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5本目の聖剣

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ランド「何処に行くんだ?」

ハティマス「一緒に来れば分かる。」

ランド達は予言の話を聞く為、予言者を訪ねた。予言者の話では神獣という人族と魔族の双方を滅ぼす存在が現れると言う。そしてその神獣を討ち倒す為にはある聖剣が必要だと言われた。

アレックス「この先に父が隠した聖剣がある。」

ランド「抜かなかったのか?」

ハティマス「フンッ!抜けなかったのだ。敢えて言うなら我らには触れる事すら出来なかった。しかし人族に更なる聖剣を渡す事も出来ない。なので魔王様はその場所に小屋を建て聖剣を隠す事にしたのだ。」

ランド「魔族が使えないのにずっと管理して来たのか?」

アレックス「ああ。我々では使用はおろか破壊も出来ない。」

ランド「そんな剣をどうするんだ?」

ハティマス「不本意だが、貴様が抜け。」

ランド「え!何故?」

アレックス「人族のお前なら掴める筈だ。」

ランド「掴めたくらいで抜けるのか?そもそも資格が無いと抜けないんだろ?俺はそう聞いているが?」

アレックス「確かにそうだ。だが魔族の誰も触れられない物だ。このまま放置していても意味は無いしな。ならば触れる事が出来る人族で、味方のランドに試して貰うのも悪く無いと思ってな。」

ハティマス「納得は出来ないが仕方ない。悔しいが殿下には抜く事は出来ない。それに予言者は最後に"魔族の救世主が聖剣の所有者だ。"とも言っていた。」

アレックス「今までの状況から我々の中で救世主に成り得る者はいなかった。しかしお前は外から来た人間だ。試す価値はあると思っている。」

話の通りなら聖剣が抜ければその人間は魔族の救世主という事になる。ランド自身は救世主と言う肩書きには興味が無い。しかし聖剣には興味があった。聖剣を手に入れれば、シリウスと肩を並べられるかも知れない。剣1本で強くなるとは考えていないが、不思議な力があるというなら期待をしてしまうのが人間だろう。
しばらく歩くと、何の変哲も無い小屋に辿り着いた。小屋の中には簡素で何の装飾もしていない普通の剣が野晒しで地面に直接刺さっていた。
遺跡や神殿でも無く、台座も無い。なので荘厳な雰囲気も一切無い。剣の見た目も簡素で装飾が無く、新人が使う安物の剣と同じ様に見えた。本当に聖剣か?と疑いたくなる程、地味な剣だった。

ランド「これが、聖剣か?」

アレックス「感じないか?光の力を?」

ランドが近付くと確かに何か見えない力を感じる気がした。しかし見れば見る程、普通だった。近くにあった普通の剣を誰かが、急いで聖剣に見せ掛けた様にも思える。

ランド「この小屋もかなり簡素だな。」

アレックス「仕方ないさ。地面に直接刺さっているから床板も設置出来ない。聖剣を隠す為だけに小屋に見える箱を上から置いただけの状態だ。」

ランド「本当に魔王も剣が抜けなかったのか?」

アレックス「何故かそこの記憶が曖昧なんだ。しかし確かに抜けなかったという事と、この小屋を置くという対処しか出来なかった。その2つの事だけはハッキリ覚えている。」

ランドは記憶が曖昧と言う話を聞き、ブロートの事を思い出す。まさか記憶を操作されているのか?そんな事を考える。しかし奴がここまで来るのか?今までただ攻めて来た敵を討つ。それだけしかして来なかったランドは、敵の動きが掴めないという事実に苛立ちを覚えていた。

リディア「ランド。いっちゃえば?」

ランド「いや、簡単に言わないでくれ。」

考え込んでいたランドに、リディアが何でも無い事の様に言う。そんな楽に抜けはしないだろうとは思うが、ランドもここまで来たからには成果を出したい。聖剣の柄を両手で掴み、腕に力を込める。

ランド「!」

アレックス「!」

リディア「あ!」

ハティマス「フンッ。」

聖剣の刃先の辺りが光り出す。そして聖剣が抜け始めると、小屋の中にも関わらず何処からか風が吹く。ランドは聖剣を引き抜き、天井に掲げると同時に小屋が吹き飛ぶ。

アレックス「く!」

リディア「きゃ!」

ハティマス「これで・・・。」

ランド「これが俺の聖剣。」

そしてこれからバナート大陸の2度目の戦いが始まる。
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