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はろーまいぷりんす!
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しおりを挟む放課後は大体バイトを入れている。
学校と家の中間の駅にある、焼肉屋さん。
お肉も美味しいしリーズナブルだからいつも割と繁盛してて、私は去年高校に入学した時からずっとバイトしてる。
途中からななもバイトに加わって、社員もバイトも仲がいいしお客さんと話すのも楽しいし、何より賄いを貰えるのも嬉しいところ。
「今日明子何時あがりなの?」
「私は今日は21時までだよー。ななは?」
「私ラストまで」
「稼ぐねぇ」
ロッカーで制服に着替えながらいつも通り準備する。
髪を結んでると、先に着替え終えたななはパタン、とロッカーを閉じた。
「今日はさすがにバイト終わったらすぐ家帰るの?」
「…そりゃ、失恋したてだからね」
「そっか。そうよね」
そう言ってななは先に行くね、と更衣室を出て行く。
私も髪を鏡で確認してロッカーを閉める。
「ま、寄り道して帰るんだけどさ」
本当のところはこのあとすぐに家に帰るわけじゃない。
いわば、失恋した時のルーティンが私にはあったりする。
むしろそれがあるからすぐ次に切り替えられるってもんだったりして。
そう考えながら部屋を出ると、まだ店は準備中なはずなのにホールの方が賑やかだった。
なんだろう、とななの背中を見つけて肩に顔を置く。
「どしたの?皆キャッキャしちゃって」
「明子、あれ。新入りの人だって」
入り口近くに見えたのは、他の人よりも抜きん出てて身長の高い男の人。
後ろ姿だけ見ててもスタイルも良いし髪のセットも決まってるし、異常な存在感を放っている。
「何か、いろいろスペック高そうじゃない?」
「店長曰く、私立◯◯大の2年生でほぼ顔採用で面接でろくに話聞かず決めたらしいわ」
「さすが面食い店長」
その私大と言えば、勉強に疎い私でも知ってる都内じゃ有名な大学。
と、社員に連れられてバイトの私たちに彼が紹介されにこちらに来た。
「彼、一条類くん。大学2年生ね。とりあえずななちゃんがこの中だと歴が長いと思うから今日は教えてあげて」
「え、店長。歴だとななより私の方が」
「いや、めーちゃんは機械壊したりいろいろ適当にやるじゃん」
ははは、と店長は笑って私の肩をパシパシたたいた。
確かに……、この前は新しく導入した簡易レジをバグらせたし、ちょっと厨房の空調弄ったら暖房効きすぎてサウナ状態にしちゃったし、いつもオーダーを私流で通すからちゃんとしてってよく言われるけどさ!
「えっと、私菅原ななっていいます。一条さんはホールなんですか?」
「面接ん時に厨房でって言ったんだけど、ちょっとホールも考えてみてって何か言われて」
多分華があるから厨房じゃなくてホールに回したいんだな、店長。
それにしても私もななも見上げなきゃいけないくらいでっかいなこの人。
顔面も、私はものすごくタイプってわけじゃないけど好きな人は好きそうな切長の目に高い鼻。
肌は白いし髪色も明るめなベージュでお洒落な人にしか似合わない雰囲気がダダ漏れてる。
しばらく見惚れているうちに開店して、そこからはいつも通り忙しく働いてたんだけど、大体新しい人が入ったら何となくいろいろ滞るところが出てくるんだけどそれが一切ないの。
まるでここでもう何年か働いてますよってくらい、溶け込んでるのに目立つからついつい見ちゃう感じ。
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