Worldtrace

［Worldtrace］

女神達の心配と団長の杞憂

時は少し遡りスタンピード開始の数分後の神界

ヴェルダンディ「あ！お姉様！」

ウルド「ん？どうしたの？」

ヴェルダンディ「戦闘中にシリウスさんの使っていた剣、折れちゃいました！」

ウルド「はぁ？アイツ何してんの？ちゃんと手入れしてなかったの？」

ヴェルダンディ「みたいです。」

スクルド「彼そういう細かい事しなさそうだからな。劣化して折れたんじゃない？」

ウルド「はぁ～。もう原因はどうでも良いわ。とりあえず、武器が要るわね。」

ヴェルダンディ「今の所、魔物の武器を奪って戦ってますけどその内。」

ウルド「窮地に立たされるでしょうね。私達で剣を作るわよ。聖剣を。」

スクルド「形は？細身のレイピア？片手剣とかもあるよ。」

ヴェルダンディ「片手剣の二刀流なんてどうですか？」

ウルド「作るのは刀よ。」

ヴェルダンディ・スクルド「え？」

ウルド「アイツ、日本人だし好きでしょ？」

ヴェルダンディ「それは本人に聞かないと。」

ウルド「それに刀は作者によってそれぞれ波紋のつけ方が違うのよ！三本杉とか！刀の装飾は基本波紋の形だからね！」

スクルド「姉さんが刀作りたいだけじゃない。」

ヴェルダンディ「私達には発言権も無いんですね。」

ウルド「何？」

スクルド「流石姉さん！即断即決ね。」

ヴェルダンディ「刀はある意味、芸術作品ですからね。」

ウルド「あんた達の言いたいことは分かるけど、今回は我慢しなさい。今からじっくり考えてられないでしょ。」

ヴェルダンディ・スクルド「は～い。」

ウルド「先ず、スクルドは大気中の魔力を吸収して再生する力、自己修復機能を付けて。多分アイツ手入れとかやらないでしょ。」

スクルド「分かった。」

ウルド「ヴェルダンディはどんなにダメージを負っても決して折れない刀身を作って。ついでにアイツの身長に併せてサイズが変わる様にしてその都度刀を作るのは大変だから。」

ヴェルダンディ「はい、分かりました。ところでお姉様は何をするのですか？」

ウルド「私は刀に加護を与える。」

スクルド「どんな？」

ウルド「如何なる存在の命運でも断ち切る強靭な刃の加護。」

ヴェルダンディ「それは一歩間違えば私達すら危ない様な気が。」

ウルド「アイツが神界に来ない限り大丈夫よ。それに例えこっちに来てもそうそう暴れたりはしないわよ。多分。それよりアイツが死ぬ前に作るわよ！」

数分後

ウルド「出来たわ。」

見ためは普通の柄に丸型の鍔、鞘は赤をメインに金の装飾を施した。装飾の見た目は完全にウルドの趣味だ。

ヴェルダンディ「名前はどうします？」

スクルド「名前かぁ～」

ヴェルダンディ「赤いから鷹の爪とか？」

スクルド「赤いの鞘だけでしょ。そもそも鷹の爪って唐辛子だよね？」

ウルド「名前は決まってるわ。如何なる存在も生命の円環へと帰す物。［輪廻］。それがこの刀の名前よ。」

ヴェルンダディ・スクルド「名前どころか設定まで決めているなんて」

ウルド「さぁ、早速送るわよ。」

こうして女神の加護を与えられた刀［輪廻］がシリウスに送られた。
そして問題の戦場ではゲイツがシリウスと魔物を追いかけ洞窟まで来ていた。
事態はゲイツの懸念していた通りになっている。簡素な槍は壊れ予備に持っていた剣も相手の剣を破壊した所で使い物にならなくなった。
どうにか助けたい。とは言えゲイツも鉈を渡す訳にはいかなくなった。洞窟の入り口から魔物が押し寄せて来た。何とか片付けつつ打開策を考えていると突然雷が落ちる。状況を見れば誰しもがここは洞窟だぞと言いたくなるだろう。しかし、今はどうでも良い。ゲイツは叫ぶ。

ゲイツ「小僧何してる！その剣を使え！」

シリウスはすかさず剣を手に取る。そして構えた瞬間、凶刃の腕を切断し一気に肩口から切り捨てる。
シリウスは見事に凶刃を討ち取ったが、派手に打ち上げたからだろう。血飛沫が舞い上がる。

シリウス「ぐわ」

案の定、小さな悲鳴と共にシリウスが頭から血を被る。上半身は真っ赤に染まり、かろうじて分かるのは呼吸しようと開いた口だけだった。とにかく結果はどうであれ勝ちは勝ちだ。

ゲイツ「小僧、やったな！大金星だ！今は汚いから寄ってくるなよ。」

シリウス「何も見えん。どうにかならないか？」

ゲイツ「まぁ、帰って洗うしか無いな。」

シリウス「くそう。」

シリウスが目の周りの血を拭い悪態を吐く。

シリウス「酷い目にあった。」

ゲイツ「だが、大将首を獲ったんだ。大したもんだ！良くやった！」

洞窟を出るとティムや傭兵達が駆け寄る。

ティム「大将、倒したのか？」

ゲイツ「小僧がな。」

ジーク「ほう、中々やるじゃないか。」

ダン「まぐれという事もありますよ？あまり浮かれない方が良いと思います。」

ゲイツ「何にせよ祝勝会と小僧の歓迎会だ。大いにやるぞ！」

傭兵団員「おおー！」

ゲイツは全員を引き連れ都市に戻った。