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[2]の後日談

変われない事もある

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俺達はとうとう最初のメインイベントの場所に辿り着く。

俺「ああ、やっとラクスだぁ!疲れたぁ!」

こういうのは駄目と分かってる。分かってはいるけど言わずにはいられない。ここに来るまで大変な思いをしたが、やっと目的地に着いた。開口一番が"疲れた"でも可笑しく無い筈だ。不意に真横を見るとアイリスの姿が無い。

俺「あれ?アイリス?」

アイリス「シリウス!見て見て!」

前方で何やら騒いでいるアイリスを発見する。

アイリス「マンガとかでしか見た事の無い、絵に描いたような荒くれ者達よ!ほら!あっちにも!こっちにも!」

どういうはしゃぎ方だ?

俺「止めなさい。人をそんな簡単に指差しちゃ駄目でしょ。」

アイリス「むぅ。だって見るの初めてだったから。」

俺「こういう連中は何かある毎に喧嘩を売るの!自分から関わるなんて怪我の元だよ?」

アイリス「は~い。」

ちゃんと分かってんのかな?

荒くれ者1「おい。姉ちゃん。俺達に興味があるなら手取り足取りでじっくり教えてやるぞ。男は邪魔だから失せな。」

俺「ほらな、絡まれた。」

アイリス「確かに。」

荒くれ者1「ふざけんじゃねぇよ!」

体格差はあるが身体を強化しつつ迎え撃てば良いな。俺は掴もうと伸ばされた右腕を払いながらその手首を掴む。続けて脚を掛け、合気道の如く相手の勢いをそのままにひっくり返す。

荒くれ者1「プギャ!」

頭から落ちた為か一発で気絶する。

荒くれ者2「野郎!やりやがったな!」

チンピラは皆んな同じ事を言うみたいだ。それに最初に向かって来たのはこいつ、あ!最初に物見遊山で騒いだのはアイリスが先だ!今は事実について気にしてはいられない。
現在の状況に集中しよう。左ボディブローのモーションで2が近付いて来る。俺はその脚の甲を思いっ切り踏み付けた。

荒くれ者2「ぐわ!・・ぐはっ!」

俺はすかさず鳩尾にボディブローを入れる。

荒くれ者3「くっそぉ!」

挟む様に反対から3が迫る。俺はくの字に曲がった2の襟を掴み、タイミングを見て3へと突っ込ませる。

荒くれ者2「げは!」

荒くれ者3「ぐぶ!」

2はそのまま1同様に頭から倒れ気絶する。3はその2と地面に挟まれ気絶する。

アイリス「はっ!」

荒くれ者4「ぐほぉ!」

アイリスは手の平に小さい竜巻を作り、鳩尾に掌底の様に腹に打ち込む。
そして膝を突き、頭が下がった所で同じく風を纏わせた回し蹴りを顔面に命中させる。

荒くれ者4「ぐぁ!・・・・うっ。」

アイリスも何とかなったみたいだ。しかし、相手があれだから仕方ないけど容赦無いな。

アイリス「・・・・何?」

俺「いや、何でも無い。」

ラクスは常に何かしらの大会が開かれている。なので毎日がお祭りの様な状態だ。最近は治安の悪さも目立っていると聞いた事がある。まぁ、近付かなければ問題は無いだろう。多分。
気を取り直し、闘技場のエントランスに入る。そして今日、開かれている大会を確かめる。

アイリス「う~ん。ダッグマッチみたいなのは開催して無いな。」

俺「なぁ、マジで俺も出るの?」

アイリス「だって折角ここまで来たんだから。」

俺「いやいや、緊張して何も出来ないよ。」

アイリス「一応、普段やってる大会は、午前の部と午後の部で分かれてるみたいね。午前は予選で午後は本戦って感じみたい。」

何故か話が進んでる。

俺「ん?予選やったその日に本戦やるの?」

アイリス「午前の予選は次の日が本戦で、午後の本戦は前日の予選の続きって事。」

そんな早いサイクルで良く身体が持つな。とりあえず今日は午前の予選には間に合わないし、午後は昨日の本戦だ。今日はする事が無い。目を離した隙にいなくなったアイリスが、何処からか戻って来る。

アイリス「受け付けは終わったから、今日は街を見て周ろ?」

俺「え?受け付け?」

アイリス「明日の予選。」

俺「ああ、予選・・・。」

アイリス「大丈夫よ。貴方の分もしておいたから。」

俺「あ、そう。・・・・・はぁ?俺も出るの?」

アイリス「そう言ったでしょ?」

ば、馬鹿な・・・・。出ないって言ったのに。

俺「い、いや、お、俺・・・。」

アイリス「ほら!もう済んだ事は気にしないの!行くよ!」

俺「な、ちょっとぉ?」

結局キャンセルも出来ず、街の散策へ出る事になった。ヤバい今から心臓がバクバクしてる。あ、頭が真っ白になる。

アイリス「ねぇ!ちょっと!聞いてる?」

俺「え?な、何?」

アイリス「もう緊張してるの?あそこに屋台があるから何か食べよう?」

アイリスに手を引かれるまま進む。

アイリス「屋台なんて子供の頃以来ね。」

俺「来た事あるの?」

アイリス「え?子供って『地球』にいた時の話。この『世界』に来てから祭りは見れても屋台なんか行けないよ。そっちは?」

俺「え?俺は・・・あれ?俺、祭りに行った記憶が無いぞ?」

アイリス「え?」

俺「あ!そうだ!"職業選定"の時だ。あの祭り時は行ったけど、屋台は流石にな。金無かったし、買い食いなんてな。それにその後は直ぐ傭兵になって、そこからは死なない為の努力をしてたから祭り所じゃなかったな。」

アイリス「ごめん。」

俺「別にアイリスは悪く無いだろ?」

アイリス「じゃあ、今日は楽しもう!さぁ!早く!」

アイリスと街を歩く。路上の見世物を見つつ屋台を見る。互いに買った串焼きを持ちながら見物を続ける。

アイリス「戴き!」

俺の不意を突いて、持っていた串にアイリスが噛み付いた。

俺「あ、おい!自分のがあるだろ?」

アイリス「味が違うでしょ?」

俺「いや、確かに違うけど。」

普通1口頂戴とか言うだろ?いきなり噛み付くかね。

アイリス「フッ、食べられる時に食べないと駄目よ。」

俺「それは大家族の理論だろ?」

アイリス「私が『地球』にいた時の話だけど。前話たでしょ?2つ下の妹がいて、その妹には幼馴染の男の子が2人いたの。1人はやんちゃな子で外を走り回る方が好きで、もう1人は内気な子で本を読む方が好きって感じの子。内気な方の子とは話をしたりとかしたかな?」

それはもうアイリスも幼馴染の部類に入るのでは?

アイリス「おやつの時は4人で分けたりしたよ。ある意味、大家族みたいに我先にって感じだったな。そっちは?」

ここで俺の話?俺かぁ。

俺「小学校や勿論、幼年期とかもあったけど幼馴染って言える程の友達とかいなかったかな?」

アイリス「えぇ~。・・・初恋は?」

俺「ん?まぁ、あったよ。一目惚れだけど。」

アイリス「え?・・・・告白は?」

俺「してない。」

アイリス「何でよ?」

俺「この話、楽しいか?」

アイリス「興味はある。」

俺「はぁ、ただ相手が高嶺の花に見えて遠慮したんだよ。」

アイリス「根性無いわね。ヘタレは駄目よ。」

俺「悪かったね。まぁ、今の俺なら言えそうだけどな。」

アイリス「何か言った?」

俺「いや、何でも無いよ。」

俺達は一通り街を見て宿へと向かう。明日はメインイベントの闘技大会だ。ヤベっ!さっきまで忘れて落ち着いてたのに、急に心臓が早鐘を打ってる。夜寝られるかな?
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