Eternal Rain ~僕と彼の場合~

勇黄

文字の大きさ
上 下
18 / 45

恵雨

しおりを挟む
【よう、栄醐えいご。久しぶりだな。
そしてそちらが星斗せいとくんか。
こんにちは。】










顔を見るなり明るい声をかけてきた
その男は弁護士、葛城天士かつらぎてんじ











「…こんにちは。」










星斗せいとはなんとか返事を返し
栄醐えいごの手をぎゅっと握った。












その手を握り返し栄醐えいご
リビングに天士てんじを通し
座るように促し
前に星斗せいととふたりで並んで
座りゆっくりと手をさする。











【改めて。葛城天士かつらぎてんじです。
栄醐えいごとは幼なじみで同級生。
今は咲倉総合病院の顧問弁護士も
しています。】











その男は誠実そうな眼差しを
星斗せいとに向け微笑みかけた。











その様子に栄醐えいごが少し慌てて言う。












星斗せいとは俺のだからな!』












【ふ…。わかってるよ。
俺と栄醐えいごじゃ好み違うの
知ってるでしょーが。
あ、星斗せいとくんはとても可愛いと
思うんだけどいかにも気の強そうな
感じのが好みでね…】











そう言うと星斗せいとにウインクする天士てんじ
仕事しろ!と栄醐えいご











【はぁい。も~自分で言っといて…
ねぇ?星斗せいとくん。】










星斗せいとは曖昧に微笑み
コーヒーを入れますね、と
キッチンへ行ってコーヒーを
3つ持ってきた。











まずは…と天士てんじが書類を何通か
鞄から出して目を通す。












星斗せいとくんのことだけれど。
大丈夫かな?】










星斗せいと。大丈夫。
俺がついてるからな。』










「…。え…ご。僕、大丈夫だから。」











栄醐えいごの手を握りしめながら
少し震えている星斗せいと












【結論から言うと今現在。
星斗せいとくんの戸籍は星斗せいとくん
ひとりだけになってる。】












にわかに緊張する星斗せいと











【お母様は20年前に離婚され
戸籍を出られていて
18年前に再婚されている。

お父様は…4年前に亡くなられていた。】












「え?そん…な…。な…んで…。」










【病死と聞きました。
再婚されて奥さまの姓を
名乗られていたそうで…。
その奥さまがお家のほうに
手紙を出されたそうですが
受け取られてませんね。】












「………。」










星斗せいとくん、かなり前から
お家のほうには戻られてませんよね?】












「…はい。…5年くらいは
戻っていないと思います…。」












栄醐えいご星斗せいとくんのお家は
お父様が星斗せいとくん名義に
変更しているそうだ。
誰も住んでないなら
荒れてしまっていそうだが…
一度行って整理したほうが
よさそうだ。諸々の手続きは
手伝うから。】












『うん、ありがとう。
………星斗せいと、大丈夫か?震えてる…。』











「………。栄醐えいご…。1回ギュッってして…。」










『ん。おいで星斗せいと。』











腕の中にすっぽりと星斗せいと
抱きしめ背中をさする栄醐えいご












星斗せいと。おまえを養子縁組して
俺の戸籍に入れようと思ってる。
星斗せいとの考えを聞かせてくれ。』












「よーしえんぐ、み?」










『あぁ…。本当は奥さんにしたい。
けれど…。今の日本の法律では
無理だから…。

せめて戸籍上で養子、つまり
子供、って形にはなるけど
同じ姓を名乗って欲しいんだ。』











栄醐えいご………。僕なんかに
そんな資格ある、の?」












星斗せいとにはこれからの人生
俺と幸せに生きてほしいと思ってる。
おまえを離したくないし離さない。』













栄醐えいごっ……。」











抱きついてキスをする星斗せいと














【んごほっ!ごほっ!んんっ。
もしもしー?俺いるんだけど?】











「っ!あ…ご、ごめんなさいっ…」












星斗せいと、いいんだ。
見せつけてやろう。
………戸籍の件…どう?』













「僕…ぼく………。栄醐えいご
ほんとにいいなら、僕…。
いいの?ほんとにいいの?
…ぅぅ…グズッ………。」












『いいに決まってるじゃん。
俺がそうしたいんだ。』











栄醐えいご…。うん、うん………。」












【…ふっ。じゃあ、そちらのほうは
そういうふうに手続きを
進めていこう。

あとは…お母様、だけど
会いたいなら連絡先は
とりあえずわかるけれど…
どうする?】











「………いまさら会いたくない。」











【…そうか。まぁ、また気が変わったら
言ってくれたらいつでも手配するよ。】














『ありがとう。天士てんじ。よろしく頼む。』













【ん。それから、これからが
やっかいな話だけど。

虎家とらいえとかいうの
かなりやばいな。
やはり反社会勢力と繋がっているようだ。

ありとあらゆる悪いことに
手を出してる。クスリ売買とか
売春斡旋とか闇カジノとか
拳銃密売とか…まだ出そうだ。】











「そんな…。」











またガタガタと震えだす星斗せいと
抱きしめる栄醐えいご











星斗せいと…逃げだせて
本当によかった…。』











栄醐えいご………。」











ギュッ、と抱きついて星斗せいと
ふぅ、と深呼吸をする。












『告発できそうか?』











【警察も裏で今、動いているみたいだ。
検挙、逮捕されるのは
時間の問題だろう。】












「…ね。栄醐えいご…。かん、は?
かんはどうなるの?」












『悪事の片棒を
担がされてなきゃいいが…。』












【でも護衛とか見張りとかしてる、と
言ったんだろう?
関わってしまってるかもしれないな…。】












『…。この間電話をかけてきたのが
かんなら助けを
求めてたのかな…なにかあったのか…
もう一度かかってくるといいが…』











かん…。」












【その子のことはもう一度
探りをいれてみるよ。】










『すまん、頼むな。天士てんじ。』











【何言ってんだ~。
俺とおまえの仲じゃないか!】











『やべぇ…こいつには全部
知られてるからなぁ…』










星斗せいとくん、こいつはね…
昔から独占欲が強くてさぁ…
クラスで飼ってたうさぎも
独占しちゃって家に
連れて帰っちゃって…】











『おおい!しゃべりすぎだぞ!』










「ふふ…可愛い…。」










【可愛いもんか!あの時だって…うぐっ!】











栄醐えいご天士てんじの口を塞いでしまう。











『だからしゃべるな!もう…』











クスクスと小さく笑い星斗せいと
いい大人ふたりがじゃれあって
いるのを微笑ましく見つめた。











「いいですね…。友達って。」











星斗せいと…。俺が友達にも
なってやるから。な。』











栄醐えいごの伴侶は
俺の友達でもある。
俺とも仲良くしてくれるだろ?】












栄醐えいご…。天士てんじさん…。ありがとう。」











星斗せいとは涙ぐんでお辞儀をする。











そんな星斗せいと栄醐えいご
抱きこんでソファに沈みこんだ。











『おまえ、もう帰れよ。』











【ちぇ、いいな~俺も誰かいい人
いないかなぁ…。】













「え。天士てんじさん、独身なんですか?」











栄醐えいごに負けないくらい
きれいな顔でスタイルも抜群の
天士てんじが独り身とは
思わなくて星斗せいとは声をあげた。












【あぁ。そうなんだよ…。
なんでだろう…】











『こいつは気の強いやつが好きでさ。
いつもこっぴどくフラれ…
いてっ!殴ることないだろう~』












【おまえのがしゃべりすぎだ!】










星斗せいとはまたクスクスと笑って
ふたりのかけあいを見つめていた。













天士てんじが帰りソファで栄醐えいご
甘えるように寄りかかり
星斗せいとは感謝を口にする。












栄醐えいご…。本当にありがとう…。
本当に、本当にいいの?
僕を養子?にして
ずっと一緒にいてくれるの?
本当に?本当に…ほんと…
んあっ、んぅ………。」











涙を流す星斗せいとに深くキスをして
栄醐えいごは強く抱きしめる。












『あぁ。まぁ書類上では
子供だけど、俺は星斗せいと
俺の奥さんにする気でいる。

俺のものに。俺の星斗せいと…。
俺だけのもの…。俺も星斗せいとだけのもの。

ずっと一緒にいて…。星斗せいと星斗せいと………。』












「え…ごぉ…。うん。ぼく。
僕、栄醐えいごにずっとついて行く…。
一生そばにいるから。」












星斗せいと…。愛してるよ。』










栄醐えいご愛してる。」












ゆっくりキスをして抱きしめあい
しばらくお互いのぬくもりと
鼓動を感じあった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

上手に啼いて

紺色橙
BL
■聡は10歳の初めての発情期の際、大輝に噛まれ番となった。それ以来関係を継続しているが、愛ではなく都合と情で続いている現状はそろそろ終わりが見えていた。 ■注意*独自オメガバース設定。■『それは愛か本能か』と同じ世界設定です。関係は一切なし。

手作りが食べられない男の子の話

こじらせた処女
BL
昔料理に媚薬を仕込まれ犯された経験から、コンビニ弁当などの封のしてあるご飯しか食べられなくなった高校生の話

熱中症

こじらせた処女
BL
会社で熱中症になってしまった木野瀬 遼(きのせ りょう)(26)は、同居人で恋人でもある八瀬希一(やせ きいち)(29)に迎えに来てもらおうと電話するが…?

【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない

りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。

受け付けの全裸お兄さんが店主に客の前で公開プレイされる大人の玩具専門店

ミクリ21 (新)
BL
大人の玩具専門店【ラブシモン】を営む執事服の店主レイザーと、受け付けの全裸お兄さんシモンが毎日公開プレイしている話。

αなのに、αの親友とできてしまった話。

おはぎ
BL
何となく気持ち悪さが続いた大学生の市ヶ谷 春。 嫌な予感を感じながらも、恐る恐る妊娠検査薬の表示を覗き込んだら、できてました。 魔が差して、1度寝ただけ、それだけだったはずの親友のα、葛城 海斗との間にできてしまっていたらしい。 だけれど、春はαだった。 オメガバースです。苦手な人は注意。 α×α 誤字脱字多いかと思われますが、すみません。

平凡顔のΩですが、何かご用でしょうか。

無糸
BL
Ωなのに顔は平凡、しかも表情の変化が乏しい俺。 そんな俺に番などできるわけ無いとそうそう諦めていたのだが、なんと超絶美系でお優しい旦那様と結婚できる事になった。 でも愛しては貰えて無いようなので、俺はこの気持ちを心に閉じ込めて置こうと思います。 ___________________ 異世界オメガバース、受け視点では異世界感ほとんど出ません(多分) わりかし感想お待ちしてます。誰が好きとか 現在体調不良により休止中 2021/9月20日 最新話更新 2022/12月27日

処理中です...