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後日談

続・陰謀

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ランド「なぁ、手紙になんて書いてあったんだ?」

ランドも流石に気になったのか聞いて来る。俺はランドに手紙を渡す。

俺「で?相手は何処にいるって?」

マット「やい!シリウス!見つけたぞ!さぁ、勝負しろ!」

俺はクロードを見る。

クロード「中々際どい状況でしたので、婚約発表よりも前に国内に勝負の話を広めました。」

要するに既成事実みたいな事だ。俺との勝負が前提になる様に先に発表した感じなんだろう。

俺「それで相手は納得したの?」

クロード「フッ、後は押し切りました。」

ゴリ押しかぁ。

俺「それで?あいつは?」

俺はマットを指差す。

クロード「あれはただの阿呆です。本命ではありません。」

俺「あっそう。マット、ここで騒ぐと迷惑だから外出ろ。」

マット「フンッ、良いだろう。分かっているとは思うが俺は今、剣聖にして伯爵だぞ。」

そういやそんな話聞いたな。

俺「それで?」

マット「相変わらず間抜けな奴だ!忖度をしろと言ってる!」

ああ、成程。

俺「分かった。分かった。」

よく見るとスレイやカイルもいる。相変わらずマットを煽てて、やいのやいのと言っている。
数分後マット達3人は折り重なる様に地面の上で気絶している。

ゲイツ「おい、小僧。」

俺「ん?」

ゲイツ「そいつ等、忖度しろとか言って無かったか?」

俺「だから気を遣って痛みを感じる前に一撃で気絶させてやったろ。しかも平手打ち。」

ゲイツ「いや、そいつ等の言った忖度はそういう意味じゃないだろ。」

俺はごちゃごちゃ言う団長の話を聞き流しながら右ストレートを躱す。殴り掛かって来た。髭親父の左頬を若干、掌底気味の平手打ちで打ち抜く。

男「ぶっ!」

ドスンと音を立てて倒れる。

ゲイツ「今ので何人目だ?」

ジーク「数えてない。」

ティム「今ので94人目だ。」

ゲイツ「おお!後6人で100人斬り達成か!」

100人斬りって、ただの平手打ちと掌底しか使ってない。斬って無いのに大層な言い方だ。

ランド「だけど大丈夫か?倒した中には貴族も何人かいるけど。手紙の通りだと公爵は何もしないって言ってるぞ。」

ランドの疑問もよく分かる。どうなるか不安は確かにあるけど、ここまで来ると10人も20人も同じだろう。
だけどそれとは別に気になる事がある。今までに叩きのめした奴等は公爵の権力があれば婚約なんて平気で断れる連中だろう。その権力を持ってしても断れない相手って誰だ?なんとなく嫌な予感がする。
その時、道の先に豪華な馬車が現れる。その後ろには騎士がいて、執事らしき爺さんが御者席から降り馬車の扉を開ける。そこから無駄に着飾った坊ちゃんが出て来た。俺は執事の方に目を向けると、執事は眼鏡を直すと顎であの坊ちゃんを差す。成程な、本命はあいつか。

ゲイツ「誰だ?あいつ?」

ティム「知らね。」

ダン「俺達ってそもそも貴族と接点無いですからね。多少有名でも分からないですよ。」

ランド「王都の御披露目や式典で見てないのか?」

ゲイツ「俺、王都行けないもん。」

ティム「俺は行こうと思えば行けるけど遠いしな。」

ダン「面倒臭いですからね。」

ジーク「土産を貰うのは良い。だが買うのは嫌だ。」

ゲイツ「お前、何言ってんだ?」

色々言ってるな。ランドの驚き方からやはり社交界では有名というか、かなりの身分がある奴って事になる。とすると王族かな?
そんな事を考えてると爺さんが喋り出す。

爺さん「ええい!貴様等!頭が高いぞ!この御方をどなたと心得る!」

ゲイツ「いや、だから知らねっつうの。」

ティム「1番高いのはあの爺さんの音量だな。」

ゲイツ「へっ、確かに。」

ランド「2人共!流石に失礼だぞ!」

爺さん「この国の次期国王にして王太子、カリアン様である!控えよ!」

ゲイツ「控えろってさ。」

ジーク「どうするんだ?」

ダン「分からん。ランドとあの執事さんはしてるぞ。」

ゲイツ「だけどあの国王の息子だろ?頭下げたく無いんだよな。」

ティム「あんたが身分で頭下げたの見た事無いけどな。」

ジーク「確かに最近、娘に頭下げたのは見たがな。"父さんと呼んでくれぇ!"と言っていた。」

ティム「俺が知ってるのもその1回だけだからな。」

ゲイツ「その事は言わなくて良いんだよ!」

俺は初めて聞いた。あのおっさんの土下座、見たかったな。まぁ、土下座したかは分からないけど。

爺さん「ぐぬぅぅ、愚民どもめ!」

カリアン「良い。この地にいる者は皆、礼儀という言葉すら知らぬ者達ばかり。そんな愚民達に礼を尽くせと言うのは酷というものだ。許してやれ。」

爺さん「おお!殿下!なんと寛大な!私は感動いたしました。」

カリアン「さぁ、早く例の魔人を片付け6人目の妻、アイリスを迎えに行こう。まさか彼女がこんなに奥ゆかしいとは思わなかった。」

爺さん「ええ。全くです。」

俺は急いで執事に駆け寄る。

俺「何の話だ?」

クロード「さぁ?王太子の勘違いですよ。」

なんとなく感じていたけど改めて確認する。

俺「なぁ、アイリスは婚約の話そのものを知らないのか?」

クロード「何故そう思うんですか?」

俺「あいつ等の言い方だとアイリスと直接話してない感じがするけど?」

クロード「ほう、よく気付きましたね。その通りです。」

くそ!こいつ!

クロード「お嬢様にそんな話出来る訳ないでしょう。そもそも知っていたら貴方に丸投げなこの作戦、了承しませんよ。」

確かに。誰かに押し付けるのは納得しないだろうな。

クロード「それで?その事実を知って貴方はここで退くのですか?」

俺「馬鹿野郎!ここで辞めたら、負けた事になって余計あいつに面倒掛けるだろうが!」

クロード「貴方のそういう所は評価に値します。さぁ、片付けて来なさい。」

俺「俺はお前の部下じゃねぇぞ!全く!というか俺が勝負に勝ったくらいで婚約破棄なんて出来るのか?」

クロード「その点は大丈夫ですよ。王太子の不甲斐無さは先の戦争で国内に広まっています。その上、公衆の面前で傭兵に負けるという恥を掻けばそれこそ英雄の1人、聖剣の聖女には相応しく無いという事で断れます。」

俺「ふ~ん。そんなもんかね。」

まぁ、良いや。とりあえず仕事に戻ろう。

カリアン「フッ、怖気付いたなら辞めても良いんだぞ。」

俺「いや、やるよ。」

王太子は周りを見る。冒険者から貴族まで分け隔て無く倒れている連中を見て何かを感じ取った様だ。

カリアン「おい。貴様。」

俺「何だよ。」

カリアン「私が誰だか分かっているな。」

俺「ん?う~ん。・・・・あ!王太子な。」

カリアン「そうだ。そして私が後にどうなるか、理解しているな。」

俺「うん?え~と。・・・ああ!次期国王って話してたな。その事?」

カリアン「うむ。理解しているなら良い。この後、貴様がどうするべきかも分かっているな。」

俺「え?・・ああ、俺のする事は決まってるよ。」

カリアン「ふむ。ちゃんとどうすべきか、理解しているなら良い。さぁ!始めるぞ!」

王太子が俺に向かって来る。今までの奴に比べると全然大した事が無い。余裕が出来ると余計な事を思い出す。
俺は地球で読んだボクシング漫画を思い出していた。その漫画に出て来た世界チャンピオンがパンチの威力に必要なのは背筋だと言っていた。俺は腕をたたみ胸筋を縮め背筋を左右に伸ばす様に広げる。
丁度王太子が俺の前に到着し、俺はその攻撃を避け王太子の左へ移動する。

カリアン「あ、あれ!」

突然俺が視界から消えて驚いたんだろう。間の抜けた声を出す。
因みに、敢えて言うが俺は別に王太子を練習台にした訳じゃない。このまま右手を出したらどんな右ストレートが出るのか、確かめただけだ。
ただ右腕を伸ばしたらそこに王太子の顔があったんだ。

カリアン「ふげ!」

俺の右ストレートが隙だらけの王太子の横顔に当たった。というか打ち抜いた。ドコンと音を立て顔が地面に刺さる。

カリアン「ぶご!」

俺「あ!」

ゲイツ「あ!」

ティム「あ!」

ダン「うわ!」

ジーク「ふむ。」

ランド「ああ~。」

クロード「いぃ良し!」

なんか執事だけが凄い喜んでる。

爺さん「・・・・・。」

近衛騎士達「・・・・・。」

爺さん「王子ぃ~~!」

近衛騎士達「殿下ぁ~~!」

やっちまった。加減しそこねた。
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