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情愛

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 咄嗟に待ってと叫んでしまいましたが、言うことなんて思いつきません。でも、このままだとカイトが、

「あ、えっと、私は確かにレオン様に恋をしてしまったの。
 でも私は、カイトのことも、同じくらい大切で!!」

「シャル、それが家族愛なら僕にとっては余計つらいものなんだよ。」

 私はその言葉に何も言えなくなってしまいました。
 絶句している私にカイトは続けます。

「ごめん、こんなひどいことを言うつもりではなかったんだけど。
 僕はシャルのことを家族としてでは無く愛している。
 だから、正直シャルがレオンのことを好きと言うのはとても辛い。
 ごめんね、しばらく距離を置いてもいいかな。」

 カイトの苦しげな声と表情に、私は頷くことしか出来ませんでした。

「ありがとう、シャル」

 カイトがそう言った途端馬車が止まります。
 どうやら学校に着いたみたいです。

「それではシャル、しばらくの間、お元気で。」

 それだけ言うと、カイトは悲しげな顔で微笑んで校舎へと歩いていきました。
 私は呆然として、動けなくて、御者の人に促されるまでずっと固まっていました。

 それから1ヶ月ほど、私とカイトは関わりませんでした。
 朝の迎えは当然ありませんし、会った時に挨拶をすることもありません。
 周りでは多くの噂が飛び交っていました。
 私はカイトのことが気になっているのに、レオン様に会うと、視線を交わすとドキドキしてしまって、幸福と罪悪感に苛まれていました。

 そして1ヶ月ほど経ったある日。
 夕食後にお父様に呼び出されました。

「明日、カイトの家主催の舞踏会がある。
 カイトの婚約者として参加しなさい。
 ドレスは届けられた。
 話は以上だ。
 部屋に戻りなさい。」

 はい、とだけ答えて部屋に戻ります。
 その間もずっと、明日のことを考えていました。
 私は明日、カイトに近づいていいのでしょうか。


 次の日の夕方、メイドが私にカイトが送ってくれたドレスを着せてくれます。
 カイトの瞳の色のドレス。
 ネックレスはカイトの髪の色の宝石です。
 カイトが私のことをまだ愛してくれていることが伝わって苦しくなりました。
 準備が終わって少し待つと、カイトが迎えに来てくれました。
 久しぶりに近くで見るカイト。
 やっぱり大好きなことには変わりないのに、とさらに苦しくなります。

「じゃあシャル、行こうか。」

 差し出された手を握り、カイトと共に舞踏会の会場へ。
 会場へ着いてからは、ずっと無言。
 開始時刻になってドアが開いた時、歩き始める直前にカイトは

「ごめんね」

と呟きました。
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