Worldtrace

mirror

文字の大きさ
上 下
44 / 187
[Worldtrace]

VS執事

しおりを挟む
俺はランドの恋愛事情を考えつつアイリス達を追いかけた。
今向かっているのは大陸の少し西側の海を渡った先にある島で、その奥地にある遺跡だ。その遺跡に聖剣が安置されている。
地球でプレイしたゲームだと作中では最強の攻撃力を誇る聖剣で空気中の魔力を使い氷魔法が使えるという物だ。空気中の魔力を使うから使用者が消費する事なく魔法が使えるという事で残りの魔力を気にせずに使えるのがありがたい聖剣だ。
弱点を挙げるなら通常攻撃が氷属性になるから氷が効かない奴が相手となると役に立たない所だ。
普通の商船だからアイリスと合流するまでもう少し掛かりそうだ。アイリスは公爵の権限で大船団を組んで島に向かった。俺は近くの港でその島に向かう行商人に乗せてもらって移動している。
そして今は到着するまで暇だからランドの恋愛問題を考える事にしていた。
アンから告白されてない内に、ランドから友達になろうと近付いたらバートはどう思う?自分と同じくアンを狙ってたのか?って話になるだろう。諦めるなら良いけど。逆にストーカーみたいになって刺されたりとか?不味いよな。
逆にアンを振るか?バートにはチャンスだ。優しくすれば芽も出て来るかも知れない。でも下手するとアンは仕事自体辞めて、あそこを出て行くかな?しくじればバートもいなくなるな。やっぱ、結婚か!誰と?
う~ん。手詰まりな気がする。
船のデッキで空を見る。青い空が広がっている。空の色は地球と一緒だな。
何故俺が人の恋愛で悩まねばならないのか?謎だ。

俺「ふぅ~。」

溜め息が出る。

海賊1「喰らえ~。うぉ!」

俺は身体を回転させて、突っ込んで来た奴を躱す。船の上にいるから揺れるのは当然だ。勢いが余ればバランスも崩す。

海賊1「おっとっと!うぎゃあ~!」

バランスを崩してるそいつの尻を蹴り上げてデッキから海に落とす。

海賊2「おい、こいつやるぞ!気を付けろ!」

海賊3「取り囲め!」

俺「今色々考え事してるんだけど。他、当たってくれよ。」

海賊2「ふざけんなぁ!」

海賊3「テメェ、余裕かましてられるのも今の内だぞ!」

何処の『世界』の人間も大体言う事は同じみたいだ。はぁ、しかし参った。元貴族にいきなり自由恋愛は難しいよな。根っからの平民である俺にすら難しいのに。

俺「う~ん?」

海賊4「おい!こいつ何か考え込んでるぞ!一斉にかかればいけるじゃないか!」

海賊3「いや、何かの罠かも知れない。それでさっきも1人落とされた。」

海賊5「だがそれでこのまま見てるだけって訳にも行かないだろ!」

そういえば俺が乗ってる船は今現在海賊の襲撃を受けている。まぁ、彼等は彼等で生きるのに必死なんだろう。その気持ちは分かる。だけど今はランド達の人間関係で頭が一杯だ。放って置いて欲しい。

海賊2「チッ!やるぞ!気を抜くな!」

海賊達「応!」

海賊の3が剣を振り下ろす。その腕を掴みながら足を蹴り身体を浮かす、そのままの勢いを利用して思いっ切り海へ投げ込む。

海賊3「うおわぁ~!」

海賊5が距離を詰め、突きを放つ。俺はそれを躱しながら足の甲を思いっきり踏む。

海賊5「ぎゃ!ぐが!」

足の痛みで意識がそっちに向く、そのタイミングで首の後ろを手刀で打ち気絶させる。

海賊2「野郎!」

海賊4「行くぞ!」

海賊4が剣を突き出すが左腕で持ち手を弾き、直ぐに裏拳を顔面に入れる。そして今度はボディブローを入れる。

海賊4「がぁ!ぐふっ!」

苦しさで膝をついたタイミングで顎を蹴り上げ気絶させる。そういえば2がいない。視界から消えたなら普通に後ろからの奇襲か。

海賊2「死ねぇ~!」

予測通りで助かる。回転して躱し、回転の勢いをそのまま回し蹴りに使い海賊2の後頭部を蹴り、床に叩き付ける。

海賊2「ぐがっ!」

これで少し静かになった。俺は船の手すりに肘をつく。

俺「ふぅ~。」

溜め息を吐きながら考える。まぁ、確かに他人の事で、俺が悩むのは間違いかも知れないが一度気になり出すと放って置く事が出来ない。タチの悪い話だ。どうしたものか。

船員1「なぁ、あんた。」

俺「ん?」

船員1「そんなに強いなら手伝ってくれよ。」

俺「後3、4人だろ?船乗りの数の方が多いんだから何とかなると思うけど。」

船員2「いや、そういう事じゃねぇだろ?第一このままだと船も進まねえ。あんただって困るだろ?」

俺「はぁ、たくっ。仕方ない。俺も悩みがあって大変なんだけどな。」

船員1「何に悩んでるんだ?」

俺「友達の恋愛事情。」

船員1「・・・・。」

船員2「・・・・。」

俺「・・・・。」

船員達「今はそんな場合じゃないだろう!」

何か怒られた。確かに敵がいる時に考える事じゃないとは思うけど、そもそも残りの海賊くらい俺がいなくてもなんとか出来るだろうに。
ともかく事件を解決するか。他の船員達にやられた海賊は死体になったが、俺は素手で倒したから7人の海賊達を生かして捕らえられた。
そして目的地の島にたどり着く。

船長「あんた強いなウチの乗組員にならないか?」

俺「いや、俺こう見えてもやる事が山程あるんだよ。」

船長「そうかい。気が変わったら来てくれよ。」

とりあえず港町にある酒場へ行く。小さい島だから冒険者のギルドとかは無い。この島で情報を集めるなら酒場しかないと思うから来たけど。いつも通り"何だこいつ"って顔で睨んで来る。怖いからやめて欲しい。

マスター「らっしゃい。」

俺「なぁ、どっかのお偉いさん達が遺跡の調査に来てると思うけど。何処に行けば会えるかな?」

マスター「そんなの実際来てても情報は入らないよ。あ!そういえば領主邸に物々しい感じで人が来ていたって話を聞いたな。」

それだな。

俺「ありがとう。」

マスター「あんた何も頼まないの?」

俺「悪いね。俺これから仕事でさ。飲んでいられないんだ。今度頼む。」

マスター「はぁ、分かったよ。」

とりあえず領主邸に向かうと見た事のある執事が門の前にいる。確か王都襲撃の時、使用人の中にいたな。話した事は無いけど。

若執事「おや、来たのですか。後少し遅ければお嬢様の所に行くつもりでしたのに。」

何だこいつ俺の迎えか?てか顔面偏差値、高!
眼鏡まで掛けてる。しかもフレームの少ないオシャレ眼鏡だ。

俺「あんた迎えか。アイリスは?案内してくれ。」

若執事「アイリス"様"でしょう?全く何故お嬢様は貴方の様な輩を傍に置こうとするのか。」

話が長くなりそう。遺跡の場所は把握している。この場にいないなら遺跡だろう。このまま遺跡に向かおう。執事の横を抜ける。

俺「まぁ、良いや。行くぞ。」

若執事「断る!」

俺「はぁ?」

振り向くと左手の手刀が来る。右に躱すがさっきの手刀が俺を追いかけてくる。俺は左腕で防ぎそのまま相手の左腕を掴む。右手で肩を掴み執事を投げる。顔面偏差値に負けないくらいのカッコいい受け身で綺麗に着地をする。埃を払う。

若執事「はぁ、腕だけは確かだな。だがやはり貴様がお嬢様の近くにいるのは害悪にしかならん。ここで徹底的に打ちのめしてお嬢様の前から消えてもらう。」

要は腕試しって事か。

若執事「その剣を抜くなら抜け。それが飾りでないならな。」

口の端を吊り上げて言う。

俺「いや、別に必要無いだろう?どうせ腕試しなんだから。」

若執事「それは私相手に本気を出す必要は無いという事か?」

ん?そういう意味じゃないよな?あれ?意味的に一緒か?

俺「なぁ、眼鏡外した方が良いんじゃないか?」

若執事「必要ない。顔には当たらないからな。」

へぇ、一発当ててやりたいな。

若執事「父上から戦闘の手ほどきを受けている。防御も回避もな。それこそ暗殺も出来る。」

そう言うと視界から消える。何かさっきも見た様なパターンだ。大体、視界から消える以上正面から攻撃って無いよなと思った途端、俺の真下に現れアッパー気味の掌底が迫る。スレスレで躱したが、流石にビックリした。

若執事「油断したな。」

俺「ああ、マジで油断した。というか親父さんって?」

若執事「私の一族は代々スワロウ公爵家の執事をしている。」

うん?って事は

俺「アイリスと初めて会った時の爺さん。あれが親父さんか?」

若執事「ああ、あの時程父が悔やんだ事は無い。お嬢様が坊っちゃまを優先したが故、動く機を逃したのだ。さぁ、手早く済ませるぞ!」

少し気を引き締めよう。また視界から消える。
今度は後ろだ。右の手刀が俺の首を狙う。頭を下げて躱し、それと同時に後ろに向けて蹴りを入れる。この執事、中々やる様で俺の蹴りを左腕でガードする。

門番1「こいつ等何なんだ?ヤバくないか?」

門番2「あの執事は公爵令嬢の使用人だろ?で?あの男は?」

門番1「話の感じだと公爵令嬢の客か仲間かな?」

門番達の暇そうな話し声が聞こえる。こっちはそれ所じゃないんだけど。
何処で覚えたか分からないボクシングスタイルの構えで執事が走って来る。いわゆるジャブとストレートのワン・ツーってコンビネーションを放つ。俺は左右に半身で躱すが、続けて左フックが放たれる。俺はそれに合わせる様に左ストレートを出す。カウンターを使ったつもりだけど執事が首だけ動かして躱す。
そこで気が付く。これ腕試しか?俺、手加減出来てないというよりお互いかなり本気な感じだけど。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

スコップ1つで異世界征服

葦元狐雪
ファンタジー
超健康生活を送っているニートの戸賀勇希の元へ、ある日突然赤い手紙が届く。 その中には、誰も知らないゲームが記録されている謎のUSBメモリ。 怪しいと思いながらも、戸賀勇希は夢中でそのゲームをクリアするが、何者かの手によってPCの中に引き込まれてしまい...... ※グロテスクにチェックを入れるのを忘れていました。申し訳ありません。 ※クズな主人公が試行錯誤しながら現状を打開していく成長もののストーリーです。 ※ヒロインが死ぬ? 大丈夫、死にません。 ※矛盾点などがないよう配慮しているつもりですが、もしありましたら申し訳ございません。すぐに修正いたします。

王女殿下の死神

三笠 陣
ファンタジー
 アウルガシア大陸の大国、ロンダリア連合王国。  産業革命を成し遂げ、海洋発展の道を進もうとするこの王国には、一人の王女がいた。  エルフリード・ティリエル・ラ・ベイリオル、御年十六歳の少女は陸軍騎兵中尉として陸軍大学校に籍を置く「可憐」とはほど遠い、少年のような王族。  そんな彼女の隣には、いつも一人の少年の影があった。  リュシアン・エスタークス。  魔導貴族エスタークス伯爵家を継いだ魔術師にして、エルフリード王女と同い年の婚約者。  そんな彼に付けられた二つ名は「黒の死神」。  そんな王女の側に控える死神はある日、王都を揺るがす陰謀に遭遇する。  友好国の宰相が来訪している最中を狙って、王政打倒を唱える共和主義者たちが動き出したのである。  そして、その背後には海洋覇権を巡って対立するヴェナリア共和国の影があった。  魔術師と諜報官と反逆者が渦巻く王都で、リュシアンとエルフリードは駆ける。 (本作は、「小説家になろう」様にて掲載した同名の小説を加筆修正したものとなります。)

無法の街-アストルムクロニカ-(挿し絵有り)

くまのこ
ファンタジー
かつて高度な魔法文明を誇り、その力で世界全てを手中に収めようとした「アルカナム魔導帝国」。 だが、ある時、一夜にして帝都は壊滅し、支配者を失った帝国の栄華は突然の終焉を迎えた。 瓦礫の山と化した帝都跡は長らく忌み地の如く放置されていた。 しかし、近年になって、帝都跡から発掘される、現代では再現不可能と言われる高度な魔法技術を用いた「魔導絡繰り」が、高値で取引されるようになっている。 物によっては黄金よりも価値があると言われる「魔導絡繰り」を求める者たちが、帝都跡周辺に集まり、やがて、そこには「街」が生まれた。 どの国の支配も受けない「街」は自由ではあったが、人々を守る「法」もまた存在しない「無法の街」でもあった。 そんな「無法の街」に降り立った一人の世間知らずな少年は、当然の如く有り金を毟られ空腹を抱えていた。 そこに現れた不思議な男女の助けを得て、彼は「無法の街」で生き抜く力を磨いていく。 ※「アストルムクロニカ-箱庭幻想譚-」の数世代後の時代を舞台にしています※ ※サブタイトルに「◆」が付いているものは、主人公以外のキャラクター視点のエピソードです※ ※この物語の舞台になっている惑星は、重力や大気の組成、気候条件、太陽にあたる恒星の周囲を公転しているとか月にあたる衛星があるなど、諸々が地球とほぼ同じと考えていただいて問題ありません。また、人間以外に生息している動植物なども、特に記載がない限り、地球上にいるものと同じだと思ってください※ ※固有名詞や人名などは、現代日本でも分かりやすいように翻訳したものもありますので御了承ください※ ※詳細なバトル描写などが出てくる可能性がある為、保険としてR-15設定しました※ ※あくまで御伽話です※ ※この作品は「ノベルアッププラス」様、「カクヨム」様、「小説家になろう」様でも掲載しています※

健太と美咲

廣瀬純一
ファンタジー
小学生の健太と美咲の体が入れ替わる話

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

入れ替わった恋人

廣瀬純一
ファンタジー
大学生の恋人同士の入れ替わりの話

処理中です...