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俺「何でこうなったのか。」

俺は荷物を持ちながら窓の外を見る。3人が闇堕ちしない様にやっていた筈が、結局何かしら失敗してる。

俺「人生、上手く行かないな。」

ダン「おい!空眺めてないで運べよ!」

ティム「そうだぞ!こうなったのも半分お前の所為だからな!」

俺「いや、俺はその場にいなかったから。というかこの荷物は何?」

ジーク「今回の魔族との戦いは、ある貴族が直々に指揮を取っている。この荷物運びはその貴族からの指示だ。」

俺「俺達がやる必要ある?」

ティム「ランドが裏切ったのは俺達の教育不足だと。だから責任取って雑用する様にってさ。」

俺「そもそも何でどっかの貴族がわざわざ指揮を取るんだよ?」

ダン「話によると子飼いの騎士を連れて森に散策に出たら襲われたらしい。それでその時にランドが何人か斬ったとか言ってたぞ。このままだと自分の名誉に関わるから退けないんだってさ。」

俺「はぁ?・・・誰だよそいつ。」

ティム「えっと?フロント?フロイト?」

ジーク「ブロート・ハーベイ伯爵だ。」

名前に聞き覚えが無い。また知らない奴だ。まぁ、既にゲームの知識をそこまで当てにはしてないから良いか。
今はとにかく、ランドから話を聞かないと何も判断出来ない。ただ、今は森に入るなって言われてる。その命令もその伯爵の指示か?そういえば団長は何してるんだ?

俺「なぁ、森は団長の領地じゃないけど敷地の近くだろ?何で放っておいたんだ?」

ティム「いや、ゲイツは確かに抗議したけど。相手が聞かないんだよ。」

ジーク「団長は辺境伯だが、元はただの傭兵だ。貴族はそんな奴を同列には見ない。そういう話だ。」

腹立つなそいつ。ただでさえ面倒な事が多いのに厄介事だけ増やしやがって。
その伯爵、敵じゃないだろうな?何者なのか、一回会って話を聞きたい。

俺「あ、そうだ。」

こんなタイミングだが、ジークの顔を見てある事を思い出す。

俺「ん。」

俺はジークに小さい袋を渡す。

ジーク「何だこれは?」

俺「土産。」

ジーク「な、何!・・・・何だ?この粒?」

俺「菓子だよ。公爵家の生産状況が整ったら、本格的に売り出すつもりらしい。金平糖って奴だ。」

ティム「コンペイトウ?」

俺「砂糖を釜で焼いて作る菓子だ。職人が付きっ切りで1週間、焼き続けて作るって聞いた。」

ダン「砂糖は高いからあまり食べ無いけど、あれって焼くとこんなに色鮮やかになるのか?」

俺「いや、それは着色だろう?そもそも俺、職人じゃないから聞かれても詳しくは分からないよ。」

俺が知ってるのは地球のドキュメント番組で見た部分だけだ。それ以上は分からん。アイリスの知識も似たような物だと思う。それでここまで再現出来るんだから職人には頭が下がる。
俺達3人の会話を余所にジークが1粒、口に入れる。

ジーク「はっ!・・・くぅ、うぅぅ。」

途端にジークが泣き出した。

ティム「おい!どうした!」

ジーク「美味い。」

俺「え?泣く程?」

ジーク「ただ美味いだけで泣いてる訳じゃない。俺の努力の結果がこれ程の物になるとは思わなかった。だから今、感動している。」

良く分からないが気に入ってくれたらしい。するとティムとダンが手を出す。

俺「何?握手?」

ダン「違うよ!土産!まさかあれだけって事は無いだろ?」

俺「あれだけだよ。」

ティム「は?何で!」

俺「いや、試作品だし。まだ数は作れないってさ。」

ティムとダンは見つめ合うと同時に頷く。

ティム「ジーク!少しそれ寄越せ!」

ジーク「ふざけるな!これは俺がやっとの思いで手に入れた土産だぞ!」

ダン「お前こそふざけるな!土産の時点でお前の苦労なんて無いだろうが!」

浅ましいおっさん達の争いがそこにはあった。まぁ、原因は俺がやった菓子だけど。

ゲイツ「何やってんだあいつ等は、・・・正直な話俺もお前がいればランドが敵側に付くとは無かったと思うぞ。」

俺「そうかもな。だけど俺も色々と忙しくてね。」

ゲイツ「お前が何かと走り周ってるのは知ってる。だが今回の一件、ランドの奴は確実に誰かに嵌められたぞ。」

俺「だろうな。」

ゲイツ「ランドが上手くやってるのか今の所、俺達の方に死人はいないけどな。」

俺「だから魔族側にも死人を出さず、怪我人で止まる様に傭兵達を抑えてるんだろ?」

ゲイツ「よく分かってるじゃないか。ただ例の伯爵の目もある。だからそろそろ限界かも知れないがな。」

俺「ふ~ん。」

やはりその伯爵、気になるな。

ゲイツ「何かしらの対処は考えてる最中だ。だからお前は動くなよ。」

俺「何でだよ。」

ゲイツ「お前の場合、下手に動くと結果が酷くなるからな。ただ敵を叩っ斬れば良いって状況なら問題無いが。」

ジト目で俺を見る。俺ってそんなに脳筋か?とか思うけど、自分の胸に手を当て考えると力で解決した事の方が多い。いや、それしか無い気がして来た。

ゲイツ「大丈夫か?なんか目が死んだ魚みたいになってるぞ。」

俺「今、自分の愚行を思い出して恥じてる所さ。」

ゲイツ「え?今更?・・・まぁ、とにかく伯爵については俺が考える。お前は待機!良いな!・・・・おい!お前等!その菓子、俺にも寄越せ!」

おっさん達が菓子の袋に群がる。実を言うと袋はもう1つある。中身は同じだけど。アイリスは袋を2つくれたのだ。2つあるなら丁度良いと、いつも土産が欲しいと言うジークに1袋やった。残りの1つは当然俺のだ。俺が貰ったんだからそれくらいは良いだろう。しかし、まさかここまで騒動になるとは思わなかった。
俺は貰った金平糖を1粒口に入れる。

俺「おお!ちゃんと出来てる。」

改めて思うけど職人は凄いな。それにしても懐かしい。あ!何か涙が。はぁ、昔を懐かしむのはこのくらいにしよう。
伯爵が何者かは分からない。だが予測演算以外にも注意する事がまだ他にあるみたいだ。
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