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[Worldtrace2]
VSブロート・ハーベイ
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アストにて書類に目を通し、残っている仕事を片付ける。ただ戦場に向かうには後1つ、片付けなければならない事がある。聞いた話の通りならばそろそろ接触がある筈だ。クリスはそんな事を考えながら仕事を続ける。不意にコンコンと扉が叩かれる。
クリス「どうぞ。」
マーク「クリス様、例のお客様です。」
クリスは深呼吸をすると覚悟を決める。
クリス「応接室・・・・では駄目だな。大広間の方に案内して差し上げてくれ。」
クリスは上着脱ぎ、胸当てに小手等の軽装と剣を携え大広間に向かう。
クリス「お初にお目に掛かります。伯爵。」
ブロート「おお、これはスワロウ公爵閣下。こちらこそ光栄にございます。」
ブロート・ハーベイ。件の伯爵だ。シリウスと姉であるアイリスの会話から、この男は敵だとクリスは判断していた。
ブロート「これから戦ですか?」
クリス「ええ、残りの仕事を片付け次第、向かおうと思っています。それと僕はまだ公爵ではありませんよ。」
ブロート「フッ、心配する必要は無かったか。」
クリス「実は残りの仕事というのが丁度、伯爵と関係していましてね。」
ブロート「私と?」
クリスはスッと剣を鞘から抜く。
ブロート「腕試しか何かですかな?」
クリス「いえ、実は先生から貴方はこの争いの首謀者だと聞きまして。これから魔族と和解をしなければならないのに貴方がいては迷惑だと仰っていました。ですので、今日中に排除しなければと考えていたんです。」
ブロートは眉間に皺を寄せ左の眉を吊り上げる。しかし直ぐに作り笑いを浮かべた。
ブロート「はははっ。次期公爵となる筈の貴方様が傭兵の戯言を鵜呑みになさるのですか?」
クリス「良く分かりましたね?」
ブロート「は?」
クリス「僕が"先生"と言った相手が"傭兵"だと。」
ブロート「そんな事は調べれば・・・。」
クリス「自慢ではありませんが僕は次期公爵です。視察先で僕の事を聞き込みするとしても、大抵の者は僕以外に興味は無いでしょう。覚えている方が珍しい。その誰かを見つける可能性はあっても、簡単では無いと思いますよ。」
話を淡々と続けるクリス。そして再び眉間に皺を寄せるブロート。
クリス「それに報告書、書類を見たとしてもやはり"先生"が"傭兵"とはならないでしょうね。」
ブロート「何故だ?」
クリス「我が公爵家には優秀な者が多いのですが、その中にクロードと言う者がいます。今は姉上を守る為、戦場にいますが。」
ブロート「それが何だ?」
クリス「書類はそのクロードが用意してくれたのです。」
ブロートは意味が分からず首を傾げる。
クリス「クロードは姉上と懇意のある先生を嫌っています。そんなクロードが先生の事を詳しく書くと思いますか?」
ブロート「む!」
クリス「勿論、僕もその書類には目を通しました。先生については"傭兵"としか書いていませんでした。その書類の何処を見れば"傭兵"が"先生"と結び付くのか。不思議ですよね?」
ブロート「く!」
クリス「それに僕があの人を先生と呼び出した時期も不明です。そもそも僕にとっては家庭教師の方も"先生"ですからね。」
ブロート「チッ、べらべらと良く喋る。」
マーク「貴様!伯爵がそんな口を叩いて良いと思っているのか!何よりその伯爵位というのも事実か分からないだろう!」
ブロート「フンッ!私は神の使徒、貴様達より身分は上だ!」
クリス「マーク、退がれ。ここは私が討つ。」
マーク「そうは行きません!従者が主の後ろに隠れるなど出来ません!」
クリス「いや、ここは譲って貰う。」
悔しいがマークには主であるクリスにこれ以上の意を唱える事が出来ない。ここは一旦引き退がる。しかし、いざという時は直ぐに自分の身を盾に出来る様、心の準備をする。
ブロート「愚かな。貴様達はここで終わりだ!」
ブロートは目に魔力を集める。するとクリスは体内を流れる魔力に乱れを感知した。
クリスは冷静に操られた魔力を気力で押し返し、無理矢理に通常の流れへ戻す。クリスは気合いと根性でブロートの洗脳を解除する。
ブロート「な!」
クリス「良し!・・・マーク!目は見るなよ!」
マーク「は!承知しています。しかし、悔しいですね。あの男から習った技術が今、功を奏しています。」
マークは目を閉じて構えている。その状態で相手を捉えている様だ。奇しくもシリウスの教えた事がここで実を結ぶ。
ブロート「たかが人間如きが、図に乗るなよ!」
ブロートも剣を抜く。見た目は普通の片手剣だ。対してクリスはレイピアだ。アイリス同様、刺突に特化した剣技を修得している。
ブロートは本来、片手剣に盾で戦うスタイルだが今は盾を持っていなかった。シリウスの入れ知恵でクリスが戦場に出ないならば、洗脳して連れて行くつもりだった。洗脳するだけならば戦闘にはならない。そう思っていたからだ。
ブロート「おい!何故、私がここに来ると知っていた?誰かに言われたのか?」
クリス「先生が仰るには僕が戦場に赴くのは決定事項だそうですよ。そして僕が戦場にいない場合は必ず参加させられるだろうと。」
ブロート「何!」
マーク「つまりクリス様はここにいれば貴様が現れると考えたのだ。」
ブロート「要するに私は誘き出されたのか。」
マーク「クリス様の独断でな。危険だからお止めしたが仕方なかった。わざわざ御当主様と父上まで王都に送り出してな。」
ブロート「大した者だ。」
クリス「この機を逃せば貴方を仕留める事は出来ないでしょう?」
ブロートは舌打ちする。たかが物語の登場人物が仕掛けた罠に嵌るとは思って無かった。しかし問題はここで倒すかどうかだ。考えたシナリオでは戦場でもう1人の主人公、ランドに倒されるのが理想的だ。ただ結局最後に倒すなら今の状況は大して変わらない。ブロートは脚本の変更を決意する。
ブロート「本当はもっと後の筈だったが仕方ない。シナリオとしては興醒めだが、ここでお前は退場だ。」
ブロートは一歩踏み込み、突きを繰り出す。クリスもブロートが動くと同時に踏み込み、同じく突きを繰り出す。切っ先が打つかりお互いの剣を跳ね上げる。
クリス「く!」
ブロート「くそ!」
盾が無いブロートは、片手剣をクリスと同じくフェンシングのポーズで構える。ブロートはすかさず振り被るが、クリスは冷静に左へ打ち落とす。
ブロート「うぉ!ぐぁ!」
前のめりにバランスを崩すブロートへ返す刀で突きを放つと左頬を掠めた。
クリス「流石に躱しますね。」
ブロート「貴様!」
お互い半身になり、一歩踏み込む。ブロートが先に動き、突きを放つ。クリスは剣を下から持ち上げブロートの剣を上へ流す。すかさず横薙ぎに振り、今度はブロートの右脇を斬る。
ブロート「うぉ!調子に乗るな!」
跳ね上げられた剣を振り下ろす。クリスはそれを受け流し、逆に振り下ろす。ブロートは舌打ちをしながら一歩退がる。しかしクリスは間髪入れずに突きを繰り出す。
ブロートは顔の前に剣を運び受け止める。
ブロート「フン!」
跳ね除けられたが、その勢いを利用してクリスは距離を取る。
ブロートは思う。予測演算では指揮に特化していた筈のクリスは、一騎討ちに勝てる様な強さは無かった。どう考えても異常事態だ。何故か?その原因を考えた時ある男の顔が浮かぶ。そうノルンの使徒だ。奴が元凶だ。奴の行動がシナリオをとことん壊して行く。
ブロート「相変わらず存在自体が迷惑な奴だ。」
クリス「先生の事ですか?あの人は素晴らしい方ですよ。愚弄しないで頂きたい。」
睨み合いから剣を振り被る。互いに一歩踏み込み、剣と剣が打つかるとそのまま鍔迫り合いになる。そしてブロートが不意に力を抜いた。
クリス「うわ!」
バランスを崩した時を狙い攻撃を仕掛ける。ブロートの攻撃を剣で受け止め、クリスは直ぐに距離を取る。ブロートは更に一歩踏み込み振り下ろすが、クリスは退がりながら右に剣を打ち落とす。
今度はクリスが突きを放ち、それをブロートが払い除ける。
ブロート「剣の腕は中々だな。だが、魔法を使わない理由は無い。」
剣戟では決着は付かなかった。クリスとブロートの決闘はここからが本番であった。
クリス「どうぞ。」
マーク「クリス様、例のお客様です。」
クリスは深呼吸をすると覚悟を決める。
クリス「応接室・・・・では駄目だな。大広間の方に案内して差し上げてくれ。」
クリスは上着脱ぎ、胸当てに小手等の軽装と剣を携え大広間に向かう。
クリス「お初にお目に掛かります。伯爵。」
ブロート「おお、これはスワロウ公爵閣下。こちらこそ光栄にございます。」
ブロート・ハーベイ。件の伯爵だ。シリウスと姉であるアイリスの会話から、この男は敵だとクリスは判断していた。
ブロート「これから戦ですか?」
クリス「ええ、残りの仕事を片付け次第、向かおうと思っています。それと僕はまだ公爵ではありませんよ。」
ブロート「フッ、心配する必要は無かったか。」
クリス「実は残りの仕事というのが丁度、伯爵と関係していましてね。」
ブロート「私と?」
クリスはスッと剣を鞘から抜く。
ブロート「腕試しか何かですかな?」
クリス「いえ、実は先生から貴方はこの争いの首謀者だと聞きまして。これから魔族と和解をしなければならないのに貴方がいては迷惑だと仰っていました。ですので、今日中に排除しなければと考えていたんです。」
ブロートは眉間に皺を寄せ左の眉を吊り上げる。しかし直ぐに作り笑いを浮かべた。
ブロート「はははっ。次期公爵となる筈の貴方様が傭兵の戯言を鵜呑みになさるのですか?」
クリス「良く分かりましたね?」
ブロート「は?」
クリス「僕が"先生"と言った相手が"傭兵"だと。」
ブロート「そんな事は調べれば・・・。」
クリス「自慢ではありませんが僕は次期公爵です。視察先で僕の事を聞き込みするとしても、大抵の者は僕以外に興味は無いでしょう。覚えている方が珍しい。その誰かを見つける可能性はあっても、簡単では無いと思いますよ。」
話を淡々と続けるクリス。そして再び眉間に皺を寄せるブロート。
クリス「それに報告書、書類を見たとしてもやはり"先生"が"傭兵"とはならないでしょうね。」
ブロート「何故だ?」
クリス「我が公爵家には優秀な者が多いのですが、その中にクロードと言う者がいます。今は姉上を守る為、戦場にいますが。」
ブロート「それが何だ?」
クリス「書類はそのクロードが用意してくれたのです。」
ブロートは意味が分からず首を傾げる。
クリス「クロードは姉上と懇意のある先生を嫌っています。そんなクロードが先生の事を詳しく書くと思いますか?」
ブロート「む!」
クリス「勿論、僕もその書類には目を通しました。先生については"傭兵"としか書いていませんでした。その書類の何処を見れば"傭兵"が"先生"と結び付くのか。不思議ですよね?」
ブロート「く!」
クリス「それに僕があの人を先生と呼び出した時期も不明です。そもそも僕にとっては家庭教師の方も"先生"ですからね。」
ブロート「チッ、べらべらと良く喋る。」
マーク「貴様!伯爵がそんな口を叩いて良いと思っているのか!何よりその伯爵位というのも事実か分からないだろう!」
ブロート「フンッ!私は神の使徒、貴様達より身分は上だ!」
クリス「マーク、退がれ。ここは私が討つ。」
マーク「そうは行きません!従者が主の後ろに隠れるなど出来ません!」
クリス「いや、ここは譲って貰う。」
悔しいがマークには主であるクリスにこれ以上の意を唱える事が出来ない。ここは一旦引き退がる。しかし、いざという時は直ぐに自分の身を盾に出来る様、心の準備をする。
ブロート「愚かな。貴様達はここで終わりだ!」
ブロートは目に魔力を集める。するとクリスは体内を流れる魔力に乱れを感知した。
クリスは冷静に操られた魔力を気力で押し返し、無理矢理に通常の流れへ戻す。クリスは気合いと根性でブロートの洗脳を解除する。
ブロート「な!」
クリス「良し!・・・マーク!目は見るなよ!」
マーク「は!承知しています。しかし、悔しいですね。あの男から習った技術が今、功を奏しています。」
マークは目を閉じて構えている。その状態で相手を捉えている様だ。奇しくもシリウスの教えた事がここで実を結ぶ。
ブロート「たかが人間如きが、図に乗るなよ!」
ブロートも剣を抜く。見た目は普通の片手剣だ。対してクリスはレイピアだ。アイリス同様、刺突に特化した剣技を修得している。
ブロートは本来、片手剣に盾で戦うスタイルだが今は盾を持っていなかった。シリウスの入れ知恵でクリスが戦場に出ないならば、洗脳して連れて行くつもりだった。洗脳するだけならば戦闘にはならない。そう思っていたからだ。
ブロート「おい!何故、私がここに来ると知っていた?誰かに言われたのか?」
クリス「先生が仰るには僕が戦場に赴くのは決定事項だそうですよ。そして僕が戦場にいない場合は必ず参加させられるだろうと。」
ブロート「何!」
マーク「つまりクリス様はここにいれば貴様が現れると考えたのだ。」
ブロート「要するに私は誘き出されたのか。」
マーク「クリス様の独断でな。危険だからお止めしたが仕方なかった。わざわざ御当主様と父上まで王都に送り出してな。」
ブロート「大した者だ。」
クリス「この機を逃せば貴方を仕留める事は出来ないでしょう?」
ブロートは舌打ちする。たかが物語の登場人物が仕掛けた罠に嵌るとは思って無かった。しかし問題はここで倒すかどうかだ。考えたシナリオでは戦場でもう1人の主人公、ランドに倒されるのが理想的だ。ただ結局最後に倒すなら今の状況は大して変わらない。ブロートは脚本の変更を決意する。
ブロート「本当はもっと後の筈だったが仕方ない。シナリオとしては興醒めだが、ここでお前は退場だ。」
ブロートは一歩踏み込み、突きを繰り出す。クリスもブロートが動くと同時に踏み込み、同じく突きを繰り出す。切っ先が打つかりお互いの剣を跳ね上げる。
クリス「く!」
ブロート「くそ!」
盾が無いブロートは、片手剣をクリスと同じくフェンシングのポーズで構える。ブロートはすかさず振り被るが、クリスは冷静に左へ打ち落とす。
ブロート「うぉ!ぐぁ!」
前のめりにバランスを崩すブロートへ返す刀で突きを放つと左頬を掠めた。
クリス「流石に躱しますね。」
ブロート「貴様!」
お互い半身になり、一歩踏み込む。ブロートが先に動き、突きを放つ。クリスは剣を下から持ち上げブロートの剣を上へ流す。すかさず横薙ぎに振り、今度はブロートの右脇を斬る。
ブロート「うぉ!調子に乗るな!」
跳ね上げられた剣を振り下ろす。クリスはそれを受け流し、逆に振り下ろす。ブロートは舌打ちをしながら一歩退がる。しかしクリスは間髪入れずに突きを繰り出す。
ブロートは顔の前に剣を運び受け止める。
ブロート「フン!」
跳ね除けられたが、その勢いを利用してクリスは距離を取る。
ブロートは思う。予測演算では指揮に特化していた筈のクリスは、一騎討ちに勝てる様な強さは無かった。どう考えても異常事態だ。何故か?その原因を考えた時ある男の顔が浮かぶ。そうノルンの使徒だ。奴が元凶だ。奴の行動がシナリオをとことん壊して行く。
ブロート「相変わらず存在自体が迷惑な奴だ。」
クリス「先生の事ですか?あの人は素晴らしい方ですよ。愚弄しないで頂きたい。」
睨み合いから剣を振り被る。互いに一歩踏み込み、剣と剣が打つかるとそのまま鍔迫り合いになる。そしてブロートが不意に力を抜いた。
クリス「うわ!」
バランスを崩した時を狙い攻撃を仕掛ける。ブロートの攻撃を剣で受け止め、クリスは直ぐに距離を取る。ブロートは更に一歩踏み込み振り下ろすが、クリスは退がりながら右に剣を打ち落とす。
今度はクリスが突きを放ち、それをブロートが払い除ける。
ブロート「剣の腕は中々だな。だが、魔法を使わない理由は無い。」
剣戟では決着は付かなかった。クリスとブロートの決闘はここからが本番であった。
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