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[Worldtrace2]
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その日、その男は珍しく休暇を取っていた。
時期はシリウスがジンの所へ向かった直ぐ後だった。
ランド「なんとも自分が情け無いな。」
ゲイツ団長より働き過ぎな為、たまには休めと言われ1週間程の休暇を貰った。
それは良いがランドには貴族だった頃から趣味と言える物が無い。敢えて言うなら剣が趣味に近いかも知れない。嫡男であるランドは次期領主として遊びの類いは一切せず、経営学等の勉学が生活の中心だった。そして空いた時間に剣の稽古をしていた。今は廃嫡になり辺境で傭兵をしている。現在は勉学に使っていた時間も剣の稽古に使っている。そんな未だに暇な時の遊び方が分からないランドは剣の稽古以外にする事が無い。
結局、暇で仕方ないランドは危険な魔物が現れていないか巡回する事にした。
しかし落ち着いて考えると、これは果たして休暇なのか?と先程から自問自答していた。
ランド「本当にする事が無い。シリウスがいればな。」
シリウスは簡単な物だが多少の遊びに精通していた。金貨を指で真上に弾きそれを掴み表か裏かを当てる勝負をしたり、球を湯呑みに入れ空の湯呑みと並べ何処に球があるかを当てる勝負や、仲間達との力比べに腕相撲なんていうのもしていた。どれも簡単だが堅物のランドには新鮮だった。因みにその遊びの幾つかが、鑑定眼を鍛えるのにも一役買っていた。
とにかく娯楽の少ないこの『世界』において、趣味の無い人間に休暇は中々の苦行だった。
ランド「ふむ。本当にどうするか。」
帰って素振りでもするか。そう思った時だ。少し離れた所で木々が薙ぎ倒される音がする。ランドは音のした方へ走り出す。そしてそこで運命の出逢いを果たす。人が聞けば陳腐な表現だと言うだろうが、この出逢いは正しく運命だった。
そこには、怪我をしているのか足を庇いながら魔物に向き合っている女性がいた。
相手の魔物は今まで見た事の無い奴だった。その見た目は獣人に近いが、知性の無い獣の様だ。実は最近こんな姿の魔物が増えていた。何か良からぬ事が起きようとしているのかも知れない。そんな不安を感じる。
ただ生憎、今はそんな事を気にしている時では無かった。
女「くっ!」
振り上げられる鉤爪に女が覚悟を決め、目を閉じる。だがガキンと炸裂音が鳴り、一瞬だけ静かになる。
ランド「うお!ぐっ!」
女「な!誰!」
ランドはなりふり構わず割って入る。顔や身体の模様は虎の様だが体格は筋骨隆々の人間の様にも見える。ランドは一気に押し返し剣を振り下ろすが、魔物は直ぐに射程外へ移動する。
ランド「チッ!」
ランドは珍しく舌打ちをする。頭の中で落ち着けと唱えるが、魔物は前脚を下ろし四足歩行になる。牽制をする様ウロウロと歩き、こちらの様子を伺う。ランドは脇に構え、突きの体勢に入る。そして魔物が飛び掛かると同時に突きを繰り出した。お互いの攻撃が掠りすれ違う。
ランド「ぐっ!」
魔物の爪がランドの右頬を切る。魔物はと言うと肘の辺りを少し切った程度だった。あまり痛み感じていないのか、構わずランドを睨み付ける。
このままでは不味い。ランドは目を閉じて深呼吸する。そして鑑定眼を全開で敵を見据える。ランドのそれは今や"鑑定"とは言い難い能力を発揮していた。平時では細かい補足が入り、戦場では相手の動きをハッキリ捉えられた。どの様に動くのか、ある程度の予測も出来る程だった。
魔物が放つ左右の突きを弾き、最小限の動きで距離を詰める。
魔物「グワッ!」
咆哮と共に牙で攻撃をしようと顔が近付く。次の瞬間、ガチンと歯が鳴る。ランドは半歩退がり躱すとすかさず剣を振り下ろす。袈裟斬りに一太刀、胴に一太刀、止めに心臓目掛け突きを放ち突き飛ばす。
ドォンと魔物は背中から倒れる。ランドは剣の血を払い仕舞う。
ランド「大丈夫か?」
女「近付くな!人族!」
女は指の爪を伸ばし威嚇する。それもその筈、今助けた女性は魔族だった。
伸縮自在の爪は彼女の特殊能力だろう。
ランド「怪我してるんじゃないのか?」
女「五月蝿い!人族は信用しない!」
ランドは考える。
そしてランドは剣を鞘毎外し少し離れた所に置く。
女「な!」
ランド「ほら、これで俺は丸腰だ。近付いても大丈夫だろ?もし何かあれば俺をそのまま殺せば良い。」
ランドは魔族の女性の足に触れる。
女「痛っ!」
ランド「大丈夫だ。折れてはいない。」
捻挫の様だ。簡易的だが動かない様に固定する。
女「あ、ありがとう。」
ランド「フッ、お安い御用さ。村は何処だ?」
女「はぁ?何で?」
ランド「いや、その足では歩けないだろう?それにまた魔物に襲われたらどうする?」
女「それは・・・。」
ランドは自分の剣を拾い、そのまま流れ作業の様に彼女を抱き抱える。
女「な!バ、バカ!何してるの!」
ランド「で?どっちに行く?」
女「・・・あっち。」
時期はシリウスがジンの所へ向かった直ぐ後だった。
ランド「なんとも自分が情け無いな。」
ゲイツ団長より働き過ぎな為、たまには休めと言われ1週間程の休暇を貰った。
それは良いがランドには貴族だった頃から趣味と言える物が無い。敢えて言うなら剣が趣味に近いかも知れない。嫡男であるランドは次期領主として遊びの類いは一切せず、経営学等の勉学が生活の中心だった。そして空いた時間に剣の稽古をしていた。今は廃嫡になり辺境で傭兵をしている。現在は勉学に使っていた時間も剣の稽古に使っている。そんな未だに暇な時の遊び方が分からないランドは剣の稽古以外にする事が無い。
結局、暇で仕方ないランドは危険な魔物が現れていないか巡回する事にした。
しかし落ち着いて考えると、これは果たして休暇なのか?と先程から自問自答していた。
ランド「本当にする事が無い。シリウスがいればな。」
シリウスは簡単な物だが多少の遊びに精通していた。金貨を指で真上に弾きそれを掴み表か裏かを当てる勝負をしたり、球を湯呑みに入れ空の湯呑みと並べ何処に球があるかを当てる勝負や、仲間達との力比べに腕相撲なんていうのもしていた。どれも簡単だが堅物のランドには新鮮だった。因みにその遊びの幾つかが、鑑定眼を鍛えるのにも一役買っていた。
とにかく娯楽の少ないこの『世界』において、趣味の無い人間に休暇は中々の苦行だった。
ランド「ふむ。本当にどうするか。」
帰って素振りでもするか。そう思った時だ。少し離れた所で木々が薙ぎ倒される音がする。ランドは音のした方へ走り出す。そしてそこで運命の出逢いを果たす。人が聞けば陳腐な表現だと言うだろうが、この出逢いは正しく運命だった。
そこには、怪我をしているのか足を庇いながら魔物に向き合っている女性がいた。
相手の魔物は今まで見た事の無い奴だった。その見た目は獣人に近いが、知性の無い獣の様だ。実は最近こんな姿の魔物が増えていた。何か良からぬ事が起きようとしているのかも知れない。そんな不安を感じる。
ただ生憎、今はそんな事を気にしている時では無かった。
女「くっ!」
振り上げられる鉤爪に女が覚悟を決め、目を閉じる。だがガキンと炸裂音が鳴り、一瞬だけ静かになる。
ランド「うお!ぐっ!」
女「な!誰!」
ランドはなりふり構わず割って入る。顔や身体の模様は虎の様だが体格は筋骨隆々の人間の様にも見える。ランドは一気に押し返し剣を振り下ろすが、魔物は直ぐに射程外へ移動する。
ランド「チッ!」
ランドは珍しく舌打ちをする。頭の中で落ち着けと唱えるが、魔物は前脚を下ろし四足歩行になる。牽制をする様ウロウロと歩き、こちらの様子を伺う。ランドは脇に構え、突きの体勢に入る。そして魔物が飛び掛かると同時に突きを繰り出した。お互いの攻撃が掠りすれ違う。
ランド「ぐっ!」
魔物の爪がランドの右頬を切る。魔物はと言うと肘の辺りを少し切った程度だった。あまり痛み感じていないのか、構わずランドを睨み付ける。
このままでは不味い。ランドは目を閉じて深呼吸する。そして鑑定眼を全開で敵を見据える。ランドのそれは今や"鑑定"とは言い難い能力を発揮していた。平時では細かい補足が入り、戦場では相手の動きをハッキリ捉えられた。どの様に動くのか、ある程度の予測も出来る程だった。
魔物が放つ左右の突きを弾き、最小限の動きで距離を詰める。
魔物「グワッ!」
咆哮と共に牙で攻撃をしようと顔が近付く。次の瞬間、ガチンと歯が鳴る。ランドは半歩退がり躱すとすかさず剣を振り下ろす。袈裟斬りに一太刀、胴に一太刀、止めに心臓目掛け突きを放ち突き飛ばす。
ドォンと魔物は背中から倒れる。ランドは剣の血を払い仕舞う。
ランド「大丈夫か?」
女「近付くな!人族!」
女は指の爪を伸ばし威嚇する。それもその筈、今助けた女性は魔族だった。
伸縮自在の爪は彼女の特殊能力だろう。
ランド「怪我してるんじゃないのか?」
女「五月蝿い!人族は信用しない!」
ランドは考える。
そしてランドは剣を鞘毎外し少し離れた所に置く。
女「な!」
ランド「ほら、これで俺は丸腰だ。近付いても大丈夫だろ?もし何かあれば俺をそのまま殺せば良い。」
ランドは魔族の女性の足に触れる。
女「痛っ!」
ランド「大丈夫だ。折れてはいない。」
捻挫の様だ。簡易的だが動かない様に固定する。
女「あ、ありがとう。」
ランド「フッ、お安い御用さ。村は何処だ?」
女「はぁ?何で?」
ランド「いや、その足では歩けないだろう?それにまた魔物に襲われたらどうする?」
女「それは・・・。」
ランドは自分の剣を拾い、そのまま流れ作業の様に彼女を抱き抱える。
女「な!バ、バカ!何してるの!」
ランド「で?どっちに行く?」
女「・・・あっち。」
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