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[Worldtrace2]

ゲーマーの性

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俺はゲーマーだ。ショックではあったがクリスが目の前で[気]を修得したのを見た時、ワクワクした。それがきっかけで俺はこの旅の途中で出来るだけクリスを鍛える。そう決めた。
決めた途端、何故かマークもついでに鍛える事になった。とにかく俺の知っている事、経験した事の全てを叩き込む。

俺「この世にいるからには姿を消せる訳じゃない。例え視界を塞がれてもそこに敵は必ず存在する。」

クリス「はい!」

マーク「そんな簡単に分かるか!痛!」

俺は目を閉じて集中させているマークの頭を叩く。

俺「フン、未熟者め。」

頭の中にある芸人さんの顔が浮かぶ。小さい頃よく見て笑ったな。今の言い方がその芸人さんの言い方と同じだった。いや、今はどうでもいいか。

俺「良いか?感覚には味覚、嗅覚、視覚、聴覚、触覚の5感って言う感覚がある。人によっては第六感ってのがあって普通では分からない物を知覚する事が出来るらしい。」

クリス「らしいと言うのは?」

俺「俺には分からない感覚だからだ。」

マーク「役に立たんな。」

ちょっとムッとする。マークは口笛を吹きながらシラを切る。

俺「とにかく目から入る情報が無くても耳で音を聞いたり、匂いや空気を肌で感じるだけでも何かしらの情報は得られるって話だ。他には勘だな。それこそ第六感ってのに近いが勘は経験で磨ける。」

クリス「はい!」

マーク「本当に大丈夫なのか?」

昔の刑事ドラマとかでも刑事の勘って、ベテランが推理パートで言っていた。こういう時は大抵、若い方が海外で学んだプロファイリングを披露する。お決まりって奴だけど、基本プロファイリングは色んな人の経験と学問で人の行動を予測する物だ。俺としては刑事の勘も、勘とは言ってるけど要は経験から来る考察だろう。そう考えるとプロファイリングと似た様な物だと俺は思っている。まぁ、そのベテランと若手は同じ物なんて認めないだろうけど。
脱線したな。何が言いたいかって言うと経験から来る勘ってのは学問を利用してない簡易的なプロファイリングだと思ってる。俺としては充分に役に立つと思うって話だ。磨いて損は無いだろう。

クリス「それにしてもブツリ学みたいな内容ですね。」

俺「え!物理学あるの?」

クリス「先生はご存知なんですか?」

中身が分からないとハッキリ言えないけど、ご存知かも知れないのは事実だ。

クリス「元々は物質によるコトワリへの干渉と言う学問だったのですが、姉上が「ブツリ学だ。」と言った事でブツリ学と命名されました。」

クリスと一緒にいるとアイリスのやらかしが聞けて少し楽しい。あいつもなんだかんだ言って色々しくじっているな。まぁ、俺のやらかしの方が規模が大きいけど。

クリス「それにしても先生は博識ですね。」

俺「ん?何が?」

マーク「まぁ、認めたくはありませんが確かにそうですね。字も読めますし。計算だってしているみたいですからね。」

まぁ、日本で生活していたから基礎というか初歩というか下地はあった。そこから考えれば出来て当然だとは思う。

俺「う~ん。昔取った杵柄って奴かな?」

クリス「はい?」

マーク「何だって?」

流石にことわざは通じなかった。
旅の数日だけでそんなに変わらないだろうとか思っていたがマークはそこそこ、クリスはかなり成長した。別に数字で出てる訳じゃないからハッキリとは分からないけど。
多少の手加減はあれどマークとの組み手では負け無し、俺とは始めの頃より上達していた。当然俺も手加減してるけど負けてはやらない。

俺「よっと。」

クリス「うわ!」

マーク「クリス様!おい!少しは忖度しろ!」

俺「怪我しない様にはやってるぞ。」

マーク「負けろと言ってるんだ!」

俺「断る!男子として何よりゲーマーとしてそれは承服出来ない!」

マーク「貴様、何を言ってる!意味が分からんぞ!」

ついつい変な意地が出る。

クリス「落ち着いてくれ。これくらいじゃないと訓練にならないと言ったろ?続けて下さい。」

俺「良し!行くぞ!」

鍛えれば鍛える程クリスの力に変わる。楽しくて仕方ない。そして知識も入れて行く。

俺「光ってのは太陽から大地に降り注いでるけどその光によってもたらされる色彩の情報ってのは多少のタイムラグがある。」

クリス「たいむらぐ?」

俺「ん?あ、時間差ね。」

マーク「どういう事だ?」

俺「光は幾つかの色の線を一本に束ねた様な物で光が当たった時、その中の色を物体が反射する。それが目に入って初めてその色で見えるんだ。」

クリス「そうなんですか?」

俺「果物が赤いのは赤の光だけ反射してるからで、野菜が紫に見えるのはその色を反射してるからだ。クリスの服が白いのは光全部を反射してるからで、マークの服が黒く見えるのは光を吸収して逆に反射してないからだ。」

マーク「何!そうなのか!」

俺「時間差ってのは光が物に当たった後、俺達の目に情報として入るからこうして見てる物は大した差は無いけどほぼ過去の姿って話だ。」

クリス「凄い話ですね。」

マーク「う~む。よく分からない。」

俺は大学は理系だったけど研究員やる程学は無いし、普通の社会人になったら基本こういう知識は使わないからな。でも、こんな所で講義するとも思わなかった。

俺「音ってのは出したその場から全体に広がる。だから光よりは発した所から真っ直ぐ届く。」

クリス「音はどういう仕組みで聞こえているのですか?」

マーク「ク、クリス様そんな事を聞くとまた訳の分からない事言い出しますよ。」

俺「相変わらず失礼な。音ってのは空気振動だよ。」

マーク「だ、駄目だ。目眩がする。倒れそうだ。」

クリス「頑張るんだマーク。まだ先は長いぞ。」

別に登山はしてないが?まぁ、良いか。

俺「空気の振動、波の様に揺れながら移動するんだ。それを耳で拾うんだよ。」

俺はクリスの横に移動し、俺、クリス、マークの順になる並びで立つ。そして柏手を打つ。

俺「ここで俺が鳴らした時、2人共聞こえて来た方向は一緒だろ?」

マーク「まぁ、そうだな。」

俺「ただ時間差はあった筈だ。波がクリスの方に到着するのが早かったからな。」

クリス「音の到達の時間で距離が分かるのですか!」

俺「うむ。これが分かれば目が開けられない状態でも、敵の位置をある程度は把握出来る。」

マーク「仕切りに言うな。何かあるのか?」

俺「行けば分かるよ。さぁ、続けるぞ。」
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