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第6章…栗田柊斗はスポーツで無双できる
草野球の試合②
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2回までが終了した。
現在、1-3でタートルズは負けている。
カーブを投げる時ウインクするという梨乃のサインが相手にバレて、2回表に3点を取られてしまった。
まあそりゃバレるよなって感じだが。草野球とはいえ相手もきっちり研究してくるの恐ろしい。
これから3回の表に入ろうという時、こっちにバイクが走ってきた。
「あ、お父さん来た」
「え、お父さん!?」
梨乃のお父さんが来たようだ。ヘルメットしてるから俺には誰かわからなかった。
バイクを停め、ヘルメットを取る。
あ、ホントだ。梨乃のお父さんだ。
ほとんどモブだったが一応原作でも登場してる梨乃の父親。見たことある人が来てちょっと心強かった。
「おう、お待たせ~!」
「おっすキャプテン!」
キャプテンが来てチームの結束力が高まった気がした。
「おっ、キミが栗田君か!」
「えっ、あ、はい……こんにちは」
さっそく梨乃のお父さんに声をかけられ、俺はビビりながらも挨拶した。
「キミのことは梨乃からよく聞いてるぜ。梨乃のヤツ最近キミの話ばっかりするからさぁ」
「ちょっ、言わないでくれお父さん!!」
梨乃が顔を真っ赤にしてお父さんの口を塞いだ。クールな梨乃を照れさせる役割を果たしている。
しかしこれはまずいな。梨乃とも親公認の関係が構築されてしまっているって感じだ。これはまずい。
「もごご……ま、まあ今日はよろしくな栗田君!! 仲良くしようぜ!!」
「は、はい……」
俺の手をガシッと握ってぶんぶんと手を振りながら握手を交わした。
スポーツチームのキャプテンなだけあって超熱血系って感じだ。クールな梨乃とは対照的だ。どう見ても陽キャ、俺とは住む世界が違いすぎる。
いい人そうだが俺は梨乃ルートには行かないので梨乃のお父さんとあまり仲良くなる気はない。今日の試合は協力するがそれだけで終わりだ。
「栗田君すごく足が速くてスポーツ得意なんだろ? 期待してるぜ!」
「は、はぁ……」
やめて、期待はしないで。プレッシャーだプレッシャー。身体能力は栗田柊斗だけどメンタルカスなんだよ俺は。
「で、栗田君はどこのポジションを守ってるんだ?」
「キャッチャーですけど……」
「なに!? キャッチャー!?」
「ひっ!?」
なんかすげぇ不服そうな反応が返ってきて俺はガチビビリした。
「おいおい、キミは足が速いんだろ!? なんでキャッチャーなんだよ外野守れよ外野! 外野ならキミの足を活かせるだろうが!」
マジか……外野の方が頭痛がしそうでイヤなんだが……しかしキャッチャーも決して楽ではないな、さっき顔面に大ダメージ受けたし。
梨乃ルートを避けるためにはこれ以上梨乃とバッテリーを組まない方がいいし、外野の方がよさそうか? しかし……
「でも他にキャッチャーできる人いないって言われたんですけど……」
「は? 梨乃がそう言ったのか?」
「はい」
梨乃パパは梨乃をチラッと見る。梨乃は顔を赤くしてプイッと目を逸らす。
「……梨乃には悪いが、試合に勝つためにベストを尽くしたい。栗田君には外野を守ってもらう。キャッチャーは俺がやる!」
キャプテンがそう言うなら俺はそれに従うまでだが……頭痛を回避したいからイヤだとは言えないしな。
梨乃パパにキャッチャーの防具を渡し、俺は外野に移動する。
その時に梨乃に肩を掴まれた。
「……ごめん栗田君。私はウソをついた。本当は他にもキャッチャーできる人はいたんだ。足が速いキミは外野を守った方がいいのもわかっていた。
でも私はどうしても、キミとバッテリーを組んでみたかったんだ……!」
「……そ、そうか……」
赤くなった顔で、まっすぐ見つめられながら言われた。
柊斗を試合に参加させるためにウソをついて、柊斗とバッテリーを組むためにウソをついたのか。
梨乃ってそういうところあるよな。原作でもあざといウソをついて柊斗を振り回して、多くの読者をメロメロにした。
ちゃんとしたラブコメ主人公なら、『キミとバッテリーを組めてすごく楽しかった』とか言えるんだろうな。それで梨乃をキュンとさせられるんだろうな。
でもラブコメ主人公に全く向いてない俺はそういうことは言えない。下手に梨乃をぬか喜びさせるようなことは言えない。
俺は『そうか……』としか言えずに外野に行った。
俺はセンター、キャッチャーは梨乃パパに交代して試合再開した。
2アウトからライトの頭上を越えるツーベースを打たれた。2アウト2塁。
打ったのはさっきの怖そうなサードの人だ。正直言ってこの人だけには打たれてほしくなかった。
そして次のバッターは、センター前ヒット。
つまり俺のところに打球が転がってきた。さっそく守備機会がやってきた。
サードの人は3塁を回ってホームに突っ込む。このままではまた1点取られてしまう。
俺はバックホームした。ホームに素早く送球する。
ギュウウウン!!!!!!
すげぇ、投げた自分もビックリだ。柊斗めちゃくちゃ強肩だ。
俺が投げた送球はレーザービームとなってホームへ一直線。
サードの人もムキムキのくせにすげぇ足が速ぇ。間に合うか!?
審判の判定は……
アウト!!
俺は2塁ランナーのサードの人を刺すことに成功した。
スリーアウトチェンジ。チームメイトのみんなとハイタッチしてベンチに戻る。
「キャー!! すごーい柊斗くん!!」
今俺はすごく集中できているが、それでも柚希の声援は聞き逃すことはなかった。
そして3回のウラ、俺の2回目の打席が回ってきた。
警戒されて相手は低めに投げてくる。今回は柊斗の能力でもホームランを打つのは難しそうだ。
だが、ホームランを狙うだけが野球ではない。チームが勝つためにどうすればいいか、柊斗の知識から自分なりによく考えた。
相手は長打を警戒した守備をとっているな……よし、ならば……
ピッチャーが投げた瞬間、俺はバントの構えをした。
コツンと当ててうまく3塁側に転がす。
柊斗の速力を活かして1塁はセーフ。セーフティバントを成功させた。相手の意表を突くことができた。
ホームランでもセーフティバントでも柚希は喜んでくれる。可愛い。
出塁できた俺は、ピッチャーの動きをよく見てすかさず走り、盗塁を決めた。
盗塁でも飛び跳ねて喜んでくれる柚希マジ可愛い。
まだだ、まだ終わらない。キャッチャーがボールをこぼして一瞬見失ったスキに一気に3塁に行く! セーフ!!
得点のチャンスを拡大させた。
ズキッ……
「くっ……」
セーフティバントで1塁に走り、2塁に盗塁して、3塁まで進塁して、全部全力ダッシュしたので案の定強めの頭痛に襲われた。
さすがに痛いな……ズキンズキンと痛みが続く。しかしここでへこたれるわけにはいかない。
「柊斗くんナイスラン!!」
ホラ、柚希が応援してくれてるんだからもう大丈夫痛くない。手を振ってくれたので振り返す。
その時、ゾッとする視線を感じた。
怖そうなサードのおっさんが俺をギロッと睨みつけてきた。
なんだよ。さっきのホームランの時はともかく、今は全力でプレーしてるだけだろうが。睨まれる筋合いなんかないはずだ。
俺が活躍してるのが気に入らないのか? さっき俺にホームでアウトにされたからイライラしてんのか? だとしたら小物すぎねぇか。
まあいいや。なんかムカつくが、なんで睨まれているのかとかどうでもいいし相手にしない、無視だ無視。こんなおっさんとケンカするより試合に勝った方がスカッとするだろ。絶対に勝ってやる。絶対に勝ってこのムカつくおっさんを悔しがらせてやる。
その後、梨乃パパがタイムリーヒットを打って俺はホームに生還、これで2-3、1点差に詰め寄った。
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