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[Worldtrace2]

安全第一

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朝になり改めてガルマンの仲介で、メリア達のパーティに仕事の依頼をした。俺も森に向かう。仕事は当然クリスの護衛だ。
そういえば昨日の事だけど、護衛依頼を頼んで何故クリスの実力?って疑問が出て来る。クリスを護衛するって事は重要なのはメリア達の実力の方だ。
改めて話を聞くと人手が足りないから護衛は難しいんじゃないか?って話で、ある程度は身を守れる腕が無いと案内は出来ないって言われたらしい。それで昨日の騒動になったんだけど。果たしてあの対決がそこまで重要だったのか不思議だ。

マーク「貴様は、本当に話を聞いてなかったんだな。」

俺「ごめん。全く聞いてなかった。」

マーク「まぁ、良い。しかし力があると証明出来ても、危険じゃないとは言い切れない。となると護衛は必要だ。」

俺「確かにな。」

メリアのパーティは女性で構成されている。男を仲間にすると揉める可能性があるから入れてないそうだ。恋愛をするなら勤務時間外に仲間では無い奴とって決めたらしい。次期公爵様に喧嘩を売ったから常識に欠けてるのかと思ってたけど、公私はしっかり分けていた。感心だ。ただ今回大事なのはそこじゃない。

メリア「今日は静かだな。」

盾を持ったメリアが言う。剣を持った戦士と盗賊風の格好した奴に、魔法使いのパーティだ。ただ気になる事が1つある。回復役、僧侶がいない。なんとなく既視感がある。前にも何処かで僧侶とかいないなって思った事があるな。何処だ?

ガルマン「ささ、こちらです。」

俺「何であんたがいるんだ?」

ガルマン「私はこの都市の代表ですよ?後は知らぬ存ぜぬとは行かんでしょう!」

確かにそうだけど昨日の今日でなんとなく頼り無い気がする。領主がいない中、都市を切り盛りしてる訳だから仕事はちゃんとやってるんだろうけど。荒事は大丈夫なのか?
まぁ、昨日の状況は異例も異例だ。普段と違って慌ててもおかしくは無いか?

マーク「フン!あんなに簡単に気絶するお前が一緒で大丈夫なのか?」

マークは相変わらず平気で口にする。俺も思ったけど。
森に入って少しの所でガルマンの説明が入る。

ガルマン「この辺りから森林を伐採し、我々の生活出来る範囲を広げたいのです。以前はもう少し奥だったのですが、何故か最近森が拡大を始めまして。」

なんか森が広がり都市に近付いて、更には魔物が活発化したらしい。その話は俺の記憶には無い。

ガルマン「ですので公爵様に援助して頂きたく。」

位置的にはスワロウ公爵領は近いか。

俺「他の所には頼まなかったのか?」

ガルマン「他の方には断られてしまいました。」

代表も大変だな。

クリス「規模と範囲は分かりました。しかし森を切り拓くという事ですが、魔物の氾濫等の危険性は?」

小難しい話が続いてる。正直この話は公爵家とガルマンの問題だ。俺が気にする必要は無い。そもそも俺の仕事はクリスとマークの護衛だ。今の所不審な物は無いけど。

クリス「分かりました。最終的な判断は父と相談しなければなりませんが、良い返事が出来るよう前向きに検討します。」

ガルマン「ありがとうございます。」

前向きに検討は断る口実、みたいな事聞いたけど。クリスはどうするんだ?
最終判断は親父さんがするならこれ以上クリスがする事は無いのかな?
俺はクリスの方に背中を向け立っている。クリスの話が終わったから正面に意識を戻す。数メートル先の茂みで何かが光る。そして俺の左脇を抜ける軌道で、クリスに向かって飛んで行く。俺は左手でその矢柄を掴む。

マーク「な!」

メリア「敵襲!」

ガルマンは咄嗟にクリスを俺の背中の方に寄せ、自分は剣を取り周りを警戒する。
うわ、ガルマンが仕事してる。
ガルマンの姿に驚いていた次の瞬間、今度は目の前の茂みからコボルトが棍棒を振り上げ現れる。俺は腰からナイフを取り、右のナイフで棍棒を受ける。すかさず左のナイフでコボルトの首を刺し、前蹴りで蹴り飛ばす。
皆んなそれぞれに対応してる。クリスはガルマンやメリア達をフォローしながら戦っている。ただ気になるのは今襲って来てるのは魔物だけだ。さっきの矢はしっかり作られていた。人が作った様に見えるという事は近くに人間、魔族がいると思う。
とりあえずクリスの事はガルマンに任せよう。マークはまだ無事だ。
最初の攻撃があった方角を見る。また何かが光る。この状況で考えれば光ったのは鏃だろう。俺は足元にあった石を蹴り上げる。矢と石がバチンと音を立てる。

メリア「あんた何者だい!」

俺「今はそれ所じゃないぞ!」

その後も戦い続け、魔物も一通り片付け終わった時だ。少し気が緩んでいた。狙ったのかそれとも偶然か、ガルマンのいる方角から矢が放たれた。そして矢の向かった先も俺が思っていたのとは違っていた。

クリス「メリア!危ない!」

メリア「え!」

クリスがメリアを押し除けるとクリスの脇腹に矢が刺さる。

マーク「クリス様!」

メリア「クリス!」

俺は思う。お前に当たるんかい!と。
いや、今はそれ所じゃない。

マーク「おい!早く回復薬を!」

ガルマン「は、はい!」

クリスに急いで飲ませるが効果が薄い。

マーク「何故だ!」

メリア「おい!この顔色の悪さ、毒じゃないか!」

マーク「何!毒消しは!」

メリア「済まない。一昨日使ってまだ補充出来てない。」

マーク「治癒師を!誰でも良い!早く連れて来い!」

ガルマン「誰か!誰かぁ!」

ガルマンが走り出す。マークのあの台詞を聞き、思い出した。ゲームだとあの台詞はクリスが言っていた。状況が逆転しているが、シナリオの通りに進んでいる。つまりはこのままだと不味い。落ち着いてる様に見えるかも知れないが俺も内心焦っている。
クリスは物語のメインだ。死なれたら困る。だがそれ以前にアイリスの弟だ。何としても助けたい。シナリオ通りなら治癒師等は間に合わない。
俺は自分の手を見る。

俺「やるしか無いか。」

気功を使う施術の要領でクリスの[気]と自分のを繋げて自然治癒力を高めて治す。

俺「退いてくれ。」

マーク「何をする気だ?」

俺はマークと入れ替わり、クリスに触れる。先ずは自分の[気]とクリスの[気]を繋げる。毒を見つけ、クリスの[気]で身体に広がらない様に1箇所に集める。それと同時に他の異常が無いか身体を調べる。辛うじて今は矢傷と毒だけだ。どうするか?ここで傷だけを塞げば毒が残ったままになる。だけど毒を抜くにも矢が邪魔だ。
でも刺さった異物を無理に引き抜くと血が吹き出し、危険だ。医者でもここは慎重になるだろう。そもそもこの世界では輸血という概念も無い。確か血って骨髄で作るんだっけ?だけどこのままだとどちらにしても危険だ。とにかく傷が広がらない様に、修復をしながら矢を引き抜く。

クリス「ぐ!」

わ~!済まん!と心で謝りながら作業を続ける。さて、後の問題は1箇所に纏めてる毒だけど。どうするか?元々身体は異物を排除しようとする反応はあるみたいだけど、この異物は毒だしなぁ。やっぱり取り出すか。
でも普通に傷口から出しても皮膚に付く。それだと結局皮膚から体内に浸透して意味は無い。
俺は何故かこのタイミングで、クロードと初めて会った時の事を思い出す。奴が火の玉を飛ばし、俺が[気]使って素手で受け止めた時だ。そうだ、魔力で包めば身体に触れず毒を取り出せるんじゃないか?それなら後は[気]を使って掴むだけだ。ただ問題は魔力を何処で集めるかだ。
そういえば魔力を使うのには呼吸が関係してたな?呼吸、つまりは酸素と同じで血液で魔力を移動させてる?もっと言えば血液に魔力が含まれてる?意識を集中させると血からなんとなく魔力を感じる。これ以上は考えてる時間が無い。

俺「やるか!」

俺は矢傷で体内に出た血を使い毒を包み、それを慎重に傷口の所まで持って行く。それと同時に、自己修復を本格的に開始させる。俺は毒を取り出す為、少し傷口を開く。

クリス「う!」

マーク「おい!何をしている!」

メリア「馬鹿!今何か一生懸命にやってるだろ!少し静かにしろ!・・・で?何してるんだ?」

女冒険者「さぁ?」

俺は毒を包んだ血液というより魔力の袋を破らない様に取り出す。そしてゆっくり傷口も内側から治して行く。

メリア「な!傷が・・・!」

女冒険者「嘘!綺麗に治った!」

マーク「クリス様!」

傷は治した。ただ服の破れと血のシミは直せない。そこは勘弁して欲しい。そう思うとクリスが少し笑う。

クリス「う・・。これくらいで文句は言いませんよ。命を救われましたからね。」

[気]を繋げていた所為か俺の考えがダイレクトに伝わったみたいだ。

マーク「クリスさ、ま!」

メリア「クリス!」

マークを押し除けメリアが抱き付く。その時には俺は離れていたから俺も毒も無事だ。というか捨てるか。俺は毒を人のいない方へ放り投げる。本当は良く無いが、今は他に対処のしようが無い。というか疲れた。医者でも無いのにここまで神経使うとは思わなかった。毒が付いた地面からじゅうぅぅと音がする。え!凄いヤバい毒じゃないか?よく無事だったなクリス。

クリス「あの・・・。2人共、いい加減立ちたいんだけど。」

クリスが戸惑う程マークとメリアは言い争っていた。"抱き付くな!離れろ!"とか"命を救われたんだまだ礼もしてない。"とか。クリスは2枚目だ。モテて当然か。

クリス「あの、先生。助けて下さい。2人が・・・。」

とにかくクリスもマークも無事で良かった。後はランドと最終決戦、そして和解だな。

クリス「あ、あれ?聞いてますか?」

しかし和解となるとやはり先ずは代表だよな?何処にいるのか?しらみ潰しとは行かないよな?

クリス「お願いします!助けて下さい!」

ランドの事は釘を刺しておいたから多分大丈夫だろう。さてこいつ等を回収して帰るか。

俺「おい!そろそろ帰るぞ!いつまでやってんだよ!第一クリスは怪我人だから、また傷口が開いたら大変だろ!」

2人共苦い顔をしていたが、なんとか納得して離れた。都市に帰ると凄い数の僧侶や回復薬を持った商人が入り口に集まっていた。これからクリスを助けに来るつもりだったらしい。

俺「もう助けたから大丈夫だよ。」

ガルマン「はぁ~~!」

一際デカいガルマンの声が木霊した。
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