Worldtrace

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[Worldtrace]

ジェネレーションギャップ

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何故か突然始まる喧嘩バトル。なんかのアクションゲームみたいな状況だけど、お互い攻撃を躱し距離を取る。

俺「なぁ、何か凄い本気じゃない?そんなに真剣にする必要ある?」

若執事「ならばそこで大人しく立っていろ。今すぐ叩きのめしてやる。」

俺「普通そこは"帰れ!"って言う所じゃないか?」

若執事「ふん!お嬢様に付き纏う蝿がその程度で引き退るか!それに私は貴様のその態度が気に入らない。」

つまりこの執事は俺の事が嫌いだっていう事だ。そこだけはよく分かった。
執事が距離を詰める。フットワーク軽いな、とか考えているとパンチは来てないのに何かが顔に迫って来る。俺は急いで伏せる。執事の回し蹴りだ。ボクシングスタイルじゃないのか!っと軽くキレそうになるが、ここはクレバーに行こう。冷静に冷静に。

若執事「フッ、よく避けたな。逃げ足だけは一級品だな。」

こいつさっきから挑発ばっかだな。俺に冷静さを欠かせて一気に仕留めようって訳か。

俺「お前も口だけだよな。俺も攻撃は防がれてるけど、お前の場合は擦りもしない。」

若執事「何だと!」

正直ガードした事もあれば若干擦りもしてるけど挑発するにはそう言うしかない。そもそもあっちが先に行ってきた訳だから、俺が言っても良いよな?ボクシングと蹴り、それを念頭に置いて執事を警戒する。
今度はボクシングスタイルで攻めて来た。パンチというかジャブを俺に向けて放つ。こっちも弾いたり躱したりで応戦してるけど完全に防戦だ。明確に敵なら攻撃出来るけど、お嬢様が心配なだけの執事だしな。
俺がそんな風に気を遣っていると右ストレートが来る。俺はその右腕を左手で掴み、奴の腕の下に俺の右腕を入れた。それと同時に執事の身体に背中を着ける様に近付く。執事は驚いていたが俺は直ぐに投げに入る。いわゆる柔道の一本背負いだ。だが執事は投げの途中で振り解き、体操選手みたいな回転と着地で躱す。

若執事「やるな。」

俺「そんな格好良い躱し方してる奴に言われても嬉しくない。」

若執事「私も別に褒めてはいない。」

全く、何言っても文句が返ってくる。

若執事「ふん。魔法が使えないと言うから手加減していたが、要らぬ世話だった様だな。」

あれで手加減してたのか?信じられない。執事は右手をこっちに向ける。魔力が集まり1つの火の玉が出来る。無詠唱が出来るとは驚きだ。因みに火の玉、皆んなのよく知るファイアボールだ。普通は何発か出すが今回は一発だ。あいつなりに気を遣ってるのかな?今更だけど。

若執事「この魔法、お前はどう防ぐ?お前ならどうお嬢様を護る!」

台詞からするとこれでラストか?肩や足を狙うのか?そう思ったが、ガッツリ俺の顔面を狙って撃ちやがった。前言撤回だ。こいつ俺に気を遣うつもりは更々無いらしい。俺は左手に[気]を集中させてファイアボールをガッチリ掴む。

若執事「な!」

門番達「嘘ぉ!」

そしてそのまま握り潰す。

俺「これぐらいなら練習すれば誰でも出来るさ。」

門番達「出来ないよ!」

俺「大丈夫だよ。俺の傭兵仲間はちょっと練習したら直ぐに使えたぞ?」

傭兵仲間は2、3日練習しただけで習得してる。普通に魔法が使える人間なら簡単だと思う。まぁ、その知識を知らない人に修得は無理か。

若執事「格上でも関係ない。私は貴様を認めないぞ!」

また執事が突っ込んで来る。ただ、普通のパンチかと思うとその手にはナイフ。いつ出した?って聞きたいくらい鮮やかに持ってる。俺は反射的に躱す。いわゆる条件反射なんだけど、その条件反射が不味かった。もう身体が攻撃と認識してカウンターに入っていた。仰け反りながら地面を蹴る。そして左手を地面に着くとほぼ同時に右脚が外側から弧を描く。サッカーのオーバーヘッドキックに近い右回し蹴りが執事の顔面を捉える。

若執事「ぐふ!」

俺「馬鹿野郎!いきなりナイフなんか出すから!」

俺は言いながら執事の顔を思いっ切り蹴っていた。バチンという音と一緒に執事の眼鏡が草むらに飛んで行く。

俺「だから言ったろ?眼鏡外せって。目、大丈夫か?」

若執事「カケラは入ってない。それに言った筈だ当たらないと。正確には当たるとは思ってなかった。つまりは私の自己責任だ。」

そう言いながら口の左端から出てる血を拭う。俺の蹴りで口を切ったんだろう。
何か行動全部がイケメンだな。もう一発殴っとけば良かったかな?

アイリス「ちょっと!何してるの!」

おっ!アイリスだ。少し気不味いな。怒られるかな?

アイリス「クロード!どうしたのその傷!」

あの執事、クロードって言うのか。まだ自己紹介もしてなかった。それで突然の殴り合い。なんか物語の展開みたいだな。"事実は小説よりも奇なり。"とはよく言った物だ。

クロード「彼に思いっ切り蹴られまして。」

俺「いや、お前その言い方だと語弊があるだろ?」

アイリス「2人共何があったの?」

一部始終を語弊がない様に門番達の証言も取り入れアイリスに話した。

アイリス「はぁ~、で?クロード、傷の具合は?大丈夫?」

クロード「はい!お嬢様の為でしたらこの程度は平気です。」

アイリス「その感じなら大丈夫そうね。」

アイリスはその後俺の方に来て

アイリス「それで貴方は?大丈夫なの?」

俺「俺は相変わらずのノーダメージだ。」

アイリス「大丈夫そうね。それにしても少し遅くない?」

俺「いや、これでもかなり急いで来たんだけど。それよりそっちは?大丈夫なのか?」

アイリス「ふん。私達の方は順調よ。案外、貴方がいなくても良かったかもね?」

俺「ほう、それじゃあお手並み拝見と行こうかな?お嬢様?」

アイリスの口調は軽い。確かに大丈夫なんだろうとは思う。とにかく皆んなと合流するか。ふと見ると執事のクロードがこっちを見ている。そして目が合う。

クロード「ふん!」

何だお前は!全く俺に対して敵意剥き出しだな。

アイリス「普段は悪い人じゃないんだけど。出来れば仲良くして欲しいな。」

俺「あっちがどうするかは分からないけど、なんとか善処するよ。それよりあいつイケメン過ぎじゃないか?」

アイリス「貴族の社交界だと、あれくらいはごろごろしてるわよ。見てるだけでお腹いっぱいって感じになるくらいにね。」

俺「へぇ~、何か大変だね。」

アイリス「だからたまに貴方みたいな平凡な顔を見るとホッとするわ。」

俺「平凡で悪かったな。」

アイリス「フフッ、ごめんごめん別に嫌味じゃなくてね。落ち着くって意味。」

俺「ふ~ん。そんな物かね?」

アイリス「そういう物よ。そうだ。確か寄り道するって聞いてたけど何してたの?」

俺「傭兵として世話になった古巣にちょっと挨拶と仕事の手伝いだ。」

アイリス「ふ~ん。仕事の手伝いって?」

俺「いや、挨拶に行ったらたまたま戦闘に巻き込まれてね。第二師団の撃退に協力してた。」

アイリス「成程。」

俺「後は友達の恋愛事情を聞いてた。」

アイリス「何それ?」

俺は概要を伝える。

アイリス「それは貴方が悩む必要ないんじゃ無い?というかそれで来るのが遅れたとか言わないでよ。」

俺「いや、遅れたのは他に原因があって。」

アイリス「何よ。」

俺「来る途中で海賊に襲われた。」

アイリス「え!海賊!」

ん?急にテンションが変わったな。それも心配とかでは無く期待の様な。

俺「何か期待してる?」

アイリス「いや、だって海賊でしょ?お宝とか冒険とかロマンがいっぱいの奴じゃない!」

え?まさかのなりたい派?

俺「いやいや、海賊なんて海に出る賊だぞ。皆んな悪党だよ。そりゃ、生活に困ってとかだったら根っからの悪党とは限らないけど。基本ただの犯罪者だぞ?」

アイリス「え?そんな物なの?夢や希望に義理とか人情は?」

俺「そんなん無いだろ。」

クロード「お嬢様。失礼ながらそれについては私も彼と同意見です。」

アイリス「え~。」

時たまアイリスと意見が合わない。世代が違うのは分かってるけど。まさかとは思うけどこれがいわゆるジェネレーションギャップって奴か?考えちゃうな。
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