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第26章…受験
大晦日
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とても楽しかったクリスマスも終わり、あっという間に大晦日になった。
クリスマスにハメを外しまくった分を取り返すためにオレは猛勉強に励む。
もう今年も終わりか……本当にあっという間だった。
この1年は本当にいろんなことがあった。まさかこんなに幸せな1年になるとは夢にも思わなかった。
今年になるまでは美希と会話することもなかったなんて今となっては信じられない。
それが彼女になってくれて、いろんなところに遊びに行ったりあんなことやこんなことを……
好きな女の子と楽しい思い出をたくさん作れた。一生忘れられない。
いいことがいっぱいありすぎて、来年厄年なんじゃないかって不安になってしまうほど今年はいい年だった。
―――
大晦日の夜、オレは美希と一緒に初詣に来ていた。
神社には人がたくさんいる。この神社はけっこう有名で、毎日多くの人々が訪れる。
神社のどこを見ても人、人、人。みんなお祭り騒ぎで深夜とは思えないほど明るく賑わっている。
まあ無理もないか。あと15分くらいでハッピーニューイヤーだもんな。
「あとちょっとで新年かぁ、なんだかワクワクしちゃいますね竜先輩!」
「ああ、そうだな」
ウキウキな美希が可愛くて見惚れるばかりだ。
オレもウキウキだ。好きな女の子と一緒に年越しできるなんて人生初だからな。
それにしても今夜はとても寒い。今年最大クラスの極寒だ。
にも関わらずオレの身体は熱いほどに暖かい。
美希がオレの腕に抱きついてピッタリとくっついてくれているからだ。さらにクリスマスの時と同様、マフラーを2人で巻いて神社を歩く。
美希の胸も当たってて、いつものように股間が特に熱くなっている。
こんな神聖な場所で硬く大きく勃起してしまって、頭の中が美希のおっぱいで埋め尽くされている。
本当に煩悩の塊だ。除夜の鐘を聞きにきたのに煩悩を消すなんて不可能で我ながら呆れる。美希中毒、美希依存症が末期だ。
2人で仲良く歩いていると、後ろから声が聞こえてきた。
「あれ? 滝川先輩と桐生先輩じゃありませんか」
「!!!!!!」
オレと美希は2人揃ってビクッとする。女の子の声。幼い感じの声で知ってる声。
恐る恐る後ろを振り向くと、国本麗奈ちゃんがいた。
「あらあら、ラブラブですね2人とも」
麗奈ちゃんは真顔で冷たい感じの声で言い放つ。オレたちは恥ずかしくなって一旦離れた。
「……こんにちは国本さん」
「こんにちは桐生先輩。こんにちは滝川先輩」
「あ、ああ、こんにちは……」
美希と麗奈ちゃんの間にバチバチと火花が散っている。
文化祭でいろいろあったしこの2人は仲良くないだろう。オレは緊張しながら2人を見守る。
「……そんなに警戒しないでくださいよ桐生先輩。貴女に負けて失恋したことは認めてますから。滝川先輩のことは本当にちゃんと諦めましたから」
麗奈ちゃんは真顔のままで淡々と話している。美希も真剣な表情で麗奈ちゃんをまっすぐ見ていた。
「あなたたちがお似合いのラブラブカップルだということはもううんざりするくらいわかりましたから。私のことなど気にせずに思う存分イチャイチャすればいいじゃないですか。気を遣われてイチャイチャを自重される方がムカつくんですけど」
麗奈ちゃんにそう言われると美希は再びオレの腕に抱きついて密着してきた。
オレは心臓が口から出そうなくらいドキッとした。
「はいはい邪魔してすみませんねー。邪魔者の私はさっさと去ります。……と言いたいところですがその前に言いたいことがあるんですけどいいですか?」
麗奈ちゃんは美希をビシッと指さした。
「私はもうあなたたちの邪魔はしません。しかしこのままでは終われません。このままかませ犬扱いで惨めな負け犬のまま終わるなんてまっぴらごめんです!
―――私、絶対に滝川先輩よりいい男をゲットしてみせます。絶対にあなたたちよりも幸せになってみせます!!」
麗奈ちゃんの語気が強くなる。オレたちは気圧されて何も言えない。
「……まあ言いたいことはそれだけです。では邪魔者は今度こそ消えますから。それでは」
麗奈ちゃんはオレたちと目を合わせることなくそのまま走り去っていった。
麗奈ちゃん足速いな……バスケ部だから足速くてもおかしくもなんともないけど。
……嵐が去った気分だ。麗奈ちゃんの雰囲気がなんか怖くてヒヤヒヤしたが特に何もなくてよかった。
美希はオレの手をギュッと握り、こっちをまっすぐ見つめた。
「……私の中では竜先輩よりいい男なんて絶対にいないと確信しています」
「―――っ!!」
美希の瞳を見れば冗談なんかじゃく大真面目だとわかる。オレの心臓にクリティカルヒットし胸がキュウゥッと締めつけられた。
美希にそこまで言われたらオレも黙ってはいられない。美希の手を握り返しまっすぐ見つめる。
「オレだってそうだ! 美希よりいい女なんて絶対にいないと断言する!」
「―――っ……竜先輩っ……」
「美希っ……!」
甘い雰囲気になった。オレたちはキスをしようとする。
……ジーッ……
「!!」
周りの人からの視線をものすごく感じてオレたちはハッとした。メチャクチャ痛いバカップルだと思われてる。
ここは神社で初詣に来たんだオレたちは。本来の目的を忘れるな。
「い、行こうか、美希っ」
「はいっ」
オレたちは恥ずかしくて顔を真っ赤にしながら除夜の鐘に向かった。
―――除夜の鐘に到着。
鐘を鳴らしたい人たちが長蛇の列を作っていてオレたちもそこに並ぶ。
ゴーン……
ゴーン……
除夜の鐘が鳴り響く。この音を聞くと、なんだか不思議な気分になる。
これで今年が終わって……来年はもう、すぐそこまで来ている。
年が変わってもオレは何も変わらない。でも、ワクワクする。
こんなに来年が楽しみだと思うのは初めてだ。
時は少しずつ、だが確実に刻まれていき、新年まであと3分を切った。
もうカウントダウンを始めている人もいる。
「美希」
「はい」
「今年は本当に美希に世話になった。ありがとう」
今年、野球を頑張れたのも勉強を頑張れたのも、こんなに楽しい時間を過ごせたのもみんな美希のおかげだ。
今年の最後に、感謝の気持ちを伝える。
美希は少し目を見開き、柔らかい笑顔でまっすぐオレを見た。
「いえ、お礼を言いたいのは私の方です。ありがとうございます。私、竜先輩の彼女になれて本当によかったです」
「~~~っ!!!!!!」
本当に美希はいつもいつもオレを狂わせる。どこまでも果てしなく狂わせる。
デレデレしすぎてオレの顔がメチャクチャ熱い。今の自分の顔、鏡で見たくない。
「……美希っ、来年もよろしく」
「はいっ! 来年だけじゃなく2年後も3年後もこれからもずっとよろしくお願いします、竜先輩」
「ああ、そうだなっ……!」
本当にヤバイ。感激しすぎて涙が出そうだ。鼻水が出そうだ。
オレは美希をギューッと抱きしめた。
周りの人から『ヒューヒュー』とか言われて冷やかされるが、そんなの気にしない。
美希が愛おしすぎる。美希が好きすぎてかなり苦しい。かなり胸が痛い。
ずーっと一緒にいたい。
離れたくない。別れたくない。
何を言っても可愛い美希。何をしても可愛い美希。
オレはこの女の子を一生涯守ると神に誓った。
この気持ちは何年経とうと変わることはない。もし変わるとしたら、それはオレという人間が死ぬときだ。
これから先、毎年こうやって美希と一緒に年越ししたい。
―――次の瞬間、周りから大歓声が聞こえる。
スマホを確認すると、1月1日午前0時0分。
オレたちは新年を迎えていた。美希に夢中で年越しする瞬間を意識してなかった。
「あけましておめでとうございます、竜先輩っ!」
「あけましておめでとう、美希!」
オレたちは深々とお辞儀をして丁寧に新年の挨拶を交わした。
そして2人で除夜の鐘を鳴らす。
その後は賽銭箱にお賽銭を入れて両手を合わせてお願いする。
「竜先輩は何てお願いしたんですか?」
「美希とずっと一緒にいれますようにってお願いした」
美希はカーッと顔を赤く染めた。
「……そ、そこは受験合格をお願いするところじゃないんですか?」
「まあ、それもあるけど……美希は何てお願いしたんだ?」
「…………りゅ、竜先輩と同じです……」
「っ……!」
オレたちは2人とも顔真っ赤で俯いてしまった。お互い顔を赤くしっぱなしの初詣となった。
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