13 / 15
12
しおりを挟む
ハンバーガーが食べたくなった。気づいたらコンビニで買っていた。中身が薄っぺらいもので出来上がったバーガーは専門店で買うよりも平べったい。口に入れるとバーガーだ。美味しいし、味はよく知っている。
たまにどうしてこんなことをしているのだろうと思うときがある。家出をしてから一切家に帰らなくなって仕事も始めたが、毎日出られるわけではない。そのせいかほとんどホームレスと同じだ。働き始めの頃は髪の毛は公園の水で洗い流して、髭はマスクで隠し。匂いは香水で誤魔化して仕事をする。注意をされても無視をして、金を貰ったら貯金していく。
そんなギリギリな生活をし続けて気づけば半年が経っていた。もうそろそろ賃貸を探してもいいかと思っているが、すっかりこの生活に慣れて楽しんでいる部分もある。最近は髪の毛を洗うようになったし、服も洗濯しているし、金も貯まっていっている。ご飯は必要最低限にして寝ているのは公園のコージードーム内だ。穴は空いているが、外からの光が入ってきて穴からは空が綺麗に見える。狭いけれど、落ち着く。
頭がおかしいやつだと周囲に家を持つ奴らは思うだろうが、こうなりたくてこうなったわけでもない。公園を通るヤツらの視線は明らかに俺らに向けられている。
良くしてくれるいつも厚着をしているおっちゃんに今日はお礼の鍋をプレゼントした。前はキツかった臭いもすっかり慣れて今では当たり前になっている。
「あ、おっちゃん」
「ああ。来たのかい。もう来るなと言っているのに」
「心配だからさ、俺仕事してるし」
「……ありがとうね」
家という名のダンボールに入り、コンロの上に鍋を置いてご飯を作る。慣れたものだ。冷蔵庫がないため、ご飯を我慢する日々を送っていた。そのおかげでお金が溜まってご飯が食べられたときの喜びを味わえる。それが今日だった。三日くらい我慢をして味わうご飯は美味しかった。
「もうここから出ていくんだろ」
すっかり食べ終わったご飯を片付けている最中。お腹をさすっているおっちゃんが物悲しそうに笑った。
「まあ……」
「そうか、元気でな」
「見つかったら招待してやるよ」
「やめとけ」
そういうのも納得できる。おっちゃんの周りにはたくさんのホームレスがいて、おっちゃんだけを招待することで皺寄せが行ってしまう可能性がある。そういう心配をしているのだろう。
「わかったよ、そしたらまあ……」
「頑張ってやれよ。もうここには来んな。美味しかった」
炊き出しもあるし、大丈夫だろうと思う。もうきっとここに戻ることもないのだろう。
きっと部屋はすぐに見つかる。今日限りのコージードームで空を見上げて眠った。
たまにどうしてこんなことをしているのだろうと思うときがある。家出をしてから一切家に帰らなくなって仕事も始めたが、毎日出られるわけではない。そのせいかほとんどホームレスと同じだ。働き始めの頃は髪の毛は公園の水で洗い流して、髭はマスクで隠し。匂いは香水で誤魔化して仕事をする。注意をされても無視をして、金を貰ったら貯金していく。
そんなギリギリな生活をし続けて気づけば半年が経っていた。もうそろそろ賃貸を探してもいいかと思っているが、すっかりこの生活に慣れて楽しんでいる部分もある。最近は髪の毛を洗うようになったし、服も洗濯しているし、金も貯まっていっている。ご飯は必要最低限にして寝ているのは公園のコージードーム内だ。穴は空いているが、外からの光が入ってきて穴からは空が綺麗に見える。狭いけれど、落ち着く。
頭がおかしいやつだと周囲に家を持つ奴らは思うだろうが、こうなりたくてこうなったわけでもない。公園を通るヤツらの視線は明らかに俺らに向けられている。
良くしてくれるいつも厚着をしているおっちゃんに今日はお礼の鍋をプレゼントした。前はキツかった臭いもすっかり慣れて今では当たり前になっている。
「あ、おっちゃん」
「ああ。来たのかい。もう来るなと言っているのに」
「心配だからさ、俺仕事してるし」
「……ありがとうね」
家という名のダンボールに入り、コンロの上に鍋を置いてご飯を作る。慣れたものだ。冷蔵庫がないため、ご飯を我慢する日々を送っていた。そのおかげでお金が溜まってご飯が食べられたときの喜びを味わえる。それが今日だった。三日くらい我慢をして味わうご飯は美味しかった。
「もうここから出ていくんだろ」
すっかり食べ終わったご飯を片付けている最中。お腹をさすっているおっちゃんが物悲しそうに笑った。
「まあ……」
「そうか、元気でな」
「見つかったら招待してやるよ」
「やめとけ」
そういうのも納得できる。おっちゃんの周りにはたくさんのホームレスがいて、おっちゃんだけを招待することで皺寄せが行ってしまう可能性がある。そういう心配をしているのだろう。
「わかったよ、そしたらまあ……」
「頑張ってやれよ。もうここには来んな。美味しかった」
炊き出しもあるし、大丈夫だろうと思う。もうきっとここに戻ることもないのだろう。
きっと部屋はすぐに見つかる。今日限りのコージードームで空を見上げて眠った。
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
就職面接の感ドコロ!?
フルーツパフェ
大衆娯楽
今や十年前とは真逆の、売り手市場の就職活動。
学生達は賃金と休暇を貪欲に追い求め、いつ送られてくるかわからない採用辞退メールに怯えながら、それでも優秀な人材を発掘しようとしていた。
その業務ストレスのせいだろうか。
ある面接官は、女子学生達のリクルートスーツに興奮する性癖を備え、仕事のストレスから面接の現場を愉しむことに決めたのだった。
心がザワつく掌編集
ゆき@万年筆文芸部員
現代文学
心が少しザワつく掌編たちを集めました。
背筋がゾワッとしたり、ゾッとしたり、ヒヤッとしたり
むず痒がったり、歯がゆかったり
心が寒かったり、あったかかったり
そんな掌編たちです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる