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剣聖VS剣鬼

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さて、そろそろ行くか。という時にふと思い出す。あ!バイク!どうしよう?
考え込んでいるとスマホから聞き慣れない音が鳴る。着信音とは違うな。画面を見ると新しいアプリが勝手に追加されていた。知らん間にアプリの追加はやめて欲しい。
見ると収納アプリと書いてある。物質を収納するアプリで生き物は不可という何処かで聞いた事がありそうな物だった。なんか写真撮るだけらしい。

俺「どれどれ。」

スマホの画面越しにバイクを見る。そして撮影。スマホを視界から外した瞬間、驚愕する。バイクが跡形も無く消えていたからだ。

俺「うぉ!」

思わず声が出る。

キース「あれ!さっきの鉄の馬は?何処に行ったんですか!」

俺「え!う~ん。俺もよく分かんない。」

本当の事だ。仕組みは分からん。

俺「さ!気を取り直して行くぞ!」

シャノン「何か誤魔化しましたね。」

トリッシュ「ね?あいつ時々そういう所あるわよね。」

俺は荷物を持って門に向かうと何かを蹴った。ゴメスの腕がついたままの刀だ。俺は腕を外し刀を持つ。そして門を潜る。通過した瞬間には入り口が消えた。

俺「完全に一方通行だな。それにしても凄い景色だ。」

空が上と下、両方に広がっている。よくこういうのは空間の主の心象風景で出来ている。ゲームとかで見るボスは大体が"あいつの心、こんなに綺麗じゃないだろ!"って言いたくなるのがほとんどだ。けどここがアーサーの心を反映しているなら確かになと思う。あいつが自分をどう思ってるかは分からないけど、なんとなくあいつはこういう奴だろうなと俺は感じている。
遠くで金属音がする。あいつ等だ。急ごう。

ジン「く、くそ!」

アイリス「はぁ、はぁ、く!」

エレナ「う、ぐふ!」

アーサー「ふぅ、この状態で中々上手くやっているが、これで限界だな。終わりだ。」

アイリス「ジン!」

不意に剣が飛んで行く。というか俺が投げた。ゴメスの使っていた刀を。
アーサーはバキンとデカい音を立てながら跳ね除ける。そして皆んなが一斉に俺を見る。

3人「シリウス!」

俺「よ!悪い、遅くなった。」

エレナ「何してたんだ!」

アイリス「遅いじゃない!」

ジン「え!まだ誰も死んで無いから間に合った方じゃないか?」

ジンだけは優しいな。涙が出るぜ。精神年齢の所為か少し泣けて来る。

俺「少し皆んなと話をさせて貰う。」

アーサー「フッ、良かろう。こちらもしばしの休憩としよう。」

俺「これアイリスの親父さんから。一応エレナの分も皆んなから預かったんだけど、皆んな一緒だからどれが誰のか分かんないな。」

エレナ「皆んな。」

アイリス「お父様。」

ジン「なぁ。」

俺「ん?」

ジン「俺の分は?」

俺「え!」

ジン「俺の。」

俺「・・・・。」

ジン「・・・・。」

エレナ「・・・・。」

アイリス「・・・・。」

俺「・・・お。」

ジン「お?」

俺「お前を助けに来た俺の情熱は入ってるから。」

ジン「お、おう。」

2人(誰もジンの事、心配して無かったんだ。)

アイリス「1人じゃ使い切れないから私の半分あげるよ。」

エレナ「あ、ああ、私のも少し分けてやる。」

ジン「ぐす。2人共優しいな。とにかくシリウスも助けに来てくれてありがとう。」

俺「う、うん。何か・・悪かったな。」

とりあえず回復薬は届けた。後はアーサーを倒すだけだ。

俺「さて、そろそろ行くか。」

アイリス「待って!1人で戦うの?」

俺「3人は休まないと戦えないだろ?」

アイリス「それは!そうだけど。」

俺「大丈夫さ。なんとかするよ。アイリスは2人のサポート頼む。」

アイリス「うん。」

俺「ジン、エレナ。俺じゃ、あいつは倒せない。最後は2人が決めてくれ。」

ジン「任せろ!」

エレナ「・・・うん。」

俺は3人と離れさっき投げたゴメスの刀を拾う。

アーサー「フン。お前が愛用しているその剣は使わないのか?」

俺「ん?ああ、先ずは籠手調べって事で。」

アーサー「フッ。まぁ、良い。それで?今生の別れは出来たのか?」

俺「冗談。俺は死ぬ時は老衰って決めてんだよ。」

アーサー「くっくっく、そんな事お前の一存だけで決められるのか?」

俺「さぁ?でもやってもいない内から否定するのは趣味じゃないからな。」

アーサー「そうか、ならば俺も一族の願いを叶え最期は老衰で逝くと決めるか。」

俺「そいつは俺の願いより難しいと思うぞ。」

アーサー「やってみなければ分からんのだろう?」

俺「フッ、かもな。」

アーサーの使う剣は中々に幅広の刀身でかなりの重さがありそうに見える。それでも軽く使っている様に見える。あれがゴメスの作った"業物"か?
お互い距離を取って立つ。よく物語やゲームでゆっくり一歩づつ速度を上げながら近付き最後はぶつかり合う。そんな演出を見かけたけど、まさかそれを現実に自分がやるとは思わなかった。
アーサーと近距離になった瞬間、刀を振り下ろし鍔迫り合いになる。お互い右脚に力を入れ、剣がガリガリと唸り声の様に音を立てる。若干体格で負けてる俺は少し押されるが、ここで押し負ける訳には行かない。
ただそこで予想外に力が抜ける。アーサーが敢えて後ろに退がった。俺はよろめき前に出る。そして直ぐに振り被るアーサー。
俺は咄嗟に地面を蹴り前転する。俺はなんとか回避に成功し、後ろで"ボン!"とデカい音がする。俺は振り返りつつ体勢を立て直す。アーサーが剣を右脇に構えながら俺の方へ突進して来る。首目掛けて迫り来る剣に対し、俺は下を潜る様に躱す。
俺は反射的に奴の胴を狙い刀を振る。しかしアーサーの身体能力は俺の想像より上だった。その状況からジャンプで俺の攻撃を躱した。

俺「な!」

空中で一回転と一回捻りを決め着地する。アーサーは一瞬で攻撃に移れる体勢になり、剣を振り下ろす。

アーサー「フン!」

俺は振り向きながら突きを出し、鍔でアーサーの剣を受け止める。

俺「うぉ!く!」

ガチガチと音を立てる。剣を跳ね上げ今度は俺が振り下ろす。アーサーは身体を半身にして躱すと、俺の首を狙い横薙ぎに振る。俺は伏せて躱し下から斬り上げる。それをアーサーはスウェーで避ける。
アーサーは体当たり気味の突きを放つ。俺はそれを受け流し、すれ違う感じでお互い距離を取る。

アーサー「フッ、前より腕を上げたみたいだな。」

俺「ならご褒美に手加減してくれよ。」

アーサー「断る。」

3連戦は流石にキツいな。アーサーも3人を相手に戦っていたから、体力を消耗してるのは一緒だろう。状態は似たり寄ったりって感じか。

アーサー「聞きたい事がある。」

俺「ん?何だよ。」

アーサー「ドワイトはどうなった?」

俺「斬った。」

アーサー「そうか。奴は戦士として逝けたのか?」

俺「それは知らん。ただ一騎討ちで俺が勝った。」

確か幼馴染だったな。アーサーが目を閉じ冥福を祈っている様に見える。

アーサー「ゴメスはどうした。」

俺「あいつは腕落としたら逃げて行ったぞ。」

アーサー「フン。あいつは所詮その程度だったか。」

俺「そういやあいつ変な事言ってたぞ。お前を倒せば名実共に"剣聖"だとか?」

アーサー「フッ、意味は分からんがお前が剣聖なら丁度良いな。」

俺「何が?」

アーサー「俺は王と呼ばれる前は"剣鬼"と言われていた。"剣鬼"と"剣聖"俺達が掲げて戦うには丁度良い肩書きじゃないか?」

俺「俺としてはどうでも良いけどな。」

アーサー「フッ、では続きと行こうか!」

最終戦、第二ラウンドだ。それにしても剣と魔法の世界で何で俺だけ白兵戦なのか。本当に不思議でしょうがない。
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