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LOTUS FLOWER~ふたたびの運命~外伝
はじめとたいすけ②
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トントントン。
「はーい。」
「あ、あの。高橋、です。」
翌日の夕方一の部屋の
ドアをノックした泰輔。
部屋からは慌てた様子で
ドアに駆け寄る足音が聞こえる。
ガチャ。
「た、高橋くん…。」
「迷惑、でした、か?」
「…。いえ。どう、ぞ。」
「え?いいんですか?ほんとに?
…お、お邪魔しま、す。」
一の部屋はシンプル、というより
殺風景でベッドと本棚と
小さな冷蔵庫があるだけ。
(まるで生活感がない…。)
泰輔はそう思った。
「何もなくて…。ごめんなさい。
なんならベッドに座ってくれても
いいから。」
一はどっちがいいですか?と
お茶とコーヒーの缶を見せる。
「お茶、もらっていいですか?」
一は自分のぶんもお茶を取り
微笑んで泰輔の隣に座り
お茶を手渡した。
「あ、りがとうございます。」
また微笑んで首をふって
一は一口飲む。
「あのっ。はじめさん。」
「なんですか?」
「あの…えっと。
はじめさんの名前の漢字
数字の一ってほんとですか?」
「はい。」
「あの、なん、で?」
「うちの母親がふみよっていって
漢数字で二三四って書くんです。
自分より先に大事なもの、って
言う意味だそうです。」
「素敵ですね!」
「…。そういえばあなたのお名前
聞いていませんでした。」
「僕は泰輔です。
安泰、の泰に補う、の
衣偏じゃなくて車偏の字です。」
「いい名前ですね。」
「僕のは…なぜか僕が産まれる
前に亡くなった家族の
名前らしいです。
字は違いますが…。
小学校の時とかよく
聞かれるじゃないですか?
名前の由来。
僕、そんなの言えなくて。
安泰を輔ける、だよ、なんて
嘘言ってた。」
「そのご家族の方って…?」
「僕はよく知らないんです。
父方のお祖父ちゃん?の
関係らしいんですけど。
その人を父は子供の時から
大好きだったんですって。
僕が生まれた時、その人の顔が
なぜか浮かんで、浮かんで
しかたなかったらしくて。
で、違う字をあてて泰輔。
最近その人にすごく似てきた
なんて言われるんですけど…
そんな事言われても…ねぇ?」
「お写真とか、ないんですか?」
「それが写真嫌いだったらしくて
1枚も撮ってないようなんです。」
「そうなんですか…
なんか不思議ですね…」
「不思議?」
「はい。そう思いませんか?」
「なんか名前のつけられかたが
不満だったからそんなふうに
考えてみた事なかったです。
他の兄弟は父の名前から
一文字もらっているし…
だから。そう考えると
なんか楽になりました。
…ありがとうございます。」
「お父さんにそのかたのお話
聞いてみてください。
そしてまた、教えてください。」
「え……。ま、また…。
はい、はい!聞いてみます!」
顔を紅潮させて泰輔は
首を縦にコクコクとふる。
一は嬉しそうに笑った。
その笑顔に泰輔は心を踊らせる。
「…そういえば!一さんって
おいくつですか?」
「俺は19です。」
「へ?」
「老けてるって柏葉先生にも
よくからかわれるんですけど。」
「じゃあひとつ上だけってこと
なんですか…?」
「ええ。そうなります。」
「ごめんなさい…28ぐらいだと」
「ぶっ…!よく言われます。」
「じゃあもうタメみたいな
もんじゃないですか!
僕に敬語使わなくていいですよ。
ほんとに。」
「…なんか、人との距離感って
掴めなくて…。」
「僕には敬語じゃなくて
全然いいです!」
ためらう表情を見せた後
一は微笑んで
「高橋くんがタメ、語で
話してくれる、なら。」
「いいんですか?
…じゃあ遠慮なくタメ語にしま…
ううん、する、ね。
僕のこと泰輔って呼んでよ。」
「……泰輔、くん。ありがとう。」
「うん!」
泰輔は満面の笑みで
一の手を掴んで
ぶんぶんと握手する。
ひきつった笑いをみせる一だが
その顔は少し赤くなっていた。
「はーい。」
「あ、あの。高橋、です。」
翌日の夕方一の部屋の
ドアをノックした泰輔。
部屋からは慌てた様子で
ドアに駆け寄る足音が聞こえる。
ガチャ。
「た、高橋くん…。」
「迷惑、でした、か?」
「…。いえ。どう、ぞ。」
「え?いいんですか?ほんとに?
…お、お邪魔しま、す。」
一の部屋はシンプル、というより
殺風景でベッドと本棚と
小さな冷蔵庫があるだけ。
(まるで生活感がない…。)
泰輔はそう思った。
「何もなくて…。ごめんなさい。
なんならベッドに座ってくれても
いいから。」
一はどっちがいいですか?と
お茶とコーヒーの缶を見せる。
「お茶、もらっていいですか?」
一は自分のぶんもお茶を取り
微笑んで泰輔の隣に座り
お茶を手渡した。
「あ、りがとうございます。」
また微笑んで首をふって
一は一口飲む。
「あのっ。はじめさん。」
「なんですか?」
「あの…えっと。
はじめさんの名前の漢字
数字の一ってほんとですか?」
「はい。」
「あの、なん、で?」
「うちの母親がふみよっていって
漢数字で二三四って書くんです。
自分より先に大事なもの、って
言う意味だそうです。」
「素敵ですね!」
「…。そういえばあなたのお名前
聞いていませんでした。」
「僕は泰輔です。
安泰、の泰に補う、の
衣偏じゃなくて車偏の字です。」
「いい名前ですね。」
「僕のは…なぜか僕が産まれる
前に亡くなった家族の
名前らしいです。
字は違いますが…。
小学校の時とかよく
聞かれるじゃないですか?
名前の由来。
僕、そんなの言えなくて。
安泰を輔ける、だよ、なんて
嘘言ってた。」
「そのご家族の方って…?」
「僕はよく知らないんです。
父方のお祖父ちゃん?の
関係らしいんですけど。
その人を父は子供の時から
大好きだったんですって。
僕が生まれた時、その人の顔が
なぜか浮かんで、浮かんで
しかたなかったらしくて。
で、違う字をあてて泰輔。
最近その人にすごく似てきた
なんて言われるんですけど…
そんな事言われても…ねぇ?」
「お写真とか、ないんですか?」
「それが写真嫌いだったらしくて
1枚も撮ってないようなんです。」
「そうなんですか…
なんか不思議ですね…」
「不思議?」
「はい。そう思いませんか?」
「なんか名前のつけられかたが
不満だったからそんなふうに
考えてみた事なかったです。
他の兄弟は父の名前から
一文字もらっているし…
だから。そう考えると
なんか楽になりました。
…ありがとうございます。」
「お父さんにそのかたのお話
聞いてみてください。
そしてまた、教えてください。」
「え……。ま、また…。
はい、はい!聞いてみます!」
顔を紅潮させて泰輔は
首を縦にコクコクとふる。
一は嬉しそうに笑った。
その笑顔に泰輔は心を踊らせる。
「…そういえば!一さんって
おいくつですか?」
「俺は19です。」
「へ?」
「老けてるって柏葉先生にも
よくからかわれるんですけど。」
「じゃあひとつ上だけってこと
なんですか…?」
「ええ。そうなります。」
「ごめんなさい…28ぐらいだと」
「ぶっ…!よく言われます。」
「じゃあもうタメみたいな
もんじゃないですか!
僕に敬語使わなくていいですよ。
ほんとに。」
「…なんか、人との距離感って
掴めなくて…。」
「僕には敬語じゃなくて
全然いいです!」
ためらう表情を見せた後
一は微笑んで
「高橋くんがタメ、語で
話してくれる、なら。」
「いいんですか?
…じゃあ遠慮なくタメ語にしま…
ううん、する、ね。
僕のこと泰輔って呼んでよ。」
「……泰輔、くん。ありがとう。」
「うん!」
泰輔は満面の笑みで
一の手を掴んで
ぶんぶんと握手する。
ひきつった笑いをみせる一だが
その顔は少し赤くなっていた。
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