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魔族の剣聖2

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思っていたより状況が悪い。シリウスさんに任せると言われて引き受けたけど強い。

ザック「おい、なんとか不意打ちは防いだが、こいつ案外強いぞ。」

クロード「ええ、まさかここまで強い敵が現れるとは思いませんでしたよ。」

キース「ですが、まだ対処出来るくらいの敵です。」

魔族「ふん。魔王軍において"剣聖"の称号を賜りしこの私、ゴメス・ベルドーを相手に良くぞ立っているな。褒めてやろう。」

今まであった魔族と比べると肌が色白で生きているかどうかさえ疑いたくなる。

クロード「"剣聖"?魔族が"聖"を付けるのは神への冒涜では無いですか?名乗るなら"剣魔"でしょう?」

ゴメス「愚かなり。人族は己こそ正しき者と信じて疑わない。人族こそ、この世界の害悪。その悪を討つは聖なる者の偉業だ。」

ザック「その割に自分から魔王軍とか言ってるぞ。」

ゴメス「フン!魔族の王だから魔王。その魔王が率いる軍だから魔王軍。何が間違っている?」

キース「確かに。」

ザック「納得してる場合か!まぁ、儂も"あ、うん。そうだな。"って言いたくはなったが。」

クロード「はぁ~。貴方達は皆んな呑気な人しかいないんですか?そんな事言ってる場合では無いですよね?」

ザック「いや、なんとなくシリウスが戻って来れば、どうとでもなる気がするからな。」

キース「はい。僕達が今考えるべきは時間稼ぎで良い筈です。」

ゴメス「その男は私に向かって来た男か?」

クロード「あちらの状況を正しく把握していない私達が、分かる筈無いでしょう。」

ザック「儂の勘ではその男だ。」

ゴメス「なら来ないだろうな。あの男は私の護衛が相手をしている。しかも5人だ。例え腕が立つ者でも5人もいればただでは済まないぞ。」

5人か、微妙ですね。

キース「どう思いますか?」

ザック「まぁ、持って10分かそこらだな。」

ゴメス「10分も掛からん。3分が良い所だ。」

キース「なら差し引いて5分ですかね?」

ザック「そうだな。」

クロード「先程から何の話をしてるんですか?」

ゴメス「フンッ、お前達が死ぬまでに掛かる時間だ。」

キース「いえ、僕達が稼ぐ時間の話です。」

ゴメス「何?」

クロード「え?」

ザック「しかしこうしてあいつ等がいない状態で戦うとよく分かる。シャノンの回復にトリッシュの牽制、エレナの火力。」

キース「ええ、シリウスさんの機転にも助けられていたんですね。」

ザック「ああ。全く仲間がいるといないじゃ大違いだな。」

ゴメス「さっき言った筈だ。3分だ。消えろ。」

ゴメスが仕掛けて来る。振り下ろされる剣を槍の刃で受け、それと同時に一回転させ下から跳ね上げる。ザックが近付いて斧で首を狙うが、目にも止まらぬ速さでしゃがむと何処から出したのかゴメスは既に別の剣を手にしている。左手の剣を逆手に持ちザック目掛け斬り上げるが、ザックはその攻撃を斧で防ぐ。そこで更に信じられない事が起きる。ゴメスの空いてる筈の右手に剣が握られている。

ザック「ぬぉ!いつの間に!」

クロード「させん!」

ゴメス「む!」

クロードさんが後ろから奇襲を仕掛け追撃を遮る。直後にザックが離れる。ゴメスは左手の剣を持ち直しクロードさんを攻撃する。ゴメスの二刀流に対しクロードさんもナイフの二刀流で応戦する。回転率と速度を上げ、なんとか受け流している。そしてクロードさんはゴメスが剣を振り下ろす瞬間を狙い"ファイアボール"放る。

ゴメス「チッ!」

ゴメスは途中では止まれない。クロードさんの魔法にそのまま剣をぶつけて爆発する。僕は直ぐに走り出しゴメスの顔を狙い突きを出す。だが爆煙が散った途端、ゴメスと目が合う。読まれていた。だけど僕は構わず突進する。ゴメスは左の剣で受け、右の剣を振りかぶる。

ゴメス「終わりだ。」

ザック「させるか!」

ゴメス「くっ!」

ガキン!と右の剣でザックの斧を防ぐ。僕が突進を始めた時にはザックも走り出していたから間に合うと確信していた。しかしそれでも防がれる。

クロード「やっと後ろが取れた。」

クロードさんは後ろからゴメスの顔面目掛けナイフを突き立てる。
そこまでは良かった。ここで僕達の理解を超える事態が起きる。ゴメスが少し首を動かしたと思った次の瞬間、クロードさんのナイフを口で受け止めた。

キース「な!」

ザック「嘘だろ!おい!」

クロード「どんな歯、してやがる!」

ゴメス「ほひはっはは。(惜しかったな。)」

3人「は?今何て?」

バキンと音がしたゴメスは歯でクロードさんのナイフの刃を噛み砕く。

クロード「な!」

ゴメスは驚愕している僕達の武器を弾くと一回転して全員を吹き飛ばす。

クロード「クソッ!」

ザック「ぐぁ!」

キース「うっ!」

回復役がいない今、この傷は不味い。だが立てる状態じゃない。ゴメスは口の中の刃をぷっと吐き出す。

ゴメス「惜しかったな。だがこれで終わりだ。」

トリッシュ「私達の仲間に何すんのよ!」

良かった!帰って来た!そう思うと途端に身体の傷が癒える。

シャノン「皆さん無事ですか!」

キース「ええ。」

ザック「なんとかな。」

直ぐにスワロウ公爵令嬢が動く。

クロード「お嬢様!気を付けて下さい!奴は何処からかは分かりませんが無数の剣を持っている様です。」

確かに今分かっている情報だとそんな所だ。スワロウ公爵令嬢は聖剣の氷で敵の動きを限定する様に壁を作る。飛び越えるには少し高い壁で、左右のどちらかから回り込むしかない状態にする。
左に行けば遠回り、右に行けば3歩か4歩で辿り着くそんな状況にしてある。ゴメスは右、つまりスワロウ公爵令嬢の左側に向かう。誘導されたゴメスが顔を出したその瞬間に"ファイアランス"を撃つ。

ゴメス「チッ!」

距離を取り躱す。

エレナ「アイリス退がれ!"ライトスコール"!」

ゴメス「む。」

エレナさんの創作魔法がまたも炸裂する光の球が雨の様に降り注ぐ。粒の大きさは雨程小さく無い。そして思う"また見た事のない魔法だ。使うなら事前に説明して欲しい。当たったらどうするつもりなんだろう。"と。話が逸れた。
その光の雨をゴメスは剣で防ぐが、3発弾くたびにその剣が消えて行く。もしかしてあの剣!

ザック「フッ、3分を過ぎて既に5分だぞ。何してたんだ?」

ゴメス「フン!だがそういう貴様達の言っていた男もまだ来ていないぞ。」

キース「いいえ。きっかり5分ですよ。」

ゴメスはしばらくこっちを見ていたが、途端に目を見開き剣を背中に移動させる。と同時にガキンと音がする。

シリウス「やるな。完全に不意打ちを狙ったんだけど。」

ゴメス「貴様、やはりあの時向かって来た男か。特殊部隊の連中はどうした?」

シリウス「筆頭はさておき他の連中は大した事ないだろ?」

ザック「ならもっと早く来いよ!」

シリウス「これでも急いだっての!」

まぁ、とにかくこれで形勢逆転だ。
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