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[Worldtrace]
辺境伯
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貴族がいざという時役に立たない。そんな話はもしかするとよくある話なのかも知れない。この国でもそういう話は普通にあった。氾濫は収束に向かっている。領主が逃げた事について今更騒いでも仕方ない。
青年は混乱している街の住民達を守りつつ残りの魔物を狩る。とにかく目に付く魔物を片っ端から倒す。内と外を一通り終わらせ、被害を確認する為に走り回る。そこで青年はある事実を知った。今回の騒動で青年が所属していた傭兵団の団長が魔物により殺されていた。しかし感傷に浸る暇も無く対応に追われた。
青年の傭兵団は解散になったが、生きる為に傭兵を続ける事にしていた。解散になった以上、所属が変わる事になる。どうせ変わるならと考えを改める。自分と同じく傭兵団が解散になり無所属となった生き残りの傭兵達と一緒に別の傭兵団を作った。
流れで組んだ者達だ。時に騒ぎ、時に喧嘩をする。そんな友人関係の様な傭兵団が出来ていた。しばらくすると青年は上下関係が無い筈の傭兵団の団長になっていた。
青年の作った傭兵団は中々の活躍をする。その評判は近隣の村や町、果ては王都の貴族達の耳に届く程だった。その評判のお陰かその傭兵団に入りたいと人も増え、気が付くと辺境都市にいる全ての傭兵が青年の部下になっていた。
そんなある日、青年に書状が届く。この国の王から呼び出された。嫌な予感しかしない。国王と知り合いになった覚えはない。そしてただの傭兵の青年を呼び出す意味も分からない。とは言え国王の勅命となると行かない訳にはいかない。逆らえば実際に青年の首が飛ぶだろう。
王都に行く事を決めた時、ある事に気が付く。この傭兵団には副団長がいない。青年がいない間、傭兵達を纒める事が出来そうな者を探さなければならない。
最初に目に入ったのは槍使いの男だ。名をダンという。仲間思いで気遣いは出来る。だが、度胸のない所がある。傭兵は命の危険がある仕事だ。引き際は大切だと思う。しかし彼に任せるのは無理だと感じた。
次に見つけたのは大剣を持って素振りをしている男だ。名はジークで性格は勇猛果敢、魔物の大きさに関係なく戦いに向かう姿勢は良かった。ただあまり人と話さない所があり、寡黙といえば聞こえは良いが考えが分かりにくい。長年一緒にいる家族や仲間なら分かる。しかし知り合い程度の関係では意思の疎通も出来ないだろう。
青年は庭を見回す。最近傭兵になりたいと来た子供達に稽古を付けている者がいた。青年の初陣の日、少し離れた所を同じく逃げていた男だ。彼は青年と同様にその日が初陣で恐怖から逃げ惑っていた男だ。彼の名前はティム。
あの"氾濫"の時にティムのいた傭兵団は団長が怪我をして引退し解散、行く先が無い彼をそのままこの傭兵団創設の時に引き入れたのだ。ティムは周囲をしっかり観察し、状況判断も出来る。初めて会う人物ともちゃんと協力する。誰から教わったかは分からないが計算や読み書きも習得している。
青年は、少しでも印象を良くする為に笑顔を作りティムに近付く。そして振り返ったティムの肩に手を置く。
青年「お前に決めた。」
ティム「ん?何が?」
青年「だから、お前に決めた。」
ティム「いや、話が見えん。それにどうしたその荷物。」
青年「最近、俺宛てに手紙が来たろ?何か王都に来いって内容でこれから行く所でよ。ただ、しばらくここを開ける事になる。だからさ、その間管理してくれる奴が必要だと思った訳よ。」
ティム「それを俺にって?」
青年「おう」
ティム「いない間だけだな。」
青年「ありがとう。とりあえずこっちの事は任せるぞ!副団長!」
ティム「え?」
目を丸くして固まっているティムを置いて素早く王都に向かう。辺境都市から3日程かけて王都に辿り着く。
王城の前で傭兵というだけで門番に睨まれるが、彼等は国王からの手紙を見せると直ぐ頭を下げた。青年はちょっと優越感に浸りつつ門を潜る。あまり待つ事無く謁見になった。
人生で国王に会うという事は先ず無い。何より礼儀作法について教えてくれる者もいなかった。そんな青年に平伏しろと言われても出来ないのは当然だと言える。周りにいる貴族達が睨む。
国王「良い。元より平民に礼儀など期待していない。」
酷い言われ方だ。しかし、青年に取ってそこはどうでも良かった。本題の方が気になっていたからだ。
貴族1「せめて名くらい名乗らぬか!」
青年「ゲイツ。」
青年は貴族の横柄な言動に腹が立つ。だがここで騒ぐと面倒が長引くだけだ。ここはぐっと我慢する。
国王「おヌシを呼んだのは他でも無い。辺境都市の領主の件だ。」
領主と言えば貴族がなる者だ。傭兵の自分に何の関係があるのか、そう思った時だった。
国王「条件付きだが、おヌシに領主をして貰う事にした。励んでくれ。」
ゲイツ「はぁ?頭、大丈夫か?」
貴族1「無礼だぞ!謝罪しろ!」
貴族2「この様な輩を貴族にするなど反対です!考え直すべきです。」
貴族3「いざとなれば我が身可愛さに逃げ出すでしょう。やはり血筋がハッキリしている貴族が適任です。」
貴族達が一斉に罵声を浴びせる。言い方が悪かった様だ。ただ、国王のあの発言を聞いた瞬間、驚いた青年改めゲイツは思った事を口にしてしまう。
国王「言ったはずだ条件付きだと。おヌシとおヌシの傭兵団は辺境都市から出てはならぬ。月々一定額の税金を納めよ。その代わり特別におヌシを辺境伯に任命する。よろしく頼むぞ。」
何故か既にゲイツが受けた事を前提に話が進む。
貴族1「気に食わぬが王命だ。ありがたく拝命せよ。」
別に有り難くは無い。ゲイツにとっての利益が全く無いからだ。
貴族2「早く返事をせぬか。陛下を待たせるで無い。」
ゲイツ「断る。」
国王「はぁ?」
国王は変な声を出し周りの貴族達も呆気に取られている。ゲイツは思わず笑いそうになるが、笑う前に貴族がまたも声を上げる。
貴族1「貴様!無礼にも程がある!平民がいきなり辺境伯だぞ!大変名誉な事だ何が不満なのだ!」
ゲイツ「名誉ならお前がやれよ!大体、俺に何の得がある!辺境から出られないうえに税金を納めろ?こっちがどれだけ苦労してあそこで生きてるか、分かって言ってるのか?どうせ貴族なんぞに俺達の苦労は分からないだろうがな。」
国王「くぅ、言いたい放題言いよって!」
ゲイツ「そっちの方が好き勝手言ってるだろうが!良く言えたな!」
国王「チッ、しかしこちらとしても貴様にこの話、受けて貰わねばならん。辺境都市からの税金の件は変えられんし、辺境都市から出る事も容認出来ない。そうだ!あそこで起きた出来事に関して全て貴様に一任すると言うのは?」
ゲイツ「辺境都市の中で起きた事件や事故と商売なんかも俺が仕切って良いって事か?」
その提案は意外と悪くない。全責任を負わされるが、何処かの粗暴な貴族が就任して揉めるよりは良いだろう。
ゲイツ「良いぜ。俺があの街から出ないってのと税金を納める。それで俺は貴族になってあの街の一切を取り仕切れるって事だな。」
国王「うむ。認めよう。」
貴族1「何と寛大な!」
貴族2「感謝するんだぞ平民!」
寛大なのはどちらか。ゲイツも言いたい事は山程あるが、また変な条件が付くのは好ましく無い。これ以上は騒がずやり過ごす事にする。
王都に来る前、副団長を押し付け・・・頼んだティムに団長として出来た方が良いと、最低限の読み書きを教わっていた。ゲイツは契約書に書いてある文章に、間違いがないかを確認し契約した。そして辺境都市へと帰る。
ティム「あんたが辺境伯?夢でも見てんのか?・・・それか変な物でも食べたのか?」
ゲイツ「お前、俺を何だと思ってんだ。そんな変人に見えるのかよ?」
ティム「あんたならありそうだと。」
ゲイツ「はぁ~。これが契約書だとさ。」
ティム「本当に書いてあるな。でもこれだとあんた一生この都市から出られなくなるぞ。」
ゲイツ「良いんだよ。これで下手な貴族でも来てみろ。またあれこれ理由を付けて金だの何だの取られて、挙げ句の果てに魔物騒ぎに乗じて逃げ出すに決まってる。そんな面倒になるくらいなら一層の事、俺がやった方が良いだろ?」
ティム「あんたがそれで良いならこれ以上は言わないけど。これから色々大変だぞ。」
ゲイツ「その為の協力をお前等に頼んでるんだよ。」
ティム「事後報告じゃないか。」
ダン「良いじゃないですか副団長。我々としては悪い事ではないでしょうし。」
ジーク「俺としては面倒でなければそれで良い。全て団長と副団長に任せよう。」
団員の中でティムが副団長としっかり定着していた。他の団員もティムが適任と理解しているという事だろう。ゲイツは我ながら良い判断だったと確信する。ゲイツは正式にこの辺境都市の領主になったのだ。
領主になりこの都市の実権も握った事になるが、差し当たってこの都市の呼び名が欲しい。あまり重要では無いかも知れないが名前があれば呼び易いのでは?と考えた。元々はあったのかも知れないが、領主不在になってから色々とあり気にした事が無かった。
昔、聞いた物語に出て来る盾の名前を思い出す。確か"イージス"と言う名前だった筈。王都を守ると言う様な格好良い物では無いが、とにかく誰かを守れる"盾"になるくらいなら悪くない発想だとゲイツは感じた。
ゲイツ「おい、今日からこの都市は"イージス"だ辺境都市"イージス"良いな。」
ティム「はぁ?何の話?これからどうする?って話してなかったか?」
ダン「良いんじゃないですか?この都市の名前知らないし、適当に付けても。」
ジーク「それよりどうするかって俺達のやる事は今までと同じく都市の防衛だろ?」
ティム「領主になったんだから運営とかあるだろう?税金も払わないといけない。やる事山程あるじゃないか。」
ジーク「なら俺には無理だ。他を当たってくれ。」
ダン「早いな、もう諦めるのか?まぁ、俺も分からないけど。」
ゲイツ「ティム、お前計算出来たろ。役に立ちそうな奴集めて何とかしてくれ。」
ティム「本気か?酷ぇ話だ。泣けてくる。」
多少の弊害はあれど人材の確保等、傭兵達による領地運営が開始された。
青年は混乱している街の住民達を守りつつ残りの魔物を狩る。とにかく目に付く魔物を片っ端から倒す。内と外を一通り終わらせ、被害を確認する為に走り回る。そこで青年はある事実を知った。今回の騒動で青年が所属していた傭兵団の団長が魔物により殺されていた。しかし感傷に浸る暇も無く対応に追われた。
青年の傭兵団は解散になったが、生きる為に傭兵を続ける事にしていた。解散になった以上、所属が変わる事になる。どうせ変わるならと考えを改める。自分と同じく傭兵団が解散になり無所属となった生き残りの傭兵達と一緒に別の傭兵団を作った。
流れで組んだ者達だ。時に騒ぎ、時に喧嘩をする。そんな友人関係の様な傭兵団が出来ていた。しばらくすると青年は上下関係が無い筈の傭兵団の団長になっていた。
青年の作った傭兵団は中々の活躍をする。その評判は近隣の村や町、果ては王都の貴族達の耳に届く程だった。その評判のお陰かその傭兵団に入りたいと人も増え、気が付くと辺境都市にいる全ての傭兵が青年の部下になっていた。
そんなある日、青年に書状が届く。この国の王から呼び出された。嫌な予感しかしない。国王と知り合いになった覚えはない。そしてただの傭兵の青年を呼び出す意味も分からない。とは言え国王の勅命となると行かない訳にはいかない。逆らえば実際に青年の首が飛ぶだろう。
王都に行く事を決めた時、ある事に気が付く。この傭兵団には副団長がいない。青年がいない間、傭兵達を纒める事が出来そうな者を探さなければならない。
最初に目に入ったのは槍使いの男だ。名をダンという。仲間思いで気遣いは出来る。だが、度胸のない所がある。傭兵は命の危険がある仕事だ。引き際は大切だと思う。しかし彼に任せるのは無理だと感じた。
次に見つけたのは大剣を持って素振りをしている男だ。名はジークで性格は勇猛果敢、魔物の大きさに関係なく戦いに向かう姿勢は良かった。ただあまり人と話さない所があり、寡黙といえば聞こえは良いが考えが分かりにくい。長年一緒にいる家族や仲間なら分かる。しかし知り合い程度の関係では意思の疎通も出来ないだろう。
青年は庭を見回す。最近傭兵になりたいと来た子供達に稽古を付けている者がいた。青年の初陣の日、少し離れた所を同じく逃げていた男だ。彼は青年と同様にその日が初陣で恐怖から逃げ惑っていた男だ。彼の名前はティム。
あの"氾濫"の時にティムのいた傭兵団は団長が怪我をして引退し解散、行く先が無い彼をそのままこの傭兵団創設の時に引き入れたのだ。ティムは周囲をしっかり観察し、状況判断も出来る。初めて会う人物ともちゃんと協力する。誰から教わったかは分からないが計算や読み書きも習得している。
青年は、少しでも印象を良くする為に笑顔を作りティムに近付く。そして振り返ったティムの肩に手を置く。
青年「お前に決めた。」
ティム「ん?何が?」
青年「だから、お前に決めた。」
ティム「いや、話が見えん。それにどうしたその荷物。」
青年「最近、俺宛てに手紙が来たろ?何か王都に来いって内容でこれから行く所でよ。ただ、しばらくここを開ける事になる。だからさ、その間管理してくれる奴が必要だと思った訳よ。」
ティム「それを俺にって?」
青年「おう」
ティム「いない間だけだな。」
青年「ありがとう。とりあえずこっちの事は任せるぞ!副団長!」
ティム「え?」
目を丸くして固まっているティムを置いて素早く王都に向かう。辺境都市から3日程かけて王都に辿り着く。
王城の前で傭兵というだけで門番に睨まれるが、彼等は国王からの手紙を見せると直ぐ頭を下げた。青年はちょっと優越感に浸りつつ門を潜る。あまり待つ事無く謁見になった。
人生で国王に会うという事は先ず無い。何より礼儀作法について教えてくれる者もいなかった。そんな青年に平伏しろと言われても出来ないのは当然だと言える。周りにいる貴族達が睨む。
国王「良い。元より平民に礼儀など期待していない。」
酷い言われ方だ。しかし、青年に取ってそこはどうでも良かった。本題の方が気になっていたからだ。
貴族1「せめて名くらい名乗らぬか!」
青年「ゲイツ。」
青年は貴族の横柄な言動に腹が立つ。だがここで騒ぐと面倒が長引くだけだ。ここはぐっと我慢する。
国王「おヌシを呼んだのは他でも無い。辺境都市の領主の件だ。」
領主と言えば貴族がなる者だ。傭兵の自分に何の関係があるのか、そう思った時だった。
国王「条件付きだが、おヌシに領主をして貰う事にした。励んでくれ。」
ゲイツ「はぁ?頭、大丈夫か?」
貴族1「無礼だぞ!謝罪しろ!」
貴族2「この様な輩を貴族にするなど反対です!考え直すべきです。」
貴族3「いざとなれば我が身可愛さに逃げ出すでしょう。やはり血筋がハッキリしている貴族が適任です。」
貴族達が一斉に罵声を浴びせる。言い方が悪かった様だ。ただ、国王のあの発言を聞いた瞬間、驚いた青年改めゲイツは思った事を口にしてしまう。
国王「言ったはずだ条件付きだと。おヌシとおヌシの傭兵団は辺境都市から出てはならぬ。月々一定額の税金を納めよ。その代わり特別におヌシを辺境伯に任命する。よろしく頼むぞ。」
何故か既にゲイツが受けた事を前提に話が進む。
貴族1「気に食わぬが王命だ。ありがたく拝命せよ。」
別に有り難くは無い。ゲイツにとっての利益が全く無いからだ。
貴族2「早く返事をせぬか。陛下を待たせるで無い。」
ゲイツ「断る。」
国王「はぁ?」
国王は変な声を出し周りの貴族達も呆気に取られている。ゲイツは思わず笑いそうになるが、笑う前に貴族がまたも声を上げる。
貴族1「貴様!無礼にも程がある!平民がいきなり辺境伯だぞ!大変名誉な事だ何が不満なのだ!」
ゲイツ「名誉ならお前がやれよ!大体、俺に何の得がある!辺境から出られないうえに税金を納めろ?こっちがどれだけ苦労してあそこで生きてるか、分かって言ってるのか?どうせ貴族なんぞに俺達の苦労は分からないだろうがな。」
国王「くぅ、言いたい放題言いよって!」
ゲイツ「そっちの方が好き勝手言ってるだろうが!良く言えたな!」
国王「チッ、しかしこちらとしても貴様にこの話、受けて貰わねばならん。辺境都市からの税金の件は変えられんし、辺境都市から出る事も容認出来ない。そうだ!あそこで起きた出来事に関して全て貴様に一任すると言うのは?」
ゲイツ「辺境都市の中で起きた事件や事故と商売なんかも俺が仕切って良いって事か?」
その提案は意外と悪くない。全責任を負わされるが、何処かの粗暴な貴族が就任して揉めるよりは良いだろう。
ゲイツ「良いぜ。俺があの街から出ないってのと税金を納める。それで俺は貴族になってあの街の一切を取り仕切れるって事だな。」
国王「うむ。認めよう。」
貴族1「何と寛大な!」
貴族2「感謝するんだぞ平民!」
寛大なのはどちらか。ゲイツも言いたい事は山程あるが、また変な条件が付くのは好ましく無い。これ以上は騒がずやり過ごす事にする。
王都に来る前、副団長を押し付け・・・頼んだティムに団長として出来た方が良いと、最低限の読み書きを教わっていた。ゲイツは契約書に書いてある文章に、間違いがないかを確認し契約した。そして辺境都市へと帰る。
ティム「あんたが辺境伯?夢でも見てんのか?・・・それか変な物でも食べたのか?」
ゲイツ「お前、俺を何だと思ってんだ。そんな変人に見えるのかよ?」
ティム「あんたならありそうだと。」
ゲイツ「はぁ~。これが契約書だとさ。」
ティム「本当に書いてあるな。でもこれだとあんた一生この都市から出られなくなるぞ。」
ゲイツ「良いんだよ。これで下手な貴族でも来てみろ。またあれこれ理由を付けて金だの何だの取られて、挙げ句の果てに魔物騒ぎに乗じて逃げ出すに決まってる。そんな面倒になるくらいなら一層の事、俺がやった方が良いだろ?」
ティム「あんたがそれで良いならこれ以上は言わないけど。これから色々大変だぞ。」
ゲイツ「その為の協力をお前等に頼んでるんだよ。」
ティム「事後報告じゃないか。」
ダン「良いじゃないですか副団長。我々としては悪い事ではないでしょうし。」
ジーク「俺としては面倒でなければそれで良い。全て団長と副団長に任せよう。」
団員の中でティムが副団長としっかり定着していた。他の団員もティムが適任と理解しているという事だろう。ゲイツは我ながら良い判断だったと確信する。ゲイツは正式にこの辺境都市の領主になったのだ。
領主になりこの都市の実権も握った事になるが、差し当たってこの都市の呼び名が欲しい。あまり重要では無いかも知れないが名前があれば呼び易いのでは?と考えた。元々はあったのかも知れないが、領主不在になってから色々とあり気にした事が無かった。
昔、聞いた物語に出て来る盾の名前を思い出す。確か"イージス"と言う名前だった筈。王都を守ると言う様な格好良い物では無いが、とにかく誰かを守れる"盾"になるくらいなら悪くない発想だとゲイツは感じた。
ゲイツ「おい、今日からこの都市は"イージス"だ辺境都市"イージス"良いな。」
ティム「はぁ?何の話?これからどうする?って話してなかったか?」
ダン「良いんじゃないですか?この都市の名前知らないし、適当に付けても。」
ジーク「それよりどうするかって俺達のやる事は今までと同じく都市の防衛だろ?」
ティム「領主になったんだから運営とかあるだろう?税金も払わないといけない。やる事山程あるじゃないか。」
ジーク「なら俺には無理だ。他を当たってくれ。」
ダン「早いな、もう諦めるのか?まぁ、俺も分からないけど。」
ゲイツ「ティム、お前計算出来たろ。役に立ちそうな奴集めて何とかしてくれ。」
ティム「本気か?酷ぇ話だ。泣けてくる。」
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