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第6章…性欲処理
22.謎の妹、南場星羅
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南場流星は悩んでいた。
最恐で最強の不良の姿は影も形もない。思春期男子として、普通の男の子としての恋の悩みだった。
本気で人を好きになったのは生まれて初めてで、どうしたらいいかわからず悩み苦しむ。
流星は結衣が好きすぎて困っている。完全に中毒症状だ。恋の病というものがこんなにも恐ろしい病気だとは思わなかった。
冗談抜きで結衣のことしか考えられない。いついかなる時でも流星の脳内は100%結衣で埋め尽くされている。
他の女……真里奈とセックスしているときですら結衣のことしか頭になかった。自分が壊れているとハッキリ自覚した瞬間だった。結衣依存症は極めて深刻だ。
結衣依存症になって一番困ること。それは年中発情することだ。結衣のことを思うと興奮してなかなか眠れない。おかげで寝不足だ。
結衣に抱きついて匂いを嗅いで性器を擦りつけたくなる衝動に駆られることもよくある。いくら思春期でも異常すぎるキモすぎる。
こんな状態なのに結衣が惚れてくれるまで手を出さないと約束してしまった。ハッキリ言って流星は激しく後悔している。今ですらこんな蛇の生殺し状態なのに、こんなんで結衣が流星を受け入れてくれるまで待てるのか。
持つわけがない。我慢できるわけがない。絶対無理だと断言できる。
結衣はガードが堅い。1ヶ月後提央祭優勝して結衣を彼女にすることができるとして…結衣が股を開いてくれるようになるまで最低でも3ヶ月くらい? 下手すりゃ1年以上……!?
無理だ。絶対に無理だ。流星の性欲の強さと理性の弱さを侮ってはいけない。このままでは確実にレイプしてしまう。
レイプしないように溜まっていく欲をなんとかしないといけない。現状は結衣の代わりに他の女に性欲処理してもらうしかない。
しかし今は朝。起きたばっかりの時間。他の女に相手してもらうにしても、今すぐというわけにはいかなかった。
案の定朝勃ちしている股間を見てため息をつき、今は欲の発散を我慢する選択肢はない。
仕方なくマスターベーションで済まそうと思い、流星はズボンとパンツを脱ぎ下半身を露出させる。
―――その瞬間だった。
―――ガラッ
「お兄ちゃ~ん……」
「!!!!!!」
ドアを開けて眠そうな声を出して部屋に入ってくる女の子。パジャマを着てて起きたばかりの様子だった。流星は慌てて光の速さでズボンを履いた。
マスターベーションしようとしていたところを見られてないだろうか。流星は冷や汗ダラダラだった。
内心焦りまくる流星をよそに女の子は眠そうな顔をしたまま表情を変えることはない。
彼女は南場流星の妹、南場星羅。
提央中学に通う中学3年生。
流星とは逆の目、右目を隠した前髪。胸のあたりまである長めの髪をヘアゴムでおさげにした髪型。
胸はまあ、結衣や真里奈よりは明らかに小さい並のサイズ。
基本的に無表情で瞳にも生気をあまり感じず、おとなしそうなクール系といった印象だ。
「せっ、星羅!? 部屋に入るときはノックくらいしろっていつも言ってるだろうが!!」
「……? 何してんの?」
履いたズボンを持ち上げすぎて尻に食い込んでるなんともみっともない姿を晒す流星。そんな流星を見てもリアクションはかなり薄く、どうでもよさそうな反応をしていた。
マスターベーションしようとしてたことはバレてなさそうでとりあえず流星はホッとした。
「ママが朝ごはんできたって言ってるから呼びに来たんだけど……」
「……あー、へいへい……」
真顔で用件だけを言う星羅に流星はわざとさしくため息をついた。
流星は星羅と一緒におとなしくリビングに向かう。
タイミングが最悪で流星は苛立ちを隠せない。マスターベーションをしようとしていた時に邪魔が入り流星の機嫌は最低最悪だった。
今の流星は食欲より性欲がはるかに強い。だからと言って妹に性欲処理してもらうわけにもいかない。
そのときスマホが鳴る。流星はスマホの画面を見る。LINEの通知だった。
なんと真里奈からメッセージが来ていた。
『今日ヒマ? もしよかったら会わない?』
真里奈からの誘いだった。流星は心の中でガッツポーズを決める。今ちょうど欲が溜まっててムラムラしているところだったからタイミングバッチリだった。
真里奈なら相手してくれるはずだと思い流星のテンションは急上昇だ。
よく見たら場所は学校だと書いてあってテンションがやや下がる。今日は休日なのになぜ学校なのか、少し怪訝に思った。
「…………」
コソコソとスマホを見る流星を星羅はジーッと見ていた。その瞳はいつもよりも冷たい光を放っているように見えた。
―――
「ごめ~ん流星君! 私のお仕事手伝ってくれないかな?」
「…………」
休日、どんよりと曇った空。学校の生徒指導室で真里奈は両手を合わせて流星にお願いする。
その言葉は流星のテンションをガタ落ちさせた。
「せっかくの休日に学校に呼び出しやがって何事かと思ったらパシリかよ……」
「ごめんね~。ちょっと仕事が増えちゃって」
「……まあ別にいいけどよ。おっと勘違いすんなよ、オレは真里奈の頼みだから協力するんだぞ。このオレをパシるなんざ他の教師だったらぶん殴ってるぜ」
「ありがとう流星君! 頼りになるなぁ~」
満面の笑顔を見せた真里奈。そんな真里奈を見て流星はわざとらしく大きなため息をつく。
露骨にイヤそうな顔をする流星に真里奈はそっと耳打ちした。
「もちろん仕事が終わったらご褒美あげるからね」
「!」
ご褒美という言葉に流星はピクッと反応した。
「おっしゃやる気出てきた。ちゃっちゃとやろうぜ」
「頑張ろうね!」
ご褒美に釣られてあっさりとやる気を出す流星はすごく単純だ。
「で? 何をすればいいんだ?」
「しおりを作るの!」
「しおり? 何のだ?」
「宿泊研修のしおり」
「宿泊研修……? んなもんあったっけ?」
流星は首を傾げる。真里奈は驚きの表情を見せる。
「え!? 1年生はみんな宿泊研修に行くことになってるんだよ!? 流星君も1年生の時行ったでしょ!?」
「知らねぇ、忘れた。たぶんサボった」
「えぇ……!?」
真里奈は呆れた顔をした。不良の流星は学校行事にまともに参加することなどほとんどなかった。
「……ん? ちょっと待て。1年生はみんな行くだと?」
「うん」
流星はハッとして目を見開いた。
「まさか結衣も宿泊研修に行くのか!?」
「え? そりゃ行くでしょ。遊びじゃないんだよ立派な授業! 1年生は参加する義務があるんだよ。例外はないよ」
声を荒げる流星に至って冷静に対応する真里奈。
「じゃあオレも宿泊研修に行く!!」
「いやダメだよ。話聞いてた? 行くのは1年生! 流星君は3年生でしょ? だからダメ!」
今度は真里奈がため息をついた。流星が突然ワガママ言い出すのはもう慣れている。冷静にバッサリと切り捨てた。
「なんでだよふざけんじゃねーよ!! 結衣と離れ離れになるなんてイヤだああああああ!!!!!!」
流星は頭を抱えてギャーギャー叫ぶ。思い通りにならないことがあると騒ぎ出すのもいつものことで慣れっこだ。
「離れ離れって……大げさだなぁ。1泊2日だよ? すぐ帰ってくるよ?」
「……宿泊研修っていつ行くんだ?」
「来週の水曜日」
「っ……どこに行くんだ?」
「色浜市にあるセミナーハウス。すぐ近くに海があるとこ」
「―――ッ!!!!!!」
海と聞いて流星は衝撃を受けた。
流星の脳裏に浮かぶのは、水着姿の結衣。想像するだけで鼻血が出てきた。
「行く!! オレも絶対に行くぞ!! 死んでも行く!!」
鼻血を出しながら凄まじい勢いで食い下がる流星に少し引く真里奈。
「……うん……あのね……エッチな想像してるトコ悪いんだけど……海っていっても水着とかはないからね?」
「は!?」
「いやだって4月だよ? 海水浴のシーズンにはまだ早いでしょ?」
「海に行くのに水着なしとかナメてんのか!? 無能にも程がある!!」
流星は鼻血を出しながら憤慨する。彼にとって水着がない海など麺がないラーメンみたいなものだ。
「まあまあ……水着は夏になってからのお楽しみということにしようよ」
激昂する流星を真里奈は優しくなだめる。
「ホラいいからしおりを作る作業をお願いします」
「チッ……いくつ作るんだ?」
「300くらい?」
「300!?」
「1年生300人くらいいるからさ」
こうして真里奈と2人きりでしおりを作る作業を始めた。
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