Worldtrace

mirror

文字の大きさ
上 下
150 / 187
[Worldtrace2]

合流

しおりを挟む
問題が山積みだ。偉そうに任せろと言った手前、あの狼を何とかしなきゃならない。しかし俺の手札には華麗に対処出来る様な物は何も無い。

俺「考えても仕方ない。俺に出来る事なんて近付いて叩っ斬るしか無いからな。・・・行くか。」

ついでにランドの彼女の方を見るとランドは間に合ったらしく、彼女と抱き合っていた。戦場だぞ!って言いたいけど助けられて安心したんだろう。あまり野暮な事は言わない様にしよう。
それにしてもあの狼に関して俺は何も知らない。ダウンロードした『本体』の方の記憶にも情報が無い。今更かもしれないけど、予測演算がちゃんと機能してるのか疑問に思う。これだと予定通りにトレース出来てるって言えないだろう。ただ今回は完璧にトレースした場合、虐殺か壊滅の2択だ。そうなるよりは良いか?
とにかく情報の無い敵を特効アイテム無しで倒すって事だけど、どうしよう。

俺「はぁ~。困ったなぁ。」

?「そんなに困ってるなら助けてやろうか?」

俺「ああ。今直ぐ助けて欲しいよ。」

ジン「任せろ!それにお前もいるんだ。負けやしないさ!」

声からジンだとは分かっていた。そしてついでにエリスもいる。

俺「よう。」

エリス「ああ、ジンも私も無事に辿り着いたぞ。」

俺「で?他の王子との和平交渉は?」

ジン「おう!アレックス・・・と言うかアレクサンダーが助けを求めない限り、自分達は戦いに出ないってさ。」

エリス「何でもアーサー様の遺言で、復讐よりも同族を守れと言っていたらしい。」

遺言か。俺が言うのもあれかも知れないけど、アーサーなら言いそうだなとは思う。

俺「じゃあ、これ以上話が拗れる前に決着を付けるか。先ずはあの狼だ。」

ジン「そういや、さっきお前の友達とすれ違ったぜ?あいつにも頼んだら?」

俺「いや、あいつには頼まない。」

ジン「何でだ?」

俺「今、あいつは世界で1番大事な者を取りに行ったからさ。」

ちょっとキザっぽかったかな?

ジン「お、おう。」

おい、引くなよ。俺が変な奴みたいじゃないか。

エリス「ジン。こいつが変なのは前からだろ?今更引くな。可哀想だぞ。」

俺「お前その言い方は馬鹿にしてるだろう!村では助けてやったのに、その恩を忘れたのか!」

エリス「その借りは今日この場にジンを連れて来た事で返した筈だ!ならば今のは別の話だろ!」

俺「こいつ!」

ジン「落ち着けよ2人共。」

ジンが割って入る。そこである事に気が付く。

俺「あれ?そのベルト・・・腹の帯、どうした?」

ジン「あ!これ?凄いだろ?鉄っぽいんだけど軽いし丈夫なんだぜ!」

俺はエリスに説明を求めて視線を送る。

エリス「何故か朝方、枕元に置いてあったんだ。"ジン君へ"という文字が書いてある紙も添えてあったからジンの物だとは思う。」

何か色々と気になる。情報が多過ぎて何を言えば良いか分からない。クリスマスプレゼントの如く枕元にあったって?多分置いたのはあいつ等だと思うけど何だかな。
そもそも特撮ヒーローか、SFで使いそうな見た目のベルトを送って来るなんて何考えてるんだ?
ジンは俺の混乱を知らないからか、ベルトの脇にどう付いてるか分からない棒を外し、俺に見せる。

ジン「何か手を離すと勝手に帯にくっつくんだけど、それよりこの棒なんだか分かるか?」

デザイン的にはSFで出て来そうなアイテムに見える。状況から見て多分あれだ。

俺「剣の柄か?」

ジン「うぉ!凄ぇ!良く分かったな!」

先端の所を右に回すとビシュンと音を立て光輝く刃が出る。

俺「世界観。」

ジン「うん?何か言った?それよりこれだけじゃないんだよ。この先端を元に戻すと刃が消えるんだけど逆の左に回すと・・・。」

ブワンと音を立て斧の形をした刃が現れる。

ジン「片手斧になるんだ。それにまだあるぞ!」

ジンは柄の真ん中を見せて来る。そこにも回転しそうな部分がある。

ジン「ここを右に回すと、ほら棍棒みたいになるんだよ。」

俺「うぉ!凄いな。でも今更棍棒になっても仕方ないだろ?」

ジン「フッ。これで終わりな訳無いだろ?」

棍棒の状態で先端を右に回すと光の刃が出て槍に、反対の左に回すとハルバードの様な長物の斧へと変化する。

俺「へぇ~!」

純粋に驚いた。正直欲しい。

エリス「はぁ。お前に頼むのも癪だが、ジンに言ってくれ。その剣を手に入れてから浮かれまくってるんだ。剣の練習をする為に振るなら良いが、ただ眺める為だけに出してるんだ。」

仕方ない年長者として注意するか。咳払いをしてジンに向き直る。

俺「ジン君。ここは戦場だ。遊び気分は今は少し控えなさい。」

ジン「いや、まだ機能が残ってるんだよ!」

え?まだあるの?

ジン「この真ん中の所を今度は左に回すと・・・ほら分離するんだぜ!」

俺「な!これは、まさか!」

ジン「へへっ、気付いたか?」

良く見ると反対側の先にも回る部分がある。ジンは2本に分かれた柄の先端を同時に回す。

ジン「二刀流だ!」

ビシュンと出し、ブォンブォンと音を出しながら剣を回転させる。

俺「凄!格好良い!」

ジン「だろ?」

2人で興奮していると咳払いが聞こえる。見るとエリスが睨んでいた。

俺「続きは後にしよう。」

ジン「後で貸してやる。力入れなくても岩すら斬れるんだ。やってみろよ。」

俺「マジか!」

エリスがまだ睨んでいるからそろそろ本気モードに切り替えよう。

エレナ「賑やかだな。」

不意にエレナの声がするので見るとエレナが空から降りて来る。

俺「・・・・あれ!今、空飛んでた?」

ジン「飛んでたな。」

エレナ「最近完成した新魔法だ。」

また新魔法かよ。いや、考えるのはやめよう。こいつは天才なんだ。知らない所で独自の発想から勝手に魔法を考える。割り切れば気にならない。

エレナ「前に上から圧力を掛ける魔法を見せたろ?あの力の向きを逆にしたらどうなるんだって話、あの後したじゃないか。試しに色々やってたら飛べる様になったんだ。」

ジン「流石、シリウス!発想が違うな!」

いや、作ったのは俺じゃないだろ?何でも俺を起点にしないでくれ。まぁ、確かに話の感じだときっかけは俺みたいだけど。

エレナ「ただ、始めの頃は加減が分からなかったからな。実験に使ったリンゴはどっかに行ってそれっきりになった。」

そうか、リンゴ達はこの魔法の礎として宇宙に散ったのか。今はただリンゴ達の冥福を祈ろう。

ジン「シリウスの奴、何してるんだ?」

エレナ「さぁ?祈ってるんじゃないか?」

俺「あ!そうか!なぁ、その最大出力であの狼、空に打ち上げられないか?」

エレナ「無理だな。あそこまで大きいと質量も相当だろ?人くらいの重さなら良いけど。あの感じだと浮かせるまでしか出来ない。」

う~む。フェンリルを宇宙に廃棄する策は敢え無く却下された。

エレナ「それとこの魔法の話にはまだ続きがある。元の魔法は範囲が対象だから浮かせても範囲から出ると落ちるんだ。だから更に掛ける対象を限定出来る様になるまで苦労したよ。」

俺「つまりは制御が大変って事だろ?」

エレナ「今の所、飛ばせるのは3人だけだ。私と後は2人だ。」

ジン「となるとエリスは無理か。」

エレナ「そいつも連れて行くのか?」

ちょっとムッとしている。

エリス「ジン。私の事は気にするな。」

ジン「な!そうは行くか!」

エリス「ジン。」

見つめ合い2人の世界に突入する。

エレナ「いつからこうなったんだ?」

俺「いや、まぁ、馴れ初めは聞いたけど。久しぶりにあった時点でこの状態だったから、俺にはどうする事も出来なかったよ。」

そんな話をしている時だった。階段の方から何か物音がした。

俺「ごめん。まだやる事があったわ。俺抜きで行ってくれ。代わりにあいつを連れて行けよ。」

エレナ「良いのか?」

俺「あいつは味方さ。俺とジンが断言する。」

ジン「おう。」

俺はエリスに近付く。

エリス「お前・・・。」

俺「ジンとエレナの事を頼む。」

エリス「フッ。任せろ。お前程、出来るかは分からないが全力で援護する。」

俺「ジン、エレナ。あの狼には遠慮は要らない。最大出力で叩きのめせ。」

エレナ「その言葉、待っていたぞ!」

ジン「任せろ!全力を打つけるのは得意だ!」

俺「言った俺が言うのも何だけど、凄ぇ脳筋。誰に似たんだ?」

エリス「お前だろ?今まで熟考して行動した事、無いんじゃないのか?」

くっ、こいつ!ただ、確かに考えて行動して来たか?と聞かれたら何も言えない。

エレナ「とにかく行くぞ。」

3人が空からフェンリルへと向かう。

俺「はぁ、誰かいるんだろ?出てこいよ。」

階段から上がって来たのはアーサーの親友、ジェイド・ブラントだ。それと見た事の無い奴もいる。誰だ?

?「貴様と会うのは今日が初めてだな。ノルンの使徒よ。」

俺を使徒と呼ぶ奴は何人かいたけど『ノルン』と言われたのは初めてだ。

俺「お前、使徒か。」

ハティマス「ああ、ハティマス・フロスト。使徒だ。」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

王女殿下の死神

三笠 陣
ファンタジー
 アウルガシア大陸の大国、ロンダリア連合王国。  産業革命を成し遂げ、海洋発展の道を進もうとするこの王国には、一人の王女がいた。  エルフリード・ティリエル・ラ・ベイリオル、御年十六歳の少女は陸軍騎兵中尉として陸軍大学校に籍を置く「可憐」とはほど遠い、少年のような王族。  そんな彼女の隣には、いつも一人の少年の影があった。  リュシアン・エスタークス。  魔導貴族エスタークス伯爵家を継いだ魔術師にして、エルフリード王女と同い年の婚約者。  そんな彼に付けられた二つ名は「黒の死神」。  そんな王女の側に控える死神はある日、王都を揺るがす陰謀に遭遇する。  友好国の宰相が来訪している最中を狙って、王政打倒を唱える共和主義者たちが動き出したのである。  そして、その背後には海洋覇権を巡って対立するヴェナリア共和国の影があった。  魔術師と諜報官と反逆者が渦巻く王都で、リュシアンとエルフリードは駆ける。 (本作は、「小説家になろう」様にて掲載した同名の小説を加筆修正したものとなります。)

無法の街-アストルムクロニカ-(挿し絵有り)

くまのこ
ファンタジー
かつて高度な魔法文明を誇り、その力で世界全てを手中に収めようとした「アルカナム魔導帝国」。 だが、ある時、一夜にして帝都は壊滅し、支配者を失った帝国の栄華は突然の終焉を迎えた。 瓦礫の山と化した帝都跡は長らく忌み地の如く放置されていた。 しかし、近年になって、帝都跡から発掘される、現代では再現不可能と言われる高度な魔法技術を用いた「魔導絡繰り」が、高値で取引されるようになっている。 物によっては黄金よりも価値があると言われる「魔導絡繰り」を求める者たちが、帝都跡周辺に集まり、やがて、そこには「街」が生まれた。 どの国の支配も受けない「街」は自由ではあったが、人々を守る「法」もまた存在しない「無法の街」でもあった。 そんな「無法の街」に降り立った一人の世間知らずな少年は、当然の如く有り金を毟られ空腹を抱えていた。 そこに現れた不思議な男女の助けを得て、彼は「無法の街」で生き抜く力を磨いていく。 ※「アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-」の数世代後の時代を舞台にしています※ ※サブタイトルに「◆」が付いているものは、主人公以外のキャラクター視点のエピソードです※ ※この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください※ ※固有名詞や人名などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※ ※詳細なバトル描写などが出てくる可能性がある為、保険としてR-15設定しました※ ※あくまで御伽話です※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様でも掲載しています※

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...