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君に捧ぐ、色を注ぐ
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水瀬が坂本と出会い一年以上が経った。年末になればやはり美容師は忙しく、店に行き時間を取ることは出来ない。だから唯一会える坂本の休みである火曜日にだけは、前回のような失敗をしないように残業を避けた。他の日はいい。休日出勤だって構わない。だけども火曜日だけはダメ。
しかし定休日だというのに予定が合わないときも多く、平日に時間を作ることも増えた。それでも忙しい坂本の帰宅時間は不明になっていて、待つこともある。それを了承したうえで水瀬は会いに来ていたが、坂本は頭を下げる。
「俺のためなんだから気にしないで」
色を欲するキャンバスという性質のため。という名目で、水瀬は坂本に会いに来る。坂本にとってのキャンバスが自分だけなのかどうかも知らないが、知らないからこそ、『俺のため』と素直に言えた。
「座って」
21時少し前。帰宅の連絡を受け、コートを羽織り坂本の最寄り駅のファーストフード店を出る。ひゅうっと吹き抜ける風が冷たい。マフラーがあったほうがいい。けれど電車では暑くなるし邪魔になるから持っていない。今度からは持って歩こうか。考えながら水瀬は早歩きで進む。そうして連絡を受けて早々にたどり着いた家に上がり込んだ。
促され、いつものようにリビングのソファに座れば、坂本は強く水瀬を抱きしめた。水瀬はバランスを崩し、左手をソファにぐっと押し付ける。右手で坂本を支えるように、その背中に手を回した。
心臓が鳴る。根元から毛先まで真っ白の髪が耳元に当たりくすぐったい。
横から抱きつかれれば、腰が変な方向へと曲がり痛みがあった。
「ちょっと、」
どうしたらいいものかと軽く押し返せば、坂本はすぐに退いた。
「……悪い。あー、手を」
離れた坂本は、水瀬に手を出すように言う。
「あ、の、嫌なわけじゃないよ? ちょっと体が変な方向に曲がってて痛かっただけで」
もっと抱き着いていたかったのは水瀬の方で、だけれど体を傷めてしまうのはよろしくない。そんなことで来られなくなるのも困りもの。だから少し、調整したかっただけ。突き放したかったわけではない。
「坂本さんに触られるの好きだから、何でも言って。キャンバスの俺に出来ることならするし。あ、いや、キャンバスというか、俺個人としてもできる限りするから」
差し出した右手が大事そうに包まれている。坂本の両手に挟まれ、眩いばかりに白く染まる。色が体にしみこむのが分かる。赤いはずの血液だって今は白くなっているかもしれない。暖められた体温と一緒に、色が体中を巡っていく。
「抱きしめてもいい?」
「うん。それの方が効率良いよね? 寝る時間も大事だから早めに」
「ごめん。急ぐ」
「違う、俺じゃなくて、坂本さんの睡眠時間」
好きな人の体のことを第一に考えたい。心配したい。
そう言えていたら何の齟齬もないが、言えていないのだからしょうがない。一つ一つの訂正をする。
「じゃあ、ベッドに来てっていったらしてくれる? オレそのまま寝るから」
それを、坂本が望むというのなら。
恋愛関係において、発展させたいと願うならば都合のいい人間になるのはよくないことだ。それくらい水瀬には分かっていたが、もとより都合だけで繋がっている関係。どうしようもない。
「しますよ」
色の受け渡しをするペインターとキャンバスだから。これは、好意を持った触れ合いではないのだ。
白い壁紙、焦げ茶色のドア。ベッドに広がる紺色というには明るい青色のシーツと、その横にある小さな棚。
ぽふりと枕に頭を置いて、坂本はその手を広げた。掛布団はめくり上げられ、水瀬が入るように準備されている。
「部屋着貸す? それとも脱ぐ?」
「え、あ、ええと、」
坂本は毎度、平日に水瀬を呼ぶ際には部屋着に着替えている。対して水瀬は仕事帰りでスーツのまま。汚されるのが嫌なんだろうと考え、ジャケットを、靴下を脱いでいく。
「全部脱いで」
脱いだものを軽く畳み床に置いて、躊躇い、言葉に従った。
直接触れる面積が多いほうが効率がいい。そのことは知っている。調べたから分かっている。そう考えれば、納得がいった。同時に、坂本は男の自分に興味の欠片もないのだろうとも。
身に着けるのは下着一枚。そっとベッドに膝を乗せ、猫のように進んでいく。坂本は腕を横に伸ばしたままで、水瀬はためらい、その腕の下に縮まった。
「そこは普通に腕枕でしょ」
笑われ、ずりずりと位置をずらす。
腕枕なんてされたことがない。したこともない。
「ああ待って、オレも脱ぐわ」
水瀬の頭を支えどかすと、坂本は上半身を起こしシャツを脱いだ。そして再び水瀬の頭を支え、首元に腕を備え付ける。さらに腕の上から抑えるようにして、水瀬を抱きかかえた。
かけられた布団。張り付く背中。体はすぐに熱を持つ。
「これってセクハラ?」
「いえ……」
強い薬剤を使うことがあるからだろう。坂本の仕事柄少し荒れた指が、水瀬を撫でる。二の腕を撫で、縮こまった水瀬の手に重なり、指が絡む。
ドクドクと鳴る心臓が、そのまま背中越しに伝わってしまう気がする。水瀬は自らを落ち着けるように静かに息を吐いた。
「ペインターのことをキャンバスは拒絶できないでしょ」
「そんなことは、ないと思う」
「じゃあ水瀬さんとしては? 水瀬さん個人としては、拒絶しないの」
ぐいぐいと足の間に坂本の足が侵入してくる。背中も腰も押し当てられて、絡んだ指先ごと強く抱きしめられた。
「俺は全然、嫌じゃ」
「染めたい。いい?」
後ろからかぶせられた声は熱を持っている。腹を指先で引っかかれ、水瀬はぶるりと震えた。
不安が突然こみ上がってくる。
もし拒絶したらどうなるんだろう。坂本はきっと新しいキャンバスを見つけることもできるだろうから、その心配はいらない。けれど自分はどうか。拒絶したい気持ちはないが、受け入れたとして坂本はどういう気持ちで染色したいと思っているのだろうか。恋人関係でもない自分たちがペインターとキャンバスとして、体調安定剤として契約を結ぶのは分からなくもないけれど、坂本がどこかの恋人を愛おしいと思う気持ちすら伝わってきてしまうのでは。楽しい気分の共有はポジティブに思えるが、自分ではない他人へと向けられる好意に苦しみはしないのか。でも拒絶したらこの関係は終わりになってしまうだろう。もう要らないと言われてしまったら――。ただのキャンバスとして近い存在でいられたらいいと思っていたけれど、それは叶わないのか。
離れたところで"セット"が消えるわけでもなく、白髪は残り続ける。今まで通りに戻るけれど、戻るだけではなく、失ったという事実も付きまとう。もう関わりあえないセットのことを、白髪を見るたびに思うのか。運よく坂本以外のペインターを発見できたとしても、その色は白の上に乗るばかりじゃないのか。結局、ずっと思い続けるんじゃないのか。
「……さ、坂本さんが好きで」
ぐるぐる回る考えの中、言葉が口をついて出た。
「好きだから、触られるのも嫌じゃなくて……俺は男だけど、多分そういう風に、好きで――だから、坂本さんがペインターとして余分な色を捨てるようにただ移したいって思っていても、期待してしまって」
全身が温かい。いつものように、柔らかな安心に包まれる。こんなことを話していたら胃が痛んでもおかしくないのに、落ち着いている。こわばっていた肩から力が抜けて、段々とスムーズに話せるようになってきた。
「同性を好きになったのは、坂本さんが初めてなんです。ペインターだから? かもしれないし、そうじゃないかもわからない。ただ坂本さんに出来ることはしてあげたいと思ってて……ステイニングでなくたって、俺は坂本さんの色を受け止めたいと思ってます。溢れ出すほど苦しいなら、全部」
目の前に坂本の顔がなくて良かったと、水瀬はただシーツを見つめる。
抱きしめられる力はすっかり弱まっていた。
「自己犠牲の精神?」
後ろの声は、ぐい、と水瀬を仰向けに転がした。
「過剰な色をぶち込むのが染色だと思ってる? 違う、それ。ぶち込むだけならいくらでもできる」
そう言うなり、一瞬で水瀬の視界は白く染まる。どこから色を注がれたのかもわからなかった。体の奥底で色が波打っている。今横になっていなければ、倒れていたかもしれない。前後左右が分からなくなる。体の隅々まで白く染まっていく。世界がすごい勢いで走っていくような感覚。
「あ、あ」
自分こそがペインターなのではないかと錯覚してしまう。それほどの色が満ちている。そしてこれが渡されたというのなら、これ以上のものを坂本は持っているということだ。
「溺れる」
はぁはぁと呼吸が浅くなる。浅くなるのだからできているのに、息が詰まる。喉が詰まる。
水瀬はどうにか体内に波打つ色を鎮めようとした。今まで何もないと思っていた空っぽの空間にあげたらいい。透明を悲しむ魂にそれをあげたら、自分の形もはっきりする。いつも注がれている時はそうだ。今はそれが多いだけ。何十年も透明であることを憂いてきたんだ。このくらい取り込めるだろう。
「すごいなほんと。受け止められるんだもんな」
白い世界の向こうに人がいる。彼は笑っている。意識して何度も瞬きをし、手を伸ばす。笑う現実の顔に触れた。
「水瀬さん一年もこうやってて全然気づかないし、なびいてくれないからさ、既成事実作ろうとしたの。オレも男好きになったことないから、ペインターとしてってのはあると思う。女男って性別以上にそっちのが大事なんだろ。それじゃダメかな。本能に支配されてるオレじゃダメ?」
「ダメ……? じゃない」
「いいじゃんセットだからでも。愛し合うことが決まってましたでもいいじゃん。ペインターだからキャンバスだからでもいいじゃん。ダメ?」
「ダメじゃない」
「じゃあ、染色させて。オレの半分だけじゃなくて、全部受け止めて」
キャンバスだから知りあえた。キャンバスだから一緒にいられた。キャンバスだから必要とされた。
空っぽに、色を注ぐ。
しかし定休日だというのに予定が合わないときも多く、平日に時間を作ることも増えた。それでも忙しい坂本の帰宅時間は不明になっていて、待つこともある。それを了承したうえで水瀬は会いに来ていたが、坂本は頭を下げる。
「俺のためなんだから気にしないで」
色を欲するキャンバスという性質のため。という名目で、水瀬は坂本に会いに来る。坂本にとってのキャンバスが自分だけなのかどうかも知らないが、知らないからこそ、『俺のため』と素直に言えた。
「座って」
21時少し前。帰宅の連絡を受け、コートを羽織り坂本の最寄り駅のファーストフード店を出る。ひゅうっと吹き抜ける風が冷たい。マフラーがあったほうがいい。けれど電車では暑くなるし邪魔になるから持っていない。今度からは持って歩こうか。考えながら水瀬は早歩きで進む。そうして連絡を受けて早々にたどり着いた家に上がり込んだ。
促され、いつものようにリビングのソファに座れば、坂本は強く水瀬を抱きしめた。水瀬はバランスを崩し、左手をソファにぐっと押し付ける。右手で坂本を支えるように、その背中に手を回した。
心臓が鳴る。根元から毛先まで真っ白の髪が耳元に当たりくすぐったい。
横から抱きつかれれば、腰が変な方向へと曲がり痛みがあった。
「ちょっと、」
どうしたらいいものかと軽く押し返せば、坂本はすぐに退いた。
「……悪い。あー、手を」
離れた坂本は、水瀬に手を出すように言う。
「あ、の、嫌なわけじゃないよ? ちょっと体が変な方向に曲がってて痛かっただけで」
もっと抱き着いていたかったのは水瀬の方で、だけれど体を傷めてしまうのはよろしくない。そんなことで来られなくなるのも困りもの。だから少し、調整したかっただけ。突き放したかったわけではない。
「坂本さんに触られるの好きだから、何でも言って。キャンバスの俺に出来ることならするし。あ、いや、キャンバスというか、俺個人としてもできる限りするから」
差し出した右手が大事そうに包まれている。坂本の両手に挟まれ、眩いばかりに白く染まる。色が体にしみこむのが分かる。赤いはずの血液だって今は白くなっているかもしれない。暖められた体温と一緒に、色が体中を巡っていく。
「抱きしめてもいい?」
「うん。それの方が効率良いよね? 寝る時間も大事だから早めに」
「ごめん。急ぐ」
「違う、俺じゃなくて、坂本さんの睡眠時間」
好きな人の体のことを第一に考えたい。心配したい。
そう言えていたら何の齟齬もないが、言えていないのだからしょうがない。一つ一つの訂正をする。
「じゃあ、ベッドに来てっていったらしてくれる? オレそのまま寝るから」
それを、坂本が望むというのなら。
恋愛関係において、発展させたいと願うならば都合のいい人間になるのはよくないことだ。それくらい水瀬には分かっていたが、もとより都合だけで繋がっている関係。どうしようもない。
「しますよ」
色の受け渡しをするペインターとキャンバスだから。これは、好意を持った触れ合いではないのだ。
白い壁紙、焦げ茶色のドア。ベッドに広がる紺色というには明るい青色のシーツと、その横にある小さな棚。
ぽふりと枕に頭を置いて、坂本はその手を広げた。掛布団はめくり上げられ、水瀬が入るように準備されている。
「部屋着貸す? それとも脱ぐ?」
「え、あ、ええと、」
坂本は毎度、平日に水瀬を呼ぶ際には部屋着に着替えている。対して水瀬は仕事帰りでスーツのまま。汚されるのが嫌なんだろうと考え、ジャケットを、靴下を脱いでいく。
「全部脱いで」
脱いだものを軽く畳み床に置いて、躊躇い、言葉に従った。
直接触れる面積が多いほうが効率がいい。そのことは知っている。調べたから分かっている。そう考えれば、納得がいった。同時に、坂本は男の自分に興味の欠片もないのだろうとも。
身に着けるのは下着一枚。そっとベッドに膝を乗せ、猫のように進んでいく。坂本は腕を横に伸ばしたままで、水瀬はためらい、その腕の下に縮まった。
「そこは普通に腕枕でしょ」
笑われ、ずりずりと位置をずらす。
腕枕なんてされたことがない。したこともない。
「ああ待って、オレも脱ぐわ」
水瀬の頭を支えどかすと、坂本は上半身を起こしシャツを脱いだ。そして再び水瀬の頭を支え、首元に腕を備え付ける。さらに腕の上から抑えるようにして、水瀬を抱きかかえた。
かけられた布団。張り付く背中。体はすぐに熱を持つ。
「これってセクハラ?」
「いえ……」
強い薬剤を使うことがあるからだろう。坂本の仕事柄少し荒れた指が、水瀬を撫でる。二の腕を撫で、縮こまった水瀬の手に重なり、指が絡む。
ドクドクと鳴る心臓が、そのまま背中越しに伝わってしまう気がする。水瀬は自らを落ち着けるように静かに息を吐いた。
「ペインターのことをキャンバスは拒絶できないでしょ」
「そんなことは、ないと思う」
「じゃあ水瀬さんとしては? 水瀬さん個人としては、拒絶しないの」
ぐいぐいと足の間に坂本の足が侵入してくる。背中も腰も押し当てられて、絡んだ指先ごと強く抱きしめられた。
「俺は全然、嫌じゃ」
「染めたい。いい?」
後ろからかぶせられた声は熱を持っている。腹を指先で引っかかれ、水瀬はぶるりと震えた。
不安が突然こみ上がってくる。
もし拒絶したらどうなるんだろう。坂本はきっと新しいキャンバスを見つけることもできるだろうから、その心配はいらない。けれど自分はどうか。拒絶したい気持ちはないが、受け入れたとして坂本はどういう気持ちで染色したいと思っているのだろうか。恋人関係でもない自分たちがペインターとキャンバスとして、体調安定剤として契約を結ぶのは分からなくもないけれど、坂本がどこかの恋人を愛おしいと思う気持ちすら伝わってきてしまうのでは。楽しい気分の共有はポジティブに思えるが、自分ではない他人へと向けられる好意に苦しみはしないのか。でも拒絶したらこの関係は終わりになってしまうだろう。もう要らないと言われてしまったら――。ただのキャンバスとして近い存在でいられたらいいと思っていたけれど、それは叶わないのか。
離れたところで"セット"が消えるわけでもなく、白髪は残り続ける。今まで通りに戻るけれど、戻るだけではなく、失ったという事実も付きまとう。もう関わりあえないセットのことを、白髪を見るたびに思うのか。運よく坂本以外のペインターを発見できたとしても、その色は白の上に乗るばかりじゃないのか。結局、ずっと思い続けるんじゃないのか。
「……さ、坂本さんが好きで」
ぐるぐる回る考えの中、言葉が口をついて出た。
「好きだから、触られるのも嫌じゃなくて……俺は男だけど、多分そういう風に、好きで――だから、坂本さんがペインターとして余分な色を捨てるようにただ移したいって思っていても、期待してしまって」
全身が温かい。いつものように、柔らかな安心に包まれる。こんなことを話していたら胃が痛んでもおかしくないのに、落ち着いている。こわばっていた肩から力が抜けて、段々とスムーズに話せるようになってきた。
「同性を好きになったのは、坂本さんが初めてなんです。ペインターだから? かもしれないし、そうじゃないかもわからない。ただ坂本さんに出来ることはしてあげたいと思ってて……ステイニングでなくたって、俺は坂本さんの色を受け止めたいと思ってます。溢れ出すほど苦しいなら、全部」
目の前に坂本の顔がなくて良かったと、水瀬はただシーツを見つめる。
抱きしめられる力はすっかり弱まっていた。
「自己犠牲の精神?」
後ろの声は、ぐい、と水瀬を仰向けに転がした。
「過剰な色をぶち込むのが染色だと思ってる? 違う、それ。ぶち込むだけならいくらでもできる」
そう言うなり、一瞬で水瀬の視界は白く染まる。どこから色を注がれたのかもわからなかった。体の奥底で色が波打っている。今横になっていなければ、倒れていたかもしれない。前後左右が分からなくなる。体の隅々まで白く染まっていく。世界がすごい勢いで走っていくような感覚。
「あ、あ」
自分こそがペインターなのではないかと錯覚してしまう。それほどの色が満ちている。そしてこれが渡されたというのなら、これ以上のものを坂本は持っているということだ。
「溺れる」
はぁはぁと呼吸が浅くなる。浅くなるのだからできているのに、息が詰まる。喉が詰まる。
水瀬はどうにか体内に波打つ色を鎮めようとした。今まで何もないと思っていた空っぽの空間にあげたらいい。透明を悲しむ魂にそれをあげたら、自分の形もはっきりする。いつも注がれている時はそうだ。今はそれが多いだけ。何十年も透明であることを憂いてきたんだ。このくらい取り込めるだろう。
「すごいなほんと。受け止められるんだもんな」
白い世界の向こうに人がいる。彼は笑っている。意識して何度も瞬きをし、手を伸ばす。笑う現実の顔に触れた。
「水瀬さん一年もこうやってて全然気づかないし、なびいてくれないからさ、既成事実作ろうとしたの。オレも男好きになったことないから、ペインターとしてってのはあると思う。女男って性別以上にそっちのが大事なんだろ。それじゃダメかな。本能に支配されてるオレじゃダメ?」
「ダメ……? じゃない」
「いいじゃんセットだからでも。愛し合うことが決まってましたでもいいじゃん。ペインターだからキャンバスだからでもいいじゃん。ダメ?」
「ダメじゃない」
「じゃあ、染色させて。オレの半分だけじゃなくて、全部受け止めて」
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空っぽに、色を注ぐ。
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