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[2]の後日談

コネクション

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昨夜は大変だった。事件に巻き込まれた事もそうだけど、メレスの領主が事件の首謀者だった事が何より凄いニュースだ。
ただ今回の件、犯人は貴族だ。被害者が証言しても平民の証言なら誰も信じないだろう。俺達は貴族だから発言力は普通の人よりはある。しかし、自分達が貴族と証明する物を持って無い。何で無いねん!とか言われそうだけど、アイリスの貴族じゃなくて普通の人として旅がしたいという要望から持って来なかった。
だが幸いと言うか、丁度ガルバが貴族だと証明出来る物を持っていた。とにかくガルバに領民や領主の使用人達へと説明をさせる事にした。

ガルバ「まぁ、こうなったのは仕方ないから協力はするけど。領主はどうするんだ?」

俺「フッ、それについては考えがある。」

こういう時こそ大物とのコネクションが物を言う。俺は代わりの領主と代官を用意出来るであろう人に手紙を書く事にした。

俺「え~と、"親愛なるクリスちゃんへ"と。う~ん、何て書くか?"現在メレスにて、"って書いても手紙が着く頃にはここにいないからな。"現在"は要らないか。」

とにかく本文を考えよう。

俺「"メレス到着後、事件に巻き込まれました。"・・・ん~?"何と犯人はメレスの領主だったのです!"って書いたらダサいよな。普通に報告書みたいに書くか。"首謀者の伯爵を"えっと"殺害"は駄目だな。"始末"だと暗殺者みたいだ。"片付け"だと何の事だか分からなくなりそうだし。」

考えた末、俺は見栄を切り言い放つ。

俺「"成敗!"・・・・良し。"上様"に習ってこれで行こう。後は追伸を書いて・・・これで良いだろう。」

アイリス「何書いてたの?」

俺「ん?伯爵がいなくなったろ?だからクリスに新しく領主を出来る貴族を派遣して貰うんだよ。」

俺は書いた手紙をアイリスに見せながら言う。

アイリス「ちょっと軽過ぎない?この文章。それにこの手紙、誤字と脱字が酷いんじゃない?」

俺「文章については確かにそうだけど、これから家族だし良いかなってさ。それと誤字とかは仕方ないさ。それは下書きで、これから清書するんだよ。」

手紙を清書し、封筒に入れ封蝋をする。封蝋は流石に初体験だ。ちょっと楽しい。

アイリス「あれ?封蝋なんて持ってたっけ?」

俺「クリスがくれた。」

これから貴族になるという事でクリスから祝いの品として貰った。俺の家紋が入ってる。鷲をイメージしたデザインだ。結構気に入っている。だがクリスの名前を出した途端、アイリスの顔が曇る。

俺「どうした?」

アイリス「え?・・・いや、あのさ。」

あの伯爵、ナバスに色々と言われたらしい。

アイリス「リヒターズが暗殺者の家系だって。」

俺「リヒターズ?」

アイリス「クロードの一族。どう思う?暗殺よ?」

俺「まぁ、こんな『世界』だし、貴族の部下に暗殺者がいても可笑しく無いさ。多分。」

アイリス「最後、自信無くさないでよ。でも身内に暗殺者がいるのよ?信じられる?先祖代々、何かある度に暗殺してたなんて。お父様も誰かを暗殺したのかな?クリスは知ってるのかな?」

俺「義親父さんの事は知らないけど、クリスはそれなりに知ってるんじゃないか?当主だし。」

アイリス「うぅぅ。クリスが誰かを暗殺するなんて・・・嫌だ。」

俺「ふぅ、分かったよ。クリスが変な事しない様にちゃんと見とくよ。」

アイリス「本当?お願いね。私も目を光らせるけど。」

さて、とにかくこの手紙を届けて貰おう。ガルバと合流し、手紙を渡す。

ガルバ「何だよ?」

俺「この手紙を大急ぎでスワロウ公爵家の所に届けてくれ。」

ガルバ「はぁ?何で俺が届けないといけないんだよ?」

俺「俺達まだ行く所があるから。それにゲームの中だとお前が1番早いからな。」

闘技大会にドラゴン。メインがまだ一切消化出来てない。ここで帰る訳にはいかない。

ガルバ「げーむ?ってのは何だよ?それよりさっきスワロウって言ったな?現在、王国の経済の3分の1を牛耳っているって噂のスワロウ公爵家か?」

俺はそうそうそれだよと言いそうになって止める。経済の3分の1だって?

ガルバ「何か革新的な道具や服飾、果ては料理と物流にまで手を広げてるってよ。」

俺がアイリスの方を見るとそのアイリスはゆっくり目を逸らす。

俺「なぁ?どういう事だ?」

アイリス「え?・・・・いや、別に?私はあんなのがあれば良いなぁとか、こんなの欲しいなぁって思っただけで。気が付いたらお父様達が、技術者を勝手に見つけて来るんだもん。」

"だもん"じゃないだろ?可愛く言っても結果は変わらんぞ。

アイリス「貴方にとっても便利なアイテム、あったでしょ?」

俺「助かってるよ、本当。」

昨日、俺の特異体質と刀の能力に関してチートだとか言ってたが、知識で好き勝手やってるのはそっちだろ?まぁ、助けて貰ってるから今の俺は強く言えないけど。

俺「はぁ、とにかく。その公爵家だよ。」

ガルバ「いやいや、こんな手紙、持って行っても公爵は読まずに捨てるよ。」

俺「大丈夫だよ。俺の書いた手紙だから。」

ガルバ「お前、何様だよ!そもそも公爵家とどんな繋がりがあんだよ!」

俺「関係で言えば俺よりアイリスの方が強い。」

ガルバ「え?」

俺「現公爵のクリスはアイリスの弟だ。」

ガルバが無言のままアイリスを見つめる。しばらくすると、凄い勢いで退がり土下座をする。

ガルバ「知らぬ事とは言え、スワロウ公爵令嬢と知らず数々の無礼!失礼しました!」

アイリス「そんな!良いの、良いの。そんな事言わなくても。」

ガルバ「あれ?でもこいつの事、婚約者って言ったよね?アイリスちゃ、・・・アイリス様は確かイーグル伯爵と婚約した筈ですよね?」

アイリス「え?・・うん。だから、イーグル伯爵。」

アイリスは俺の方へと手を向ける。今度は俺とガルバが見つめ合う。

ガルバ「お見逸れしました!何卒、ご容赦を!」

俺「貴様と会ってからの数々の無礼、手打ちにしてやりたいが、その土下座で許してやろう。」

ガルバ「・・・・・。」

俺「・・・・・。」

ガルバ「嘘吐け!お前、普段そんな話し方してないだろ!」

俺「いや、お前が恭しく頭を下げるから偶には偉そうにしてみようかなってさ。とにかくこれよろしく。」

ガルバ「全く。まぁ、割と楽しかったぜ。あばよ。」

ガルバはポーズを決めて走り出す。

アイリス「騒がしい人だったね。」

俺「そうだな。」

さて、これでメインの1つ、闘技大会のあるラクスに行ける。ただ、何故か不意に暗殺者の話を思い出し、俺は何気なく気配を探る。視線を感じ振り向くと一瞬で誰かが隠れた。完全に俺達を見ていた。何となく顔に見覚えがある。王都か?誰かの家だった様な?あ!そうだ!公爵邸だ!あそこの使用人の1人だ!あれ?という事は?

アイリス「どうしたの?」

俺「いや、何でも無い。」

ガルバと関係ない方を見てたからか、アイリスが訝しげに俺を見る。ただ今回の騒動では色々とあった。これ以上アイリスに負担が掛かるのは少し可哀想だと思う。という事で黙っていよう。とにかく俺達はメレスを出てラクスに向かう。
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