キスとパンチの流星群

湯島二雨

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第4章…新米女教師

15.慰めてあげようかと思って

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 人気のない廊下で会った流星と真里奈。

「……真里奈……」

流星は真顔のまま真里奈の名を呼ぶ。生徒と教師が、お互いに下の名前で呼び合った。
流星の後ろからそれを見た菅原は少し不審に思った。


国語教師、白崎真里奈。
菅原は彼女の授業を受けたことはないので詳しくは知らないが、教師歴1年の新米ながら非常に優秀で保護者や生徒からの評判はかなり良いということは彼も知っていた。

菅原が持つ提央町住民のデータを見ても、彼女に悪いウワサとかは一切なく、この町では珍しい真面目でまっとうに生きている人だ。


しかしそんな彼女が、最悪の不良な流星と何やら親しそうに見える。普通の教師と生徒みたいな感じではない。
担任でもないし、担当学年も違う。普通ならほとんど関わることがないはずなのになぜなのか。菅原は怪しんだ。


「……おい菅原」

「はい?」

静かに菅原を呼ぶ流星。その声にはやや重い空気が乗っていた。

「お前邪魔だから失せろ」

「え? あ……はい」

特に逆らう理由も思い当たらない菅原は素直に応じる。
大人しく帰る菅原だったが、何か他人に知られたくないことでもあるのかと思いますます怪しんだ。



 流星と真里奈の2人きりになった廊下。
真里奈はニコニコしているが、流星は相変わらず真顔だった。

「で? なんか用か?」

ぶっきらぼうな態度で言う流星だが、真里奈は笑顔を崩さない。

「まあまあ。廊下じゃなんだし、どこか教室に入ろっか」


近くにあった家庭科室。夕日に照らされるだけの誰もいない静かな空間。そこに2人は入った。ドアを閉めて、鍵も閉める。


「……やっと2人きりになれたね流星君」

「ああ……そうだな」

心なしか嬉しそうな真里奈と、背を向けて頭をボリボリ掻く流星。

「……で、一体何の用……
―――!」

流星が振り返り、後ろの真里奈に目をやると、真顔だった顔が少し崩れる。


「何の用って……イジワルだなぁ。そんなの言うまでもないでしょ?」


真里奈は服を脱いでいた。
上着を脱ぎ、いつの間にかブラウスのボタンも全部外れてて、赤いブラジャーが露になっている。上半身下着姿の真里奈に夕日が照らされ、いつもよりもさらに色っぽく見えた。
真面目にしか見えなかったビシッとしたスーツの中身は、甘美なエロスで満ち溢れていた。

流星は一瞬だけ動揺の色を見せたが、すぐに落ち着きを取り戻し、ハッとバカにしたような笑みを浮かべた。

「おいおいいきなり脱ぐのかよ? 真っ赤なブラなんか着けやがってどうした。発情期か?」

真里奈は伏し目がちにクスッと微笑する。

「……まあそれもあるけど……流星君のためだよ」

「は?」

「今回の提央祭優勝できなかったって聞いてさ。だから……この私が慰めてあげようかなって思って」


流星にグイッと顔を近づける真里奈。少し胸も寄せて、谷間が強調させる。でかい胸がさらに大きく見える。
女の子の乳に弱い流星はさすがに平静を保てなくなってきて顔を赤くし目を逸らした。

「チッ……余計なお世話だ」

今月の提央祭のことは流星には禁句。人生最大の黒歴史を掘り返された流星は機嫌を悪くする。だが極上の乳を目の当たりにして怒るに怒れなくて悔しい気持ちになった。



 南場流星と白崎真里奈の関係。至ってシンプルでオトコとオンナの関係だった。

長い間王に君臨し続けた流星は『可愛い・若い・胸がでかい』の3つの条件をクリアしている女を片っ端から抱きまくってきた。
ヤリチンを極めた流星には大量のセフレがいる。真里奈もその中の1人、それだけのことだ。


その数多くいるセフレの中でも真里奈は一番のお気に入りで、いつもなら即しゃぶりついているところだったが、今は躊躇する。

流星は今、頭の中が結衣でいっぱいになっている。今は結衣のことしか考えられないのに真里奈と行為を行うのはさすがにデリカシー皆無の流星でも申し訳ないと思った。


「ちょ……ちょっと待てよ。オレは今は王じゃねーんだぞ? だから今は……お前はオレにシッポを振る必要なんざどこにもねーだろ」

「何言ってるの? わかってないなぁ……流星君が王だから仕方なくやってるとでも思ってるの?」

流星は止めようとするが真里奈が止まらない。もう完全にスイッチが入っていた。


「私は流星君のことが好きなの。1年前……流星君に抱かれたときからずっと―――……」

「ッ!?」


流星の鍛えられた身体をギュッと優しく包み込むように抱きしめる真里奈。
大きな乳房がむにゅっと押しつけられる。ブラジャー越しでも柔らかさがハッキリと伝わってきて、ドスケベな流星には効果抜群だった。


「ま、待て! ちょっと待て真里奈……!!」

「大丈夫……わかってる。流星君は遊びのつもりだったんだよね? 何しても許されるしなんでも命令できる立場になったんだからそりゃ女の子に手を出しちゃうよね。男の子だもんね、仕方ないよね……」

流星の首筋に顔を埋め、搾り出すような小さな声で囁く真里奈。とてもいい匂いがして男の理性をドロドロに溶かしていく。

「わかってる……わかってるんだよ? 流星君は私のカラダにしか興味ないってことも……先生が生徒を好きになっちゃいけないってことも……
でも……それでも、好きになっちゃったんだから仕方ないでしょ……?」

「っ……離せ、真里奈」

これ以上密着されたらヤバイと思った流星は、慌てて真里奈の肩を掴み引き剥がす。真剣に、真里奈の瞳をまっすぐ見た。


「いいか真里奈。王ってのはワガママで、自分勝手で、傲慢な生き物なんだよ。お前の都合なんて一切無視することを言うが許してくれ」

真里奈も、真剣に流星をまっすぐ見つめた。


「オレは好きな女の子ができたんだ。だからお前とはもうヤらない。女遊びはもうやめるつもりだ!」

「…………」


流星は今まで何人もの女の子と関係を築き、積み上げてきた。しかし心の底から好きな女の子ができた。カラダ目当てとか遊びとかでは決してない、純粋な恋の気持ち。本気の本気で結衣を好きになった。

流星が欲しいのは結衣だけになった。せっかく築き上げてきた都合のいい女たちを捨ててでも結衣が欲しいと強く決心した。

真里奈は用済み。過去の女。一番のお気に入りとか関係なくあっさりと切り捨てるつもりだ。流星は真里奈と1年も関係を続けてきたが女として意識したことは一度もなかった。彼女に求めたのは快楽だけ。
本命の結衣ができた以上、快楽だけの遊び相手など不要。


別れ話を聞いても真里奈は動じなかった。彼女は好きな人に想い人ができた程度で身を引くような女ではないからだ。引くどころかむしろ攻める。


「……ふーん……好きな女の子ができたんだ……」

不敵な笑みを浮かべる真里奈。引き剥がされようが関係ない。何度でも抱きつく。


「私はもういらないってこと?」

「……ああ」

「私とはもうエッチしてくれないの?」

「……ああ」

「……でもさあ……」


真里奈の視線がチラッと下に向かう。流星の下半身に。


「ヤらないとか言ってるわりには……大事なところがすごく元気になっちゃってるよ?」

「!?」
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