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[Worldtrace2]

VSスコルアス

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スコルアスは両腕を広げ、手の平に魔力を集める。集めた魔力は黒い煙の様に変化した。それを見たアイリスはスコルアスの得意な属性を考える。黒い煙から連想するなら闇の可能性はある。それなら光が有利かも知れない。しかしアイリスが使える光属性は回復系統しかない。考えても仕方ないと向き直る。

クロード「お嬢様?大丈夫ですか?」

アイリス「うん。やろう。」

アイリスは直ぐに炎を出すと、槍の形に構築しスコルアスに放つ。

スコルアス「フンッ!」

腕を振り煙を飛ばす。煙が炎の槍に当たると槍は掻き消えた。

アイリス「!」

クロード「!」

アイリスは次に聖剣の力で氷の礫を作り放つ。先程と同じく煙で防ぐ。その隙にクロードがスコルアスの真後ろから炎の玉を放つ。

スコルアス「チッ!」

後ろに左手を向け掻き消す。クロードは続けて攻撃を仕掛ける動きをする。スコルアスはクロードに煙を放とうと腕を振り上げる。
スコルアスの注意が逸れたタイミングで、今度はアイリスが仕掛ける。風を発生させるとその風に炎を乗せる。

スコルアス「な!くそっ!」

炎がスコルアスを吹き飛ばそうと迫る。しかし衝突の瞬間にスコルアスは回避する。

アイリス「クロード、大丈夫?」

クロード「はい。しかしこれでハッキリしました。攻撃を消せるのは煙であって奴自身では無い。そしてあの煙を超える量の力なら押し切れる。」

スコルアス「舐めるなよ!原始人共が!」

アイリス「!」

スコルアスがある物を取り出す。
種類は分からない。使い方もしっかりと理解はしていない。だが確かに知っている。ドラマや映画で何度も見た。拳銃だった。辺りにガゥンと轟音が鳴り響く。
しかし弾丸は突如として現れた岩に受け止められる。アイリスは魔王アーサーと戦って以来、事態が突発的に変化した時の為に動作1つで魔法が発動する様に色々と仕込んでいた。この岩も脚で地面を踏むと出現する様に設定していた。
とは言えタイミングはギリギリだった。拳銃を目視した時点で発動したから間に合ったが、後少し遅れていれば死んでいたかも知れない。冷や汗が止まらない。

クロード「何の音ですか?今のは?」

アイリス「銃よ。」

クロード「ジュウ?」

スコルアス「不思議だよな。『地球』と違う筈の『世界』でも、人殺しの道具はちゃんと発達し作られる。この拳銃は力の無い者でも戦える様にと帝国で開発された物だ。」

クロード「帝国だと!」

ゲイツ辺境伯の治める都市イージスの南側、海を挟んだ先に7つの群島がある。帝国はそこを拠点にしている国だ。スコルアスの持つ拳銃はその国から手に入れたと言う。

アイリス「そんな物を作っているなんて。」

クロード「まさか戦さの準備か!帝国は王国との盟約を忘れたのか!」

アイリス「落ち着いて。今は関係ない。集中して。良い?銃は音がした時には弾が発射された後だから。」

クロード「弾・・・・ですか。」

話の途中で効力が切れ、岩が崩れ落ちる。アイリスは中に入っていた弾丸のカケラをキャッチするとクロードの方へ投げる。

クロード「こ、こんな小さい物で人の命が奪えるのですか?」

アイリス「当たり所が悪ければ即死よ。気を付けて。」

スコルアスは拳銃に弾を込める。ドラマで見た知識通りなら回転式だと思える。ぱっと見というのもあるが銃そのものの知識も無い為、それ以上の事は分からない。
弾丸を防ぐのに炎や氷、風は使えない。水も考えたがかなりの量が必要だろう。そう考えるとやはり防ぐには岩を使うしかない。常に発動出来る様に準備する。だが保有している魔力には限界がある。このままではその内負ける。聖剣の力を使えば魔力を消費せずに戦えるが、氷だけでは勝てないだろう。何か策を考えなければ負けてしまう。考え込んでいると影が視界を遮る。

アイリス「クロード?」

クロード「お嬢様、お下がり下さい。」

アイリス「何言ってるの!危険よ!」

クロード「お嬢様!」

アイリス「な、何よ?」

クロード「危険なればこそです!・・・正面は私が受け持ちます!」

アイリス「クロード・・・気を付けてよ!」

クロードは頷くとスコルアスに向き直り、片手剣を抜き全力で駆ける。そのスコルアスは銃口をクロードへ向ける。
ドォンと音が鳴り銃口から火花が散る。しかし同時に金属音も鳴った。

スコルアス「な!」

クロードが片手剣で銃弾を受け流す。尚も接近するクロードに対し、狙いを変え銃弾を放つ。だがクロードは狙いが分かっていたのか見事に躱す。

スコルアス「くそっ!・・・・うお!」

目と鼻の先に接近したクロードは片手剣でスコルアスの顔に突きを放つ。その攻撃を躱し、左手でクロードの腕を掴むと今一度クロードの顔に銃口を向ける。クロードは拳銃を左手で払い軌道を逸らす。銃弾は左頬を掠めるが、致命傷にはならなかった。そしてそのままスコルアスの左手を掴む。

スコルアス「貴様!何故!」

クロード「躱せた理由か?私は"ジュウ"と呼ばれるそれが、弓矢の強化版だと思っている。だがあの勢いと速度、放たれると下降し最後には地面に落ちる弓矢とは違う。この距離なら真っ直ぐ対象に当たるだろう。」

スコルアスは拳銃を持つ腕を外す為に踠く。クロードも左手に力を入れつつ自分も剣を持つ右手を外そうと踠く。

クロード「しかし逆に考えるとその筒から放たれる弾は、必ず筒の向いた先に到達するという事になる。ならば後はその筒の向きと、貴様が弾を撃つ瞬間を見逃さなければ躱せると考えたのだ。」

スコルアス「例えそうだとしても簡単に躱せはしない無い筈だ!」

クロード「ああ、そうだな。だから考えた。」

スコルアス「何?」

クロード「私がお前なら、正面から突貫して来る敵に対して目を狙う。ただ正確な場所が分からない以上、受け流せるかは賭けだったがな。2撃目に関しては接近する敵の動きを封じる為、脚を狙うのは普通の判断だ。」

スコルアス「私の動きを全て予測したという事か。」

クロード「そうだ。」

スコルアス「だが!甘い!」

クロード「くっ!」

とうとうスコルアスの右腕が外れる。拳銃がクロードに向けられた瞬間、下から氷柱が伸び拳銃を氷漬けにする。惜しい事にスコルアスは間一髪で拳銃から手を離していた。

スコルアス「こ、小娘!」

クロード「お前の相手は私だ!」

手の中で作った火の玉を爆弾の様にスコルアスに放る。そのまま命中し爆煙を上げ、後ろに弾き飛ばす。

スコルアス「く、くそ!・・・ぬぉ!」

アイリスはその隙を見逃さず、左手に持ったレイピアを上段から振り下ろす。

スコルアス「当たるか!喰らえ!」

アイリスの攻撃を半身になり躱し、すかさず魔力を纏わせた左の手刀で攻撃する。
負けじとアイリスは聖剣を引き抜き、手刀を迎え打つ。

スコルアス「くっ!」

アイリス「はぁ!」

手刀を跳ね除け聖剣で連続突きを放つ。対応が遅れたスコルアスは頬や腕、肩に斬り傷を負う。

スコルアス「くそ!喰らえ!」

体勢を立て直し今度は右手で抜き手を放つ。だが同時にアイリスはレイピアの刺突で迎え打つ。
アイリスの刺突が腕を掠め軌道が逸れる。チャンスと見たアイリスは聖剣を振り下ろす。それを見ていたクロードもまた片手剣を構え突貫して来る。

スコルアス「うぉ!舐めるなよ!」

黒い煙が足元から噴き上げる。

アイリス「クロード!離れて!」

クロード「くっ!」

スコルアスは噴き上げた煙を両手に集め、2人へ撃ち出す。アイリスもクロードも何とか躱し距離を取る。

クロード「まだこれ程の力を隠し持っていたか!」

アイリスは思う。さっきまで防御に使っていた物を攻撃に使った。
勿論、拳銃を取り上げたのだ。降伏しないなら攻撃手段を変えるしかない。ただ防御の為に置いてあった足元の煙まで使っている。推測の域は出ないが恐らく間違い無い。

アイリス「大丈夫。落ち着いて。あれはただの悪足掻きよ。」

表向きクロードに言っている様だが実は自分に言っていた。とにかく決着を付けなければならないが、まだ戦いが残っている以上ここで全て使い切る訳にもいかない。ここは"あの技"を使おう。あれならそこまで魔力を消費しない。アイリスは大技の為に呼吸を整え、意識を敵へと向ける。
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