キスとパンチの流星群

湯島二雨

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第1章…提央祭

3.一目惚れしたんだ

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 「南場さんがちょっと本気を出せばあっという間に参加者は壊滅……強すぎて盛り上がりに欠けてしまいますが提央祭は真剣勝負だから仕方ないですね……」

菅原は残念そうに話す。

菅原が何者なのかわかっていない結衣は彼を警戒した。無意識のうちに流星の後ろに隠れる。
流星だって胡散臭い人なのになぜ流星を頼るような行動をしてしまったのか。結衣は自分でもわかっていない。動揺して冷静に行動できない。

一方流星は、結衣が自分を頼るような行動をしたことをものすごく嬉しく思っているが、菅原が邪魔だと思い顔をしかめた。


「おい菅原……お前邪魔だからどっか行けよ」

「え!? いきなり何言い出すんですかひどい! ダメですよ私は提央祭の運営なんですからここから離れるわけにはいきません!」

オーバーな反応をする菅原に流星は余計イラついた。

「どうせオレが優勝なんだから運営なんかいらねーよ」

「そうはいきませんってば! まだ提央祭は終わってません!」


提央祭は最後の1人になるまで戦うルールだが、制限時間がある。
制限時間は1時間。1時間経った時点で生き残った1人が優勝というルール。1時間経っても2人以上残っていた場合は、1人になるまで延長戦。
参加時間は制限時間内であればいつでもいい。残り5分で参加して疲弊した参加者を倒し優勝をかっさらうというのもアリなのだ。終了時刻に生き残ってさえいればなんでもアリなのがこの祭りのルールである。

現在まだ提央祭は終わってない。流星はこの公園にいる者たちを結衣以外全員倒したが、まだ彼の優勝が決まったわけではない。
これから参加するのも認められるし、途中で通りがかっただけの結衣もこの場にいるだけで参加者扱いで優勝する資格を持っているのだ。

もっとも、結衣は流星がこれから口説き落として自分のものにする予定だし、結衣本人も参加してるつもりも優勝する気もないから結衣が優勝する可能性はゼロと言っていい。今回も流星の優勝は確実だ。

流星は苛立ちを隠せない。結衣と2人きりになりたいのに菅原が邪魔すぎる。


「うっせえなぁ……菅原お前空気読めよ。オレは今から彼女とイチャイチャするんだよ。お前は邪魔だから消えろ」

流星は結衣の肩を抱きながら菅原に向かってシッシッと言った。
肩を抱かれグイッと引き寄せられた結衣は、心臓を激しく揺らし頬を真っ赤に染める。

「えっ……え!? や……! ちょ……!」

流星と身体が密着しドキドキも動揺も何倍にもなった。離れようとしても強い力で肩を持たれ動けない。
カップルみたいな状態を見せつけられた菅原は苦笑いした。


「困りますよ南場さん……提央祭はまだあと3分あります。それまでに新たな参加者が来る可能性もあるんですよ? あとたった3分なんですからイチャイチャするのはちゃんと提央祭が終了してからにしてくれませんか?」

「うるせぇ、3分くらいいいだろうが」

「ダメですよルールなんですから」


流星は敵を殺すような鋭い視線で菅原を睨み付けるが、菅原も譲らない。歴史も伝統もある提央祭。会長としてルールを乱すわけにはいかない。
流星はわざとらしく長いため息をついた。

あと3分だからなんだというのだ。たかが3分くらいで流星を倒せる者が現れるとは思えない。流星の優勝は決まり。50連覇はほぼ確定。

3分待つなど時間の無駄すぎる。流星は1秒でも早く、この巨乳のカワイコちゃんに食いつきたい。この最高で極上の女の子が目の前にいて3分もお預けされるとか、流星にとっては絶対にありえない。

流星は我慢が大嫌いだし我慢したこともない。3分我慢なんて流星にとっては3年我慢するようなものだ。
それくらい結衣が欲しくて欲しくてたまらない。今すぐにでも、このでかい乳を鷲掴みにしてヤリ尽くしたい。とにかく欲望が漏れる寸前だった。


「お前も頭悪ぃな菅原。オレが大人しくお願いしてるうちに消えろ。3秒以内に消えろ。さもなくば殺す。3、2、1……」

「待って待って待ってください!!」

菅原に対して死のカウントダウンを始めた流星を結衣が制止した。


「なんで!? なんで私があなたとイチャイチャしなきゃいけないんですか!?」

「なんでって……言っただろ? オレが提央祭で優勝したらお前はオレの女になるって」

「それはあなたが一方的に言ってるだけですよ!」


動きで抵抗できないなら言葉で抵抗するしかなく、結衣は必死だ。流星が勝手に言い出しただけだ。了承した覚えはない。
結衣は絶対に認めない。会ったばかりのこの男のものになるなんて。


「じょ、冗談ですよね……? 私をからかってるだけですよね? 私を優勝賞品みたいな扱いしたのだって他の不良さんたちのやる気を出させるためとか……そんなんですよね?
ホラ、言ってたじゃないですか。退屈してるとかつまらないとか……ケンカを楽しむために言っただけで実際は私に興味があるわけじゃないですよね? ね!?」

「はあ? 何言ってんだそんなわけねーじゃん。ケンカに退屈してたのは本当だけど相手の不良とかどうでもいいんだよどうせオレが勝つんだし。そんなことよりもオレはお前が欲しいんだよ」

「なっ!?」

より一層、結衣の顔が赤くなっていく。熱く火照っている。


「い……いや……ウソです……ありえないですそんなの……!」

「何がありえないんだよ?」

「だっておかしいじゃないですか!! 私はたまたまこの公園に通りがかっただけだし私とあなたはついさっき会ったばかりなんですよ!?
なのにいきなり自分の女にするとかイチャイチャするとか言われて納得できるわけがありません!! なんで? なんで見ず知らずの私なんかを欲しがるんですか!? 理由を教えてください!」

感情的になる結衣。ドキドキとか動揺する気持ちをごまかすように声を荒げる。

流星はそんな結衣を見てきょとんとした。


「……なんだよお前気づいてねーのか。ちょっとニブすぎなんじゃねーの?」

「えっ……?」

「……理由なんて簡単だ」

流星は結衣と正面から向かい合う。しっかり結衣の美しい瞳を見つめる。
結衣の瞳にはいつになく真剣な表情になった流星の顔が映っていた。



「オレはお前のことが好きだ。一目惚れしたんだ」


―――!?
結衣の瞳が揺れる。顔から火が出るくらい赤く熱い。


「な……な……っ、なんで……っ」

「お前さっきからなんで? って言いすぎだろ。オレは何もおかしいこと言ってねーぞ」


好き? 結衣のことが? 一目惚れ? なぜ? 結衣は別に流星に好かれるようなことをした覚えはない。どこに好きになる要素なんてあるのか。

結衣はわからない。彼がなぜ自分を好きなのか。彼女は今まで一度も恋をしたことがない。だからわからない。会ったばかりなのに好きになる気持ちが全く理解できない。

困惑する結衣を見て流星は呆れた。なぜそんなに驚くのか流星は理解できなかった。


「……お前さあ……自分の可愛さ自覚してねーのか?」

「えぇっ!?」

「そんだけ可愛けりゃ何回か告白されたことぐらいあるだろ?」

「な……ないですよ告白されたことなんて……」

「ウソつけ絶対あるぞ」

「なんで絶対って言い切れるんですか!?」

「可愛いから」

「別に可愛くないですよ……」

「謙虚なところも可愛いぞ」

「っ……本当に告白とかされたことないですから……」

「目逸らしたな、ウソだろ。そんなすぐバレるウソつくなよ。お前の可愛さで告白されたことねーとかありえねえから」


結衣が可愛くないなんて流星は死んでも認めない。そこだけは絶対に譲らず可愛い連呼攻撃。結衣には効果抜群だ。

近くでそれを見ている菅原は口を挟めず、ただ見ていることしかできない。

可愛いか可愛くないかとか、告白されたことあるかないかとか、そんな論争全くの無意味だ。だって実際可愛いから。監禁されてたとかでもない限り告白されたことないなんてありえないから。
可愛いだけじゃ結衣の魅力をすべて表現することなどできない。流星は自信満々にそう考えながら視線を少し下に下げた。


「だいたいよぉ、こんなに可愛くてこんなにでっかいおっぱい持ってんのに告白されたことがねーとか、そっちの方がよっぽどありえねーよ」

結衣の胸をジロジロ見ながら言う流星。結衣は素早く後ずさりして両手で胸を隠した。

「あっ……あなたまで何を言い出すんですか!? セクハラです! っていうかあんまり近寄らないでください!」


近寄るなというのも今さらな気がするが、結衣は胸をガードしながら流星をキッと睨み付けた。睨み付ける表情もたまらなく可愛いと思った流星。結衣の威嚇は流星の欲を煽るだけだった。

近寄るなと言ったそばから近づき、結衣の顎をそっと指で触れる。
クイッと顎を持ち上げ、強制的に視線を絡ませる。


「なんだよその態度。ゴチャゴチャうるせーのはこの口か?」

「えっ?」

「ちょっと黙らせてやるよ」

「や……ちょっ……!」



―――次の瞬間、流星は結衣の唇を封じた。
自分の唇で。


「―――!?
!?!?!?」


キスされてる。
あまりにも衝撃的すぎて、結衣は思考回路が停止し、キスされてることを認識するまでやや時間を要した。


「~~~~~~ッ!?!?!?」


結衣は抵抗する。しかし、強く抑えつけられてて阻止できない。
流星も、離してはくれない。

菅原がいるのに堂々と口づけを交わす流星。菅原の存在などもう忘れている。
菅原もついキスの場面を凝視してしまう。驚きの表情とともに大胆だなあと思っているだけで、結衣を助けようとはしない。邪魔すれば流星に殺されるからだ。


流星は長い間提央町の王の座に君臨してきた。
当然女に手を出しまくり喰いまくり、そっちの方の経験は豊富である。キスもセックスも、ものすごく上手い。そのおかげで女の子にモテまくりでヤりまくりの羨ましくけしからんハーレムヤリチン生活を送っている。間違いなくこの町で一番女に慣れてる。
特にキスは神レベルに上手い。どんな女でもキスだけで落とせるウワサもあるほど。

菅原もそういうウワサは聞いている。さすがにそれはウワサに尾ひれがつきすぎなのでは?と思っていた菅原だったが、今まさにキスしてる場面を目にしたら本当にどんな女でも落とせそうな気がする。
そのくらいすごいキスだ。舌使いとかもヤバそうだ。

初めて出会ったばかりの女の子に何の躊躇もなくキスをする度胸、絶対に落とせる自信。南場流星恐るべし。すごいと思う気持ちとドン引きする気持ちが入り混じって菅原は複雑な気持ちだった。


それだけ女との経験に恵まれすぎてる流星でも、結衣とのキスはとても気持ちよかった。気持ちよすぎて無我夢中になっていた。
今まで抱いたどの女よりも、結衣の唇は柔らかかった。プルッとしてて弾力感があり、瑞々しく潤う透明感に溢れる唇。

結衣は息が苦しくなってきて強く抵抗するが、流星は構わずキスを続ける。
流星が満足するまでは終われない。このままずっとこの極上の唇と触れ合っていたい。できることなら永遠にキスしていたいくらい流星は結衣とのキスを気に入った。

必死に胸板を強く押して抵抗していた結衣も、徐々に力が弱まっていく。流星の胸を押していた手はプルプル震えながら少しずつ下りていき、ついにダランと下がった。
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