お色気要員の負けヒロインを何としても幸せにする話

湯島二雨

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第2章…俺の推しは不憫

推しが不人気で悲しい

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 武岡柚希はお色気要員。
俺は風呂上がりの柚希と対面し、抱きつかれてでかいおっぱいの感触も堪能できて、直球で『好き』って言われて、文字通りそのまんまお色気要員のインパクトを遺憾なく発揮した。

俺の理性なんか維持できるわけもなく完全に壊れた。
理性が壊れた結果どうなったのか。押し倒して致してしまったのか。

いや、ヘタレ童貞の俺は耐えられなくて失神した。男として情けないの極みだ。
柚希に迷惑かけて申し訳ない気持ちでいっぱいだ。でも彼女と一緒に過ごせた時間は人生最大の至福だった。



―――



 その日の夜、夕食中。
俺は食いながらも柚希の笑顔を思い出しては頬が緩んでしまっていた。


「何ニヤニヤしてんのよ柊斗。キモすぎるんだけど」

「……」

苺に罵倒されるが、今の俺は超上機嫌だから聞き流そう。


苺はスマホで動画を観ながらテレビのバラエティ番組を観ていた。
どっちかにしろよ何なんだよ。リモコンも苺の手の中で、チャンネル権も独占してやがる。まあ俺は観たい番組とかねぇし別にいいんだが。
それにここは苺の家。苺が優先権持ってるのは普通だし文句もない。

そういえば、新聞やテレビを見る限り前世の世界とあまり変わらないな。人気アイドルとか人気俳優とか、俺が前世から知ってる人ばかりだ。ここはラブコメの世界なのに不思議だな。


『では、今週の人気商品ランキングを発表します!』


「……くっ……」

「何よ柊斗。ニヤニヤしたり頭抱えたり意味わかんないわね」

「……いや、なんでもない」


テレビのというワードで俺は頭が痛くなった。
俺はランキングという言葉が嫌いだ。前世から嫌いだ。軽くトラウマなんだ。

なぜかというと、それは……


俺の推しが人気最下位だからだ。


柚希、あんなに可愛いのにヒロイン4人の中で一番人気ない……悲しい。

『ツンデレお嬢様と幸せになる話』の人気投票は3回開催された。
ラブコメは基本的にキャラ萌え漫画なので、キャラクター人気投票は読者の愛をぶつけ合ってかなり盛り上がるイベントなんだ。

俺もハガキに書いて投票した。もちろん3回とも柚希に投票した。
ダンボール投票は無効なので1票しか出せないが、俺にとっては自らの命に匹敵する渾身の1票なんだ。
そして人気投票の結果がこちら。


第1回人気投票 
1位 小雀苺
2位 龍崎梨乃
3位 木虎桃香
4位 武岡柚希

第2回人気投票
1位 龍崎梨乃
2位 小雀苺
3位 木虎桃香
4位 武岡柚希

第3回人気投票
1位 小雀苺
2位 龍崎梨乃
3位 木虎桃香
4位 武岡柚希


第2回だけ梨乃が1位を獲得し、それ以外は全部同じ。
基本的に人気順でいうと苺>梨乃>桃香>柚希だ。

3回とも柚希が最下位だ。しかもわりとダントツだ。接戦ですらなかった。
第3回なんて柚希だけ票数が1ケタ少なくて、3位の桃香ともダブルスコアの大差をつけられた。

俺は泣いた。結果発表を見るのが怖くて、でもどうしても気になって恐る恐る結果を見て、やっぱり最下位で3回とも泣いた。辛くて悔しくて夜も眠れないこともあった。


というわけで俺は物事に順位をつけるのは嫌いなんだ。何がランキングだクソが。

テレビのランキングで○位! ×位! って言う度にチャンネル変えてくんねぇかなとか思っちまう。まあチャンネル権は苺だからダメだろうが……

ピッ

「あれ?」

苺はチャンネルを変えた。ついさっきまで熱心に観てたから変えるとは思わなくて驚いた。


「ランキングってさ、くだらないわよね」

「え?」

俺が思ってたことと同じようなことを苺が言うとは思わなくて俺はさらに驚いた。


「順位が上の方が偉いってわけ? ホントバカみたいって思うわ。
人それぞれ好きなものは違くて、その人が一番好きなものがいつだって1位なのよ。それを他人が勝手に1位を決めるなんて、なんて愚かなのかしら」

「苺……」

俺が思ってたことを苺が言ってくれた。俺は完全に同意した。

……同意する……けれども。
人気投票1位の苺がそれを言うのかよ。っていう気持ちもある。ちょっとだけイヤミっぽく聞こえる。

まあ、苺は名家のお嬢様で、物心ついた頃からビシバシ英才教育を受けて、周りの人とは差のある生き方をしてきたから格差や順位に関してはいろいろ思うところがあるんだろう。


原作でも苺は胸の大きさコンプレックスを拗らせてて、桃香や柚希のでかい胸と自分の平らな胸を比べて嫉妬するみたいな胸囲の格差社会ネタを散々やってたな。
胸が小さいのを気にする女の子というのは王道の萌え要素だし巨乳派の俺でも理解できないこともないけどさぁ、そういう身体的特徴をネタにするのはあまりよくないんじゃねぇかな。

俺は絶対に大きい方が好きだけど別に大きい方が偉いってわけでもないし、あくまでも好みの話でおっぱいには格差なんてないと思うぞ。


あ、おっぱいといえばこの漫画のヒロイン、バストのカップ数までご丁寧に設定してある。原作のおまけページに記載されてた。作者が設定厨なんだろうな。

苺がAカップ、梨乃がCカップ、桃香がEカップ、柚希がHカップ。

柚希がHカップって知った時は異常に性的興奮したのを今でもよく覚えている。その設定だけでいっぱいシコれた。
あ、ヤバイ、思い出したらムラムラしてきた。


「柊斗、またニヤニヤしてる。マジで気持ち悪すぎるからやめてくんない?」

「……」

苺からさっきよりもガチめの罵倒が来た。言われなくても自覚はしている。誰がどう見てもガチキモで痛々しいオタクだ。
いかんいかん、おっぱいの話になるとなんかいろんな意味で熱くなって自分だけで盛り上がってしまった。話がめっちゃ逸れた。


とにかく推しが不人気で辛かったんだ俺は。
推しが不人気なのはむしろ好都合だろう、という意見の人もいる。同担拒否のオタクもいるしな。自分の好きなものが他人と被るのを嫌がる、みたいな。
それに推しが不人気の方が自分の推しを思う存分独占できるからいいじゃないか、という意見も見たことあるな。

気持ちはわからんでもないけど俺は逆だな。推しの良さを多くの人に知ってもらいたいオタクなんだよ。だから不人気なのは辛いんだよ。

ネットで推しの名前を検索して、
『武岡柚希 不人気』
『武岡柚希 いらない』
みたいなサジェストを見てしまったオタクの気持ちがわかるか。

ネットで検索して推しがバカにされたり叩かれたりするのを見てしまったオタクの気持ちがわかるか。
そんなもん見なきゃいいだけだろ、という話だけど見ないように頑張って避けても視界に入ってしまうオタクの気持ちがわかるか。

自分の推しだけグッズが出なかったり自分の推しだけ明らかに売り上げが少ないのを見たオタクの気持ちがわかるか。

さらにトドメに当て馬で負けヒロインだからな。
負けヒロインは負けるからこそ美しく輝く、みたいな意見も見たことあるが俺はその考えは嫌いだ。
失恋するのを見たくて読んでたわけじゃない。推しが幸せじゃないと気が済まないめんどくさいオタクなんだ。最初から報われないのはわかっててもそれでも推しに幸せになってもらいたくて応援してたんだ。

推しが不人気で不憫だとストレスがいっぱいあるんだ。自らの健康にも関わる深刻な問題なんだ。

この辛さ、なんとかしたい。
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