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[2]の後日談

決着?

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全く。人を出し抜くとか、今考えるなよ!と腹を立てつつ教会の裏へ行く。アイリスの位置が分からないから刀は抜かずに突入する事にした。音の感じだと入り口付近にはガルバしかいないだろう。
とにかく体当たりでステンドグラスを破壊し中に侵入する。落下中に貴族らしい身なりの男とアイリスの位置を把握し、その勢いのままアイリスに向けられていた腕を蹴り飛ばす。

ナバス「ぐぁ!」

俺「無事か?」

アイリス「シリウス!」

ナバス「貴様!何者だ!」

貴族が突きを放ち、俺は半身で躱すと同時にそいつの腕を左の掌底で弾く。そして更に一歩踏み込み、右手の手刀を胸部に打ち込む。

俺「チェストォ!」

ナバス「がは!」

貴族は数歩退がり膝を突いた。

アイリス「シリウス、空手習ってたの?」

俺「いや、今のはその場のノリで言った。」

アイリス「・・・・・はぁ。」

俺「何だよ。助けに来ただろ?」

俺はアイリスに近付くと、腕を縛っているロープを解き始める。中々に硬いな。

アイリス「シリウス!後ろ!」

俺「む!」

ナバス「その女から離れろぉ!」

貴族は剣を振り被ると俺達の方へ向かって来る。だが慌てる必要は無い。

俺「衛生兵!」

ガルバ「だ、れ、が!衛生兵だぁ!」

いつの間にか近くまで来たガルバが貴族の剣を受け止める。俺はその間にロープを解き、それが終わると直ぐにガルバ達の方を向く。俺はガルバの脇腹をギリギリ掠めながらボディブローを放つ。

ガルバ「ぬぉ!」

ナバス「ぐふ!」

貴族と距離が出来た所でアイリスを抱える。

アイリス「ひゃ!ちょ、ちょっと、シリウス?」

いわゆるお姫様抱っこで抱える。恥ずかしいのか顔が赤いアイリスを入り口まで移動して下ろす。

アイリス「・・・あ!遅いじゃない!結構怖かったんだから!」

俺「いや、これでも急いだ方だぞ。それに俺を出し抜こうと情報を隠されてさ。なぁ?」

俺は敢えてガルバに向かって言う。

アイリス「はぁ?人が危険な時に手柄を独り占めする為だけに黙ってたの?信じらんない!」

ガルバ「お前!言うなよ!」

俺「そもそも言われて困る様な事するなよ。」

ガルバ「ぐぅ!」

俺「とにかく奴を片付けるか。」

ガルバ「はぁ、そう言えばあいつは何者だ?」

アイリス「ナバス・ブルーノ伯爵よ。」

俺「ナバス・ブルーノ伯爵だ。」

ガルバ「は、伯爵!」

アイリス「シリウス、あの人の事知ってるの?」

俺「さっき助けたカップルだよ。あいつ等、結構ちゃんと調べてたみたいでさ。」

カップルの調べだと、路地の入り口で黒塗りの馬車を見たという目撃証言を得ていたらしい。色々探し回りあの2人もその馬車を見つけ、追跡すると伯爵邸の裏へと消えたという話だった。

俺「だから、もしかしたら今回の首謀者は伯爵かもって言ってたんだよ。まぁ、首謀者が伯爵って分かっても目的の方は分かってないけど。」

アイリス「ああ。それなんだけど、本人が言うには悪魔召喚が目的だって。」

俺「はぁ?何だそれ?いつからオカルト話になったんだ?」

アイリス「私に聞かないでよ。」

まぁ、魔物や神までいるんだから悪魔くらいは普通か?

ガルバ「おい!あいつ!」

ガルバが叫び、見ると伯爵が祭壇の所に立っている。伯爵は剣の刃を左手で掴むとそのまま剣を引き抜く。伯爵の手から血が滴り落ちた。

ナバス「量は若干少ないがこれでも召喚は出来る筈だ!」

魔法陣が光り召喚が開始される。ふと疑問に思うけど、悪魔召喚の術式なんて何処で習ったんだ?どっかの文献にでも書かれてるのか?

ナバス「悪魔よ!出よ!そして我に力を!」

すると魔法陣の中央から黒い煙の様な物が立ち上る。

アイリス「あれが、悪魔?・・・何か思ってたのと違うよね?」

俺「まぁ、もうちょっとモンスター感があっても良かったかな?」

悪魔『我を召喚したのは貴様か?』

アイリス「うわ!喋った!」

ガルバ「おいおい、結局どうなってんだ?これからどうなる?」

俺「あ~。多分、あのタイプの悪魔は実体が無いから、誰かに取り憑いて行動するんじゃないか?」

アイリス「そんな悠長に言う話?」

ナバス「さぁ!悪魔よ!私の願いを叶えろ!欲しい物は何でもくれてやるぞ!」

アイリス「"何でも"って言葉は悪魔に言っちゃ駄目よね?」

俺「確かに。これで命を寄越せって言われたらどうするつもりだ?」

悪魔『フンッ。先ずは身体をどうにかせねば始まらぬ。』

ナバス「ならばあの者達を使え!」

伯爵が俺達を指して言う。

ガルバ「あの野郎!」

アイリス「ちょっと、こっち見てるわよ?」

悪魔が俺達を品定めする様に見回し、最後は俺と目が合う。

悪魔『あの男、魔力を感じない。だが何故か神に近しい雰囲気がある。』

俺「何?俺って何か神々しいの?」

ちょっとした冗談を言いつつ両腕を広げてポーズを取ってみる。

アイリス「・・・・・。」

俺「いや、黙るなよ。」

ガルバ「あいつの勘違いだ。気にするなよ。」

俺「別に落ち込んで無いよ。」

悪魔『面白い。貴様にしよう。』

悪魔が俺に向かって飛んで来る。

アイリス「こっち来た!」

俺は刀を抜き、最上段で構える。そして、タイミングを合わせ真っ直ぐ唐竹割りを放つ。

アイリス「シリウス!」

アイリスが俺の顔を覗き込む。俺も一応、自分の身体を調べるが異常は無い。予想通りならこの刀の力と俺自身の特異体質で決着が付く筈だ。

悪魔『ぐあぁぁ!何だ!これは!消える、我が、意識が消える!ふあぁぁぁ!』

ナバス「な、何?何が起きた!」

悪魔は叫びながら昇天して行く。

アイリス「え?どういう事?」

俺「あの悪魔を斬った。」

ガルバ「斬った?」

憶測の域は出て無いが、この刀は"斬る"って当たり判定が確定した物に対して即死効果に近い力を発揮する。だが刃が普通に当たるだけだと、刃物として対象に切り傷は作れても即死効果は発揮しない。
つまりは刀自身が"斬った"と断定しないと即死効果は出ない。そこで俺の特異体質が関係して来る。俺の特異体質はザックリ言えば、斬ろうと思えば大体の物は斬れるって事だ。ただ例外もある。火や水みたいな実体が無い物に対して、形は変えられても実際には斬れない事だ。
しかし言い換えると"形が変わる"って事は分断は出来るって事だ。その分断を"刀"が"斬った"と判定すれば即死効果が現れるって事だと思う。

アイリス「要するに貴方が"斬る"って決めて悪魔を両断したから、刀が"斬った"って当たり判定をして効果が出たって事?」

俺「多分だけど、それで合ってると思う。」

アイリス「何それ?チートじゃん。」

ガルバ「ちーと?まぁ、良いや。というか、刀が判断って何言ってるんだ?」

俺「お前は細かい事を気にするな。」

ガルバ「はぁ?」

ナバス「ふざけるなぁ!」

伯爵の事、忘れてた。

ナバス「実体の無い筈の"悪魔"を"斬る"だと!そんな事出来る訳が無いだろう!スワロウからこの国を守る為の力だぞ!それを貴様!よくもやってくれたな!」

俺「話が分からないけど、クリスがどうかしたのか?まぁ、とにかくあいつが何かしでかした時は俺が殴ってでも止めてやるよ。というか、あんたこの国の為って言ってるがそれ本心じゃないだろ?」

ナバス「何!」

アイリス「え?」

俺「本当に国の為だって言うなら何で領民を犠牲にした。国を守るなら人を守る事を考えるべきだろ?結局はクリスを理由に自分の我を通そうとしただけだろ?だから人を踏み台にしてでも力を得ようとしたんだ。」

アイリス「シリウス。」

ナバス「貴様!」

俺「そんな奴が大義名分掲げて騒ぐなよ。」

ガルバ「お前、顔に似合わず結構まともなんだな。」

俺「顔に似合わずは余計だろ!」

アイリス「シリウス!危ない!」

伯爵がいつの間にか直ぐ近くに迫っていた。

アイリス「させない!」

アイリスが氷を放ち、伯爵の手が俺に届く前に伯爵の身体を氷漬けにする。

ナバス「ぐぁ!・・・貴様ぁ!」

ガルバ「おりゃ!」

その隙にガルバが真後ろに回り込みエストックを突き立てる。

ナバス「がは!」

俺「あ・・・。」

ガルバ「どうだ!俺とアイリスちゃんとの絆の連携!」

俺「だから、人の婚約者を名前で呼ぶな!」

俺はガルバを殴り飛ばす。
とにかく首謀者の伯爵をガルバが仕留め、一応解決したかな?って感じだろう。ただガルバのお陰で、別の問題が発生する。

俺「領主、いなくなったな。どうしよう。」
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