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魔族の剣聖

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とりあえず第三師団の奴等はジンに任せて俺は人影があった方に向かう。そこで上から何かが落ちて来た。黒ずくめの男か女か分からないが多分アサシンだ。というかこいつ等は魔王軍の特殊工作部隊だろう。

ジェイド「久しぶりだな。使徒よ。」

ジェイド・ブラント率いる特殊工作部隊。筆頭自ら率いて現れるとは思わなかった。

俺「あんた自身が出て来るのか。中々の陽動作戦だな。」

ジェイド「そんな作戦では無いさ。あのゴブリンが仲間を危険に晒したく無かったらしい。だから自分1人で出陣したんだ。まさかあの英雄が一騎討ちに応じるとは思わなかったがな。」

俺「あいつは昔からああいう奴だからな。お前が来たのはお目付役か。」

ジェイド「正直に言うと俺は護衛だ。」

俺「護衛?」

意識をジェイド達に向けていたから気付くのが遅れた。後ろの木の影にもう1人いた。走り出す人影を追いかけようとするとジェイドの部下が立ち塞がる。

俺「チッ!」

ジェイド「フッ、そう焦るな。今回はあそこにいるゴブリン達と俺達、それにさっきの奴だけだ。」

俺「へぇ、今回は随分少人数だな。」

ジェイド「それについてはアーサーの奴がそう判断したからだ。」

アーサー、確か魔王の名前だな。それにしてもこいつも気安く名前で呼んでる。友達か?

俺「何か親しげだな?」

ジェイド「ドワイトとアーサーは幼馴染だ。貴様とあの英雄と同じ様にな。」

ジンと同じか、振り返りジンの方を見る。ジョーと組み合いをしている。というか後ろに回り込んでひっくり返そうとしてる。あいつ等何でレスリングしてるんだ。

フラット「そこまでだ。2人共、一旦離れろ。」

第三師団長が何かそれぞれ2人と話している。何であいつが審判してるのか、不思議だ。見てないうちに打ち解けたのか?

ジェイド「そもそも第三師団の全戦力で攻め落とす予定だった。」

俺「ふ~ん。何でこんな少人数なんだ?」

ジェイド「あのゴブリンがアーサーに何か頼みたい事があるとかで出陣前に会いに来たのが始まりだ。俺は奴等の言語は分からないが、何か喋っていたのは理解出来た。」

俺「それで?」

ジェイド「あのゴブリンが話した後アーサーと少し見つめ合っていたが突然"行け!"とアーサーが言い出してな。あのゴブリンだけが出陣する事になったという事だ。」

俺「何だそりゃ。」

ジェイド「アーサーいわく"奴の瞳には信念というか、男の覚悟の様な物を感じた。だから許可したんだ。"と良く分からない事を言っていた。悪い奴じゃないがたまに変な事を言うから困る。」

俺「そんな大事なお友達なら戦争を辞める様に説得したらどうだ?死ぬぞ。」

ジェイド「それは断る。俺自身がこの戦争を望んでいる。」

俺「お前、推進派かよ!」

ジェイド「"奴"と同意見なのが気に入らないが、この際文句は言っていられないからな。」

俺「奴?」

ジェイド「俺達の他にここにいただろ?今やアーサーの右腕だ。まぁ、はっきり言ってただの腰巾着だがな。」

さっきの奴そんな面倒臭そうな奴だったのか。行かせたのは間違いかな?あいつ等は簡単に負けないと思うけど。少し急ぐか。

ジェイド「行かせると思うのか?」

俺「あんたはアレだけど、他の連中は雑魚だろ?あの時より今日の方が多分楽だと思う。」

ジェイド「貴様!」

さっさと片付けよう。それにしても右腕なんて奴がいたのか。初めて聞いた。

俺「右腕なんていたんだな。」

ジェイド「ほう。貴様でも知らない事があるんだな。フッ、まぁ、良い。教えてやろう。奴は魔王軍において"剣聖"の称号を得た男だ。」

俺「剣聖?」

ジェイド「神の類いに選ばれた訳では無い。アーサーが剣聖に選んだ。」

俺「あいつの方が強いだろ?」

ジェイド「勿論だ。だが"剣聖"の称号は自分には相応しく無いとアーサーが言い出したんだ。それにあの時既にアーサーにはもう別の称号があったんだ。」

俺「ふ~ん。だけどその"剣聖"様の話俺にして良いのか?」

ジェイド「さっきも言ったが俺は奴の事が嫌いだからな。意趣返しに少しくらい敵に話しただけだ。それに奴が剣聖だと知られても大して変わらない。その程度で負ける様な男じゃないからな。」

俺「ちなみにそいつの得意な事と弱点は?」

ジェイド「流石にそれは言えないな。」

なんだかんだ言いながら信用はあるのか。とりあえずこいつ等を片付けて早く行こう。
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