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歓迎お断りッ?
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しおりを挟む気づかないうちに類くんは空いたジョッキを隣のテーブルに置いていて、その数は6杯ほど。
短時間でどんだけ飲んでるんだと私も立ち上がる。
「ちょっと類くん、ふらついてんじゃん。何でこんな一気に飲んでんのよ」
「あ、バカ明子。服にタレが」
向かいに座ってた優斗が手を伸ばして私の服についたシミをタオルで拭いてくれる。
「ごめん、優斗」
「いいから。じっとしてろ」
わざわざ優斗がこっちに来てくれて拭いてもらっていると、類くんはまた私を睨んで外に出て行ってしまう。
それがまた心配させる後ろ姿で、私は優斗に断りをいれた。
「ごめん優斗、なな。私類くん送ってくから!」
「えっ、明子?!」
類くん、ふらふら歩き出すから財布置いてってるし!
私は自分の荷物と類くんの財布を持って外に飛び出す。
駅の方を見ると類くんはゆっくりとそっちに向かっていて、私は追いかけて彼の腕を掴んだ。
「ちょっと類くん!財布!」
「…ん、ああ……」
うわ、目がすわってる…。
素直に私から財布を受け取りズボンのポケットにしまおうとするが、入り切らずにずるりと地面に落としてしまう。
「ちょ、ちょっと類くんっ、酔いすぎ……ッ」
「うっせー、あんたは戻ってろ」
あまりの酔い具合に私は笑えてきて腹を抱えて笑ってやった。
類くんはむちゃくちゃ不服そうな顔をしてて、置いていかれそうになったから慌ててついていく。
電車に乗るのもマンションに着くまでも、ぼうっと歩いているからこっちが気が気じゃなかった。
やっと部屋に着いたと思えばソファになだれ込んで、ぐったりと目を閉じている。
「あ、類くんすぐ寝ちゃダメだってば。もー、お父さんそれでよく二日酔いになってるの見るんだから、類くんも明日頭痛くなっちゃうよ」
そう言っても一向に起き上がる気配がないから水を汲んで持っていってあげた。
顔の前でコップを揺らしても気づいてくれない。
「もー」
仕方なく水が付いたままの手をピッピと彼の顔で払ってやると、さすがに目を覚まして睨まれた。
「あ、ごめん。でも、類くんが全然起きないから…」
そう私が言うと、類くんはおもむろに身体を少しだけ起こして私の髪に手を伸ばした。
そしてそのまま私を引き寄せてキスをする。
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