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君じゃなきゃダメなんだ!
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しおりを挟むその日はぐっすりと類くんの胸の中で寝させてもらった。
朝になって、ぱちっと目が覚めて身体を起こすと類くんの姿はなかった。
携帯の画面を見ると8時過ぎ。
一瞬学校あるっけって思ったけど、今日が土曜日だったことを思い出してリビングに向かった。
「…おはよ」
「おう」
キッチンに立つ類くんは何かを作りながら返事をする。
後ろから近づいて覗き込むと、玉子焼きを綺麗に巻いててエッと声を出してしまった。
「綺麗…ッ」
「そりゃどーも。ほらどけ」
私の扱いこそ適当だけど玉子焼きを扱う時は丁寧で、人って見かけによらないなぁと思ってしまう。
ご飯も炊いてるみたいで、ついでにお味噌汁まであったりして私は目を輝かせた。
「ヤバー!類くんって本当にスペック高すぎて性格さえ直したら完璧なのに!」
「玉子焼きいらねえんだな」
「すみません冗談です食べさせてください」
取られそうになった玉子焼きをパクッと食べると、ふわふわで塩っぱい卵が口の中で広がってジタバタする。
「んんんーッ!おいしいっ幸せ!うちの母ちゃんのよりうまい!」
「大袈裟」
とか言って類くんなんだかんだ笑ってんの。かわいー。
はあ…。
こんなに幸せでいいのかしら。
昨日の夜から魔法がまだ解けていないみたいで、目の前に座る類くんをじっくり眺めながら味噌汁をすする。
全て食べ終えてご馳走様をして、私洗うよ!と名乗り出てキッチンに立つ。
「食器持ってくね」
類くんの食器もシンクに置いて、スポンジでわしゃわしゃしながら洗ってキッチンを眺める。
キッチン用具が綺麗に並んでて調味料も置いてあって、普段から料理してるんだなーとまた類くんの新たな一面を知れて嬉しく思った。
と、後ろに類くんが近づいてきて。
「あ、今日類くん暇?もしよかったらデートでもする?なんて…」
「うん」
そうよねデートなんてこんな暑い中類くんがするわけ……。
「はッ?!」
「の、前に」
むにゅっとほっぺを摘まれ後ろから覗き込む類くんにキスされる。
放心状態でスポンジを落とした私を抱きしめたまま、ソファまで引っ張っていく類くん。
「ちょっと待って!手!泡ついてんの!」
「いつまでもそんなえろい格好してるあんたが悪い」
「類くんが着させたんでしょーがッ」
そのまま有無をいわさず抱きしめられてしまった。
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