Eternal Rain ~僕と彼の場合~

勇黄

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Eternal Rain ~僕と彼の場合~外伝

Eternal Rain ~俺と彼の場合~⑧

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朝、俺はおにぎりをにぎる。









車で目的地までは3時間ぐらいか?









昼前には着きたいから…。









出発は8時過ぎ。 









お茶が好きなあいつのために
美味しいお茶をいれた。










俺は…なに考えてんだろう。










ぼーっと天士てんじの支度を
待っていると
お待たせ!と声がして
大きな荷物を持ってあいつが
立っている。












[ちょ…おま…なんの荷物だよ?
1泊だぜ!?]










【ま、いろいろと、ね。】










[バカじゃねぇの?]










【まぁまぁ!車だし…。
いいじゃんか!ね!】










[しゃーねぇな…
持つ、から、ほら。]









かんありがとう!】










エレベーターで駐車場へ降りて
荷物をつむ。










天士てんじが運転席
俺が助手席に座ると
車は早速出発した。











かん、おなかすいたよね…
途中のコンビニでなんか買おうか?】












[…おにぎり、作ったから。
ほら、食べろよ。]










おにぎりを天士てんじの膝に投げ
タンブラーに入れたお茶も
ドリンクホルダーに置く。












【ええええっ!作ってくれたのっ?
わぁ~嬉しい!】











車体を揺らさんばかりに
はしゃぐ天士てんじに驚き
顔が熱くなる。











[いちいちおおげさなんだよ!
バカ!]










俺は悪態をついた。










【こんなときに限って
信号につかまらない~
食べたい~!う~!かん
あーん、して!】










[はぁ?甘えんな!
信号まで待てよ!バカ。]











俺はもくもぐと横で
おにぎりをほおばる。










あと一口を右手で持って
お茶を飲んでいると
ふいに手を捕まれた。










[…っあ!ちょっ!馬鹿野郎
なにしやがん…]











俺の手にある、あと一口の
おにぎりをパクリと口に入れ
満足そうに笑う天士てんじ










【もーらい!うまぁ!
………間接キスだぁ…】














[このくそやろうなにすんだ…]










俺は真っ赤だったに違いない。










あいつの唇が俺の指を
少しだけかすめたから。










そして間接キス、という言葉。










一気に熱が集まる。
俺の中心に。














【あ!赤だ!よし、今のうちに…】










おにぎりを口一杯に入れて
嘆息をもらす天士てんじ










【ん~!うま~!あれ?
ごめん…とったから怒ってるの?
一口返そう、か?】











[ばっ!馬鹿野郎!いるかっ!]











俺は隠すように体ごと向きを
変えて外を見るふりをする。










なんだよ…なんでこんなことに
なんだよ…落ち着け、俺。











かん~?トイレ大丈夫?
ちょっと寄っていい?】










[お、俺は大丈夫。寄れよ。]









じゃあ、コンビニ寄るね~と
道沿いに見つけたコンビニの
駐車場に入る天士てんじ











天士てんじは店内に
俺も車から出て一息つき
熱を冷ます。










[ふぅぅ…]










なんとか熱を蹴散らして
助手席に座ると天士てんじも戻ってきた。










【これ買ってきた。】










[は?……にくま、ん?]









【さっきおにぎりとっちゃったから…
ごめん。】










[いや怒ってるわけじゃねぇし…
ま、食う、けどよ。]











【よかった!…あ、ねぇ。
かんが淹れてくれたお茶
めちゃくちゃ美味しいんだけど!
特別な茶葉とか?】










[いや?家にあったやつだ。]









【え?なんで?】









改めてタンブラーから
お茶を飲む天士てんじ











[入れる温度が重要なんだ、って
介護施設に入所してるかたに
教えてもらったんだ。]










天士てんじはとても
優しい笑顔をみせた。











【へぇー!すごいね!
かん…また、淹れてね!
じゃあ出発!】











その笑顔を見た瞬間
俺はわかってしまった。








俺は…あいつを………。
好き、になってしまっているんだ…
たぶん。これが恋心、と
いうものなんだろうか。











いや…そんなまさか…。
そんなこと。あるはずが、ない。










もしそうだとしても。
俺は。ふさわしくない。
ダメだ。











ぐるぐるする頭をなんとかしようと
目をしばたたかせる。











かん?眠いなら寝ていいよ?】












そんな言葉に俺は甘えて
そっぽをむくようにドア側に
頭をやり目を閉じた。























【…かん?かん
あと少しで着くよ~】











俺は本当に眠ってしまっていたみたいで
あいつに起こされる。











[っあ…すま………ああ?]










ほんの数センチの距離に
天士てんじの顔がある。











かん。ちょっと動かないで…………
よし、とれた。】











[な、な、な…]










かんの肩にカナブンがとまってた。】










ほら、と窓を開けて手を離すと
ちいさい虫がブーンと飛んでいく。










【こんな自然の多い場所に
来ると気持ちいいね~!】










優しく笑いまだ固まってる俺に
からかうような声をあげた。










【なに、もしかして虫怖いの?】










[バカ!怖かねぇわ!]










【わ~絶対怖いんだ~弱点見っけ!】










確かに俺は虫は苦手だ。
苦手だが今、固まってるのは…










[るせぇ!馬鹿野郎!]










強がる俺に嬉しそうに
天士てんじは笑う。









【もう、着くよ。あ、あれかな?】










咲鞍さきくらさんと星斗せいとの姿が見える。
俺は2人に声をかけた。











荷物をおろしていると星斗せいと
俺の回復を喜んでくれる。









前会ったときより格段に
星斗せいとは綺麗に見えた。









これが愛の力?
艶々で光っているようで眩しい。











咲鞍さきくらさんに星斗せいとのことを
大事にしてやってくれ、と
言ったらお前も幸せになれ、と
返されて…。











俺はとまどいながらも
頭に浮かぶ人は1人で…
ついつい目線を送ってしまう。











あいつは同情なんかで
お前の世話をしない。
そう咲鞍さきくらさんは言う。
いや、でも、だって…。











そうして話していると
あいつは怖い顔でやって来て
俺と咲鞍さきくらさんを
無理矢理引き剥がし
俺を抱きしめてくる。











なにすんだ…なに考えてんだ…。









俺が咲鞍さきくらさんと
どうにかなるわけないだろうがよ…。











俺はその場を離れた。










なんだか悲しいような
嬉しいような訳のわからない感情。
















そのあと星斗せいと
友達になろう、と言ってくれて
俺はまたもや泣きそうになる。
LINEも交換して…。











星斗せいとは俺に素直になれ、と言った。











あいつのことを好きだと思ってること
つい認めちまった。
恥ずかしい…。












後悔しないように
ちゃんと話したほうがいい、と
星斗せいとは言う。











できるかどうかはわからないけど…
話してみれればいいな…。











4人でごはんに行くことになり
咲鞍さきくらさんの運転で
近くの洋食屋に行った。











星斗せいとの幸せそうな様子を
見るのは嬉しくて…。









咲鞍さきくらさんも星斗せいとだけを
優しく見つめていて
素直に…2人とも愛を表現して…。










素敵だった。
本当に愛し合うって
ああいうことか…。
心が繋がってるってわかる。











恋愛って…こういうことか。











やっぱり俺にはわからない。
あんなふうに天士てんじのことを
想えるか…。

素直じゃない俺には
無理だ。きっとあいつを
傷つけちまう。

こんな物言いしかできない
俺のこといつかは嫌になるに
決まってる。











すっかり夜になり別荘に戻り
部屋へ入るとベッドルームには
キングサイズのベッドがひとつ。











え?一緒に寝るのか?
そんな…。俺、大丈夫か?











熱をもてあまし怒鳴ってしまった
俺をシャワールームまで追ってきて
背中から抱きしめてきた
あいつを突き放した。











背中の刺青も見られてしまった。









これだけはなんか…
見られたくなかったのに。











それでもあいつは俺がいい、と言う。











正直、嬉しかったんだ。










かんじゃないと嫌だ、という
あの言葉。











だから俺は意を決して
あのキングサイズのベッドの
真ん中に横になる。










また、やっぱおまえがいいんだ、と
呟くあいつを横に寝かせた。


















抱きついてきやがるのには
正直困った。









つい離れろと言ったけど…









すぐそこにあるその温もりは
とても愛しかった。
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