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後日談

続々・陰謀

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ゲイツ「これで95人か。」

ティム「そうだな。後5人叩きのめせば丁度100人だ。」

団長とティムはそんな事を言う。ダンとジークは関わらない様にする為か、こっちを見ようとしない。ランドは手で目を覆っていて、執事は笑顔でこっちを見ている。俺は王太子から少し離れて立つ。どうしよう。
爺さん達が駆け寄り王太子の様子を見る。そして息はしているらしい安堵している。だが俺に対する扱いは当然酷い。

爺さん「何をしている!早くあの男を討ち取れ!」

近衛騎士1「貴様!許さんぞ!・・・死ねぇ!」

殴ったのは確かに悪かったが、ある意味絡まれたのは俺の方だ。そんな魔物か何かみたいな言い方しなくても良いんじゃないか?とか思う。
今はとりあえず目の前の敵に集中しよう。相手は甲冑を着込んでいる。素手で倒すのは大変だけど、確か空手の裏当てだっけな?拳が当たる時にもう一度当て衝撃を貫通させるとかってやつ。俺の特異体質はこういう時には便利だ。多少、聞きかじった程度の知識でどんな事でも出来る。まぁ、物理限定だけど。
俺は振り下ろされる槍を右に躱し、騎士の腹を打ち抜く。

近衛騎士1「ぐほ。」

近衛騎士4「ひ!」

最初の奴が他の奴の足下に倒れ、他の奴は小さく悲鳴を上げる。

爺さん「えぇい!怯むな!とっとと行かんか!」

いや、怯めよ。面倒臭いんだから。

近衛騎士2「く、くそ!」

近衛騎士3「や、やってやる!やってやるぞ!」

結局、俺に向かって来る騎士達。その内の1人が盾で身を隠し突っ込んで来る。ただ顔の前に構えているからだろう。絶対俺の姿は見えてないと思う。俺はそのまま難なくそいつの横に移動し、空いてる顎に素早く一撃を入れ気絶させる。

近衛騎士2「が!」

近衛騎士3「この野郎!」

3人目は右膝の裏側に蹴りを入れ、バランスを崩してやる。

近衛騎士3「痛い!うわ!」

面倒だから3人目の騎士を持ち上げ、そのまま後ろに放り投げる。

近衛騎士3「が!・・・うぅ。」

騎士は地面に落ちると甲冑で背中と後頭部を打ち気絶する。

爺さん「な、何をしている!早く仕留めろ!」

まだやんの?いい加減飽きて来た。そして残りの2人が左右に分かれながら近付いて来る。2人共歯がガチガチ鳴ってる。

俺「怖いなら辞めとけよ。」

近衛騎士4「ば、馬鹿な!こ、これは、む、武者震いと言う奴だ!」

近衛騎士5「そ、そうだ!こ、ここで退くなら許してやる。」

よくぞこの状況で言い切ったな。俺としてはもう退けるタイミングじゃないけどな。

俺「はぁ~、もう良いや。ほら、掛かって来いよ。」

近衛騎士4「な、舐めるなよ!」

ティム「完全にやる気失くしてるなぁ。あれ。」

ゲイツ「後2人で100人だろ?ったく、仕方ねぇなぁ。おい!小僧!」

今度は何だ?今、忙しんだけど。

ゲイツ「そいつ等倒したら俺が報酬として金貨3枚やるよ。返さなくて良いやつ。ついでにさっきの銅貨も返さなくて良いぞ。」

俺個人の意見だが人間は現金だ。生活が立ち行か無いと落ち込んでいたのに、大金が入ると知ると途端に活力が湧いて来る。
俺が呼吸を整え意識を集中すると、身体全体に力が漲って来る。全細胞の動きすら分かるくらい感覚が研ぎ澄まされて行く。それこそアーサーやドワイトと戦っていた時と同じくらいに集中している。

近衛騎士4「お、おい!なんか急に身体が光り出してないか!」

近衛騎士5「こ、こんなの知らないぞ!何だこれは!」

俺「俺は今、最高に気分が良い。安心しろ痛みを感じる事無く夢の世界へ誘ってやる。」

近衛騎士4・5「ひ、ひゃあ~!」

その後はどう勝ったか自分でも覚えてない。俺が倒したのは覚えているが目を閉じると頭には金貨しか思い浮かべる事が出来ない状態だった。

ティム「なぁ、やり過ぎじゃないか?」

ゲイツ「俺に言うなよ!」

ダン「でも団長が金貨やるって言った直後ですよ。あの2人の騎士が地面に突き立てられたの。」

4人目と5人目の騎士達は頭から腰の辺りまで地面に刺さっている。俺が刺したんだろうけど、どうやって刺したか覚えていない。今、ジークとランドが他の傭兵達と一緒に助け出している。

爺さん「ば、化け物!化け物だぁ!おい!早く馬車を出せ!」

爺さんは王太子を馬車に押し込んで逃げ出す。

俺「おい、こいつ等忘れてる・・・。って言っても、もう行っちまったな。」

クロード「ふぅ、貴方は期待以上です。これで一件落着ですね。」

ランド「いや、でも王太子殴ったんだから収まってないだろ?」

俺「ああ、そうだ。俺どうなんだよ。」

クロード「まぁ、良くて不敬罪で打ち首ですね。」

俺「はぁ?良くて?悪いとどうなる?」

クロード「恐らく、国家反逆罪で打ち首ですね。」

俺「一緒じゃないか!何が違う!」

クロード「罪状ですかね?」

ゲイツ「まぁ、そう怒るなよ。公爵がお前を好きな所に埋葬してくれるって言ってるんだ。今の内に選んでおけよ。」

俺「そうだなぁ~。ってなるか!」

ゲイツ「・・・待てよ!打ち首なら金貨は要らないよな?・・・・銅貨は餞別だ。くれてやる。」

俺「いや、寄越すなら金貨も寄越せよ!ケチくさい奴だな!」

ゲイツ「業突く張りなお前には言われたか無いな!」

ダン「やっぱり2人は似た者同士だな。」

この数日後、俺は見事に裁判に掛けられる。一応、団長の辺境伯の肩書きとジン、クライドの英雄貴族の嘆願にアイリスに怒られ俺の味方をしてくれたスワロウ公爵のお陰もあって、条件付きでお咎め無しという事になった。まぁ、その条件は王太子の敗北という結果を公言しないって事だけど、色々な人に目撃されてたからあまり意味は無い。全員の口に戸は建てられないからな。
ただそれがきっかけの一端だろうと思うけど、アイリスの婚約話も消えた。とりあえずアイリスにはあまり親父さんを責めない様に言っておいた。勿論優しさじゃない。これで少しでも貸しを作っておけば後で何かに使えるかも知れない。

フリード「貴様!貸しを作ったつもりか!」

これからも何かあればアイリスには協力するつもりだ。でも親父さんは・・・どうするかな?まぁ、嫌味くらい言っても罰は当たらないよな。

俺「フッ、思ってるさ。何かあったら今度はよろしくな。」

フリード「くぅぅ~。」

悔しがっていたけどたまには良いだろう。
それと久しぶりにアイリスと話す機会があった。予想通り怒られたが、理由は誤魔化した。流石に財布を落としたショックで連絡出来なかったなんて言いたく無かった。
それはともかくこれからもこの『世界』で生きて行く以上、お互いの事情を知る仲間はいた方が良い。という事で定期的に近況報告の連絡をするとアイリスに約束をした。正確にはさせられた訳だけど。
とにかく一連の騒動を片付け、俺は"イージス"に帰る事にした。
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