Worldtrace

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[Worldtrace2]

予定調和

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目の前で起きた事に驚き俺は言葉を失う。

俺「ら、ランド!」

リディア「近付くな!」

爪が俺の喉元まで伸びて来た。俺は反射的に構える。しかし俺の手は何も掴まない。俺はゆっくり振り返る。刀が地面に刺さっているのを見て俺は天を仰ぐ。

俺「俺は馬鹿だ。」

魔族「将軍を守れぇ!」

誰かが叫ぶ。次の瞬間、さっきまで静かだった俺の周りが血で血を洗う戦場となった。
まぁ、元から戦場だけど。

ゲイツ「小僧!・・・野郎共!状況が変わった!とにかく切り抜けるぞ!」

くそ!ランドは?姿を探すと魔族達に運ばれて行く姿が見える。ランドは運ばれながら何かを指差す。俺はランドが指し示す先を辿った。ランドの事は心配だったし、誰かに確認しろと言われた訳でも無い。それなのに俺は何故かその先を確かめなければ行けないと感じた。そしてその先には馬に乗ったあの男がいた。

ブロート「フンッ。」

俺「お前か!」

俺の直感がこの状況を作った元凶は奴だと告げる。俺はブロートに向かい走り出す。だが、何故か魔族に囲まれた。

俺「お前等、邪魔だよ!」

魔族「そいつだ!そいつが将軍に重症を負わせたぞ!」

指揮官らしき魔族が叫び、他の魔族が俺に襲い掛かる。1人の魔族が右脇に剣を構え突っ込んで来た。俺はその突きを躱し、腕を掴むと相手の顔面に頭突きを入れる。

魔族1「ぐは!」

魔族2「うおぉ!」

俺は直ぐに魔族1の服を掴み、後ろから来る魔族2に叩き付ける。

魔族1「ぎゃあ!」

魔族2「ぐぇ!」

魔族3「くっそぉぉ!」

剣を振り被る魔族3の手を掴み、顔面に掌底を打ち込む。

魔族3「ぐぁ!・・うげ!」

苦しんでいる内に脚を掛け地面に薙ぎ倒す。

俺「ブロートぉ!」

ニヤリと笑いながらこの場から去って行く。

俺「待て!何処に行く!」

ジーク「おい!何をしている!」

俺「やっぱりあいつが元凶だ!」

ダン「だとしても!武器を持たずに行くな!死ぬ気か!」

俺「くそ!」

頭に血が昇っていた俺は、刀を地面に刺したままブロートを追いかけていた。確かにこのまま追い付いても戦えない。それ所かあっさり斬られるだろう。
色々あったが魔族達は将軍、ランドが負傷し逃走する事にした様だ。昨日まで辛うじて死人が出て無かったのに、今回は双方共に被害が出ていた。
仲間達と状況確認や報告をする。

ゲイツ「ふ~ん。それで身の危険も考えず奴を追いかけたのか?」

俺「済みませんでした。」

ティム「たくっ!無事だったから良いがな。追撃は?どうする?」

ゲイツ「それだよな。」

偵察に行っていたダンが報告に戻る。

ダン「やっぱり駄目だ。森からは出て来ないけど、こっちが行こうとすると威嚇して来る。」

追撃の為、魔族が逃げた森に入ろうと他の傭兵達が何度か試みた。しかし多くの魔物が森の中を徘徊していて、人の侵入を阻む様に威嚇して来た。魔族には魔物を操る能力を持ってる奴もいる。ランドを探しに行くのは難しいだろ。

俺「それで?あの腐れ貴族は?」

ゲイツ「腐れ言うな。相手は貴族だぞ。探したが雲隠れしやがって見つからねぇよ。」

俺「くそ!」

ティム「とにかく今は身動きが取れない。準備はするが、状況的に様子見って所だろうな。」

ジーク「だがあのハーベイ伯爵、動きが早かったな。」

ゲイツ「野郎は最初っから、引っ掻き回して逃げる気だったって事だろ?」

自分で貴族だから気を付けろって言いながらあの言い方だ。いい加減なおっさんだな。
とにかく悔しいけど、今の俺に出来る事はもう無いだろう。

アイリス「だからって何で私の所に来たの?」

俺「いや~、落ち着いて状況を整理したいなってさ。」

アイリス「はぁ、それで?結局予定通り、彼は敵になったのね?」

俺「まぁ、そうね。」

アイリス「ふぅ、ブロート・ハーベイに邪眼ね。何者なの?」

俺「ん?・・・う~ん、多分・・・。」

クリス「少し疑問に思う事があります。」

アイリス「何?」

クリス「ハーベイと言う名前は聞いた事が無いんです。」

アイリス「そうなの?」

クロード「はい。調べてみなければ正確な事は分かりませんが、私の記憶している伯爵位の者でハーベイと言う家名の者はいない筈です。」

マーク「それが事実なら得体の知れない相手ですね。貴族を名乗る。そんな不敬を恐れず行っているとは。」

俺「あのさ、何でいるの?」

クロード「貴様!まさかお嬢様と2人っきりで何か如何わしい事をしようとしている訳ではないだろうな!」

俺「いや!しないよ!」

クリス「なら、大丈夫ですね。」

え~、使徒じゃないか?って言いたいのにお前等がいると話せないだろ。

クリス「とにかく姉上はその男には近付かないで下さい。」

アイリス「え?」

クリス「操られては大変ですから。」

アイリス「それを言い出したらクリスもでしょ?」

クリス「フフン。大丈夫です。僕には秘策がありますから。」

俺「え!どんな?」

クリス「先生から教わった気合いと根性で全てを跳ね除けます!」

クリスはドヤ顔で自分の胸を叩く。

俺「・・・・。」

アイリス「・・・・。」

クロード「・・・・。」

マーク「・・・・。」

いや、止めて。皆んなで俺を睨まないで。アイリスに至っては般若の顔に見える。
般若といえば地球の実家に般若と翁、オカメの仮面の3つを1つに繋げた形のオブジェがあった。小さい頃は壁に掛けてあったそのオブジェが怖かった。しかし流石に自分が大きくなるとじっくり観察出来るくらいには慣れた。その時に気が付いたけど、般若とオカメの髪型が同じだった。後で調べると般若は女性の恨みや嫉妬で生まれる鬼だとか。
じゃあ般若って女性?とか余計な事を考える事で平静を保とうとする。

アイリス「ねぇ、弟が脳筋になってるんだけど?どうしてくれるの?」

俺「え?・・・それ、俺の所為かな?なんて思うけど?」

クロード「いや、間違い無く貴様の所為だ!マークもそう思うだろう!」

マーク「え?・・・そうなのですが、こちらとしてはこの男に助けられた所もあるのであまり偉そうには言えません。」

クロード「く!お嬢様やクリス様だけで無く弟まで手懐けるか!」

別にそんな事して無いけど。まぁ、正直、人から好かれるのは嫌じゃない。だから多少、人に嫌われない様に気を遣ってるのは事実だ。だけど最終的に俺に対して好意的に接するか、敵意を向けて来るかは相手の自由だと思う。そこの部分まで俺に言われてもな。

アイリス「はぁ、まぁ、とにかく。これからまた戦いの準備ね?」

俺「はい、そうです。済みません。お願いします。」

クロード「フン!情け無い奴だ!」

こいつはとことん俺をこき下ろすな。それは仕方ないとして、これからまた準備だ。そうなる前にランドを取り返したかったけど、今は先ず次の戦争を切り抜ける事を考えよう。
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