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君じゃなきゃダメなんだ!
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しおりを挟む私だって半信半疑だった。
夏休みにデートのお誘いを類くんにしたものの、気分屋な彼が素直に応じてくれるはずがないと踏んでいた。
それでもしつこく迫ろうと思ってたし、なんなら家に居座ってやろうか、なんて考えてもいたもんだ。
それが蓋を開けてみたらびっくり。
なんだかんだ言ってほぼ毎日会っていたりする。
「類くん、暑いね」
「…おう」
「なんで私たち、こんな暑いのにこんな所にいるんだろ」
「……あんたがどうしても並んでまで食べたいかき氷があるとか抜かすからだろうが!」
我慢の限界らしい類くんが首筋に汗を流しながら拳を握って怒鳴る。
周りにお客さんがいるんだから静かにして!と私はあやしつつ、持ってきていたハンディファンで風を流してあげた。
「だってここのかき氷、皆SNSにあげてて超ー美味しいってめっちゃ書いてあるんだもん!暑い時こそかき氷でしょ!」
「暑い時はクーラーの効いた部屋でコンビニで買ったアイス食っときゃいいんだ」
フンッと眉間にシワ寄せまくって不機嫌になる類くん。
でも何だかんだすでに1時間も並んでくれていて、怒って帰らないところは偉いと思う。
文句を言いつつも一緒にいてくれるとか、やっぱり素直じゃないなーと思いつつ嬉しくてぴっとりと腕にくっついてみた。
「馬鹿か!暑苦しい離れろ!」
「……やっぱり優しくないぃ」
ブンッと腕を振られてむすっとする私。
そんなこんなでやっと店に入ることができて、かき氷にありつけた。
「んー!氷ふわふわでおいしーっ」
パクパクと口に運ぶ私を、仏頂面のまま類くんは食べながら私をジト目でみつめる。
「おいしくないの?類くん」
「普通」
「じゃあ類くんのいちご食べちゃう」
「………食べる」
「はいはいどうぞ」
私はフォークで盗んだいちごを類くんの口に返してあげた。
素直に口を開ける類くんの可愛さと言ったらない。
今日は類くんがいちごが好きっていうのと、ちょっとした扱い方を知れた気がする。
「類くん、いっぱいデートしてくれてありがとね」
「…ただ会ってるだけでデートじゃない」
デートという単語が恥ずかしいのか類くんはごまかすけど、休みの日にかき氷を食べるために1時間も並んでくれるなんて、デート以外のなんて言葉で表せるのか。
かき氷を食べ終わって写真をSNSにあげようとアカウントを見ていると、今週の土曜日にお祭りが近くであるのを知った。
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