上 下
75 / 98
LOTUS FLOWER~ふたたびの運命~外伝

はじめとたいすけ①

しおりを挟む
高橋泰輔たかはしたいすけはとても焦っていた。







たった今、会った人に
なんだかわからない強く激しい感情を
抱いてしまったから…。






(なんなんだ?…この胸の高鳴りは?
苦しい…。そして顔が熱い。

なんなんだ…泣きそう…?)






泰輔たいすけは小中高と同じクラスの
神宮寺彩明じんぐうじあやあきが入院している病院に
1度お見舞いに行きたい、と考え
思い切って彼の友達、と思われる
神田俊詩かんだとしふみに聞いてみた結果
今日一緒にお見舞いに来たのだった。









彩明あやあきの顔を見てから
3人で食堂でごはんを
ごちそうになることになって。





そこで会った男性ひと…。






はじめさん、と呼ばれたその人は
柔らかい空気を纏った青年だった。






こちらをみて嬉しそうに笑いながら
チャーハンを作ってくれた。





言葉少なだか微笑みを絶やさず
本当に料理をふるまうのが
好きなんだろうな、とわかる。









その微笑みに釘付けになった。








(恋心?まさか!そんなこと!

なんだよ…僕、男だよ?
彼も男だよ?なんなんだこれ…)









「どうしたの?高橋たかはし?」







俊詩としふみは不思議そうに聞く。







「な、なんでもないっ!」







大きな声を出してしまって
場の空気が一瞬にして冷えた。








「……あ!食後にプリンも
あるから食べてね!」




はじめは和ますように
明るい声をあげた。







彩明あやあき
はじめさんのプリン
すごく美味しいよ!」と言う。






そこに医師、柏葉かしわばが現れて
その場はなんとか
元の雰囲気に戻った。








そして帰り道…。







はじめの自分への印象が
悪かったのではないか、と焦り
落ち込み、おろおろとし
そんな自分がわからずに
「なんなんだ…」と独りごちる泰輔たいすけ








悶々とした気持ちをかかえたまま
数日を過ごしてわかったこと。





それは会いたい…と思っていること。






なぜこんな感情になるのか…
確かめたい、と思った。











彩明あやあきの病院の前に来ると
まずは彩明あやあきに会いに行ったが
治療中だということで

(しかたない、帰るか…。)と
踵を返した時だった。











「あれ?あなたは…彩明あやあきくんの。」





はじめだった。








「っつ!!あ!あ、あのっ。
こ、こんにち、は。」







「たかはしくん、だよね。」





そう言って微笑むはじめ
泰輔たいすけには眩しすぎた。








彩明あやあきくん、治療室だよね…。
今日は会えないかも。」







「……ハイ。帰ろうと、思って。」







「あの、たかはしくん。
よかったらラーメン食べませんか?」






「えっ」






「あ、時間があれば、ですが…
作ります。」







「…!あ!あのぜひっ!」







「ふふ…じゃ、行きましょうか。」







ふんわり微笑み横に並び
歩き出すはじめ






泰輔たいすけはにわかに緊張しながら
食堂へ向かった。









「たかはしくんの苗字の漢字は
高いにブリッジ、の橋の
たかはしくん?」






「ハイ、そうです…。」







「俺も実はたかはしなんですよ。
でも、字は鳥の鷹に
ブリッジ、の橋です。」







「え?たかはしさんなんですか!」







「ええ。奇遇ですね。」





「あ、ハイ…。」






食堂でラーメンをつくってもらって
食べた泰輔たいすけ
「めっちゃ美味しい!」と笑う。

「ふふ。よかった!」
はじめは微笑む。






その微笑みにキュンとしてしまった
泰輔たいすけは思い切って聞いてみた。







「…あの。これからはじめさんに
会いに来てもいいですか?

僕、知りたいんです。
はじめさんのこと。

なんでかわからないけど
気になるんです。」







「そ、それは…。
どういう、意味…?」






「え…意味………。気になる、じゃ
ダメですか?」







「…。どストレートですね…。」








「僕、後悔するの嫌なんです。
子供の頃からそう思ってて。

言いたいことはできるだけ
伝えよう、って。」







「…強いんですね。」





「そう、ですか?」






「そう、ですよ。俺、憧れます。」






「……………会いに来ていいですか。」






「はい。」












そうしてはじめ泰輔たいすけ
日々が動き出した。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

からっぽを満たせ

ゆきうさぎ
BL
両親を失ってから、叔父に引き取られていた柳要は、邪魔者として虐げられていた。 そんな要は大学に入るタイミングを機に叔父の家から出て一人暮らしを始めることで虐げられる日々から逃れることに成功する。 しかし、長く叔父一族から非人間的扱いを受けていたことで感情や感覚が鈍り、ただただ、生きるだけの日々を送る要……。 そんな時、バイト先のオーナーの友人、風間幸久に出会いーー

【R18】孕まぬΩは皆の玩具【完結】

海林檎
BL
子宮はあるのに卵巣が存在しない。 発情期はあるのに妊娠ができない。 番を作ることさえ叶わない。 そんなΩとして生まれた少年の生活は 荒んだものでした。 親には疎まれ味方なんて居ない。 「子供できないとか発散にはちょうどいいじゃん」 少年達はそう言って玩具にしました。 誰も救えない 誰も救ってくれない いっそ消えてしまった方が楽だ。 旧校舎の屋上に行った時に出会ったのは 「噂の玩具君だろ?」 陽キャの三年生でした。

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

【完結】義兄に十年片想いしているけれど、もう諦めます

夏ノ宮萄玄
BL
 オレには、親の再婚によってできた義兄がいる。彼に対しオレが長年抱き続けてきた想いとは。  ――どうしてオレは、この不毛な恋心を捨て去ることができないのだろう。  懊悩する義弟の桧理(かいり)に訪れた終わり。  義兄×義弟。美形で穏やかな社会人義兄と、つい先日まで高校生だった少しマイナス思考の義弟の話。短編小説です。

この愛のすべて

高嗣水清太
BL
 「妊娠しています」  そう言われた瞬間、冗談だろう?と思った。  俺はどこからどう見ても男だ。そりゃ恋人も男で、俺が受け身で、ヤることやってたけど。いきなり両性具有でした、なんて言われても困る。どうすればいいんだ――。 ※この話は2014年にpixivで連載、2015年に再録発行した二次小説をオリジナルとして少し改稿してリメイクしたものになります。  両性具有や生理、妊娠、中絶等、描写はないもののそういった表現がある地雷が多い話になってます。少し生々しいと感じるかもしれません。加えて私は医学を学んだわけではありませんので、独学で調べはしましたが、両性具有者についての正しい知識は無いに等しいと思います。完全フィクションと捉えて下さいますよう、お願いします。

壁穴奴隷No.19 麻袋の男

猫丸
BL
壁穴奴隷シリーズ・第二弾、壁穴奴隷No.19の男の話。 麻袋で顔を隠して働いていた壁穴奴隷19番、レオが誘拐されてしまった。彼の正体は、実は新王国の第二王子。変態的な性癖を持つ王子を連れ去った犯人の目的は? シンプルにドS(攻)✕ドM(受※ちょっとビッチ気味)の組合せ。 前編・後編+後日談の全3話 SM系で鞭多めです。ハッピーエンド。 ※壁穴奴隷シリーズのNo.18で使えなかった特殊性癖を含む内容です。地雷のある方はキーワードを確認してからお読みください。 ※No.18の話と世界観(設定)は一緒で、一部にNo.18の登場人物がでてきますが、No.19からお読みいただいても問題ありません。

とろとろ【R18短編集】

ちまこ。
BL
ねっとり、じっくりと。 とろとろにされてます。 喘ぎ声は可愛いめ。 乳首責め多めの作品集です。

【クズ攻寡黙受】なにひとつ残らない

りつ
BL
恋人にもっとあからさまに求めてほしくて浮気を繰り返すクズ攻めと上手に想いを返せなかった受けの薄暗い小話です。「#別れ終わり最後最期バイバイさよならを使わずに別れを表現する」タグで書いたお話でした。少しだけ喘いでいるのでご注意ください。

処理中です...