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求婚
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「俊詩!とーしふみっ!」
彩明は遠くに見える
愛しい人影に向かって手をふる。
天気のいい土曜日の朝早く
彩明は俊詩と
待ち合わせをした。
「あーやーあきー!」
ぶんぶんと手をふる俊詩の
はしゃぎようを見て
彩明はつい吹き出してしまった。
「ぷっ…は…!浮かれすぎ!」
彩明はおかしそうに言う。
「いいじゃん!嬉しいんだから!」
そう言うと早速手を
繋いでくる俊詩に
「ちょ!…ダメ!」
周りを気にして
キョロキョロする彩明。
2人の指で光るリングは
輝きを放つ…。
「行こうか。」
俊詩は苦笑いで
手を繋ぐのを諦め前を歩き出した。
彩明は自分で手を繋ぐのを
拒否したのに、早々に
諦めてしまったらしい俊詩に
(少し残念…。)
そう思ってしまってから驚いた。
(自分の感情に素直に…
なっても、いい、よね…。)
彩明は自分から
手を繋ぎにいった。
「やっぱり…繋ぎ、たい。」
そういうと俊詩の顔が
ぱあっと明るくなるのがわかる。
無言で手を繋ぎなおして
2人は微笑みあい目的地に向かう。
朝早くの待ち合わせの目的は
蓮の花が満開になると
有名な池に行く事だった。
俊詩は2人が
前世の最期に見た蓮の花畑に
ちなんでそこで彩明に
プロポーズする、と決めていた。
「わぁ!満開だぁ!
綺麗だねぇ………っく…ぅぅ…。」
彩明は涙をこらえられずに嗚咽する。
「彩明…。泣かないで…。
うん。綺麗だ。
あの最期に見た蓮の花畑みたい。
あの時一瞬、今世を見たのかなぁ…。
こうして手を繋いで歩く、未来を。」
「…っく…………。
そうなのかもしれないね…。
ぅぅぅ…。ねぇ。俊詩。
ありがとう。ちゃんと同じ年に
生まれてくれて。」
「彩明。ありがとう。
名前違っちゃったのに
ちゃんと俺を探してくれて。」
ふふふふ…と顔を見合わせて笑う。
俊詩は彩明の涙を拭った。
蓮の花畑が見渡せるベンチに
腰掛ける2人。
「そういえばさ…今まで
それどころじゃなくて
聞いてなかったけど…
彩明の誕生日っていつ?」
俊詩は聞く。
「え?俊詩は?」
「2月14日。」
「2月14日。」
2人の声が揃った。
「え?ほんとに?」
顔を見合わせて驚き
それから笑いあった。
「ねぇ…。俊詩。」
彩明がとつとつと話し出す。
「僕はあなたにプロポーズします。
俊詩。愛しています。
僕と…。一生、一緒に…
いて、ください。
これ。」
と小さな箱を差し出した。
「開けてみて。
僕からのプレゼント。」
俊詩は丁寧に箱を開けた。
「…これ。プロが設計図を書く時の
シャーペンだ!
先輩に使わせてもらったこと
あるけどすごく書きやすくて…
憧れだったんだ!
彩明ありがとう…!
嬉しい!」
「あぁ!よかった!」
満面の笑みの彩明。
「僕。夢ができたんだ。
今、高校を休学中だけれど
辞めて、高卒認定試験を受けて
専門学校へ行くことを考えてる。
調理師免許と管理栄養士の資格を
取りたい。
将来…。『こども食堂』を
作りたいんだ。これが僕の夢。
僕みたいに親に恵まれずに
虐待やネグレクトに
あってる子供たち。
居場所のない子達に
1人でも多く1食でも多く
美味しくて栄養のあるものを
食べさせたい。
みんなで食べることの楽しさを
嬉しさを伝えたい。
それが僕の…使命である気がする。
僕がこんな運命に生まれた意義。」
「彩明…。」
彩明は立ち上がって
俊詩を見つめて
手を握り言った。
「俊詩。その時は俊詩が
その家を設計して建ててね。」
「あぁ!もちろんだ!彩明!」
彩明は泣き笑いの表情をする。
「ぼ…くたちは、…っ………っく…。
子供が持てないけど…
そこに集まる子達を
一緒に、育ててく、れる?
お父さんになってあ、げてくれ、る?」
「彩明。俺、とても嬉しいよ。
たくさんの子供たちに囲まれて
楽しいだろうな!
色々大変かもしれないけど
それも2人なら大丈夫。
俺…たくさんの子の
お父さんになれるんだ!
嬉しいよ…。っく…つっ………。
彩明の夢が
俺の夢になる。
俺の夢は彩明が幸せになる
家を作ることだから。
俺の夢も彩明の夢!」
「っく…ぅぅぅ……俊詩
ありが、とう…」
彩明は握っていた手に力を込めた。。
俊詩はギュッと握り返し
立ち上がって彩明を引き寄せ
抱きしめた。
「俊詩…。」
「………ちぇっ。俺から
プロポーズしようと思ってたのに…
先に言われちゃった。」
「え?そ、なの?ご、ごめん…」
「ぶはっ!謝ることはないけどさ!
めちゃめちゃ嬉しかったよ。
彩明からのプロポーズ。」
「…。俊詩からも
プロポーズ、して…?」
「……なんかもう照れくさい!」
「言ってよぉ~」
「あ~!その顔!ヤバい!
かわいい…」
「…!もう!何言ってんの!バカ…。」
「あぁ~!キスしたい!」
真っ赤になり彩明は
うつむき、それから周りを伺い
チュッと一瞬だけ
俊詩の頬に口づける。
今度は俊詩が赤くなってしまった。
「…彩明。これ、書いて欲しいんだ。
俺と結婚してください。
俺の家族になってください。
一生一緒にいてください。
俺はすこやかなる時も
病める時もいついかなる時も
彩明を愛することを誓います。」
「俊詩……。ありがとう…。
はい。ふつつかものですが
末永くよろしくお願いします。
すこやかなる時も
病める時もいついかなる時も
俊詩を愛することを
誓います。」
俊詩が差し出した婚姻届には
俊詩のサインと証人の欄には
柏葉と一の
サインがしてあった。
震える手でペンを持つ彩明の手を
俊詩はそっと握った。
微笑んでゆっくりと名前を書く彩明。
「よし!俺これ部屋に飾るから!
えへへ…もう額買ってあるんだ!」
「ええっ?!へ、部屋に飾ったら
お父様とか来られた時に…!」
「親父にはもう言ったよ。」
「え?え!言っ、た?うそ!」
「親父、驚いてたけど…。
反対はされなかった。」
「ほんとう、に?」
「あぁ。『なんかそんな気がしてた』
だって。参ったよ…。
ぐはは!今度、会わせるから、さ。」
「え!え…う、うん。
き…緊張す、る…。」
「ふ、はは…普通のそこらへんの
おっさんだからそんなに
緊張しなくても。」
「だ、だって…。
と、俊詩のお父様だもん…。」
「お父様、やめて!あははは!」
「う、ふふふ!…………。
嬉しい…。本当に…
ありが、とう…。俊詩。」
「こちらこそありがとう。彩明。
………早く、抱き、たい…。」
「と!しふ、み!」
かぁぁっと真っ赤になり彩明は
「でっでも!あそこの
お土産屋さん、見たい!」
そう言うと走って行ってしまう。
「彩明!待てよ!おーい!」
振り向き笑顔で手をふる彩明。
2人で売店でお揃いの蓮の花の
キーホルダーを買った。
彩明は遠くに見える
愛しい人影に向かって手をふる。
天気のいい土曜日の朝早く
彩明は俊詩と
待ち合わせをした。
「あーやーあきー!」
ぶんぶんと手をふる俊詩の
はしゃぎようを見て
彩明はつい吹き出してしまった。
「ぷっ…は…!浮かれすぎ!」
彩明はおかしそうに言う。
「いいじゃん!嬉しいんだから!」
そう言うと早速手を
繋いでくる俊詩に
「ちょ!…ダメ!」
周りを気にして
キョロキョロする彩明。
2人の指で光るリングは
輝きを放つ…。
「行こうか。」
俊詩は苦笑いで
手を繋ぐのを諦め前を歩き出した。
彩明は自分で手を繋ぐのを
拒否したのに、早々に
諦めてしまったらしい俊詩に
(少し残念…。)
そう思ってしまってから驚いた。
(自分の感情に素直に…
なっても、いい、よね…。)
彩明は自分から
手を繋ぎにいった。
「やっぱり…繋ぎ、たい。」
そういうと俊詩の顔が
ぱあっと明るくなるのがわかる。
無言で手を繋ぎなおして
2人は微笑みあい目的地に向かう。
朝早くの待ち合わせの目的は
蓮の花が満開になると
有名な池に行く事だった。
俊詩は2人が
前世の最期に見た蓮の花畑に
ちなんでそこで彩明に
プロポーズする、と決めていた。
「わぁ!満開だぁ!
綺麗だねぇ………っく…ぅぅ…。」
彩明は涙をこらえられずに嗚咽する。
「彩明…。泣かないで…。
うん。綺麗だ。
あの最期に見た蓮の花畑みたい。
あの時一瞬、今世を見たのかなぁ…。
こうして手を繋いで歩く、未来を。」
「…っく…………。
そうなのかもしれないね…。
ぅぅぅ…。ねぇ。俊詩。
ありがとう。ちゃんと同じ年に
生まれてくれて。」
「彩明。ありがとう。
名前違っちゃったのに
ちゃんと俺を探してくれて。」
ふふふふ…と顔を見合わせて笑う。
俊詩は彩明の涙を拭った。
蓮の花畑が見渡せるベンチに
腰掛ける2人。
「そういえばさ…今まで
それどころじゃなくて
聞いてなかったけど…
彩明の誕生日っていつ?」
俊詩は聞く。
「え?俊詩は?」
「2月14日。」
「2月14日。」
2人の声が揃った。
「え?ほんとに?」
顔を見合わせて驚き
それから笑いあった。
「ねぇ…。俊詩。」
彩明がとつとつと話し出す。
「僕はあなたにプロポーズします。
俊詩。愛しています。
僕と…。一生、一緒に…
いて、ください。
これ。」
と小さな箱を差し出した。
「開けてみて。
僕からのプレゼント。」
俊詩は丁寧に箱を開けた。
「…これ。プロが設計図を書く時の
シャーペンだ!
先輩に使わせてもらったこと
あるけどすごく書きやすくて…
憧れだったんだ!
彩明ありがとう…!
嬉しい!」
「あぁ!よかった!」
満面の笑みの彩明。
「僕。夢ができたんだ。
今、高校を休学中だけれど
辞めて、高卒認定試験を受けて
専門学校へ行くことを考えてる。
調理師免許と管理栄養士の資格を
取りたい。
将来…。『こども食堂』を
作りたいんだ。これが僕の夢。
僕みたいに親に恵まれずに
虐待やネグレクトに
あってる子供たち。
居場所のない子達に
1人でも多く1食でも多く
美味しくて栄養のあるものを
食べさせたい。
みんなで食べることの楽しさを
嬉しさを伝えたい。
それが僕の…使命である気がする。
僕がこんな運命に生まれた意義。」
「彩明…。」
彩明は立ち上がって
俊詩を見つめて
手を握り言った。
「俊詩。その時は俊詩が
その家を設計して建ててね。」
「あぁ!もちろんだ!彩明!」
彩明は泣き笑いの表情をする。
「ぼ…くたちは、…っ………っく…。
子供が持てないけど…
そこに集まる子達を
一緒に、育ててく、れる?
お父さんになってあ、げてくれ、る?」
「彩明。俺、とても嬉しいよ。
たくさんの子供たちに囲まれて
楽しいだろうな!
色々大変かもしれないけど
それも2人なら大丈夫。
俺…たくさんの子の
お父さんになれるんだ!
嬉しいよ…。っく…つっ………。
彩明の夢が
俺の夢になる。
俺の夢は彩明が幸せになる
家を作ることだから。
俺の夢も彩明の夢!」
「っく…ぅぅぅ……俊詩
ありが、とう…」
彩明は握っていた手に力を込めた。。
俊詩はギュッと握り返し
立ち上がって彩明を引き寄せ
抱きしめた。
「俊詩…。」
「………ちぇっ。俺から
プロポーズしようと思ってたのに…
先に言われちゃった。」
「え?そ、なの?ご、ごめん…」
「ぶはっ!謝ることはないけどさ!
めちゃめちゃ嬉しかったよ。
彩明からのプロポーズ。」
「…。俊詩からも
プロポーズ、して…?」
「……なんかもう照れくさい!」
「言ってよぉ~」
「あ~!その顔!ヤバい!
かわいい…」
「…!もう!何言ってんの!バカ…。」
「あぁ~!キスしたい!」
真っ赤になり彩明は
うつむき、それから周りを伺い
チュッと一瞬だけ
俊詩の頬に口づける。
今度は俊詩が赤くなってしまった。
「…彩明。これ、書いて欲しいんだ。
俺と結婚してください。
俺の家族になってください。
一生一緒にいてください。
俺はすこやかなる時も
病める時もいついかなる時も
彩明を愛することを誓います。」
「俊詩……。ありがとう…。
はい。ふつつかものですが
末永くよろしくお願いします。
すこやかなる時も
病める時もいついかなる時も
俊詩を愛することを
誓います。」
俊詩が差し出した婚姻届には
俊詩のサインと証人の欄には
柏葉と一の
サインがしてあった。
震える手でペンを持つ彩明の手を
俊詩はそっと握った。
微笑んでゆっくりと名前を書く彩明。
「よし!俺これ部屋に飾るから!
えへへ…もう額買ってあるんだ!」
「ええっ?!へ、部屋に飾ったら
お父様とか来られた時に…!」
「親父にはもう言ったよ。」
「え?え!言っ、た?うそ!」
「親父、驚いてたけど…。
反対はされなかった。」
「ほんとう、に?」
「あぁ。『なんかそんな気がしてた』
だって。参ったよ…。
ぐはは!今度、会わせるから、さ。」
「え!え…う、うん。
き…緊張す、る…。」
「ふ、はは…普通のそこらへんの
おっさんだからそんなに
緊張しなくても。」
「だ、だって…。
と、俊詩のお父様だもん…。」
「お父様、やめて!あははは!」
「う、ふふふ!…………。
嬉しい…。本当に…
ありが、とう…。俊詩。」
「こちらこそありがとう。彩明。
………早く、抱き、たい…。」
「と!しふ、み!」
かぁぁっと真っ赤になり彩明は
「でっでも!あそこの
お土産屋さん、見たい!」
そう言うと走って行ってしまう。
「彩明!待てよ!おーい!」
振り向き笑顔で手をふる彩明。
2人で売店でお揃いの蓮の花の
キーホルダーを買った。
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