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人に歴史あり

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例によって俺の拠点の1つになっている都市"イージス"に到着する。

エレナ「ここが噂の傭兵都市かぁ~!」

ジン「案外賑やかだな。噂に聞いてた感じと違うな。」

キース「はい。もっと殺閥としているかと。」

俺「いや、どんな噂だよ。」

エレナ「え~と、確か・・・。」

ジン「"死の料理人"ってのが戦場でゴブリンやコボルトを挽肉にして、肉の塊にした後焼いて食うとか。」

挽肉なら表現としては間違ってない気はする。でも食わないよ。そもそも戦闘中で飯は作れない。

ザック「後、聞いた話じゃ"鷹の目"って奴がいろんな所で目を光らせて逆らう奴を片っ端から始末してるとか。」

"鷹の目"はランドだな。あいつそんな事しないだろう。何かあって対処しただけなのに嫌がらせにそんな噂流されたって感じかな?

シャノン「他には剣聖魔人さんですかね?」

へ?

トリッシュ「あ!私も聞いた。確か10歳で名前付きの魔物を単独で倒したとか?」

キース「僕が聞いたのは12、3歳の時に魔族を複数人、単独で倒したっていう話ですね。」

エレナ「そうなのか凄いな。他には?」

ザック「最近の話だったと思うが、確かベヒーモスを単独で倒したって話だな。一撃で首を落としたらしいぞ。」

い、一撃では無いけど今の話の中で特に訂正しなきゃ行けない所は無い。確かに全ては"剣聖魔人"のした事だ。

ジン「へぇ~、俺と同じく単独撃破か。そんなに凄いなら会ってみたいな。」

エレナ「どんな奴だ?シリウスは知ってるんだろ?」

俺「いや、よく知らない。」

とりあえず誤魔化す。今まで俺に付いたあだ名の話はしてない。皆んなが知らないのは当然だ。知られたく無いが、大丈夫かな?
傭兵達は人の気持ちを気にしない奴等ばかりだけど、流石にこのタイミングであだ名を言うとは限らない。俺は誰も言うなよと祈る。

傭兵1「あ!剣聖魔人さん!おはようございます。」

傭兵2「剣聖魔人さん!団長は執務室です。」

止めろ!止めてくれ!そのあだ名を仲間の前で連呼しないでくれ。

ザック「何だよ。結局お前かよ。」

トリッシュ「折角まだ見ぬ凄い人かと期待したのに。ついでに2枚目なら良いなとか思った私の気持ちを返しなさいよ!」

俺「いや、知るかよ!」

シャノン「結局、噂の人はシリウスさんですか。でも、シリウスさんが"剣聖魔人"と聞くと先程の噂が全て真実だと確信出来ますね。」

キース「ええ。シリウスさんなら出来て当然って自然と感じますね。」

皆んなの俺に対する基準が酷い気がする。

ジン「やっぱりシリウスは、俺の出来る事くらいは簡単にやれるんだな!」

ジンが何故か喜ぶ。まぁ、自分のしてる事が割と普通って感じられると安心する気持ちは分かるけど。

ランド「やぁ!シリウス!久しぶりだな!」

俺「おう。」

ランド「どうした?何か落ち込んでるみたいだけど。」

俺「人間ってのは過去から逃れられないんだな。」

ザック「んな大した話じゃないだろ。」

ゲイツ「騒がしいと思ったらやっぱりお前か。どう・・・アイリーン!」

エレナ「え?」

うん?何故そこでその名前が出る?団長は真っ直ぐエレナを見る。面影と目の色は同じだけど髪型や色は違う。というか会った事あるのか?そこでアイリーンのエレナ誕生の秘話と言うべきか、そのエピソードを思い出す。『料理人』の職業を得た傭兵に、鉈のアドバイスをして一夜を共にした。そして朝には消えた男・・・。

俺「『料理人』の職業を得たって傭兵に髪の長い金髪の女魔導士が、ある街の酒場で"鉈を使ったら"って言ったらしいけど。」

ゲイツ「はぁ?何でお前がその話知ってる?」

エレナ「え!じゃあ、あんたが父さ・・・。」

俺「お前かぁ!」

ゲイツ「げふ!」

返事も待たず俺は団長を殴っていた。

ゲイツ「な、何しやがる!」

俺「何じゃねぇよ!2人が大変な時に何も知らず、ずっとヘラヘラしながらここで生活してたのか!」

ゲイツ「いや、ち、ちょっと待て何が何だか分からねぇよ!」

ジン「ちょっと、落ち着けよ!」

ザック「ここはまず話を聞かないと何にも言えないぞ!」

キース「そうですよ。冷静に、話合いましょう!」

俺「ぬぉ~、離せ!一発じゃ収まらん。」

一部始終、と言っても生々しい所は省いたけど一通りの情報交換をした。

ゲイツ「済まなかった!まさか娘がいるとは思わなかった。」

エレナ「まぁ、母さんはあんたの名前すら知らなかったからな。母さんも悪い。」

ゲイツ「"あんた"なんて他人行儀な。"お父さん"って呼んでくれて良いんだぞ。」

俺「それは俺が許さん!」

ゲイツ「お前はどの立場で言ってるんだよ!」

俺「エレナとアイリーンの家族だよ!」

ゲイツ「うぐ!・・・でも待てよ!血は繋がって無くてもアイリーンの息子なら俺の息子でもあるか?小僧・・・いや、シリウス!父さんだぞ!」

今までで1番無駄の無い右ストレートが、団長の左頬に入る。

ゲイツ「ふぎゅ!」

トリッシュ「だから落ち着きなさいよ。殴りたいのは分かるけど。」

シャノン「私も気分的に10回くらい殴りたいですが、今は落ち着きましょう。」

俺「何でシャノンが殴りたいんだ?」

シャノン「仲間が苦しんでいるのは流石に納得出来ません!」

普段は酷い事を言う連中だけど、いざと言う時に味方してくれるのは嬉しい。

エレナ「フッ、皆んな、ありがとう。」

ティム「それにしてもあんたが団長の娘か。」

ダン「似てるのは髪の色だけですかね?」

ジーク「いや、眉毛の形は同じだ。」

ティム「あ!本当だ!」

圧が凄いからエレナが少し引いてる。

ランド「皆んなあまり人の顔をジロジロ見るのは良くないぞ。」

オッサン達「は~い。」

ランドもオッサン達の扱いに慣れて来たのか上手くやってる様だ。

トリッシュ「所でこの2枚目な方は?」

トリッシュがランドに食い付く。

俺「え?俺の友達。」

トリッシュ「あんたそれで説明になってると思う?」

なんとなくトリッシュにランドを紹介するのはランドに悪い気がする。

トリッシュ「なんか失礼な事思ってない?」

ランド「ランドだ。ここで新人達の教育係の様な事をしている。」

ゲイツ「何言ってる。お前もちゃんとした隊長だ。こいつの部隊で鍛えて他の隊に編入させてるのさ。」

俺「ランドとその部下だけだなここで仕事してんの。」

ティム「俺達も仕事してるぜ?確かにランドみたいに"鷹の目"みたいなあだ名は無いけど。」

トリッシュ「え!"鷹の目"ってランドさん?」

何がランド"さん"だよ。普段と声色が違うじゃないか。

キース「ランドさんは貴族の方ですか?」

ランド「いや、職業が"鑑定士"になって、その所為で廃嫡になってしまったんだ。今はしがない傭兵さ。」

トリッシュ「なんだ残念。でもその能力なら他の仕事でも生きていけますよね?」

ランド「俺は貴族では無くなったけど、誇りまでは失いたく無い。だから誰かの為に剣を取って戦うと決めたんだ。そして一度決めたからにはこの生き方を変える気はないよ。」

ザック「こ、こいつ王国の腐った貴族共とは格が違うぞ!」

シャノン「わ、私も何故か輝いて見えます!」

キース「この国にまだこれ程の志を持った人がいたとは!」

んな、大袈裟なとは思うが確かにこいつの性格の真っ当さは凄い。このまま傭兵やらせておくのは勿体無い気はするけど、俺がどうこう出来る事でもない。第一、こういう真っ当な奴は基本出世出来ない。頑張っても遠回りするし、出世の為に何かを捨てれば傷付いて身動きが出来なくなる事もある。最後は潰れるか歪むかのどっちかだろう。後は代わりに誰かが汚れ役を引き受けるかだけど俺は嫌だ。そんな疲れる事はしたくない。

ランド「いや、俺はそんな凄い人間じゃないさ。な?シリウス?」

俺「うむ。それに例え頑張ってもお前は親父さんの持ってる爵位より上は得られない。」

ゲイツ「いや、お前はどの立場から言ってんだよ。」

俺「ん?友達って立場。」

何故か皆んな変な顔で俺を見る。俺なんか間違った事言ったかな?
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