら先帰るから」
「えー?駅前にケーキ屋ができたから一緒に行こうと思ったのにー」
ごめんごめん、と言いながら私は手早くペンキやらハケやらを片付けて行く。
キキも用具を運びながら、ちょいちょいと私に話しかけてきた。
「ななと優斗もケーキ誘ったんだけどさあ。何か2人とも様子がおかしいんだよね」
「え?」
「お祭りで合流した時は別に普通だと思ったんだけど、そのあと駅で別れたあとに何かあったのかなあ」
心配そうにキキは2人を気にしながら物を片付けていく。
そう言われれば、今日2人が話してる所を見ていない気も?
でも普段からめちゃめちゃ会話するタイプじゃないしなあ。
まあバイトの様子も見ておくか、と思いながら私は鞄を手に取り皆に手を振って学校を後にする。
今日こそは類くんから話を聞いてみせるんだから。
そのためには…っと。
「ここか」
私が着いたのは、類くんの大学近くにある小洒落た喫茶店だった。
路地裏に入った所にひっそりとあって場所が分かりにくかったけど、地図を見ながら何とか辿り着く。
類くんは夏休み中もたまに用事があって大学に行ってるらしく、その後大体この喫茶店に立ち寄ってコーヒーを飲んでから帰るらしい。
という情報を、以前類くんのお友達の田辺さんとこっそり連絡先を交換していて、今回教えてもらえたのだった。
私は類くんより先回りしジンジャエールを頼んでしばらく待った。
もうジンジャエールがなくなりかけた時、カランコロン、とドアが鳴って類くんが現れる。
「類くん!」
まるで待ち合わせをしているかのごとく席で手を振ったら、凝視されてそのまま店を出ていかれた。
慌てて私は彼を捕まえに行き私の席に座らせる。
「……なんでここまで来てんの」
「類くん情報を仕入れまして」
「…田辺か。田辺だなあいつ……っ」
類くんは盛大にチッと舌打ちをした。
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