Worldtrace

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思惑

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俺「話と違くない?」

俺が初めてこの都市に来た時を思い出させる様に、魔物達が隊列を組んで並んでいる。

ゲイツ「俺に聞くな!別に俺達はランドと示し合わせて戦ってる訳じゃないんだ!俺達が敵の状況を全部把握してると思うなよ!」

俺は自陣に目を向ける。例の伯爵、ブロートと目が合う。奴は俺に向かってニヤリと笑った。

ティム「いつから伯爵と仲良くなった?」

俺「何言ってんだ?あの目には悪意が滲んでるだろ?」

ダン「貴族達ってのは俺達に対して、普通は敵意を向けるだろ?それと違って悪意を向ける場合は基本、"あいつを利用してやる。"って考えてる時だ。」

ジーク「そうだな。そしてただの敵意なら先ずこっちに話し掛けるとかはしない。そう考えるとだ。」

ティム「悪意があって、話し掛けたって事はあいつはお前を利用しようとしてる。お前もあいつを利用しようとしてるんだろ?お互い同じ事考えてるなら仲が良いって話になるだろ?」

俺「何の屁理屈だよ?」

ゲイツ「おい!何喋ってんだ!とっとと準備しやがれ!」

懐かしい光景だ。傭兵だの騎士だの並んで向かいには魔物達。こんな光景を懐かしむ日が来ようとは・・・・。はぁ、また走るのか。そもそも俺が1番前を走る必要が無いのでは?とか思う。今から後ろ行くか。

ティム「おい!何処行く!」

俺「いや、前にいなくても良いかな?ってさ。」

ジーク「何を言ってる。お前や俺達は最前列だ。それは変わらない。」

俺「え?何で?」

ダン「お前、分かって無いな。俺達は古株だぜ?そんな俺達が後ろから行く訳には行かないだろ。」

俺「いや、4人もいれば大丈夫だろ?というか古参の奴は俺達だけじゃないし、そいつ等に任せれば良いだろ。」

ティム「いや、お前は最前列だ。」

俺「何で?」

ゲイツ「お前が"剣聖魔人"だからだよ。」

それ、俺が名乗ったんじゃないんだけど。というかそれは団長の所為・・・。

ダン「とにかく有名人のお前が後ろじゃ、示しが付かないだろ?」

俺「はぁ~、マジかよ。」

例によって魔物の笛が響く。

ゲイツ「行くぞ!野郎共!」

今日は魔法使いがいないのか、攻撃は飛んで来ない。お陰で目の前の敵に集中出来る。皆んなそれぞれ魔物を蹴散らしながら進む。魔物を3割程減らすと、奥から人型の生物が現れる。魔族だ。

ゲイツ「来るぞ!気を引き締めろ!」

皆んなが気合いを入れて向かうと何故か俺の周りが静かになる。俺の所だけ敵がいなくなった。それと入れ替わる様に誰かが近付いて来る。

ランド「久しぶりだな。」

俺「おう。」

ランドが剣を抜く。

ランド「さぁ、始めるか!」

俺「その前に話がしたいんだけど。」

ランド「話?ここは戦場だぞ。それに話し合うのが目的なのに武器を持って現れた。それで話なんて出来るのか?お互いそんな状態じゃないだろ。それに・・・。」

ランドは言い淀む。やっぱり話せない事情があるのか。しかし誰かさんの思惑通りにこのまま戦えば話す機会を失う。
仮に戦って取り押さえても周りの魔族は納得しない。ランドを取り戻そうと襲い掛かって来るし、そうなれば魔族を本気で斬る事態になるだろう。そして魔族に死人が出ればランドは今度こそ敵になる。こっちが降伏しても逆の状況だ。上手くこの場をやり過ごしても話せる状況になるまで大分掛かると思う。やはり話すならこのタイミングだ。
ただランドの言い分も確かだ。武器を持って話し合いも無い。俺は刀を鞘に仕舞う。

ランド「な、何のつもりだ?」

俺は鞘に仕舞った刀を離れた所の地面に突き刺す。

俺「俺はお前と話す為に来たんだ。武器が邪魔で話せないならこれでどうだ?今の俺は丸腰だぞ?」

ランドは驚愕している。流石に戦場で武器を手放すとは思って無かったんだろう。俺自身こんな事するとは思わなかった。

ランド「何考えてるんだ!死ぬかも知れないんだぞ!」

俺「だけどお前が言ったんだぞ?武器持ってる奴とは話せないって。」

俺はランドの目の前で座る。

俺「ほら条件はクリア・・・じゃない満たしたろ?座れよ。まぁ、地面だけど。腹割って話そう。」

さて、どんな話が出るのか。1番良いのは和解に繋がる話が聞ける事だけど。
それにしても何で俺がこんなに悩まなきゃならないのか。ノルン達に腹が立つ。
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