Worldtrace

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[Worldtrace2]

一難去ってまた一難

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都市から離れ森の奥に進む。中々に深い所にある村の様だ。しかしあまり近いと人も魔族も困る事になる。場所としては悪く無いかも知れない。
しばらく進むと少し開けた場所に着く。そこには集落があった。

ランド「こんな所に住んでいたのか。」

女「うん。」

門番1「おい!あれはリディアじゃないか!」

門番2「一緒にいるのは・・・人だ!人族だ!人族がリディアを人質に攻めてきたぞ!」

門番1「族長を呼んで来い!ここは食い止める!」

門番2「分かった!」

中々の騒ぎだ。なんとなく面倒な事にはなると自覚はしていた。しかし彼女を放置も出来ない。とにかく村まで送り届けに来た訳だが、ここからどうするかが問題だった。

門番1「おい!リディアを放せ!」

ランド達は自己紹介をしていない。リディアと言われても一体、誰の事か。状況と流れから彼女の事だとは分かる。

ランド「大丈夫か?下ろすぞ。」

リディア「う、うん。」

門番1「何!」

人質である筈の仲間を何の見返りも無く解放した。門番はその事実に驚愕する。リディアを下ろし、1人で歩かせる。足が痛いのに少し悪い事したかな?とランドは思う。しかし彼女を抱えたままでは村に近付く事すら出来ないだろう。

門番2「おい!族長を連れて来たぞ!」

族長「リディア!」

リディア「父さん!」

族長は父親らしい。部族の中では貴族の令嬢と同じ様な存在だと思うが、そんな彼女が何故1人で森へ?と疑問に思う。しかしこれ以上は自分が関わる事じゃない。役目も果たした。このまま静かに立ち去ろうとすると族長から待ったが掛かる。

族長「待たれよ!娘から話は聞いた。危ない所を助けてくれたそうだな。先ずは礼を言おう。だがこのまま帰す訳にはいかない。」

リディア「父さん!」

族長「分かる筈だ。我々はここで静かに暮らしてる。人族に迷惑を掛けた事は無い。だが村の場所を知られればどうなるか分からん!」

確かにそうだ。魔族との関係は良好では無い。ランドに戦う意思が無くとも他の者は分からない。自分が安全という証拠も無い。ここで強行突破をしてこの場を脱出しても問題が起きる。やはり今は説得するしかないだろう。

ランド「とにかく、落ち着いてくれ。冷静に話を・・・ぐぁ!」

リディア「ちょっと!」

首に鈍痛が走る。いつの間にか後ろに他の魔族が回り込んでいた様だ。ランドはそのまま拘束される。
"イージス"での初休暇。ランドはその2日目の朝を土壁と竹柵で囲われた牢屋で迎えた。

ランド「痛っ!」

首に痛みが走る。周りを見ると牢屋の様だ。それに剣も無い。今は休暇中だ。行き先等、誰かに話している訳でも無い。現在のランドは消息不明という事になるだろう。休暇期間中に戻らないと捜索隊が組まれ、下手をすると探しに来た仲間と戦闘になるかも知れない。しかし自分がこの村の事は他言しないという事を証明出来ないと解放はされないだろう。

ランド「困ったな。」

リディア「ねぇ、大丈夫?」

あの時助けた女性だ。

ランド「ああ、大丈夫だ。俺は傭兵だからな。鍛えているし、身体は丈夫な方だ。・・えっと?」

ランド達はまだ自己紹介をしていない。リディアの名前は流れで聞いたが、お互いをどう呼んだら良いか分からない。

リディア「ごめんなさい。そういえば自己紹介がまだだったわね。リディアよ。と言ってももう知ってるわよね。私の事はリディアで良いわ。」

ランド「分かった。俺はランドだ。俺もランドで良い。なぁ、俺はここから出られないのか?」

リディア「お願いしたけど、駄目だと言われたの。」

ランド「参ったな。俺の休暇は1週間なんだ。後、4日で帰らないと。捜索隊が組まれて大事になるかも知らない。」

リディア「貴方、実は偉い人?」

ランド「別に偉くは無いさ。ただ皆んな良い奴ばかりで、家を追い出された俺を受け入れてくれた人達だ。連絡しないでいなくなれば探しに来ると思ってね。」

リディア「ふ~ん。・・・ねぇ、貴方の住んでいる所ってどんな所?」

ランド「今住んでいるのは・・・。どう言えば良いかな?元々の出身地は違うんだ。」

それから2人はお互いの話をした。出身地から今に至る経緯、家族構成まで話した。
今まで貴族として色々な人と社交的な話をしてきた。しかしここまで普通の話をしたのは"イージス"に来てからは数える程しか無い。更に言えば女性とこんな他愛の無い話をしたのはこれが初めてだった。ランドに今まで感じた事の無い感情が芽生え始めていた。

リディア「この村の人はあの戦争には参加してなかったの。」

ランド「そうなのか。」

リディア「ただ戦場で死に掛けてたまたま生き残って、この村に逃げ延びた人もいるの。そういう人は人族に対して厳しいから。」

ランドは理解する。自分がここに入れられているのはつまり内輪揉めを防ぐ為にとにかく拘束されたのだ。そして牢屋に1人の村人が近付いて来る。

村人「おい!ついて来い!」

リディア「ちょっと!何よ!」

牢屋を開けランドを連れて行く。

村人「族長がこいつを呼んでいる。それにリディア、こんな奴と話すな。」

リディア「あんたに関係ある?」

村人「俺はお前の!・・・まぁ、良い。今はこいつだ!」

ランドは手を前で縛られ、族長の所へ連れて行かれる。

族長「来たか。実はこの集落の中に戦場でお前らしき男を見た者がいる。それを確認したくてな。」

男「やはりお前、鷹の目だな?第二師団が作った新兵器、合成魔獣を倒した。」

リディア「そうなの?」

ランド「え?う~ん。止めは刺したが俺1人の手柄じゃないんだ。」

族長「そこは今、重要では無い。お前がその"鷹の目"なのか。そしてそうだとしたら、あの砦で名の知られている人族をこれからどうするか。それが重要なのだ。」

下手に死体にすると始末に困る。放って置いても捜索に来た者と争いになる。しかしこのまま解放しても、自分達の安全が保証されていない以上誰も納得しない。

村人「やはり殺すべきだ!」

リディア「何言ってるの!そんな事したら一生追われるわ!」

男「しかし何も無く解放する訳にはいかない。我々に対する安全の保証が無いからな。」

族長「そうだな。・・・はぁ、処分について今は保留にするしか無いか。・・・我々がここで生活し続けるのはもう難しいかも知れないな。」

争うつもりは無くとも所在が知られれば魔物として狩られるかも知れない。魔族にはその恐怖がある。ここで初めて自分の行動が軽率だったと知る。
ランドは話せば分かって貰えると思っていた。しかし人族と魔族の溝は思っていたより深い。何も知らない自分はやはり世間知らずな貴族だった。
ランドは落ち込んでいたが、そんな事とは関係なく話は進む。結果を言うと処分は保留となり、このまま牢屋で寝泊まりする事が決まった。
とにかく命は無事だったが、これからどうするか考えなければならない。
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