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LOTUS FLOWER~ふたたびの運命~外伝
はじめとたいすけ①
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高橋泰輔はとても焦っていた。
たった今、会った人に
なんだかわからない強く激しい感情を
抱いてしまったから…。
(なんなんだ?…この胸の高鳴りは?
苦しい…。そして顔が熱い。
なんなんだ…泣きそう…?)
泰輔は小中高と同じクラスの
神宮寺彩明が入院している病院に
1度お見舞いに行きたい、と考え
思い切って彼の友達、と思われる
神田俊詩に聞いてみた結果
今日一緒にお見舞いに来たのだった。
彩明の顔を見てから
3人で食堂でごはんを
ごちそうになることになって。
そこで会った男性…。
一さん、と呼ばれたその人は
柔らかい空気を纏った青年だった。
こちらをみて嬉しそうに笑いながら
チャーハンを作ってくれた。
言葉少なだか微笑みを絶やさず
本当に料理をふるまうのが
好きなんだろうな、とわかる。
その微笑みに釘付けになった。
(恋心?まさか!そんなこと!
なんだよ…僕、男だよ?
彼も男だよ?なんなんだこれ…)
「どうしたの?高橋?」
俊詩は不思議そうに聞く。
「な、なんでもないっ!」
大きな声を出してしまって
場の空気が一瞬にして冷えた。
「……あ!食後にプリンも
あるから食べてね!」
一は和ますように
明るい声をあげた。
彩明も
「一さんのプリン
すごく美味しいよ!」と言う。
そこに医師、柏葉が現れて
その場はなんとか
元の雰囲気に戻った。
そして帰り道…。
一の自分への印象が
悪かったのではないか、と焦り
落ち込み、おろおろとし
そんな自分がわからずに
「なんなんだ…」と独りごちる泰輔。
悶々とした気持ちをかかえたまま
数日を過ごしてわかったこと。
それは会いたい…と思っていること。
なぜこんな感情になるのか…
確かめたい、と思った。
彩明の病院の前に来ると
まずは彩明に会いに行ったが
治療中だということで
(しかたない、帰るか…。)と
踵を返した時だった。
「あれ?あなたは…彩明くんの。」
一だった。
「っつ!!あ!あ、あのっ。
こ、こんにち、は。」
「たかはしくん、だよね。」
そう言って微笑む一は
泰輔には眩しすぎた。
「彩明くん、治療室だよね…。
今日は会えないかも。」
「……ハイ。帰ろうと、思って。」
「あの、たかはしくん。
よかったらラーメン食べませんか?」
「えっ」
「あ、時間があれば、ですが…
作ります。」
「…!あ!あのぜひっ!」
「ふふ…じゃ、行きましょうか。」
ふんわり微笑み横に並び
歩き出す一。
泰輔はにわかに緊張しながら
食堂へ向かった。
「たかはしくんの苗字の漢字は
高いにブリッジ、の橋の
たかはしくん?」
「ハイ、そうです…。」
「俺も実はたかはしなんですよ。
でも、字は鳥の鷹に
ブリッジ、の橋です。」
「え?たかはしさんなんですか!」
「ええ。奇遇ですね。」
「あ、ハイ…。」
食堂でラーメンをつくってもらって
食べた泰輔は
「めっちゃ美味しい!」と笑う。
「ふふ。よかった!」
一は微笑む。
その微笑みにキュンとしてしまった
泰輔は思い切って聞いてみた。
「…あの。これからはじめさんに
会いに来てもいいですか?
僕、知りたいんです。
はじめさんのこと。
なんでかわからないけど
気になるんです。」
「そ、それは…。
どういう、意味…?」
「え…意味………。気になる、じゃ
ダメですか?」
「…。どストレートですね…。」
「僕、後悔するの嫌なんです。
子供の頃からそう思ってて。
言いたいことはできるだけ
伝えよう、って。」
「…強いんですね。」
「そう、ですか?」
「そう、ですよ。俺、憧れます。」
「……………会いに来ていいですか。」
「はい。」
そうして一と泰輔の
日々が動き出した。
たった今、会った人に
なんだかわからない強く激しい感情を
抱いてしまったから…。
(なんなんだ?…この胸の高鳴りは?
苦しい…。そして顔が熱い。
なんなんだ…泣きそう…?)
泰輔は小中高と同じクラスの
神宮寺彩明が入院している病院に
1度お見舞いに行きたい、と考え
思い切って彼の友達、と思われる
神田俊詩に聞いてみた結果
今日一緒にお見舞いに来たのだった。
彩明の顔を見てから
3人で食堂でごはんを
ごちそうになることになって。
そこで会った男性…。
一さん、と呼ばれたその人は
柔らかい空気を纏った青年だった。
こちらをみて嬉しそうに笑いながら
チャーハンを作ってくれた。
言葉少なだか微笑みを絶やさず
本当に料理をふるまうのが
好きなんだろうな、とわかる。
その微笑みに釘付けになった。
(恋心?まさか!そんなこと!
なんだよ…僕、男だよ?
彼も男だよ?なんなんだこれ…)
「どうしたの?高橋?」
俊詩は不思議そうに聞く。
「な、なんでもないっ!」
大きな声を出してしまって
場の空気が一瞬にして冷えた。
「……あ!食後にプリンも
あるから食べてね!」
一は和ますように
明るい声をあげた。
彩明も
「一さんのプリン
すごく美味しいよ!」と言う。
そこに医師、柏葉が現れて
その場はなんとか
元の雰囲気に戻った。
そして帰り道…。
一の自分への印象が
悪かったのではないか、と焦り
落ち込み、おろおろとし
そんな自分がわからずに
「なんなんだ…」と独りごちる泰輔。
悶々とした気持ちをかかえたまま
数日を過ごしてわかったこと。
それは会いたい…と思っていること。
なぜこんな感情になるのか…
確かめたい、と思った。
彩明の病院の前に来ると
まずは彩明に会いに行ったが
治療中だということで
(しかたない、帰るか…。)と
踵を返した時だった。
「あれ?あなたは…彩明くんの。」
一だった。
「っつ!!あ!あ、あのっ。
こ、こんにち、は。」
「たかはしくん、だよね。」
そう言って微笑む一は
泰輔には眩しすぎた。
「彩明くん、治療室だよね…。
今日は会えないかも。」
「……ハイ。帰ろうと、思って。」
「あの、たかはしくん。
よかったらラーメン食べませんか?」
「えっ」
「あ、時間があれば、ですが…
作ります。」
「…!あ!あのぜひっ!」
「ふふ…じゃ、行きましょうか。」
ふんわり微笑み横に並び
歩き出す一。
泰輔はにわかに緊張しながら
食堂へ向かった。
「たかはしくんの苗字の漢字は
高いにブリッジ、の橋の
たかはしくん?」
「ハイ、そうです…。」
「俺も実はたかはしなんですよ。
でも、字は鳥の鷹に
ブリッジ、の橋です。」
「え?たかはしさんなんですか!」
「ええ。奇遇ですね。」
「あ、ハイ…。」
食堂でラーメンをつくってもらって
食べた泰輔は
「めっちゃ美味しい!」と笑う。
「ふふ。よかった!」
一は微笑む。
その微笑みにキュンとしてしまった
泰輔は思い切って聞いてみた。
「…あの。これからはじめさんに
会いに来てもいいですか?
僕、知りたいんです。
はじめさんのこと。
なんでかわからないけど
気になるんです。」
「そ、それは…。
どういう、意味…?」
「え…意味………。気になる、じゃ
ダメですか?」
「…。どストレートですね…。」
「僕、後悔するの嫌なんです。
子供の頃からそう思ってて。
言いたいことはできるだけ
伝えよう、って。」
「…強いんですね。」
「そう、ですか?」
「そう、ですよ。俺、憧れます。」
「……………会いに来ていいですか。」
「はい。」
そうして一と泰輔の
日々が動き出した。
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