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第二章 露呈
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夕方から始まる忘年会。
夕勤明けで休みの俺は昼過ぎに起きた。
果物まで用意される昼食を食べ、少し早めに出ると雪に言った。
プレゼントを探しに行くとは言わなかった。
どうせ要らないと言われてしまうだろうし、こいつが喜ぶものを当ててやろうとも思っていた。
忘年会の店の場所を地図で確認しておき、プレゼントを探して店を探す。
家の近くの小さな文房具屋ではない、広い雑貨屋。
昔から変わらないペンが突き刺さった光景。
機能性とデザインを両立させた最新の文具。
最近はこんなものあるんだなと手に取り眺める。
たどり着いた画材置き場。
棚一面に整列する絵具にめまいを覚える。
初心者が来るところではないことだけはわかる。
必要なものを目的持ってこないとこれは選びようがない。
布用だとか陶芸用だとか、今まで思ってもいなかった新しいものが出てきもした。
とりあえず普通に紙に書くものでセットのものを探そうとそれらしきものを捜し歩く。
ふと、筆コーナーで透明なペンが目に入った。
水筆と書かれたそれのパッケージには『筆洗い不要』の文字。
スマホで現在時刻を確認しつつ使い方を調べる。
普通の筆なら洗って水が濁るが、この水筆なら水を押し出して汚れを拭き取ればいいから色移りがしない。
さらに一緒に使われていた水彩色鉛筆というのを見て、これならすぐに出してしまえるんじゃないかと思った。
床一面を覆う空を描くには向いていないかもしれないが、他のことをしながらでもこれなら。
バケツを用意しないなら水をひっくり返す心配もないし、少し熱中してしまった時に慌てても大惨事にならないだろう。
水に濡らしたところは当然手につきもするだろうが、色鉛筆のように書いただけでは汚れも少ないはず。
「これにするか」
大は小を兼ねるだろうと色数の多いセットを探す。
あいつは青を沢山使っていたから、特定の色を買い足せるほうがいい。
12色、24色、36色、48色、そして60色。
色鉛筆に一万出すというのは自分用では考えられないことだったが、雪の為ならいいだろう。
自然と60色セットを手に取った。
今から帰るわけではないのに、数本の水筆と60色の水彩色鉛筆と少しまともな紙を買った。
水彩画に向いていると書かれていたから多分良いのだろう。
使う人間の好みにもよるかもしれないが、気に入ってくれればいいと少し浮かれた気分になる。
クリスマス柄の包装をしてもらって、それらしくなったプレゼント。
忘年会の時刻を知らせるアラームがポケットの中で鳴った。
夕勤明けで休みの俺は昼過ぎに起きた。
果物まで用意される昼食を食べ、少し早めに出ると雪に言った。
プレゼントを探しに行くとは言わなかった。
どうせ要らないと言われてしまうだろうし、こいつが喜ぶものを当ててやろうとも思っていた。
忘年会の店の場所を地図で確認しておき、プレゼントを探して店を探す。
家の近くの小さな文房具屋ではない、広い雑貨屋。
昔から変わらないペンが突き刺さった光景。
機能性とデザインを両立させた最新の文具。
最近はこんなものあるんだなと手に取り眺める。
たどり着いた画材置き場。
棚一面に整列する絵具にめまいを覚える。
初心者が来るところではないことだけはわかる。
必要なものを目的持ってこないとこれは選びようがない。
布用だとか陶芸用だとか、今まで思ってもいなかった新しいものが出てきもした。
とりあえず普通に紙に書くものでセットのものを探そうとそれらしきものを捜し歩く。
ふと、筆コーナーで透明なペンが目に入った。
水筆と書かれたそれのパッケージには『筆洗い不要』の文字。
スマホで現在時刻を確認しつつ使い方を調べる。
普通の筆なら洗って水が濁るが、この水筆なら水を押し出して汚れを拭き取ればいいから色移りがしない。
さらに一緒に使われていた水彩色鉛筆というのを見て、これならすぐに出してしまえるんじゃないかと思った。
床一面を覆う空を描くには向いていないかもしれないが、他のことをしながらでもこれなら。
バケツを用意しないなら水をひっくり返す心配もないし、少し熱中してしまった時に慌てても大惨事にならないだろう。
水に濡らしたところは当然手につきもするだろうが、色鉛筆のように書いただけでは汚れも少ないはず。
「これにするか」
大は小を兼ねるだろうと色数の多いセットを探す。
あいつは青を沢山使っていたから、特定の色を買い足せるほうがいい。
12色、24色、36色、48色、そして60色。
色鉛筆に一万出すというのは自分用では考えられないことだったが、雪の為ならいいだろう。
自然と60色セットを手に取った。
今から帰るわけではないのに、数本の水筆と60色の水彩色鉛筆と少しまともな紙を買った。
水彩画に向いていると書かれていたから多分良いのだろう。
使う人間の好みにもよるかもしれないが、気に入ってくれればいいと少し浮かれた気分になる。
クリスマス柄の包装をしてもらって、それらしくなったプレゼント。
忘年会の時刻を知らせるアラームがポケットの中で鳴った。
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