Worldtrace

［Worldtrace２］

神獣

魔物の棲息地である森の北側に彼等の姿があった。現在はそこで連絡があるまで待機という事になっている。

フェンリル『ああ、腹が減った。』

フェンリルが"待て"を言われてから結構な時間が経過していた。彼の我慢もそろそろ限界だった。自分の本体は別の『世界』にあり、コピーの自分が飢えても本体に影響は出ない。理屈ではそうだ。しかしそれとこれとは話が別だった。

スコルアス「まだか！ブロート！それにあいつからの連絡も無い！ノルンの使徒はまだ討ち取れてないのか！」

フェンリルと一緒にいるこの男もまた同じ様に苛立っていた。仲間からの連絡が無く、進捗状況が分からない為だ。
フェンリルはそんなに気になるなら自分で動けば良いだろうと感じていた。そしてそれは自分にも当てはまる事だ。
良し！動くか！と思い直し、フェンリルは立ち上がる。

スコルアス「は！あの、フェンリル様？どうされたのです？」

フェンリル『いや、飽きた。腹も減ったし。そろそろ動く。』

スコルアス「も、もう、しばらくお待ち下さい！仲間からの連絡が来ません！何かのトラブルかと！」

フェンリル『それがどうした？それは貴様等の都合だろう？我には関係ない。』

スコルアス「な！しかし、今仕掛ければ人族と魔族、双方共に結束してしまいます。」

フェンリル『知らん！それに我は十分に我慢したぞ！もうこれ以上は待たん！』

フェンリルは息を深く吸い込むと遠くへ響き渡る様な大きな声で遠吠えをした。すると途端に脚元の影から、黒い狼の姿をした何かが現れる。

フェンリル『さぁ！存分に喰らい、我の腹を満たせ！』

狼達は獲物へ向かい走り出す。

スコルアス「チッ！流石は我が主の御子息！私には御しきれない！」

そして『物語』は"終演"に向かう。