51 / 150
第17章…文化祭
メイド服
しおりを挟む―――
体育祭は終わった。今度は文化祭が開催される。
青葉高校の文化祭は毎年かなり盛り上がる。それなりに生徒の人数も多く自由度も高いからな。
クイズ大会やライブなども行われる予定らしく、オレとしてもとても楽しみだ。
オレを含む3年生は受験で忙しいので出し物はやらない。1年生と2年生はクラス別に出し物を展示している。3年生は自由参加となっている。
美希のクラスはメイド喫茶をやると聞いた。
文化祭の定番ともいえる出し物でなんというかこう、期待を裏切らない。メイド喫茶に決めたクラスの学級委員は有能と言わざるを得ない。
美希のメイド服姿を見れる。当然オレは死なない限り必ず美希のクラスのメイド喫茶に行く。いや死んでも行く。
―――
そしてついにやって来た、文化祭当日。
オレは美希のクラスが行うメイド喫茶に行きたくて、待ちきれなくて朝の8時頃から学校に来ていた。
受験生がこんな浮かれてていいのかと思うけど、いつも勉強でストレスがあるので今日くらいはいっぱい羽を伸ばしたい。
まだお客さんは来ておらず、生徒のみんなはまだ準備中だろう。
―――1時間後。
とうとう高校生活最後の文化祭が始まった。
たくさんの人で賑わっている。駄菓子屋、お化け屋敷、飲食店、演劇など、様々なクラスの教室で出し物が展示されている。
みんな楽しそうだ。こういう雰囲気オレも大好きでテンション上がってきた。
というわけでオレはさっそく美希のクラスへ行こうとする。
「竜せんぱ~いっ!」
!!
今から行こうとしてたところだが、美希の方から来てくれた。
美希と宮澤さんがオレのクラスの前の廊下に立っていた。
そして、2人ともメイド服を着用していた。
「美希っ! おはよう」
「おはようございます」
メイド服姿でニッコリと笑顔で応えてくれる美希は、オレの受験勉強疲れなど一瞬にして吹き飛ばした。
ヤ……ヤバイ!! これはヤバイとしか言えないぞ。メイドの美希が破壊力ヤバすぎる。オレの心臓を破壊する兵器だ。
私服、水着、浴衣、体操服と、いろいろな美希を見て楽しんできたが、メイド服もとても素晴らしい。どれが一番いいかなんて甲乙つけられないくらいみんな可愛すぎる。
今すぐこの場で抱きしめたくなるのをなんとか堪える。周りに人がいるし宮澤さんもいるし、2人きりではないんだから自重しなくてはならない。
テンション上がりすぎて挙動がキモくなってしまった。美希はそんなオレを見て天使の微笑みを見せる。
「この服どうですか竜先輩。似合いますか?」
美希はそう言ってクルッと1回転してみせた。
後ろ姿もちゃんと見せてくれた。そしてヒラヒラ揺れるスカート、ふわふわ揺れる少し巻いた長い髪……ふわりといい匂いが漂って周りの空気を浄化した。
服の感想を求められたので美希が着ているメイド服をじっくり穴が開くほど見つめる。
白いフリルがついたエプロンドレスに、白いフリルがついたカチューシャ。胸元の大きなリボン。王道中の王道って感じの可愛いメイド服。
「ああ、すごく似合ってる。宇宙一可愛い」
「宇宙一は言いすぎなんじゃないですかね」
「いや、宇宙一可愛い」
日本一でも世界一でもない。オレ的には絶対宇宙一だ。これは譲れない。
「……そうですか、嬉しいです。ありがとうございます」
少し俯いて照れる美希が、宇宙一可愛いのにさらに可愛さを上げた。
「もう、何イチャイチャしてるんですか、お熱いですねぇ」
宮澤さんがニヤニヤしながら茶化してきた。
美希ばっかり見てて宮澤さんをスルーするのも失礼だと思い宮澤さんの方も見る。
……ん?
「あれ? 美希と宮澤さんって同じクラスだよな?」
「はい、そうです」
「……なんか2人の服微妙に違くないか?」
さっきから美希のメイド服にばっかり目が行ってて気づかなかったが、美希と宮澤さん2人で並んでるのをよく見るとちょっと違う服になってる。こういうのってクラスで統一するものだと思ってたが。
宮澤さんはオレを見てニヤニヤした。
「ああ、美希の方がちょっと露出多いんですよ」
!
セクハラになるかと思ってツッコまないようにしてたけど、確かに美希のメイド服は露出が多い。
胸元が大きく開いていて、ちょっとだけ胸の谷間が見えてて非常に股間に来る。
スカートも明らかに美希の方が短い。宮澤さんは膝が隠れるくらいの長いスカートだが美希は膝より上のスカート丈だ。
「メイド服何種類かあるのか?」
「いえ、1種類だけですよ。美希だけ露出多めにしてます」
「え、なんで?」
なんで美希だけ露出多いんだ? 不思議に思って宮澤さんを問い詰める。
「そりゃあ美希は特別だからですよ。美希はウチのクラスのエースなんです。
ホラ、見ての通り美希ってぶっちぎりで可愛いじゃないですか。ちょっと言い方悪いですけど美希には客寄せパンダになってもらってます。美希がいればウチのメイド喫茶は大繁盛間違いなしです!」
……なるほど確かに……集客するためには美希の可愛いルックスを利用しない手はないか。
理解はできるが、美希はオレの彼女だし男を釣るエサみたいな扱いされるのはちょっとどうかと思う気持ちはある。
宮澤さんはオレの考えてることを察したらしく、申し訳なさそうな顔をしていた。
「……すいません、彼氏としてはイヤですよね。彼女にいやらしい格好させるのは……」
「まあ、個人的に思うところはあるけど、でも別に美希がイヤじゃなければいいんだ。オレがとやかく言うことじゃない」
「さすが美希の彼氏さん! 器が大きいですね」
美希本人を見ても別にイヤそうにしてるわけじゃないからな。むしろノリノリだろ、文化祭すごく楽しみだって言ってたし、さっきからずっと楽しそうにしてるし。
じゃあ何の問題もない。あれやめろこれやめろとか言う気は毛頭ない。
それに露出がうんぬん言うのは今さらだ。
普段の制服のスカートの方が短いし、野球部のマネージャーをしてる時もミニスカにTシャツだけみたいな超エロい格好してるし。
美希は学校のアイドル的存在なんだ。完全にオレだけのものにするのは難しい。それはわかった上で美希と付き合っているんだ。これくらいで文句言ってたら美希の彼氏は務まらないだろう。
「ところでオレはこれから美希のクラスに行こうと思ってたところなんだけど」
「あ、私たち今客引き係やってて校舎をうろついてますので今行っても美希はいないですよ」
……まあ確かに今目の前に美希がいるからな。
言われてみれば宮澤さんは手持ち看板を持っていた。その看板には『2年B組メイド喫茶』と書かれている。2年B組は美希のクラスだ。
今すぐ行きたいけど今じゃダメか……ちょっとしょんぼりとしていると美希が歩み寄ってきた。
「竜先輩、私は10時から店番やりますので。もしよかったら10時に来てください」
美希に上目遣いでそう言われた。下から覗き込むように美しく輝く瞳で見つめられ、ドキッと心臓が撃たれる。
好きな女の子に来てと言われて行きたくないと思う男などこの世にいない。
「ああ、絶対行く」
「楽しみにしててくださいね。いっぱいおもてなししますから」
ニコッと微笑む美希。その後客引きをするために宮澤さんと一緒に去っていった。
……メイド喫茶で美希に接客してもらえる……!
楽しみすぎる。早く10時にならないだろうか。あんなエロい格好でサービスしてもらえるなんて想像するだけで股間が膨らむ……あ、いや、胸が膨らむ。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説

手が届かないはずの高嶺の花が幼馴染の俺にだけベタベタしてきて、あと少しで我慢も限界かもしれない
みずがめ
恋愛
宮坂葵は可愛くて気立てが良くて社長令嬢で……あと俺の幼馴染だ。
葵は学内でも屈指の人気を誇る女子。けれど彼女に告白をする男子は数える程度しかいなかった。
なぜか? 彼女が高嶺の花すぎたからである。
その美貌と肩書に誰もが気後れしてしまう。葵に告白する数少ない勇者も、ことごとく散っていった。
そんな誰もが憧れる美少女は、今日も俺と二人きりで無防備な姿をさらしていた。
幼馴染だからって、とっくに体つきは大人へと成長しているのだ。彼女がいつまでも子供気分で困っているのは俺ばかりだった。いつかはわからせなければならないだろう。
……本当にわからせられるのは俺の方だということを、この時点ではまだわかっちゃいなかったのだ。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

【R18】幼馴染がイケメン過ぎる
ケセラセラ
恋愛
双子の兄弟、陽介と宗介は一卵性の双子でイケメンのお隣さん一つ上。真斗もお隣さんの同級生でイケメン。
幼稚園の頃からずっと仲良しで4人で遊んでいたけど、大学生にもなり他にもお友達や彼氏が欲しいと思うようになった主人公の吉本 華。
幼馴染の関係は壊したくないのに、3人はそうは思ってないようで。
関係が変わる時、歯車が大きく動き出す。


美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
勇者一行から追放された二刀流使い~仲間から捜索願いを出されるが、もう遅い!~新たな仲間と共に魔王を討伐ス
R666
ファンタジー
アマチュアニートの【二龍隆史】こと36歳のおっさんは、ある日を境に実の両親達の手によって包丁で腹部を何度も刺されて地獄のような痛みを味わい死亡。
そして彼の魂はそのまま天界へ向かう筈であったが女神を自称する危ない女に呼び止められると、ギフトと呼ばれる最強の特典を一つだけ選んで、異世界で勇者達が魔王を討伐できるように手助けをして欲しいと頼み込まれた。
最初こそ余り乗り気ではない隆史ではあったが第二の人生を始めるのも悪くないとして、ギフトを一つ選び女神に言われた通りに勇者一行の手助けをするべく異世界へと乗り込む。
そして異世界にて真面目に勇者達の手助けをしていたらチキン野郎の役立たずという烙印を押されてしまい隆史は勇者一行から追放されてしまう。
※これは勇者一行から追放された最凶の二刀流使いの隆史が新たな仲間を自ら探して、自分達が新たな勇者一行となり魔王を討伐するまでの物語である※

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる