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[Worldtrace2]

八つ当たりVS憂さ晴らし2

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さて、ここからどうするか。電光石火の動きで攻めて来るジェイド。色々考えたけど、正直そんなに手札は無い。というか現状で出せる札は出し切った。残ってるのはこの身一つだけだ。
俺は改めて深呼吸をし、"ジェイドの攻撃の全てを見切る。"と心に決める。

ジェイド「ふぅ、フン!」

ジェイドも一息吐くと構え直し、またも急接近する。ジェイドが放つ左ボディブローを左の掌底で弾くと、2撃目の右ストレートが迫る。掌底に使った左腕を裏拳気味に動かし防ぎ、俺はすかさず右ストレートを放つ。
ジェイドは俺の右腕を掴み、そこから流れる様な動きで膝蹴りを繰り出そうとする。俺はその膝蹴り防ぐ為、脚で押さえ込む。

ジェイド「う、ぐぉ!」

俺「ぐっ、くぅ!」

不意にバチッと音がした瞬間、俺の力が抜ける。ジェイドがいない。さっきの突きを繰り出す為にまた距離を取っていた。
俺の位置と奴の腕の長さ、色々考えて俺から2歩くらい離れた所が奴の位置だろうと思う。俺は意識を集中し、ジェイドの動きに合わせ前に出る。
ジェイドの右腕が伸び切る直前で肘の辺りを掴み、俺は自分の右腕をジェイドの脇の下へ通す。そしてジェイドの腕を前腕と上腕で挟むと同時に、素早く背中を向けながらジェイドの下へ潜り込む。
そう一本背負いだ。

俺「うおりゃあ!」

ジェイド「な、何!」

知ってか知らずかジェイドは自然と受け身を取る。しかし硬い床に叩き付けた訳だから痛みは感じている筈。少しの間だろうけど動けない筈。今度は俺が渾身の一撃を打ち込む為に拳を振り上げる。

ジェイド「く、くそっ!・・おぉぉぉ!」

気合いと根性の緊急回避が間に合い、俺の拳は床に当たる。
ボカン!と漫画で聞く様な音と共に盛大に床を壊す。とは言え抜ける程じゃない。

ジェイド「はぁ、はぁ、はぁ。まさか、もうあの速度に対応するとはな。」

俺「あれは偶々だ。それに投げ技を知ってたから"今なら使える!"って思ってやっただけさ。」

ジェイド「フン。その程度で防がれた俺の気持ちはどうなる?」

どうなる?って言われてもな。知らんとしか言えん。

俺「まぁ、あんたの速度に対応してやる!って覚悟は決めてたけどな。」

ジェイド「気持ちでどうにかなる物では無いだろう。」

俺「生憎だけど俺はそういう体質なんだよ。」

自分で言ってて何言ってんだって感じになる。しかしこういう事は気にしたら負けだ。忘れよう。
ジェイドの瞬間移動にも大分慣れた。完全に見えてる訳じゃないけど、動き始めが何となく分かる様になって来た。後は経験と勘で動きを予測、対応する。
ジェイドの奴は1つ行動する度に離れ、別の動きに変え仕掛けて来る。全く器用な奴だ。考え様によってはチャンスもある。さっきみたいにカウンターなら攻撃を当てられる。言う程簡単じゃないけど。とにかく今は回避に専念しよう。
ジェイドの右フックを伏せて躱し、左のボディブローは退がって躱す。続けて左脚を軸に右の後ろ回し蹴りが来る。俺は一歩踏み込み、速度が出る前に蹴りを腕で防ぐ。そして残った左の軸脚を蹴り飛ばす。

ジェイド「ぐぉ!」

倒れ込むジェイドの頭を狙い、今度は俺が蹴りを繰り出す。ジェイドは手を突き、逆立ちになると俺の蹴りを躱し、腕だけで飛び跳ねて立ち上がる。

俺「全く。気が抜けないな。」

ジェイド「それはこっちの台詞だ。」

言い終わった次の瞬間、ジェイドが視界から消えた。奴が体当たり気味に左肘の突きを繰り出す。俺は右肘で受け止め、互いに睨み合う。
ジェイドは間髪を入れずに俺の右側面へと回り込む。俺は腕を振り上げた事から、再度上からのエルボーと判断した。最初の時と同じく左の掌底で受ける為に動くとエルボーが途中で止まる。
俺が反射的に床を転がり回避行動を取ると、膝蹴りの構えでジェイドが通り過ぎた。何とか直撃は免れたが、咄嗟の回避だった為に右頬を掠める。

俺「はぁ、はぁ、ふぅ。危ねぇな。」

ジェイド「俺はこれで終わらせる予定だったがな。」

相変わらずジェイドの動きが速い。下手に仕掛ければ、逆にカウンターを喰らうかも知れない。今は慎重に動くしかない。
ただ何となく見えて来た事がある。あの体当たりに近い突きは、勢いをそのまま乗せて放つから速度も威力も凄かった。だけど他の攻撃は今までとあまり変わらない。要するに真っ直ぐ進むだけなら、あの速度で問題無い。ただ別の動きを加えるとなると止まる必要があるって事だ。

ジェイド「はぁぁ!」

そうと分かれば、あの突き以外の対処はそれ程難しく無い。俺は右の回し蹴りを躱し、反撃のタイミングを計る。
ジェイドは回し蹴りの勢いを殺さず回転し左の肘打ち。それを防ぐと流れる様に右の手刀が来る。それを躱した俺はカウンターの掌底を顎に入れた。

ジェイド「が!」

今度は俺が蹴りを入れ様と動く。そして例によってジェイドは高速移動で逃げる。俺は更に踏み込み、もう一度回し蹴りをする。

ジェイド「チッ!」

素早く防御姿勢に入ったが、俺の回し蹴りでガードが崩れる。俺はすかさず脚を入れ替え再度蹴りを入れる。

ジェイド「ぐは!」

ジェイドを蹴り飛ばすとそこは階段の前だった。
ああ、階段か。なんて悠長な事を考えていたのが間違いだった。ジェイドが目の前に現れ攻撃を仕掛けて来る。左ボディ、右ストレートと左右の腕をそれぞれ掴んで止める。だがその瞬間、目の前で火花が散る。頭突きだ。

俺「痛っ!げふ!」

身動きが取れないこのタイミングで前蹴りを喰らう。小さい頃、良く色んな人に"階段でふざけるな!"と言われた事を思い出す。今回は別にふざけてた訳じゃないけど。
とにかく俺は勢いのまま階段の中間地点まで転げ落ちる。

俺「がは!痛ぇ!・・・うわ!」

起き上がるかどうかのタイミングで、ジェイドは飛び蹴りを放つ。俺が躱すと体勢を立て直すより先にジェイドの連続攻撃が迫る。俺は連続で放たれる左フックと右フックを躱しながら、ジェイドの右側面に移動する。そこからタックルの姿勢で突っ込み腰を掴む。

ジェイド「な、何!ぐわ!」

俺が腰を掴み階段へ放り投げると、今度はジェイドが転げ落ちた。ジェイドは身体を打ち付けたのか、起き上がるまでしばらく掛かりそうだった。俺は階段を降りジェイドに近付く。

ジェイド「まさか投げ落とすとはな。」

俺「最初に落とされたのは俺だぞ。」

ジェイドの体内の魔力も大分減ってる様だ。さっきまで纏っていた分と比べると量が減ってる。何より炎と電気が消えた。
俺も疲れて来たし、そろそろこの戦いを終わらせないとな。
向かい合った状態から、俺は左腕を振り被るフリをする。ジェイドも迎え討つ為に右腕を構え動き出す。俺はタイミングを見て動きを変えると、ボディブローを入れる。

ジェイド「かは!・・ぐふ!」

続けて右のボディブローを入れる。千鳥足で良い感じに距離が離れた所を今度はアッパーカットを狙う。しかし当たる瞬間に躱され、逆に左フックが俺の顔に当たる。

俺「ふが!・・・ぶ!」

直ぐに2発目の右ストレートが刺さる。ジェイドは一歩、身を引き腰を落として構える。
俺は痛みに耐えここぞというタイミングで前に出る。

ジェイド「うぶ!」

俺は膝蹴りをして来るジェイドの顔面に左の掌底を入れそのまま床に叩き付けた。

ジェイド「ぐ、おおぉぉ!」

俺「うぉ!」

掌底を入れた腕を掴み、そのまま身体を回転させ俺を投げる。その流れで腕ひしぎ十字固めに入る。

ジェイド「うおおぉぉぉ!」

俺「くそっ!」

左腕を折られ無い様に力を入れつつ、右手で脚を押して外そうとはするが外れない。
俺は改めて呼吸を整え腕と腹に力を入れる。

俺「ふん!」

ジェイド「な、何だと!」

俺は腕を掴まれたままジェイドを持ち上げ、床へと叩き付ける。

ジェイド「うぐ!」

[気]のお陰か、それとも"やろうと思えば出来る。"の特異体質のお陰なのか、腕を外し何とか脱出する。
お互い肩で息をしながら睨み合う。ジェイドが一歩踏み込み左、右と抜き手を放つ。俺は右の抜き手を躱しながらその腕を掴み、壁へ叩き付ける為にジェイドを押し込む。

ジェイド「喰らうか!」

俺「はぁ?」

ジェイドは壁に脚を掛け衝突するのを防いだと思った瞬間、一気に壁を駆け上がり一回転。俺の後ろへ回り込む。映画とかで見た事はあるが目の前で見るとは思わなかった。そして今度は逆に俺を壁に叩き付ける為、肩を掴み押し込んで来る。
俺は壁に手を付き踏ん張ると直ぐに左肘で反撃に出る。しかしジェイドは素早く跳び退き回避する。
ジェイドは改めて魔力を集める。ジェイドが繰り出す右ストレートを壁の方へと弾く。弾いた拳は壁にヒビを入れた。これだけ殴り合ってまだこれ程の力が入るって異常じゃないか?そんな事を考えているとジェイドの回し蹴りでその壁へと叩き付けられた。

俺「ぐは!・・・うわ!」

ジェイドが更に左ストレート、右ストレートと連続で打ち込んで来る。俺が左右に動いて躱すと背中の方で炸裂音がする。見るのが怖いから気にしない事にしよう。

ジェイド「喰らえ!」

ジェイドが右拳を振り上げる。俺はここで本日、2度目の熊殺しを発動させる。

ジェイド「ぐっ!・・はぁ、はぁ、くっ!ふぅ。」

ジェイドが呼吸を整える。
俺の直感が"来る!"と警鐘を鳴らした。俺は気付かれない様に後ろの壁へ[気]を流す。ビキビキっと音が聞こえる。
俺は両手を胸部の辺りに重ね合わせ構える。その直後ジェイドの拳が俺の重ねた手の平の位置に来る。思った通り、技も場所も正解だった。しかし威力は相変わらずで俺の身体を壁に叩き付ける。

ジェイド「はああぁぁ!」

俺「ぐっ!くそっ!まだか!」

そしてとうとう限界を迎える。

ジェイド「な!馬鹿な!」

俺「へっ。」

ジェイドの力と衝撃で壁が破壊される。
結果、俺達は外に放り出される事になった。
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