Worldtrace

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[Worldtrace2]

VSスコルアス2

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アイリスとクロード、そしてスコルアス。2対1で睨み合う。

スコルアス「悪足掻きと言ったな。私の力はまだまだ、この程度では無いぞ!」

右腕を上げると煙を手に集め、アイリスの方へと一気に放つ。アイリスはそれに対応する様に左腕を振り竜巻を発生させる。岩の壁と同じく腕を振るだけで発動出来る様に設定してあった。
竜巻は煙を巻き上げつつ関係のない方角へ走る。煙の影響か竜巻が通った箇所の草花が枯れた。

クロード「あの攻撃を喰らえば一溜りも無いでしょうね。」

アイリス「さぁ、決着を付けるわよ!」

スコルアスは両腕に黒い煙を纏わり付かせ、徒手空拳で挑むつもりなのか素手のまま構える。
クロードが走り出すとスコルアスはその初動に合わせ右ストレートを繰り出す。
クロードは半身になり躱し、すかさず剣を袈裟斬りに振るう。だがスコルアスは、焦る事無く鎬に左手の掌底を当て跳ね除ける。

クロード「くっ!」

スコルアスは続けて右の回し蹴りを放つと、クロードがそれを躱し突進する。そんなクロードの動きを封じる為、スコルアスは回し蹴りの勢いを利用し裏拳を繰り出す。

クロード「チッ!」

クロードは咄嗟の判断で裏拳を受け止めた。しかし押し返され、逆にスコルアスの接近を許す。クロードは追撃を警戒したがそれは杞憂だった。側面に回り込んだアイリスが聖剣で突きを放ち、スコルアスの動きを止める。

スコルアス「鬱陶しい!いい加減、貴様等の相手は飽きたぞ!」

アイリス「ならそっちが観念しなさい!私達も色々と忙しいのよ!」

アイリスは聖剣とレイピア、2つの剣で斬撃と刺突のコンビネーションを繰り出す。しかし流石は使徒と言うべきか、当たる寸前でスコルアスが躱していく。

スコルアス「チッ!」

だが簡単に躱せる攻撃でも無い。ギリギリの回避が故に服がボロボロになる。
中々に追い詰めていたが、何故かこのタイミングでアイリスは右に移動する。

スコルアス「な!うぉ!」

アイリスの真後ろからクロードが現れ、火の玉を放る。
爆煙からスコルアスが飛び出した瞬間、アイリスが再び岩壁を発動させる。

アイリス「あ!」

クロード「くそっ!」

スコルアスは煙を身体に纏い、アイリスの攻撃を防ぐ。岩は身体に届く瞬間に消された。

アイリス「この!」

アイリスは握り拳を作り人差し指と親指を立てる。いわゆる指鉄砲のポーズだ。

アイリス「[Aquabullet]!」

これはアイリスが小さい頃、弟と遊ぶ為に作った魔法。ただの水鉄砲だ。スコルアスもただの目眩しだと感じていた。そして反対側にはクロードもいた。そのクロードは火の玉を放り攻撃する。
スコルアスはタイミングを見て回避する。クロードの火の玉はアイリスの水鉄砲とかち合い一瞬で水蒸気に変わる。

アイリス「くっ!」

クロード「な!済みません!お嬢様!」

そしてその後もスコルアスを前後で挟み2人は並走しながら魔法を撃つ。スコルアスがアイリスの水とクロードの火を躱す度に、水蒸気へと変化させる。

スコルアス「フンッ!いい加減にしろ!往生際が悪い!もう限界だろう?そろそろ終わらせてやる。」

確かにアイリスもクロードも息が上がっていた。限界も近い、そして仕込みも終了していた。

スコルアス「フッ。・・・な、何だ!これは!」

スコルアスは狼狽える。今日は日が出ていて気温は低く無い。自分の吐く息が白くなる程寒いという事はありえない。状況を確認しているといつの間にか服が濡れている事に気付く。さっきの水蒸気、あれを何度も浴びた。だから濡れているのだ。煙で防げば恐らく濡れなかった。しかしただの水蒸気。わざわざ力を消費してまで防ぐ必要は無い。その考えが失敗だった。
スコルアスが熟考していると、更に驚愕する事態が起きる。

スコルアス「はっ!・・・な、何故!服が凍り付いてている。」

寒さを感じながら辺りを見回す。先程の水蒸気が消えずに空中に残り、光を乱反射させている。

スコルアス「いや!これは!氷?」

クロード「それはお嬢様が編み出した新魔法。名を[Diamonddust]。聖剣で冷気の層を空気中に作り出し対象を空間毎、凍らせる魔法だ。お嬢様は御優しい方だ。だから確実に生き物を死なせるこの魔法を今まで発動して来なかった。誇れ。貴様がこの魔法を喰らった最初の1人だ。」

アイリスの焦りもクロードの失敗もこの為の演技だった。

スコルアス「こ、小娘!」

アイリス「これで終わりよ。」

言い終わるのが先か凍るのが先か。スコルアスはアイリスの方に手を伸ばしたが、間に合う事無く凍り付く。
クロードは凍ったスコルアスに近付き、剣を最上段に構え振り下ろす。バキンと音を立てスコルアスが切断される。

アイリス「クロード。」

クロード「流石に止めを刺さねば安心出来ませんでしたから。それにこの程度の事でお嬢様の御手を煩わせる訳には参りません。」

アイリス「ありがとう。」

クロード「お嬢様。それと・・・・先程の奴が言っていた事なのですが、お嬢様を"アテナの使徒"と呼んでいました。どういう事ですか?」

アイリス「え?ああ、あれね?え~と・・・何て言おうかな?」

ここまで来れば仕方ない。自分は魔王を倒し、この『世界』を平和にする為に送り込まれた使徒だと伝えた。勿論シリウスの事は言わない。シリウスとアイリスを送り込んだのは違う神だ。別枠である以上、人の事を勝手に話す訳にはいかなかった。

アイリス「そういう事だからお父様やクリスには言わないで。」

クロード「"使徒"という事はアイリスお嬢様は?」

アイリス「大丈夫。私はこの『世界』で産まれて育ったアイリス・スワロウ本人だから。別の記憶を持ってるってだけ。」

話を聞き終えるとクロードが震え出し、途端に自分で自分を殴る。

アイリス「え!ち、ちょっと!突然どうしたの?大丈夫?」

クロード「まさかお嬢様がこれ程の事態に巻き込まれ、しかもたった御1人で抱えていらしたとは。それに気付かず、痛恨の極みに御座います。」

アイリス「それで自分を殴ったの?そんなに大した話じゃないわよ。それに私1人で抱えてた訳じゃないし。」

クロード「は?」

アイリス「シリウスも知ってるよ。私が使徒なのは。」

今日は晴れだ。太陽が顔を出し、いわゆる洗濯日和と言える。そんな晴れた日だと言うのにクロードは落雷の音と衝撃を受けた。実際には落ちていない。クロードが精神的ショックを受け、錯覚しただけだ。だが、クロードに取ってはそれ程の衝撃を与える事実だった。

クロード「ば、馬鹿な!私よりあの男の方がお嬢様からの信頼を勝ち得ていると言うのか!そんな!私は・・・。」

アイリス「あ、あれ?言わない方が良かったかな?ま、まぁ、とりあえず戻らないとね。ほら、行くよ。クロード?」

ブツブツと呟くクロードを引き連れクリスの元へ向かう。そこで空を飛ぶ3つの影を見つける。1つはエレナ、もう1つはジン。最後の1つは魔族のエリスだった。方角からあの狼に向かっていた。しかしそれよりも気になる事があった。

アイリス「何で空飛んでるの!あんな魔法、聞いた事無いけど!」

クロード「まぁ、見た事は無いですね。」

アイリス「シリウス、知ってたのかな?あ!でも私も新魔法の事、話して無かった。」

クロード「上位の存在であるお嬢様が、あの男に気を遣う必要は無いかと。」

先程スコルアスに自分達は同格と言った手前そういう訳にはいかない。ただシリウスが使徒とは言えない以上、何と言えば良いか分からない。

アイリス「と、とにかく戻ろう。クリスが待ってる。」

クロード「はい。」

アイリスは考え込むのを止めクリスの元に戻る。
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