Worldtrace

mirror

文字の大きさ
上 下
79 / 187
[Worldtrace]

分断2

しおりを挟む
少し時間を遡り3人が隔離された直後。

ジン「今度は何処だよ。」

エレナ「門の中だろうな。」

アイリス「入り口も消えてる。」

ただ何も無い地平線で上空には青い空が広がっていた。足下は薄っすら水が張ってあり、その水には空が反射していた。まるで地球にある何処かの塩湖に似ている場所だった。物語で飛ばされた先の空間が、こういう景色の場所だというのはたまに見る光景だ。

アーサー「ようこそ。英雄達よ。以前に会った覚えのある者は1人だけか。俺が魔族の王をしているアーサーだ。」

ジン「あんたが?」

エレナ「こいつを倒せば勝ちか!」

アイリス「うん。ここまで来たらやるしか無い。とは言っても。」

先程から3人共魔力が練れない。これだと魔法が使えない。

アーサー「ハッキリ言おう。この空間では魔力が扱い辛い状態にしてある。欲を言えば完全に消去したかったがそれは流石に出来なかったがな。」

ジン「ん?どういう事だ?」

エレナ「時間を掛ければ使えるとは思う。だけど消費量も増えてかなりキツい状況だ。」

ジン「良し、分かった!アイリス!エレナを守ってくれ!」

アイリス「え!ジンは!」

ジン「俺はこいつと決着を付ける。」

アイリス「無茶よ!こんな魔力も使えない状態で!」

アイリスの腕をエレナが掴む。

エレナ「待て!仕方ないんだ。使おうと思えば使える。つまりは使う為の時間を稼がなきゃならない。魔王を倒すにはどちらにせよ誰かが戦わないと駄目だ。」

アイリス「それは、そうかも知れないけど。」

ジンは2人から離れアーサーに話し掛ける。

ジン「なぁ、お互い散々戦ったろ?いい加減止めにしないか?」

アーサー「フッ、奴にも同じ事を言われた。だが今更退く事は出来ん。まだ俺達は存在を認められていないからな。しかし不思議だ。部下の話だとこの空間の景色は俺の心象風景だそうだ。こんなに澄んだ気持ちでこの場にはいないんだがな。」

ジンとアーサーは互いに睨み合いながら剣を抜く。

ジン「何か王様って感じしないなあんた。」

アーサー「一部の族長は気にしているが、血筋で王を決めた訳では無い。俺が王になったのは純粋に己の鍛えた力だけだ。」

"自分の実力で王になった。"

アーサーのその話を聞くと相当な努力の上で王になったのだろうと感じる。そんなアーサーに勝てるか不安になるが、ここまで来て退く訳には行かない。シリウスに鍛えられ、聖剣を手にし生き延びて来た。今は勝つ事だけ考える。自分に言い聞かせジンは走り出す。ジンとアーサーの剣がぶつかり合う。

アーサー「報告にあった通り我々が確保した聖剣だな?どうやって手に入れた?」

ジン「悪いね。俺にもよく分からないんだ。だから説明出来ない!」

近距離の睨み合いから離れ、アーサーは剣を振り下ろすがジンは右に受け流す。

アーサー「ほう。」

今度はジンが右腕を狙って剣を振り下ろす。だがその位置には腕が無かった。ジンの狙いを知って、既に右手を離していた。アーサーは今一度構え直し剣を振り下ろす。

ジン「うぉ!」

2度目の振り下ろしはジンも考えて無かった。踏ん張って受け止める。

アーサー「フッ、これで決まると思ったぞ。」

ジン「まだ・・・籠手調べだ!」

それを見ていたアイリスは深呼吸をする。意を決してエレナを見た。

エレナ「分かってる。私の事は気にするなジンを頼む。やっぱり1人じゃ無理だ。だけど気を付けろよ。」

アイリス「うん。行って来る。」

アイリスは一気に距離を詰め、アーサーに横から突き放つ。アーサーは後ろに身を引きながらアイリスの剣を弾きアイリスの方を向く。

ジン「俺を忘れるなよ!」

アーサー「ぬぅ!」

アーサーはジンの攻撃を躱す。続けてアイリスの連撃を左右に捌く。

アイリス「く!」

アーサー「早く正確だな。だがそれ故に捉えるのは簡単だ。」

アイリスの渾身の突きを躱し右側に回り込み剣を振り上げる。そこへ後ろからジンが斬り掛かる。アーサーは振り上げた剣をそのまま防御に使う。

アーサー「フッ、惜しかったな?」

ジン「アイリスが斬られるよりはマシだ!」

アーサーは剣を振りジンを弾き飛ばすと一気に距離を詰める。ジンは素早く体勢を立て直そうとするが、アーサーの剣が首に迫る。それを躱す為にまた転ぶ。ジンを助ける為、今度はアイリスが仕掛ける。

アーサー「チッ!」

舌打ちの後、振り向くと同時にアイリス剣を弾く。そして振り上げこれで1人目だと確信しながらアーサーは攻撃するだが軌道を逸らされる。アイリスは左手にも剣を持っていた。母の形見の宝石が付いている昔から使っているレイピアだ。当然お守り代わりに今日も持っていた。

アーサー「何!」

流石に驚いたのか少し反応が遅れる。アーサーの右頬に刺突のかすり傷が出来る。下から振り上げアイリスを押し返す。その瞬間ジンが詰め寄る。堪らず急いで振り下ろした剣はジンに受け流される。そして今度はジンの剣がアーサーの左頬にかすり傷を負わせる。

アイリス「ジン、下がって!」

アイリスは魔法を唱え、足下の水を風魔法で少し巻き上げる。そこへ聖剣・アイスクリエイトで氷にする。

アーサー「これに何の意味がある!」

一瞬で氷は砕かれる。だがそれで良い。注意をこっち引ければ。そして放つ。

エレナ「Airpiercing!」

エレナの風魔法のライフルが決まる。そう思った瞬間だった。アーサーの前髪が弾ける。外した!いや、避けられた!

エレナ「な!くそ!」

ジン「あれ避けんのかよ!」

アイリス「信じられない!」

アーサー「ゴメスが言っていた生き物には五感と言うのがあると。俺の特殊能力・・・確か"すきる"とか言ったか俺のは複数の事を同時に考えられるという物だ。自分の思考を3つに分けそれぞれを視覚、聴覚、触覚に繋いでいる。」

ジン「だから何だよ。」

アイリス「どれか1つでも感じ取れれば躱せるって事。」

ジン「そんなのアリかよ!」

アーサー「フッ、しかしお前達も神の恩恵でそれ以上の物を持っているだろう?」

エレナ「2人共!行くぞ!Lightsquall!」

エレナの光魔法だ。この空間の所為か威力が下がっている様だが動きを鈍らせるには十分だった。

アーサー「チッ、鬱陶しい。」

ジンとアイリスにはダメージが無いらしくこの中でも平気な様だ。ジンは正面から斬り掛かる。アーサーは鍔迫り合いの状態になった後ジンを押し返す。続けて突きを繰り出す。

エレナ「"ロックウォール"。」

土壁で突きを防ぐ。ジンは右から回り込み、アーサーは剣を引き抜く。その引き抜いた穴から今度はアイリスが攻撃する。

アイリス「"ファイアランス"!」

アーサー「ふん!」

直ぐに叩き落とすと、ジンの攻撃に反応し防ぐ。

エレナ「"ロックバレット"!」

ジンが離れると石の弾丸が迫る。だがアーサーはその尽くを打ち落とす。光魔法の効果が消えアーサーは悠然と立ちはだかる。

エレナ「強い!」

アーサーは王と言うに相応しい強さだと実感する。そして戦いは最終局面に移行する。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

王女殿下の死神

三笠 陣
ファンタジー
 アウルガシア大陸の大国、ロンダリア連合王国。  産業革命を成し遂げ、海洋発展の道を進もうとするこの王国には、一人の王女がいた。  エルフリード・ティリエル・ラ・ベイリオル、御年十六歳の少女は陸軍騎兵中尉として陸軍大学校に籍を置く「可憐」とはほど遠い、少年のような王族。  そんな彼女の隣には、いつも一人の少年の影があった。  リュシアン・エスタークス。  魔導貴族エスタークス伯爵家を継いだ魔術師にして、エルフリード王女と同い年の婚約者。  そんな彼に付けられた二つ名は「黒の死神」。  そんな王女の側に控える死神はある日、王都を揺るがす陰謀に遭遇する。  友好国の宰相が来訪している最中を狙って、王政打倒を唱える共和主義者たちが動き出したのである。  そして、その背後には海洋覇権を巡って対立するヴェナリア共和国の影があった。  魔術師と諜報官と反逆者が渦巻く王都で、リュシアンとエルフリードは駆ける。 (本作は、「小説家になろう」様にて掲載した同名の小説を加筆修正したものとなります。)

無法の街-アストルムクロニカ-(挿し絵有り)

くまのこ
ファンタジー
かつて高度な魔法文明を誇り、その力で世界全てを手中に収めようとした「アルカナム魔導帝国」。 だが、ある時、一夜にして帝都は壊滅し、支配者を失った帝国の栄華は突然の終焉を迎えた。 瓦礫の山と化した帝都跡は長らく忌み地の如く放置されていた。 しかし、近年になって、帝都跡から発掘される、現代では再現不可能と言われる高度な魔法技術を用いた「魔導絡繰り」が、高値で取引されるようになっている。 物によっては黄金よりも価値があると言われる「魔導絡繰り」を求める者たちが、帝都跡周辺に集まり、やがて、そこには「街」が生まれた。 どの国の支配も受けない「街」は自由ではあったが、人々を守る「法」もまた存在しない「無法の街」でもあった。 そんな「無法の街」に降り立った一人の世間知らずな少年は、当然の如く有り金を毟られ空腹を抱えていた。 そこに現れた不思議な男女の助けを得て、彼は「無法の街」で生き抜く力を磨いていく。 ※「アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-」の数世代後の時代を舞台にしています※ ※サブタイトルに「◆」が付いているものは、主人公以外のキャラクター視点のエピソードです※ ※この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください※ ※固有名詞や人名などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※ ※詳細なバトル描写などが出てくる可能性がある為、保険としてR-15設定しました※ ※あくまで御伽話です※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様でも掲載しています※

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...