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アーサー2

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俺は小さな村に生まれた。特に角が生えてる訳でも羽根が生えてる訳でもない。長老から聞いた話では俺達は魔物から進化した存在らしい。生まれの話をされても、それ程興味の無かった俺は聞き流していた。
俺達魔族はそれぞれ産まれる時に神からスキルとか言う力をもらうらしい。意識を集中するとスキルの名前が頭に浮かぶ事で分かるという。皆んな持っていたが俺は特殊だった様で、俺はいくら集中しても何も浮かばなかった。そしてよくある迫害が始まった。俺は魔族じゃないと周りの連中からよく痛め付けられた。その時助けてくれたのは幼馴染のドワイトとジェイドだった。

ドワイト「なぁ、アーサー?大丈夫か?」

アーサー「ああ、平気だ。」

ジェイド「いつもその棒切れ振り回してるけど、何してるんだ?」

アーサー「戦い方の練習だ。俺が強くなれば誰も文句は言わないだろ?」

俺はスキルが無い特異体質。ならばどんな奴とも渡り合える腕があれば良いと考えた。
俺は我流で自分自身を鍛える事にした。同い歳の奴も歳上の奴も俺に敵意を向ける奴は全員叩きのめした。俺はいつの間にか『剣鬼』と呼ばれていた。この『剣鬼』と言うあだ名は気に入っていた。何しろ能無しの俺が実力で勝ち取った"俺自身"だったからだ。そんなある夜、俺は夢を見ていた。目の前に鳥の翼を6枚、背中に生やした光る男が立っていた。俺は直感する。こいつは神だと。

神「力が欲しいか?」

アーサー「いや。要らん。」

神「そうか、欲しい・・・。ん?」

アーサー「今更要らん。俺は既に実力で『剣鬼』と呼ばれる程になった。」

神「いやいや、そういうのとは別格の確かな"力"だ。欲しいだろ?なんだったら特別に2つ、いや3つやろう。」

アーサー「何故それが俺に必要なんだ?」

神「フフン、教えてやろう。お前が王になる資質を持っているからだ。」

アーサー「意味が分からない。それに王にはならん。興味も無い。」

神「落ち着け。とにかく冷静に話し合おう。魔族はこのままだと人族に駆逐されるぞ。」

アーサー「何だと!どういう事だ!」

神「奴等を支援している神が魔族を敵視しているのさ。自分達の都合で作り出しておきながら飽きたからお前達を捨てる。そういう事だ。」

アーサー「く!だが相手は神だろう!俺達だけでは何も出来ないではないか!」

神「安心しろ!我々は基本この『世界』には直接干渉が出来ない。だから代理を立ててその者に代わりに戦わせるつもりだ。その代理を倒し自分達の実力を示すのさ。」

つまり今までと同じで、自分で勝ち取れという事か。

神「その為の力をやろうと、そう言ってるのさ。嬉しいだろ?」

アーサー「ならやはりそんな物は要らない。」

神「え?何で?」

アーサー「結局いつもと同じく戦って勝てば良いという事だろ?」

神「そういう事じゃないんだよぉ!」

俺は眠りから覚める。朝になったからだろうか、夢はそこで終わりだった。それから何年かの間は同じ夢を見ることは無かった。
いつもの生活を送っていたある日ついに事件が起きた。ジェイドの家族が魔物として人族に襲われた。妻と娘は殺され、ジェイドも大怪我をした。俺はたまたまその時近くにいたが間に合わなかった。不幸中の幸いと言うべきなのかその人族達は退治し、ジェイドは助かった。

ドワイト「ジェイドは駄目かもな。心が病んでいる。立ち直れ無いかも知れん。」

アーサー「何故だ!何もしてない俺達が化け物の様に殺される覚えは無いぞ!」

ドワイト「奴等には俺達と魔物の区別がつかないんだろうな。」

俺はどれ程考えても納得出来なかった。俺はその夜、あの神と再会する。

神「だから言ったろ?大変な事になるって。」

アーサー「何故だ!奴等は人の生き死にを決められる程偉いのか!」

神「そこは関係無い。奴等にとってお前達が邪魔なだけさ。」

アーサー「くそ!」

神「さぁ、どうする?」

アーサー「俺は奴等に簡単に殺され無い為に知識が欲しい。俺に学ぶ『力』を寄越せ!」

神「え?そんなんで良いのか?」

アーサー「蹴散らすだけなら今のままで十分だ。しかし力で倒し続けるにも限度がある。だから奴等と渡り合える知識とそれを生かした知恵が俺には必要だ。」

神「まぁ、良いか。何か他に欲しくなったら言えよ。じゃあな。」

次の日、俺はスキルを授かっていた名前は"多重並列思考"というらしい。その力は複数の事を同時に考えられるという物だった。最初は2つの事しか同時に考えられなかったが使い続けるとどんどん増えていった。1つの事を2つ以上で考えれば修得時間が短縮出来た。
この能力は剣の修行にも役立った。1人の攻撃を複数の方面から予測する事で俺に勝てる者はいなくなった。
それから俺はあらゆる手を尽くし、法律の書物から物語の本まで手に入れ頭に叩き込んでいった。
別の大陸から来たと言う男とも戦った。なんでも奴はこの大陸にはいない亜人、龍人だと言う。その男は別の大陸にある龍人が築いた帝国の皇子だとも言っていた。家督は弟に譲り剣の武者修行中らしい。俺もそういう旅をしてみたいが今は無理だ。一族を放っては行けない。
因みに奴との勝負は引き分けになった。俺達の戦争に決着を付けたら旅に出たいと思う。それに奴の国にも行きたい。今度会った時、改めて勝負しようと約束した。
そんな時に奴が現れた。あの神が派遣した協力者だが、とにかく胡散臭い。

ゴメス「私はゴメス・べルドー。アーサー殿のよく知るお方の使いです。これから貴方が勝つ為に一緒に頑張りましょう。」

ドワイト「あいつ信用出来るのか?」

アーサー「どうだろうな。」

ジェイド「そんな奴を側に置くのは危険だぞ!」

アーサー「分かっている。しかし奴の実力は確かだ。」

ジェイド「それはそうだが。」

アーサー「もし俺達の害になる様なら俺が斬る。それで良いか?」

ドワイト「分かった。だが俺がやれる時は俺がやるぞ。」

ジェイド「その時は俺も協力する。」

アーサー「フッ、いざという時は任せた。」

俺達は最大限の警戒をしつつ奴を味方にする事にした。今の所裏切る素振りはない。俺も皆んなも未だゴメスを信じていない。だがそれでも俺は戦う。一族の為というのもあるが、俺自身がこの理不尽な現実を納得出来ない。俺達も人間だと、人族とその神に認めさせる。
俺は大陸中の魔族を纏め上げ組織としての規律や統制、訓練と研究をさせた。そしてとうとう俺達の独立戦争、存在意義を賭けた聖戦が始まる。これで認めさせられる。だがそれとは別に楽しみにしている事もある。かつて無い好敵手との剣の勝負だ。

アーサー「やられてくれるなよ。使徒。お前とまた全力の勝負がしたい。俺の所まで辿り着けよ。」

しては行けないと理解しながらも俺は敵の無事を祈る。それは別の見方をすれば友の死を意味する。だがそれでもまた戦いたい。俺は心を躍らせて決戦の日を待つ。
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